捨てられそして
僕は転生者だ。
生まれつき前世の記憶があるし、その前世の知識によると、ここは異世界と言うところだと分かったのだから。
僕の異世界の故郷は小さな村。小さいからこそ、皆で協力して生きており、僕はそこでずっと生きていこうと、年甲斐もなく思ってしまうほど心地良い場所だった。
親友や幼馴染に兄に妹がいて、楽しい日々を過ごしていた。
しかし、ある日村に来た王国の騎士達により、その日々は激変した。
なんでも、有能な人材を王国は欲しており、各地の街や村を回っているらしいのだ。
そしてこの村に来たらしのだが、一人一人調べていくと、村の子供達で僕以外はとてつもない才能を持っているのだ。この事には酷くショック感じたのを今でも覚えている。
親友は勇者の才能を持っているし、一番仲が良かった幼馴染は剣の才能が有り得ない程持っている。妹は魔法の才能が、兄は拳闘士の才能を。
嬉しくもあり、寂しくもあった。これほどの才能なら王国に引き取られると思ったから。そしたら親友が、
『いつか、会いに行くから…その…ま、待っててね』
女々しい声でそう言ってきた。思えば、それが今の自分に繋がっているのだろう。
その後は、一人一人と別れを惜しみながら別れの挨拶を済ませ、そして皆が村を出ていき、僕は意を決したんだった。
その一言があり、親代わりに相談して村を出て冒険者になったのだが、身体に何かが詰まっているかのように身体一つ一つの動きが鈍かった。
その後、今話題のパーティーに入れたので、張り切っていたのだがそこにあったのは、辛い日々だった。
◇
「ぅん……ふぁ~」
目を開け、日差しの眩しさに声を出さずに驚きながら、体を起こした。
上半身に薄い麻色の袖無しの服のみ着ていた僕は朝の寒さに身体を震わせ、ダンジョンに行くのだと思い出し、急いで短めのズボンをはいていた下にズボンなどを着てから、上を違う服に着替えてきていた服をバックに入れて宿を飛び出した。
着いたときはジアとファールドだけがいた。
「お、おはようございます!」
「ん」
「……」
ジアは短く答え、ファールドは若干目元を和らげて頷いた。
それから、数分後にガイン達が来て、
「よぅし、いくぞ!」
そしてダンジョンに入っていった。
◇
「おおい、なんだよコレェ!」
ダンジョン五十階層で今僕達は魔物に襲われていた。
さまざまな魔物が一斉に襲ってきて、僕じゃあ生き延びることが不可能な数が来ているのだが、ファールドが僕を抱えて魔物を避けながら、投擲して戦っていた。
今はこの状況に対する周りの反応だが……
「クソッ!これじゃあジリ貧だァ!もうしょうがねぇ、ジンを囮にしろォ!」
「「っ!」」
ああ…予想していた事が起こった。そのようなことを言うのがガインなことは分かっていたから、周りの返事はきっと……
「賛成っ!それ以外ないでしょ!」
「ええっ、私もですっ!」
やはりか、リーアとラスバンはそう言うだろうと思っていた。なぜかジアとファールドは無言だが、どういう気持ちなのか……付き合いが浅いからよく分からないが。だけど何故だろう、ファールドの僕を抱える力が強くなった気がする。
「おい、早く投げろォ、ファールド!」
それを無視して、ファールドの抱える力が強まった。ガインはそれに苛立ち、ファールドから僕を奪ってから、僕の小さな体を魔物の反対側に投げた。
魔物は宙に浮いている僕に視線を向け、僕を追ってきた。なんかガイン達が騒いでいるが、魔物達は僕を追っかけてきた。
しかし、僕が落ちた場所にはトラップがあったみたいで、地面に手がついた瞬間、魔法陣があらわれ空間全体を覆う程の光が魔法陣から放たれた。
◇
「うぅん……ぁれ、ここは一体どこ?」
目覚めるとそこは森の中だった。
見渡すと木々が視界全体にあり、僕が倒れていたところは太い根元だと分かる。
「うん?何故人間がここにいる?」
そうしていると、黒い外套を着ている男の声を発する者が現れた。しかし、今はここにいる事は置いておき、その言葉に僕は目を丸くしていた。
「人間、って」
「ほう、察しが良いな、人間。そうだ、私は魔族と他の種族に呼ばれている者だ。貴様は勘が良いな、そういう人間は厄介だ、此処に居るのを見られたのも不味い。死ね、人間」
そう言って襲ってきた。
「うわあああ!!」
バックを投げつけ、逃げるも相手は素早く追ってくるので全力で僕は逃げた。
しばらくすると木々がまるでその場所を避けているかのような場所につき、中央に剣が刺さっていたのを見つけ、そこまで力を振り絞るように全力で走った。
「あれはッ!」
何故か魔族が驚いているが、それを無視しながら剣を走っていた勢いで抜いた。
すると、世界に激変が起きた。