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フェルシー「ニャッハー! 今日も稼いでやるのニャ! ……ニャン? なんか、嫌な予感g」

 アークが魔術師でよかった……。


 俺はチップに美味しくいただかれたあと、アークの魔法によって復活した。


「ふぁあ……目の前パチパチ~……ぐるぐる~……あ、ツキトだ~。ごちそうさま~」


 そして、俺を食べてしまったチップは、くらくらとしてトリップしている様に見える。……なんで飯食ってないんだよ。


「むしろ、チップちゃんのお腹を満たすためにツキトが呼ばれたんじゃない? 普段はパンとかで我慢しているらしいし」


 ケルティ……俺は趣向品とかそういう類いの物じゃないから、生物だから、我慢するものじゃないから。


 まぁ、他の奴を食べるのを我慢したのは評価しよう。けれど、俺を見て食欲を増加させるのはどうかと思うんだよなぁ……。


 俺はじゃれついてくるチップを撫でながら、悲しみに包まれるのだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 正気に戻ったチップから、俺達は今回の作戦について説明を受けた。


 襲撃するのは先程俺達を拘束しようとしたクランの拠点。ザガードの中でもそれなりに大きなクランらしく、配置された兵器の数も多いそうな。


 そこで俺達の任務は、斥候班の陽動の元クラン内部に侵入し、格納庫にあるという戦車や戦闘機等の兵器を破壊するというものだ。


「シーデーが作ってくれた爆弾を取り付けて来るだけの簡単な仕事……って言いたいんだが、そうでもない。PLは死んでも復活する。アタシ達が注意を引き付けても見張りが動かない可能性がある」


 つまり、そういう奴等がいた場合、俺達が暗殺して任務を達成して来い、って話らしい。もちろん、死んだPLは直ぐに復活してしまうので、陽動に引っ掛かってくれるのが一番だが。……というか、シーデーは工作活動ならなんでもできるな。まじで有能だわ。


 そして、爆弾を取り付けた後はチップの能力によって俺達は待避。地下に作った通路から撤退するそうだ。


「アタシの能力を使うから決行は朝になる。けれども、お前らならなんとかなるだろ。もし死んだらそこまでって事でよろしく」


 了解……ちなみに、そっちの斥候班は何人位で行動するんだ?


「私の他には数名だ、そんなに多くない。でも、結構派手にやって待避する予定だから、心配はしなくていい。それにシーデーが先に行ってトラップ設置してるから、安心だし」


 成る程……便利だよなぁ……。


「流石やねぇ……」


「男の娘じゃなきゃなぁ……」


 各人、思うところはあるようだが……話を戻そう。


 作戦を段階を踏んで説明すると、シーデーのトラップ発動を合図に、斥候班の陽動攻撃が開始。現れた敵クランメンバーを撃破する。


 その内に、俺達がチップの能力でクラン内部に潜入した後、手早く爆弾を設置してチップに報告。


 俺達が脱出し、充分な距離を取ったのならば、シーデーにより仕掛けた爆弾を点火。兵器をまとめて吹き飛ばすという内容だ。


 問題は陽動に乗ってくれるのか。陽動部隊が戦闘を継続することができるのか。……つまるところ、相手の実力が不明なことが一番の懸念事項である。


 そうなった場合、俺達がゴリ押す事になるそうだ。

 なんか、作戦として破綻している気がしないでも無いけれど、まぁなんとかなるだろうという事で落ち着いた。


 けれども、チップの調査では飛び抜けて強いPLはいないということらしい。もしかしたら、確認できていないだけで本命を隠しているかも知れないということだったが、確認できていない物はしょうがない。


 見つかったときには、殺すだけである。


 それと、今回の任務はテストも兼ねているらしい。これが成功した場合、俺達は戦争が始まるまで、同じような破壊工作が主な任務となる、ということも説明された。


 どうやら、ドラゴムさんの国外追放という話しは脅しのようなもので、俺達を呼びに回っていたら風紀を乱すような事をしていたので、ちょっとした制裁のつもりだったらしい。


 その証拠に、ドラゴムさんから『みーちゃんには誤解だって、説得してあげるから、ちゃんと謝りにいってあげるように』とチャットが飛んできた。……ありがてぇ。


 同じようなチャットがケルティやアークにも来ていたそうなので、任務が終わったのならクランに帰ってもよさそうだ。


 そういうことならば、と全員がこの作戦に納得。俺達は敵クランの本部の近くまでやって来たのだった。




「あ! ツッキーさんにアーくん! ケルティも! 今日はよろしくね!」


 集合地点の雑木林に移動すると、その中に待機している斥候班の面子と、地面に空いた穴から顔を出しているシーデーがいた。

シーデーの手には何故かドリルが握られている。……え、そのドリルどうしたの? 俺も欲しいんだけど?


「これ? 実は今回の任務で穴を掘っていたら『プレゼント』を開封できたんだ! 形が変わって陣地構築に特化したみたい!」


 更に強化されたらしい。

 にしても、ドライバーからドリルに進化するとは……。壊して作るって奴なんですかね?


「シーデー、今から十分後、予定道りに作戦を開始したい……準備は?」


 チップが屈んでそう質問すると、シーデーは穴の中からコードが繋がっている、棒状のような物を取り出した。


「終わってるよ……はい、これ起爆装置ね。頭の部分をペットボトルの蓋を開けるように捻ってあげれば、設置した爆弾が一斉に爆発するよ。後はチップのタイミングで爆発させてね!」


 チップはその装置を受け取った。


 俺は雑木林の中から今回の目標を確認する。バインセイジの街に併設するように建てられたクランは、厳重な警備がしかれており、2階建ての横に広い建物だ。


 チップの調べでは、1階の格納庫に兵器が並べられているらしい。


「よし……、全員準備はいいな? 爆発と共に飛び出して、私達が仕掛ける。その3分後にツキト達をクラン内部に潜入させる」


 わかった。

 俺達はここで待機している。……ケルティも動ける様にしておけよ?


「はいはーい。……よっと」


 ケルティは能力を発動し、身体を変化させる。銀色の手乗り人形の様な姿になった。背中には翼がついたカタツムリの殻を背負っている。


 「それじゃ、ツキトはん。肩に乗せてもらいまっせ……」


 そう言って、アークがするりと俺の肩に上がった。これでいつでもアークの能力を使う事ができる。


 これで俺達の準備も整った。


 その様子を見て、チップは起爆装置に手をかける。


「……よし、やるぞ。……3、2、1、0!」


 短いカウントダウンの後、カチリという音と共に起爆装置が起動した。


 起動のあと少し間を置いて、轟音が聞こえた。同時に、雑木林が無くなるのではないかと思うほどの強風が吹き荒ぶ。


 相変わらずの威力に驚きつつも、俺は敵のクランに目を向けた。……おい、建物の半分が消滅しているんだけど!?


「し、試運転だったから、どのくらい強いか知らなかったんだよ! どうしよう、バインセイジも少し無くなっちゃた!」


 予想外の火力だったようで、仕掛けた本人も目を白黒させている。……なんかフェルシーのカジノの辺りまで爆風いってるな、大丈夫か、アイツ?


 シーデーが慌てている内に、チップは迷うことなく雑木林を飛び出した。それに斥候班が続いていく。


 そして、爆発した部分を確認しに来たPL達を、射撃により仕留めていった。


「『魔女への鉄槌』だぁ! 全員手を上げて投降しろ! じゃないと皆殺しだぁ!」


 そう言いながら突撃していった。


 不意に現れたテロリストに驚きを隠せないようで、敵はパニックになっていることがわかる。


 しかし、数名は冷静に行動しているようです、抵抗しようと斥候班達に銃を向けている姿が見えた。


 どうやら、敵を引き付ける事はできているらしい。


「そ、そうだ! ツッキーさん、これ渡しとくね! 結構量があるからアイテムボックスに入れておくといいよ!」


 シーデーの方に目を向けると、俺の足元に大量のプチヒビキを並べていた。……予想はつくんだけどさ……ナニコレ?


「爆弾だよ! 取り付けたい所に近づければ、勝手に張り付いてくれる高性能だよ! あ、アイテム状態になっているから、意識は無いはず!」


 シーデーはちょっとドヤ顔で親指を立てた。……お、おう。


 兄として、弟の形をした爆弾を使うのはどうかと思うのだが……、まぁいいか。ヒビキだし。


 俺とケルティはプチちゃん達を半分づつアイテムボックスにしまった。


 全てのプチちゃんを格納し終わると、ケルティが声をあげる。


「ツキト! チップちゃんからチャットが来たよ!」


 俺はチップに目を向ける。


 相手側の銃弾を避けながら斥候班達は陽動を続けている。防護壁に隠れながら攻撃をしているようだ。


 そして、ウィンドウを操作しているチップと目があった。


 俺は静かに頷く。


 それを確認したのか、チップはニヤリと笑い返した。


 その瞬間に、目の前の景色が雑木林から、裸電球が吊るされた狭い廊下に変わる。辺りに人影はいない。


 どうやら、無事に侵入できたようだ。


 同時に、マップデータがチップから送られてくる。


 それを確認すると、格納庫までは距離が少しあるらしい。


「ツキトはん、能力を発動させたで。能力がきれそうな時には教えるさかい、ガンガンいこうや」


 了解だ。……ケルティは?


「私は別ルートで行くよ。小さいからできることもあるし。じゃ、またね!」


 そう言って、ケルティは通気孔らしき穴に入って行ってしまった。


 よし、なら俺達も行こうか……。


 俺は拳銃をとりだし、銃弾を装填する。



 遠くから聞こえる銃撃戦の音を気にしながら、俺は格納庫へと急ぐのだった。



・今日のフェルシー


「ニャー!? またか!? またなのかニャ!? またカジノが吹き飛ばされたのニャ! ああ……ミャアのお金がぁ……。……え? テロに乗じて反乱が起きた? 今日は街の住人も一緒? …………かかってくるのニャアアアアアアアア!!」


 今日もフェルシーとニャック達の戦いが始まる……。

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