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15. はじめての買い物

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 クルトは原作通り、頑張っても中の下程度の実力しかない貴族のバカ息子である。


 しかしこれから待ち受ける異世界ファンタジーバトルに首を突っ込もうかと考えている俺としては、中の下程度では大問題なのである。


 それに俺が積極的に物語に横槍を入れたら、今日の魔法基礎実習の決闘のように、原作とは違うオリジナル展開となる可能性が大である。


 そうなった場合、原作知識の大半は役立たずになり、俺はただの貴族のバカ息子となる。原作再現かな?

 あぁ、ちなみにジュベイルとの不和フラグはなんとかへし折った……と思っている。

 実習終了後改めて謝罪したのだが、ジュベイルからは、


「そこまで気にすることではない」


 と笑顔で答えてくれた。これが社交的な皮肉ではない、と信じたい。

 まぁ彼の性格からして大丈夫だろうと信じている。……大丈夫だよね?


 まぁ、うん、それはそれとして話を戻そう。


 つまるところは自己強化。

 体力作りは別途やるとして、問題は魔法の才能、あるいは剣の才能が5000兆くらい欲しい。


 ……でも魔法って生まれ持っての才能に拠るところが大きいんだよね。努力云々で伸ばせる部分がかなり少ないという設定だ。


 んじゃヴォルフみたいに精霊魔法を、というのもダメ。

 主人公だけが持つオンリーワンの才能だから俺には土台無理な話。


 クソ、考えれば考える程自分の作った設定が邪魔になる。


 小説書いてた頃も「自分の作った設定が邪魔で物語の展開ができない」と嘆いていた時もあったが、しかし今はそれが生命の危機に変わっている。


 いや没落フラグだけを回避して石橋叩いて渡ればそこまで危機ではないと思う。

 しかしその場合メルヴィは死亡フラグを立て続け、カリナは離脱フラグを立て続ける。


 それは嫌なので、せいぜい足掻いてみる。


「お帰――」

「というわけでカリナ、買い物に行こう」


 寮に帰って早々、帰宅の挨拶すっ飛ばして俺は高らかに宣言する。


「買い物ですか? なにか足りないモノがあるなら私が――」


 当然、カリナの首は右に30度傾く。


「いや、自分で買い物して自分で選びたいんだ」

「はぁ……? しかしいったい何を……?」

「ふっ、わかってないなカリナ」

「うわ腹が立――じゃない。どういうことでしょうか、クルト様」


 何か不穏な台詞が聞こえかけたが中身が貴族の坊ちゃまではなくなり日本のアダルトマン将軍となった俺には何も聞こえなかった。


「世の中単純明瞭。足りないなら、補えばいい」

「……?」


 カリナの首の角度が30度から45度に変化した。


 まぁ要するに、魔力を鍛えるのは非現実的なので魔導具やら魔石やら、あるいは遺跡から発掘されるアーティファクトなんかを使って才能を補おうということである。

 なに、冒険者なら足りない魔力を道具や装備で補うことは普通にあるって先生言ってたし平気平気。

 それに金ならいくらでもあるしね!


「そういうことだから、行こう、カリナ」

「……あの、ハッキリ言って幻滅ですが」


 ドン引きされた。

 いやあの、うん、そんなにドン引きされるとは思っていなかったよカリナ……。


「でもカリナ、考えてみてくれ」

「はい」

「俺がカネやコネや道具に頼らずに誰かを護ることができると思うか?」


 俺は出来ないと思ったので、糸目をつけないことに今決めた。


「…………努力する必要はあると思いますが」

「努力は勿論する。けれど、時間がかかるよな?」


 カリナの両肩を掴んで説得する。


 こちとら必死なんじゃ。こうでもしなきゃ、チート主人公ヴォルフやらメルヴィやら、あるいは今後正体を現すマース先生やらと対抗できないんだ。


 俺にチートライフを送らせてくれ!


「それは……まぁ、はい。そうですね」

「うん。しかし敵が誰かを――たとえばカリナを襲おうとしている敵がいるとして……その敵が、俺が努力して実力を上げてくるのを悠長に待ってくれると思うか?」

「あの、私はメイドですので別に見捨ててくれても――」

「バカ言うんじゃねぇ!!」


 みすみすヒロインのひとりをあの烏野郎に取られてたまるかぁ!


 自分で考えた最強の主人公があんなにウザったい奴じゃあなければこんな心配とも無縁だっただろうけど、あんな奴に、たとえサブヒロインで恋愛フラグが立たないカリナを奪われてたまるか!


「カリナがいなくなったら困る」

「……そ、そうですか」

「あぁ」


 現状学園で唯一俺の味方確定の奴で、ついでに身の回りの世話とか雑用とか色々してくれるカリナを手放すなんてことは考えられない……って、これじゃただの最低野郎じゃん。これは心の内にとどめておこう。


「…………な、なら仕方ない、かな?」


 若干カリナの喋り方がおかしくなったがたぶん、説得に応じたか諦めたかそれ以外の何かがあったのだろう。

 とりあえず同意してくれたということで。


「んじゃ早速行くぞ!」

「えっ!? 今からですか!?」

「おう、善は急げと言うからな!」

「ほ、本当にそれが善なんでしょうか……」


 なんかよくわからないことを言っているが、無視無視。

 とりあえずキャッシュ少々と馬車を用意、外出許可を貰って学園外にレッツラゴー!


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