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『パラサイト・アリス』~遊びに行く少女人形~後編

・今回も引き続きヒビキ主観となります。ご注意ください。

~PL ヒビキ~


 ミラアさんによって『シリウス』が戦う戦場に投げ出されたボクが見たものは、荒野に動き回る骨の化け物達だった。


 それが戦車を破壊し、PL達にかぶり付き、数をもって戦場を蹂躙して行く。


 最終兵器だという『アーマーズ』でさえ、破壊されバラバラにされてしまっている。


 そんな中、1機のバケツロボだけが縦横無尽に暴れまわり、戦っていた。しかし装甲は所々剥げ落ちており、左アームは壊れてしまっている。

 脚部にもガタが来ているようで、後部のジェットを噴射させ、無理矢理機体を動かし、地面を這い回るように戦っているようだ。


 このままでは、壊されるよりも自滅する方が早いのでは無いかと思う位だった。


『ははははははは!! 私がこの程度で諦めるとおもったか? ……甘いな! 一体でも多くあの世に送り返してやる……! かかってこ……!?』


 戦場に影がおちた。


 別に不穏な感じになったとか、そういう訳じゃなく。

 こう、普通に、というか、物理的に。


 いきなり暗くなったことで気が動転したのだろうか? バケツロボが振り返り空を━━ボクを見上げてきた。


 ……どうも、こんにちわ。


『ぎゃああああああああああ!!? 『ドールズ・メイド』ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!? デカイぃぃぃぃぃぃぃ!!』


 今の身体は身長50メートル程の巨人型だ。初めて見た人は大抵驚いてくれるので、結構お気に入りの機体である。


 ボクは地面に群がっている骸骨達に腕を振って、粉々に弾き飛ばした。この大きさなら、動くだけで面白い位に敵が死んでいくので、かなり爽快だ。ボウリングのピンのように骨が飛んでいく。


 周囲の敵を排除した後、ボクのスカートからクランメンバーを投下する。そして、それぞれが戦闘に参加していった。


『……! 『ペットショップ』と『魔女への鉄槌』……? まさか援軍に来てくれたと言うのか!?』


 意識を本体に切り替え、ボクの本体も戦場に降り立った。目の前には動きを止めたバケツがある。……えーと、『シリウス』の人ですか?


『そ、そうだ。だが何故君達が……? ザガードの邪神はどうなった!? ここは私に任せて……』


 いや、できてねーじゃないですか。


 ボクは目の前のバケツをガンガンと殴り付けた。もうガタが来ていたらしく、装甲が弾け飛ぶ。


 こんなんじゃ戦えないでしょ。……ボクが指揮をとります。アナタもできる限り、戦闘に参加してください。


『わ、わかった! ……うおぉ! 戦闘モードぉ!』


 バケツの中からバケツスーツを装着したサイボーグが飛び出してきた。……あ、アナタでしたか。子供達は元気にやっていますよ?


「やめて!? ……って、そんなことはいい。現状を説明しよう」


 クランメンバーが骸骨と戦っている間、何が起きたのかを、キーレスさんから教えてもらった。


 ザガードの邪神が現れた時と同じように、ウィンドウが現れて、アミレイド王が演説を始めたらしい。

 そのなかで、王はこの世界をこの世界を支配することを宣言。


 冥府より亡者達を呼び寄せ、蹂躙を始めた。


 倒せども倒せども沸いて出てくるスケルトン達に消耗戦を余儀無くされてしまい、ザガードのクランは弾薬を切らしてしまい、次々と打ち倒されてしまった。


 『アーマーズ』は近接攻撃ができたので、戦うことはできた。しかし、敵の機動力と破壊力を重視した量産機は、あの数のスケルトンに耐えることはできなかったそうだ。


 しかしながら、防御重視のキーレスさんの機体は生き残る事ができ、あのような無茶な戦いをしていたらしい。


「君達が来てくれて助かった。……あそこを見てほしい。あの王城の門の前に立っている者がこの国の邪神、嫉妬の《アミレイド》だ」


 そう言われて、ボクはスケルトンの合間から見える、王冠を被り、杖を手にもった人物に目を向けた。


 どうやら、彼が現在進行形でスケルトンを呼び出しているらしく、地面に空いた穴から続々と新しい敵が現れている。


 なるほど、大元を叩かないと、無駄に戦わなくてはいけない訳だ。……よし。


 ボクは再び巨人型に意識を移す。


 ここから見れば戦場が一望できた。……身体を登ってくる骸骨どもがウザったらしいが。


 けれども、そんな奴等はワカバさんの能力によってからめとられ、同士討ちを始める。

 メレーナさんは雑兵に指示を出して、無駄な被害を出さないよう戦場を飛び回っていた。


 シバルさんは傷付いたメンバーの回復に、シーデーさんとアークさんは陣地の確保のためにトラップや障害を設置している。


 一度は死んで戻ってきたクランメンバー達も大暴れしていた。

 しかしながら、みんな周囲の敵を倒しているだけで、攻める方向がバラバラである。


 だからボクは叫けび、腕を持ち上げて《アミレイド》を指差した。


 よく聞け! あの邪神を殺せばボク達の勝ちだ! アイツを殺さなきゃならない!

 道を作るんだ! ボクが指示を出す!


 行くぞ!


 そう言ってボクは戦場に戦闘用の人形達全てを、巨大人形の身体の中から解き放った。


 総勢153体。


 敵のスケルトンの数よりは少ないが、戦力としては充分だろう。


 そう判断し、ボクはまた本体に意識を移した。すると、キーレスさんから声をかけられる。


「『ドールズ・メイド』……君は、どれ程のPLを犠牲にしたんだ? 君の能力は知っているが、この数は……」


 あー、そういえばこの人も苗床になってもらったんだった。ほぼ不意打ちだったけど。

 それならこの数を見て、思うこともあるだろう。顔色が悪い。


 しかし、少し勘違いしているようだ。


 ……そうですね、だいたい10数人位です。

 本当に強いPLはそんなにいませんから。


「ではこの数をどうやって……」


 いえ、簡単な事ですよ。



 ボクが、産みました。



「…………は?」


 だから、ボクが産んだんですよ。

 前のイベントで人間に変身できるようになったんで、自分を苗床にして、100体超の人形を産んだんです。


「ごめん。おじさん、ちょっとなに言ってるのかわからないなぁ……」


 まぁ、少し考えれば早い話だった。


 人間になったときは生身なのだから、自分自身で産むのが一番手間がかからない。


 しかも、ステータスも他のPL生んでもらった時よりも高めだし、途中で死んでもすぐに戻ってきて作業を再開できる。いちいち苗床を追いかけて捕まえる必要も無い。


 こんな簡単な事に最近になってまで気づかなかったとは……ボクもまだまだである。……ふふふ。


 と、その事は置いておきまして……。


 キーレスさん。アナタには邪神に向かってまっすぐ突っ込んで、道を作ってもらいます。……兄貴から聞きましたけど、結構強いんですよね?


「……ああ、かまわない。助けに来てもらったのだ。私に拒否権はないな」


 キーレスさんは楽しそうに笑うと、向かってくる敵に向き直り、左腕のガトリング砲で一気に薙ぎ払った。


 ボクも巨人型に移り、スケルトンを踏み潰していく。


 しかし、行く手に骨が積み上がっていき、進行の邪魔をしてくる。それは同じぐらいの大きさの骸骨となり、襲いかかってきた。


 拳を突き出し吹き飛ばすが、一瞬にして形が元に戻り、殴り返してくる。

 その攻撃にも怯まないで一気に押し潰し、粉々にするが、あっという間に元に戻った。


 どうやら、一筋縄ではいかないようである……。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 その後は、少しずつ、少しずつ邪神との距離を詰めていった。


 ここまででわかったのは……この呼び出されたスケルトン達は、敵によって大きさを変えるということだった。それに伴いステータスも変わっている。


 つまり、大きさで攻めるのは悪手だった。


 それでも、あともう少しで邪神に手が届くところまでは来た。道は出来上がりつつある。


 それを皆がわかっているように、戦いは激しくなっていき、士気が高まる事を感じていた。けれども、その過程で少なくない数のPLが命を落とし、戦場を去って行く……。


 と言っても、速攻で復活してメレーナさんの命令で、ゾンビアタックを繰り返していた。


 スケルトン対ゾンビの構図が出来上がったのである。


 だが、それでも後一押しが足りずに、ボク達の進軍は押し止められていた。少しでも気を抜いたら、押し返されそうである。


「さてヒビキ君、ここからどうしますかな? ……殲滅してきましょうか?」


 背中合わせになり、拳を振るっていたシバルさんがそんな事を言ってきた。


 まさに願ってもない提案であったのだが、シバルさんの殲滅方法はデメリットが大きい。それを使ってしまったら、次の日になるまで、シバルさんはステータスが著しく低下してしまう。


 この戦場に戻ってくることができなくなってしまう。


「いいのです。この戦いに勝利することが……このシバルの喜びなのですから!」


 どうやら、もう覚悟は決まっているらしい。……わかりました。よろしく……お願いします。


 振り向くと、シバルさんはニカっと笑って、骸骨の群れに突っ込んでいった。


「ははははははははは!! 信仰を知らぬ愚かな者共よ! 貴様らに聖母たるリリア様の祝福を与えよう! 喜びにまみれ召されるといい!」


 シバルさんの『プレゼント』。

 それはリリア様の能力を使う事ができる、狂信者の能力。信仰の極致。……全員、下がれぇ! 巻き込まれるぞ!


「お力をお借りします! リリアたまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 光が、放たれた。


 シバルさんを中心に、光の柱が広がっていく。それに触れたものは、一瞬にして消滅していった。


 誰もの記憶に残る、リリース直後の悲劇と呼ばれたあの出来事が頭によぎる。


 そう、これは……。


「『神 殿 崩 壊』! 今、その胸の中に参りますぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 リリア様の最強スキル、『神殿崩壊』だった。


 シバルさんの『神殿崩壊』は威力は変わらないが、範囲が本物よりも狭く、自分自身も巻き込まれてしまう自爆技だ。


 しかし、その活躍により邪神の前に壁のように蠢いていた骸骨達が全て吹き飛んだ。


「!! 総員! この道を死守せよ! 俺達が守りきるのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 途中参戦したチャイム君の叫び声が響いた。


 声に全員が反応し、PL達が2つの壁を作り迫りくる敵を防ぐ。その様子はまさに道の様になっているだろう。



 そんなボク達の後ろを、誰かが走り抜けていった。



「『コラプション・スワンプ』! ……がはぁ!?」


 抑えていた骸骨達が、目の前から一気に消滅する。

 見ると、魔法により出来上がった毒沼に引きずり込まれており、脱出しようともがいていた。


 後方では、見馴れたドラゴンが空中を飛び回り、レーザーブレスで辺り一面を焼き付くして戦場を地獄絵図に変えている。


 ……きっと、ここまでみんなが諦めなかったのは、この人達がきっと来てくれると思っていたからだ。

 必ず邪神を殺して、助けに来てくれると信じていたからだろう。



 その期待に答える様に、アイツの声が聞こえてきた。



「その首寄越せゴラァァァァァァァァァ!!」



 それと同時に鈍い金属音が、戦場を駆け抜ける。


 兄貴達と、嫉妬の《アミレイド》の戦いが、火蓋をきって落とされたのだった。

・ゾンビアタック

 死んでも生き返って戦えば、そのうち勝てるよ! ガンバ!

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