番外編 ドラゴムの秘密
※今回は番外編です。
当初の予定では、前の話を前半、この話を後半にして一つの話にしようとしていましたが、あまりにも温度差があるので、こちらは番外編という形を取らせていただきました。
雰囲気が違いすぎるので、前の話の余韻が残っているかたはご注意ください。
~某日 クランにて~
俺達は、どうしても確認しなければならないことがあった。
「……これで、全員だろうか?」
タヌキに姿を変えたゼスプは俺達を、誰も使わないアーティファクトを格納している、クランの倉庫に呼びつけた。
面子は、ウサギさん状態の俺、プチ機体に乗り移ったヒビキ、レズツムリ、メレーナである。
おう、全員目立たない姿で集まったぞ。……で、本当に見るんだな?
俺はゼスプに確認をとる。
「……ああ」
タヌキさんは若干震えながらそう答えた。……頑張れゼスプ。きっとお前の思い過ごしだ、俺もそう思いたい。
「……あのさぁ、なんで呼ばれたのかわからないんだけどねぇ? 私にもわかるように説明してくれないかい?」
「実は……ボクもなんで呼ばれたのかわからないんです。このメンバーからして……誰かの暗殺か何かですか?」
いや、ヒビキ。こんなにプリティーな見た目の奴等が集まって、暗殺計画をたてるわけないだろ?
その危険思考もうちょい、どうにかなんないの?
「プリティ……? 私、カタツムリだけどいいの……?」
レズツムリが期待の眼差しで俺を見つめる。……デフォルメされているとは言え、カタツムリだしな、コイツ……。
あー、ケルティはあれだ。キモ可愛いに分類されるな。好きなやつには堪らないタイプだ。
「……嬉しくないんだけど」
まぁドンマイだ。
……話を戻そう。今回お前達を召集したのは、見てほしいものがあるからだ。この面子なら、冷静に最後まで付き合ってくれると判断した。後、体を小さくできて、目立たないからってのもあるがな。
……それじゃあゼスプ、後は頼む。
「わかった……。みんな、冷静に聞いてくれ。オレもツキトから聞くまでは知らなかったんだが……」
タヌキさんは自分を落ち着かせるように、一度深呼吸をする。
そして少し間を置いて口を開き……。
「ドラゴムが……ドラゴムがAVに出演していたかもしれない……!」
涙を流しながら衝撃の一言を言いはなった。
「はいはい、AVね。はい、かいさーん」
だが、メレーナは呆れた顔で解散を宣言した。ゼスプの心境なんてどうでもいいらしい。
「メレーナ!? 違うんだ、話を聞くだけ聞いてくれよ!」
……うん、メレーナの気持ちはわかる。しかし、この動画タイトルを見てもそう言えるかな?
俺はウィンドウを操作して、目の前に某動画サイトを表示させた。そこには、とある動画が映っている。
題名は……。
『昼下がりのもふ雌ドラゴン~熟れた身体と魅惑の毛皮が濡れる時……~』
で、ある。……である。
動画のサムネイルには、邪気のない笑顔のドラゴムさんが映っている。
「あ~、これはAVだね、間違いない」
弟のAV判定いただきましたー。……さぁ、どう思う、メレーナさんよ? これを見た上でのアンタの意見を教えてくれ。
「えぇ……なんだいこれ? 完全に企画物のニッチな奴じゃないか……。中身は見たのかい?」
いや、俺もタイトルだけ見て中身はまだだな。なんかドラゴムさんが出ている動画があるって聞いて、探しただけだし。
この間、クラン『シリウス』に侵入した際、ドラゴムさんの動画の情報を得た。
気になった俺は動画サイトを検索し、この動画を見つけたのである。
で、俺もドラゴムさんの事だから、後はゼスプに全部任せようと思ったんだけどさ……。
「オレ一人でこれ見るのはムリ! もし本当にドラゴムがおかしな事をさせられてたら、オレは死ぬ!」
……と、こんな感じでな。
おかしな事をしないか見張っておく人員が必要なんだ。
「なるほど……でも、なんでみんなプリティモードなの? 別に普通の姿でもよかったんじゃない? こんなにコソコソしなくても……」
ケルティ……、お前にはわからないかも知れないがな、これについては作法って奴だ。
この世の何処にも堂々とAVを見る奴なんて存在しない。まして複数人で見るなら尚更な。こういうのはこっそり見るものなんだ。
「いや、複数人でAV見る状況ってなにさ? 二人でならわかるけど、数人で見るってまずないでしょ……」
メレーナが怪訝そうな顔をした。……え? 中学の時とか友達で集まって見なかった?
「いや……女子にそんな文化があるわけないだろ……。私をなんだと思っているのかねぇ……」
俺は衝撃を受けた。
メレーナも中身は女の人かなと思った事もあったが、この性格で女はないだろと、たかをくくっていたのだが……。
お、お前……女だったのか!?
「女だよ! アンタはなんだと思っていたんだい!? 失礼しちゃうよ!」
メレーナに蹴られた。モツ抜きじゃないだけマシである。
「それで……全員見るって事で良いのかな? みんながいてくれたらオレは凄く心強いんだけど……」
ゼスプは慎重にそう聞いた。
「ボクは見ますよ。というか見せてください」
「ドラゴムさんの痴態……ちょっと見たいかも……」
「えぇ……アンタら正気? ま、どうせアニマルな方だろうから、私も見ていくけどさぁ……」
全員が確認するということを聞いて、ゼスプは安心したようにため息をついた。
「みんな、ありがとう……。それじゃあツキト、再生してくれ」
わかった。……ポチッとな。
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再生ボタンを押すと、動画が始まった。
最初のオープニングは、音楽と共にドラゴムさんの様々な角度からのショットが、映像として流れている。
そして、それが終わると処刑室にいるドラゴムさんが映し出された。
『え……とぉ、こんにちわ、でいいのかしら?』
ドラゴムさんがはにかみながら、画面越しに挨拶をしてくる。
『ああ、大丈夫だ。ここからは貴女に対して質問をしたり、毛繕いするのを動画に撮ったりするが……いいだろうか?』
……このインタビュアー、ミラアじゃねぇか!? なにしてんの、アイツ!?
『まぁ……それくらいなら……』
『ありがとう。ところで、私が言った通り、ゼスプには何も話さないで来てくれたかな?』
インタビュアーの質問に、ドラゴムさんは視線を外しながらコクりと頷いた。……ゼスプ! 頑張れ! まだ何も起きていないぞ!
『グッドだ……。それではインタビューを始めよう。身長と体重、年齢を教えてほしい』
『身長は……2メートル60センチ、歳は27歳よ。体重は……秘密ってことにしてくれると嬉しいかしら?』
結構大きいんだな……。
『それじゃあ……こういうビデオを撮られるのは初めて?』
『そうねぇ。こんな風にビデオで撮られるなんて、してもらった事がないわね』
『なるほど、初体験と……。それじゃあ早速、毛繕いをする様子を見せてほしい』
おっ? 見所じゃない? ほらゼスプ、見ろよ。ドラゴムさんのセルフもふもふだぞ?
「そ、そんな……オレしか知らないドラゴムの姿が……」
個人的にはショックだったようだ。良い顔をしている。
『いいわよー。……んしょ……ん……んん……しょ、ん、ん……』
ドラゴムさんは爪や舌を使って器用に毛繕いをしていく。すると、徐々に毛並みが綺麗になっていった。
「おぉ……こうしてみると、結構愛らしいよねぇ。私も触りたい……」
メレーナが何処と無く目をキラキラさせている。……メレーナはウサギ好きだと思ったが、コイツももふリストであったか。
『それだけでも綺麗になるのだな。……ところで、背中の方は届いていないようだけど、いつもはどうやって?』
『いつもはね、ゼスプにやってもらってるの。だから、今日は手の届くところまでね』
『なるほど……。実は、そんな事もあろうかと、今日はマッサージのプロの方を用意しているのだが……場所を変えてもいいだろうか? 勿論、全身を処置してもらう事になるが……』
『まぁ、マッサージ? いいのかしら……一応報酬もあるのよね? これ? なんか悪いわぁ……』
『ふふっ……、承認したということでいいかな? それでは移動しよう……』
パッと、風景が変わった。
和式の部屋のようで、ドラゴムさんは布団の上に座っている。……あれ? ここは……。
「温泉旅館だね。……あ、竿役が来ましたよ、ゼスプさん」
「 」
ヒビキの言葉にゼスプが固まった。
『どうも、マッサージ屋です。今日はよろしくお願いします』
マッサージ屋と名乗っていたのは、元『追い詰めカメラ』のゴブリン君だった。……ファンタジー界の竿役じゃねーか! ガチじゃん!
「あわわわわ……ゴブリンだって? このままじゃ……ドラゴムが……ドラゴムがぁ……」
まさかのゴブリン君登場に、タヌキさんは動揺を隠せない。
『まぁ、ゴブリンさん……かしら? 今日はよろしくね?』
ドラゴムさんは俺達の心配をよそに、ゴブリン君にペコリと頭を下げた。
『今日は沢山気持ちよくさせてもらいますので……。早速横になってもらっても、いいですかね?』
その言葉に逆らうこと無く、ドラゴムさんは布団の上に横になった。
それを確認すると、ゴブリン君……いや、ゴブリンさんはニヤリと笑い、複数体に分裂する。『プレゼント』の効果だろう。
「へぇ……複数人でドラゴムさんを攻める気なんだ。結構激しい感じかな?」
レズツムリのテンションが上がっている。逆に、タヌキさんは死にそうになっていた。
『能力を使って、全身を気持ちよくさせてもらいます……。身体の力を抜いて……そう……いいですよ……』
『はぁ~……ん、んみ……、あぅっ……! そこ……いいっ……ああっ……ん』
ゴブリンさん達は、腕や足、尻尾や羽の付け根等、全身を丁寧に揉みほぐしていく。同時進行でブラッシングもしているようだ。
ドラゴムさんの目には涙がたまり、艶っぽく見える。
『奥さん……こんなにもふもふしちゃって……毎日大変でしょう? 今日は一段と綺麗にしてあげますから……』
『は、はぃいい……。ああ、そこ……そこがいいですぅ……。もっと、もっと深く押してもらっても……いい……かしらぁ……?』
ドラゴムさんの呼び方が奥さんに変わった。その気持ちはわからないでもない。
『ちゃんと場所を言ってくれないと困りますよ? ほら……ここですか? 肩のところ、こんなにコリコリしてますよ?』
『あう……ぅぁん……。そ、そこも良いのだけれど……羽の付け根と……尻尾の付け根を強く……強くして、ほしいわぁ……ん』
そう言うと、ドラゴムさんは尻尾と羽をフリフリと振って、ゴブリンさんにアピールする。
その様子に、ゴブリンさんは満足そうな顔をしていた。
『くくっ……正直な方です……ねっ!』
『……ひゅん!!!?? ひゃ、あ!? ふぁあああああああああああああん……!!』
ゴブリンさんがぐぐっと、親指でツボを押し込むと、ドラゴムさんは甘い声を出してしまうのだった。
その様子を、俺達は見ていることしかできない。
「う、うう……。ドラゴムがあんなに気持ち良さそうにマッサージされてる……。そう言えば、凄いスッキリしていた日があった……。そうか……あの日にこれを……」
ポロポロと、悔しそうにタヌキさんの目から涙が流れていた。……絶えろ、ゼスプ。頑張れ、ゼスプ。
まだ動画は残っているぞ……?
その後、数分の施術が終わり、温泉に入るドラゴムさんが映されている。
蕩けた表情をして、温泉にその身を浮かばせていた。
『濡れちゃうと、身体の体型がハッキリしちゃうから恥ずかしいのよね……。それに、なんで私、水着を履いているのかしら? 逆に恥ずかしいわ……』
そう言えば、温泉に入ると水着を強制で着させられるんだった。
今のドラゴムさんは毛皮の上から水着を着ている状態である。大きなお尻がかわいい。
『けれど、温泉も気持ちいいわぁ……。でも、本当によかったのかしら? 私なにもしていないのだけれど……』
『大丈夫、いい動画が撮れた。……あと、まだ終わっていないぞ? 温泉から上がったらまた、マッサージを受けてもらう』
お、まだドラゴムさんの見所あるらしいよ?
また気持ちいい事をさせられるらしいが……、その辺どう思います? タヌキさん?
「ドラゴム……! やめろ……、やめてくれ……、これ以上オレ以外にもふられるのは……それだけは……!」
ゼスプは泣きながら、ウィンドウを食い入るように見ている。
『……え、また!?』
ドラゴムさんは驚いたような顔をした。
それを見たゼスプは両手を上げて喜んだ。愛の勝利とか言っている。
……が。
『本当にいいのかしら? 嬉しいわぁ!』
お。
ゼスプ、どうやらドラゴムさん、堕ちちゃったみたいだぞ? 見ろよ、哀願動物の顔してるぜ?
「そ……そんな……う、嘘……嘘だ……うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
狭い倉庫に、ゼスプの魂の叫びが響きわたるのだった……。
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動画の残りはゴブリンさんによるマッサージ動画だった。
身体中をマッサージされたドラゴムさんは終始気持ち良さそうで、最後の方は熟睡していた。
最後はドラゴムさんの寝顔で動画は終わり、俺はウィンドウを閉じる。
当然の如く、エッチな事をされている様子は全くなかった。……いやぁ、いいアニマルビデオでしたね。
「大型の動物が気持ち良さそうにしているのは可愛いもんだねぇ……。癒されたよぉ……」
「ふぅ……。お疲れ様でした。楽しかったです」
「……うん……よかったね」
「あのマッサージ……今度はオレがドラゴムにしてあげるんだ……絶対気持ち良くさせてやる……!」
俺達は動画に満足して、倉庫を出ようとする。それぞれ思うことがあるようだったが、みんな満足しているようだ。
……また見ようね!
俺達は静かに頷き、お互いの友情を確認したのだった。
なお、動画をみんなで鑑賞したことがドラゴムさんにバレてしまい、数日後に感想を求められた。
邪な事を少なからず考えていた俺達は、逃げることもできず、罪悪感に負けて自ら命を絶ったのだった……。
・えぇ……、何なのコイツら……。全員揃ってアホなの……?




