表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/159

(102)

 淀嶋と水元のダンジョンは、弦間のダンジョンからの猛攻を受けていた。


 一つのダンジョンで二つのダンジョンを相手にしているのだが、それでもやや弦間側が押していると言った印象だ。


 レベル47と46、今はこっそりと移動中の召喚冒険者の岩本がいるのだが、実際戦闘しているダンジョンマスター二人に対して、レベル60一人で有利に戦局を進めているのには理由があり、弦間が派遣している魔物にゴーストと呼ばれるレベル80の召喚魔物がおり、淀嶋と水野はこの猛威に晒されていたのだ。


 このゴーストは弦間配下の魔物ではなく、弦間の主である神保の物だが、今回の戦闘の為に借り受けていた。


 まさかこれほどまでの戦力を隠していたとは思いもしなかった淀嶋と水元は、何とか劣勢を跳ね返そうと内包魔力を使用してダンジョン内部の変更や魔物を召喚して対抗している。


 水元のダンジョンの24階層では……眷属であるレベル45の自然族が出向いて、多数の召喚魔物と共にズンズンと深層に向けて侵攻しているゴーストと対峙していた。


 ゴーストは魔法攻撃能力に特化しており、その中には相手に呪いを付与して弱体化する事も出来る力を持っている恐ろしい魔物だ。


 物理攻撃は一切無効になる不条理な存在で、自然族が得意とする植物を使った攻撃は相性が非常に悪いのだが、経験豊かな水元はこれまでの戦闘でその事実は理解しており、敢えて物理的に視界を塞いで魔法による感知に力を割かせる事で隙を生み出そうとしている。


 その指示を受けている自然族の眷属は、対ゴースト様に急遽改造した砂場の様な地面と天井の非常に低い階層の中で、地面に根を一気に張り巡らせて土を纏めて上空にはね上げる事で、物理的に視界を奪っている。


 水元の思惑通りにゴーストは周囲の気配を魔法で察知しており、その分攻撃魔法の威力、発動速度は一気に減少する。


 その隙に、土に紛れさせていた水元のダンジョンの召喚魔物であるレベル30の大量のゴーレム(土人形)による魔法攻撃を一斉に仕掛けた。


 いくらゴーストと比較して相当レベルの低い魔法の攻撃とは言え、数が多ければ大ダメージを受ける。


 本来は飛行魔法によって上空に逃げる特性のあるゴーストは、天井が低く設定されている階層の為に逃げる事が出来ないのだが、本能から上空へ逃げる様な行動をとってしまい、更なる追撃を受けて瀕死になる。


「ふぅ~、今回は助かった……かな。まさか24階層まで来られるとは思っていなかったよ。危なかったよね。これだと、淀嶋ジィも危ないかもしれないよね」


 水元のダンジョン、実は全28階層であり結構危ない位置にまで潜られていたのだが、急遽階層を改造して何とか侵入してきたゴーストを始末する事に成功していた。


 相当格上の存在だった為、同じダンジョンマスター側の存在であったとしてもかなりの糧になったようで、別の魔物の侵入時の対策用に使えると安堵する水元。


 一方の淀嶋も、同じく神保から弦間が借り受けているもう一体のゴーストの襲撃を受けて一気に侵攻されているのだが、こちらは戦略的撤退をしており、自身の魔物の被害は非常に少ない。


 逃げる魔物を追う侵入者と言う構図になっているが、老獪な淀嶋が何も戦略なく逃げている訳ではないのだが、借り物の魔物に対して複雑な命令を下せない弦間なので、ゴーストは単純に深層を目指して経路上の邪魔者を排除しながら進んでいる。


「ホッホ、やはりおるのう、魔法特化。じゃが、甘い甘い。儂が何も対策をしていないわけなかろうが」


 何歳なのかは不明だがレベル40超えによる金目金髪で、過去の戦闘の影響か片目を失っている淀嶋。


 その表情には余裕が見て取れ、一気に侵攻されてはいるのだが、確実にゴーストを排除できる算段がありそうに見える。


 やがてゴーストは相手にもならない召喚魔物を始末しながら進み、全30階層の内22階層に突入した直後に突如として動きを止める。


 これこそが淀嶋の対策であり秘策。


 淀嶋の眷属には、レベル45の蜘蛛族とレベル48の光族がいる。


 ゴーストは光族と非常に相性が悪く天敵と言っても良い立場だが、今の段階ではレベル差が多すぎるために脅威とはなり得ない。


 だが、淀嶋はそこを頭脳でカバーする。


 蜘蛛族の特性である糸による捕縛を実施し、そのままではレベル差と物理攻撃無効により抜けられる可能性があるので、大量の蜘蛛の糸に光族による防御魔法を付与しておいたのだ。


 魔法による拘束は受け付けてしまうゴーストは、淀嶋の想定通りに蜘蛛族が大量に準備していた光族の防御魔法込みの糸にがんじがらめにされて身動きが取れなくなってもがいている。


 こうなってしまえば“まな板の上の鯉”であるのだが、やはりレベル差からか糸を焼き切ろうと炎魔法を発動しながら徐々に自由を取り戻してはいる。


 その時間は圧倒的な隙となり、事前に大量の糸を準備していた淀嶋の戦略通りに魔法を使える召喚魔物が一気に断続的な集中攻撃を放ち、一体で22階層まで悠々と侵入してきたゴーストは消え去り、淀嶋のダンジョンの糧となる。


 この蜘蛛族は弦間も眷属として持っているのだが、レベルが同じであったとしても単体でゴーストの相手にはなり得ないので、淀嶋が持っている眷属の種類を神保の力を借りて知り得ていた弦間はその知識がある為に油断していた。


「フォッフォッ。中々の獲物だった様じゃの。爽快!」


 こうした攻防がある中で神保は自らが貸し与えたゴーストが消え去った事を察知し、弦間に更なる攻勢をかける様に命令し、結果、ラスリ王国とコッタ帝国を脅威の渦に飲み込んで行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ