腕試し
風切り音が聞こえるほどの斬撃を俺は避け、マテミアドワーズを顕現させて向かっていった。
《煉獄》は俺の方へ双剣を振り斬撃を大量に生み出しながら走ってきた。俺は近ずいてきた《煉獄》に剣を振りながら火球を生み出して放った。
《煉獄》はどちらも避け俺に向けて連撃を放ち、並列詠唱を開始した。
「炎は毒を飲み、爆裂す。風を切り、爆ぜ、燃え、毒にて壊せーー」
連撃を防ぎ、すぐさま詠唱を止めにかかるが防がれ詠唱が終わり、《煉獄》はその名を口にした。
「毒纏の炎」
《煉獄》の手のひらから放たれた炎に対して、俺は自身の直感に従い《英雄の証》を発動した。
「ーー水蛇の毒!」
俺が生み出した毒は紫のオーラと化し、剣身に纏わりついた。そして、剣を振ると同時に《英雄武術》に組み込まれている技を発動する。
「炎神剣!」
剣に炎が纏い、剣が毒纏の炎と交わり《煉獄》の炎を打ち消した。自分の炎が空中で散り消えていくのを驚愕の瞳で見ていた《煉獄》は二秒ぐらい考え納得したように頷いた。
「貴公、相殺したのだな」
「まあ、な」
俺の返答に満足そうに頷き確認の為という風に説明を始めた。
「目には目を、歯には歯を…ということか。炎を炎で、炎に隠れていた毒を毒で、か。中々面白いことをする。しかも水蛇の毒か……」
《煉獄》は少し考え頭を振った。
「戦闘中にすまぬ。再開しようか」
そして並列詠唱をしながら向かってきた。俺も並列詠唱を開始し、剣を振った。《煉獄》は避け連撃を繰り出して、俺は防ぐ。その間、どちらも詠唱を止めない。
「地の底、さらに底。その地の炎は我が力なりーー」
「空のさらに天上の世界より堕ちた者はーー」
詠唱を先に終えたのは《煉獄》だった。
「地獄の煉獄!」
俺はそれをすぐさま避け、詠唱を続けた。
「光り輝く者。驕り、反逆者となった。黎明の子ーー」
数秒の詠唱を終え、その魔法を発動するーー。
「明けの明星」
その時、星空の中で星々の中でもっとも輝いていた星がさらにその光を輝かせ、世界が揺れるほどの破壊の光を《煉獄》へと堕とした。