ねこ
あの時は桜が散って段々と暖かさが増す季節で、その日は雨だった。
地面に打ち付けられる雨粒と水たまりに流される桜の花弁の残骸を、僕はダンボールの中からひたすら見つめていた。
4月の雨の冷たさに僕の体温は徐々に奪われ、ニャーとか弱い声が漏れる。
一瞬、体が急に持ち上がった。
何かと思い周囲を見渡すと、僕はニンゲンに背中の方から持ち上げられているようだった。
彼は僕に向かって
『¥s@*yЩ~€』
と言った
僕には彼の言葉はわからないけれど、それが敵対するものでは無いことはわかった。
彼は羽織っていたパーカーで僕を包み、何処かへと連れて行った。
大きな女の人がすごい剣幕で彼を叱りつけている。
『€〆々※〒!@#〆¥&€〒!』
『£&〆2$+…¥$?』
やっぱり彼らが話している言葉はよくわからないけれど、彼は必死に僕をかばっているということだけは理解できた。
それからだんだんと女の人の口調から剣呑さが抜けていって、ついには諦めたように
『?~=%$#&*>|¥』
とだけ言った。
それから僕はこのニンゲンたちと暮らすこととなった。