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戦争、決着せず

※ショッキングな発言、シーンがあります。ご注意ください。

「く、来るなぁ! 近づかないでくれ! オマエみたいな変態に関わりたく無いんだよぉ!」


「何故? ボクは貴女に産んでもらいたいだけですよ? ちょっとお腹を貸していただければいいだけですので! ……産めぇ!」


 我が愚弟、メイド服を着たドールのヒビキが、見た目ロリなPLを追いかけ回している。

 その様子と発言は最早言い逃れ出来ないレベルにまで達しており、兄としてどう接してあげれば良いのか、わからなくなってしまった。


 完全に犯罪者だぞ……弟よ……。


「……っよし! 拘束の効果がきれた! 今、回復してあげるからね! 『ブレッシング・ヒール』!」


 肩の上にいる先輩が俺に回復魔法をかけてくれた。ヒビキが飛び出してきたきた俺の腹は直視できない程ぐちゃぐちゃになっている。


 というか、ゲームの仕様でHPにはそんなに影響無いけれど、精神的なダメージがデカイ。

 やるなら最初に言ってくれよ……。


 先輩の魔法のお陰で徐々に腹の傷も塞がっていく。

 一時はどうなるかと思ったが死ぬことは無さそうだ……。


「……ツキトはん、ツキトはん」


 !?

 なにもない空間から名前を呼ばれ、慌てて振り替える。

 するとぼんやりと狐の姿が浮かび上がってきていた。


 アーク!

 生きてたのか!


「ヒビキはんのおかげでな。……ヒビキはんも生きてたんやな。すまん、ワテ一匹で逃げ出してしもうた……」


 そう言うとアークはしゅんと耳を畳んで落ち込んでしまった。


「生きていただけマシだよ、ヒビキくんもついさっき戦線に復帰したばかりだしね」


 そうそう、信じられないかもしれないけど、アイツ俺の腹を突き破って出てきたんだぜ……。


「うわぁ……またやったん? てか、ヒビキはんめっちゃ動きよくなってへん……?」


 俺は戦っているヒビキとワカバに目を向けた。

 速さ的にはワカバの方が速いのだろうが、ヒビキは動きを予想して退路を潰す様に動いている。

 そのなかで、ワカバの攻撃を見切り、四肢の自由を奪おうと、ヒビキは攻撃を繰り出していた。


「なんでおれの動きがわかるんだよ!?」


「見ればわかります。スキルレベルをあげればわかるようになりますよ? ……つかまえた」


 僅かな隙が生まれたことを見逃さず、ヒビキが潰れていない左腕を掴み━━━━、握りつぶした。


「つっう~! またやりやがった! てめえ……」


「後は足を潰せばボクの好きにしていいんですよね……産んでもらいます……」


 ヒビキの発言にワカバの顔が真っ青に染まる。アイツ……、どこまでSAN値を削れば満足するんだ……。


 もしも自分が同じ事を言われたらと思うと寒気が走った。


 どうやら、ヒビキの『パラサイト・アリス』はPLの体内において、本体と同じ規格まで大きくするとステータスが向上する能力があったらしい。


 『プレゼント』の真の性能を引き出す……、つまり、この状況でヒビキはプレゼントを『開封』したことになる。


 パスファ様が言っていた、一般のPLよりも先の次元にいるという『開封者』。ヒビキはそこに到達したようだ。


 ほんっと、変態というのは俺の想像を簡単に越えてくる。そんな方法で兄貴を越える弟がいてたまるか。


 俺はリリア様を地面に寝かせ、立ち上がった。


「ちょ!? ツキトくん?」


 先輩、流石にこれ以上は自由にさせると不味いので、ちょっと参戦して来ましょう。

 絵的にまずい事になりますよ……? 中身はどうあれ、ワカバの外見は幼女ですし……。


「つまり……ヒビキくんがおかしな事をする前にワカバを殺すって事でいいかな?」


 そういう事です。


「よっしゃ! じゃあワテはリリア様を見ているさかい、頑張ってや!」


 おう、頼んだ。


 アークを残し、俺は戦っている二人に向かって駆け出した。

 ヒビキへの恐怖からかワカバの動きは更に速くなっており、ヒビキの魔の手から逃れそうになっている。


 俺は大鎌を手にし、ワカバの目の前に立ち塞がった。逃がす気など更々無い。


 よう……、首刈りにきたぜぇ……。


「でたぁ!?」


 もちろん、笑顔も忘れていない。


 俺が逃走経路を潰すと、一瞬動きが止まった。それを逃さないかのように、ヒビキが高速でワカバに接近する。


「やっと、覚悟が決まったんですね!?」


「変態も来たぁ!?」


 ヒビキめ……良い目をしておる……変態の目だ。


「今だね! 『ライトニング・アロー』!」


 バチバチとういう音を立てて、先輩の魔法が発動した。電気の矢が光の軌跡を描きながらワカバに飛んで行く。


「っがぁ!? し、しびれぇ……」


 電撃属性には相手の動きを止める効果がある。

 その隙を逃さずに、俺は大鎌を振るった。

 

 大鎌の切っ先で袈裟懸けに切り裂く。

 あばらをへし折りながら大鎌を振り抜くと、鮮血が傷口から吹き出した。


「ぐっ……! やりやがったな! ゆるさ……!?」


 ワカバの顔に焦りが走る。

 気が付くと、ヒビキがワカバの後ろにぴったりと張り付いていた。


「産んでもらいます……」


 そう言うと、ヒビキは後ろから抱きつくように腕を身体の正面に回し、傷口に右手を突っ込んだ。


「ぐぅっがぁ……! は、離れろぉーーーー! というか産まねぇぞ!」


 ワカバは全力で身体を動かし、ヒビキを振り払った。急に抱きつかれた恐怖からか、肩で呼吸をしており、異常に疲れが溜まっているようだ。


 ヒビキは距離をとるようにして、俺の隣に……。



 ……あれ?



 ヒビキ。


 お前、右手どうした?


 ヒビキの右手は無くなっていた。先程の抵抗により取れてしまったという訳ではないだろう。


 ……まさか。


 俺は悪い予感がして、顔が自然にひきつるのを感じた。


「うん、あそこに置いてきた」


 ヒビキは目の前のワカバを指差す。


「え……」


 ワカバの顔が絶望に染まる。

 逆にヒビキの顔はとてもとても楽しそうで……。


「発動『パラサイト・アリス』」


 無慈悲に『プレゼント』を発動させた。

 ワカバが小さい悲鳴を漏らして、その場にうずくまる。


 コイツ、腹の中に自分の手を切り離して置いてきたのか!?


「嘘だろ……? そんな嫌だ……、嫌だ……!? ああ! な、何か腹の中で動いている……? い、嫌……そんな……いやぁ……」


「ダメです。……認知して? おかーあさん?」


 ヒビキがにっこりと微笑んだ。無駄に慈愛に満ちた顔をしている。誰だよ、こんなになるまで放っておいたのは!? ……俺だわ、すまん。


「いやぁぁぁ! ……!? うあっ……うあっ……あああああああああああああああああああああ!!!!???」


 ワカバの絶叫と共に、腹を切り開いて10体ほどのぷちヒビキが飛び出してきた。……え、ぷちちゃんの製造方法そうやってんの? パーツを寄生させている感じなの?


「子沢山ですね。大事に使わせていただきます……おいでー」


 ぷちちゃん達は一斉にヒビキに近づくと、スカートの中にへと入っていった。

 ……そこ格納庫なんだ。


「そうだよ? ちっちゃいのは壊れやすいから、補充できて良かった」


 そういえば、いつの間にか肩のぷちちゃんも居なくなってたな、格納したのか。

 もう何が何やら、頭の理解が……。


 って、変態の事ばかり気にしてられねーよ。

 ワカバは……。


「あー……あぁー……あっ……あっ……あー……」


 …………可愛そうに。

 目が完全に死んでいる。

 未だに腹部から血が溢れだしているが、リリア様から奪ったステータスのせいで、中々死ぬことが出来ないのだろう。


 両ひざを地面につき、死人の顔をして虚空を見つめている。

 目からは涙が溢れだし、頬を濡らしていた。


「……し……て」


 掠れるような声で何かを呟いている。


「ろ……して……こ……ろし……て……しな……せて……」


 殺してほしいと懇願してきた。


 どうして、こうなってしまったのか……。最初に顔をみたときには、こんな展開になるとは夢にも思わなかった。


 おう、大体お前のせいだぞ、ヒビキ。


「ロリからも生まれてみたかった。すまん」


 決め顔をするな。

 まぁいい、説教はあとでしよう。


 ……よう、ワカバ。

 聞こえているかわからないから、一方的に話すがな……。


 俺は未来永劫、お前を許す気は無い。


 最初にお前らのクランが初心者の誘導をしてるって聞いたときはよ、立派なやつがいるもんだと思ったが……。

 蓋を開ければただのロリコン集団だった訳だ。

 しかも、悪意をもって活動していたなんてなぁ……。


 メレーナの件もだ。

 俺だけじゃなくクラン全体に迷惑をかけやがって、後始末にどんだけ苦労したと思う?

 しかも、スパイを送り込んでたそうじゃねーか?


 ここまでしておいて、まさか時間が解決するとは思って無いよなぁ?


 後、これは個人的な話だが……。

 貴様らロリコンにはかなり煮え湯を飲まされた。……その性癖は矯正しなければならない。


 まずお前からだ、ワカバ。


 次会うときまでには、その容姿を変えろ。


 もしも変えていなかったら……何度でも、俺達が殺しにいこう。


 俺は大鎌を全力で振り抜き、力任せにワカバの首を切り飛ばした。

 頭が地面に落ちると、身体も一緒に弾けとぶ。流石に首を落とされて生きている事はできなかったらしい。


 ……終わった。

 『紳士隊』も、もうお仕舞いだろう。


 俺達の勝利だ。


 後は、こっちにクランメンバーを何人か呼んで事後処理を……。


「ツキトくん、なんか終わっている雰囲気出してるけど、何か勘違いしていない?」


 先輩が俺の顔を覗き込んできた。


「言ったはずだよ? 虐殺だって。まだライブ会場には残党が残っているはずだ。さぁ……楽しんでいこう!」


 俺はため息をついた。

 本当、ぶれないな……この猫。


 ヒビキ。

 お前はアークと残ってろ、ちょっと先輩と一緒に残業してくるわ。

 ……リリア様には手を出すなよ?


「なにいってるのさ、もちろんじゃないか。……SSはいい?」


 好きにしろ。


 ……さて先輩。

 何か、作戦は?


「ん~、そうだね。……派手にいこうか!」


 了解!


 俺はビギニスートへ向かって駆け出した。

 いつの間にか日は落ち、夜のとばりが下り始める。


 俺達が殺し尽くすまで、戦争は、終わらない。

・終了まで待機中……。

       ~by 喜ぶ女神様~

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