出てすぐに……
「おっ、やっと着いたか」
歩いてから二日と半日程度が経ち、深夜ぐらいにようやっとの思いで森を出た。
魔力操作をずっとしていたおかげか、無詠唱で魔法を使えるようになった。魔法に関しては本が家にあったからよく知っている。最上位魔法は、詠唱しなきゃ使えないが元々使う機会も無いよな。オリジナルも詠唱有りだ。それに関しては文句なぞ無いな。
それにしてもいい夜空だな。満天の星に丸い月が二つと言うところでやっぱり異世界なんだよな、と感慨深くなる。
そう思っていると、
『グオオオォォォォォっっっ!!』
雄叫びが大地を揺らしていた。
なんだ、と疑問に思い雄叫びが聞こえた方向へ顔を向けると、体長十メートルぐらいある翼のない龍がこちらへ音を上げて歩いてきた。
翼がないということは地龍か、それにあの大きさは上位龍だな。
地龍とは土魔法を扱う龍で知能は上位龍以上でなければ低い。上位龍はスキルランクが皇以上でなければ勝てないとされている。
地龍が俺の前で止まり、見下げてきた。地龍の上には二つの気配が濃厚に漂ってきた。
そしてその二つの気配が降りてきて、俺の前に降り立った。片方は前に倒した魔族の男でもう片方は赤黒い髪に紫色の瞳をした魔族の男だ。
「この者です、人族の強者は。《煉獄》様、どういたしましょう?」
前に倒した魔族の男はこちらを怯えながら《煉獄》と呼ばれたもう一人の魔族に問いかけた。と言うか本人の前で言うのか。復讐かな、まあ自分では勝てないと思い呼んだのか。
そう思っていると、《煉獄》と呼ばれた魔族は目を細め口を開いた。
「強いな、人の子よ。腕試しをさせてはくれないか」
………は?
今なんて言った。腕試しをさせてくれだと。少し視線を変えると連れてきた魔族も呆気に取られていた。まあ、そうだよないきなりそんなこと言うんだから。
とりあえず理由を聞いてから返答しよう。
「どうして俺と?」
「どうしても何も、強者を見つけたからだろう」
あかん、戦闘狂だ。
「お、お待ち下さい。このような危険な者、魔王様に害を及ぼすかもしれません。即刻、排除しなければいけない」
おっと、魔族の男が焦ったように危険性を訴えたぞ。単に俺を排除したいだけだろうに。
「ふん、貴様の場合この者を倒したいだけであろう。要は自分の為だな」
「そ、そのようなことは」
《煉獄》さんも同じ考えだったんだな。焦っては相手を不審がらせるだけだぞ、魔族。
「それに、この者には私でも勝てん。魔王でもな。ならば腕試しをした方がよいだろう」
いや、どうしてそうなるんだよ。思考回路が分からんぞ。《煉獄》は俺に向き直り、再度訪ねた。
「どうだ、腕試しをさせてはくれまいか」
正直、自分の力がどのくらいか分からないが勝てない相手ではないと思う。自分の強さがどのくらいか分かるから良いか、と考え返答を返した。
「ああ、受けて立つ」
この言葉に相手は薄く笑い腰に下げていた双剣を抜て、軽く俺へ振った。
それが戦闘開始の合図だった。