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気持ちいいこと

「ハイ、『パーフェクト・リターン』」


 先輩の自室。


 俺は先輩に粉々にされた後、魔法によって復活した。ようやく、あのがしゃーん生活からも解放されたのだ。


 面白いからと、戦場に投下されたときにはどうしようかと思ったが。アームを伸び縮みさせて窮地を乗り切った。……というか、バケツの防御力が意外に高く、大体の攻撃を防いでた。


 やはり時代はバケツなんですね……。キキョウ様……。


『いや、悪くは無いけどそれはない』


 速攻で神託が降りてきた。冷静なツッコミ、有難うございます……。


「バケツ姿で頑張るツキトくんの姿は面白かったんだけどなー。あと、乗り心地がよかったから、僕としては快適だったんだけどね。こっちの姿でも乗れたし」


 先輩はベッドに腰かけて不満そうな顔をしていた。


 『シリウス』との会談以降の戦場で当たったクランは、正直に言うとチョロい相手だった。やはり、兵器を失ったというのは、痛手だったらしい。


 中には大型戦車を持ち出して、特攻を仕掛けて来るクランもあり、苦戦する事もあったが、本気を出した先輩やケルティの相手ではなかった。


 なので、後半に行くに連れ各々遊びが入っていったのだ。


 特にりんりんのライブは凄かった。


 途中で新メンバーを加えた事により、『プレゼント』を開封したようで、敵への魅了効果が洗脳に強化されてしまった。


 ライブ中、敵は戦う事を忘れてステージ前に殺到した。そんでもってマナーを守れない客を、タビノスケ率いる親衛隊が粛清していくといった流れになっていた。


 最後までライブを見ることができたPL達は、問答無用で親衛隊入りさせられていた。タビノスケェ……。


 なので、俺達の仕事はりんりんの洗脳が効かなかった奴等を一人一人潰していく事だった。なので遊びが入るのも仕方がないっちゃ、仕方がないのだが……。


「今日のは特に酷かったよね。戦っているより、ライブに参加しているPLの方が多かったもん。ケルティとかナンパしてフロイラちゃん達に殺されていたし……」


 あー、あれは酷かったですね。

 なんか、ミラアも本気になっちゃってましたしね。あと、アンズも意外に戦えるってのが驚きでしたが……。


 元『追い詰めカメラ』のミラアとアンズであったが、能力を駆使して普通に戦っていた。

 ミラアは敵の魔法やスキルを自分以外に逸らす事ができ、アンズは……よくわからないが、攻撃を反射していた感じだった。

 そしてフロイラちゃんはケルティにかなり鍛えられていたらしく、火力だけならNPCにも関わらず、PLと遜色無い。……まさかの戦力でしたね、ケルティハーレム。あ、隣座りますね?


 長話になりそうだったので、俺は先輩の横に座った。


「うん、どうぞー。……って、きみ、しれっと座って来たね。この間まで遠慮がちに座って来たのに……」


 まぁまぁ、人間ってのは慣れる生き物ですからね。それに、いつまでもそうやってビクビクしているのもどうかと思いません?


「……そうだね。キスもしたのに、いつまでも赤の他人って事は無いもんね。……じゃあ僕も」


 先輩はふぅ……と、小さくため息を吐いて、俺の膝を枕にするように倒れてきた。……おや? そういう感じですか?


 俺は空気を読んで、膝の上にある先輩の頭を優しく撫でる。

 すると、先輩は気持ち良さそうに目を細めた。


「ふふっ……今の僕は子猫じゃないよ? こういう扱いはやめて欲しいな。……それとも猫の方がよかったのかな? きみは変わっているからね……」


 子猫でもいいですけど、今はこっちの先輩の方で……。

 てか、先輩も満更じゃ無いみたいじゃないですか。嫌だったらもっと抵抗してくださいな。……じゃないと違うとこも撫でますよ?


 流れに乗せられた結果出た言葉であったが、言ってしまったものはしょうがない。セクハラ上等である。


「うわー。スケベだなぁ、もう……。一応聞いておくけれど、どこに何をしようとする気なのさ? ……何をしようとしても止めないけれどね」


 そこは止めましょうよ。なにされても良いように聞こえましたよ? 今の? 自分の事を大事にしなきゃ駄目ですよ、先輩。


 俺は先輩のお腹に手を伸ばした。


「やるんかい……。というか、そのこそばゆい触り方やめろよ……。すんごいイヤらしい感じなんだけど……」


 気のせいですよ?


 そう否定しながらも、イヤらしさを意識しながら俺は先輩のお腹を撫で続ける。たまに、ピクンっ、と反応する姿が見ていて楽しい。

 先輩も最初の内は、くすぐったいよー、とか余裕を保った様子だったが、徐々に顔が赤くなっていって、声も色っぽくなっていった。


 こうなってくると、俺も調子に乗りたくなる。


「んっ……。えっ……つ、ツキトくん……? どこ触って……ひゃ……」


 お腹だけとは言わず、手の届く場所をつぃ、つぃっと撫でていった。

 首筋……脇……太腿……等々。


 先輩は撫でる場所を変える度に反応を変えていき、困惑しながらも切なそうな顔を……。


「ちょ……。やっ……やめっ……あっ……ひゃん……、す、ストップ! ストップぅ!!」


 先輩はガバっと起き上がると俺の両手を掴んだ。……しまった。調子に乗りすぎたようである。


「途中からガチだったよね!? ちょっとこちょがしいなぁ……、とか思ってたらこれだよ! やるならやるって言ってくれない!?」


 やりました。


「今かよ!?  ……もう~、きみって奴は!」


 先輩は腕を掴んだまま俺をベッドに押し倒した。この間とは逆の展開に、俺はトゥンクする。……や、優しくお願いします。


 俺は頬がポッと熱くなるのを感じた。


「何、アホなこと言っているのさ。……というか、そういう事してくるってことはやっぱりしたいんだね……。あれ以降手を出してこないから、一時の迷いだったのかと思ってたのに……」


 ロボでしたからね。

 手を出したくても出せなかったんですよ。文字通り。

 どうします? 俺としてはこのまま、あの時できなかったことを……。


『できなかったことを……なんです?』


 ……したくてもできないんですけどね。


 カルリラ様からストップがかかった。今日は忠告から始まっているので、優しい女神様だなぁと思いました。

 その優しさに俺は悲しくなった。


 先輩はなにがあったのか察したのか、俺の耳に口を近づけそっと囁てきた。少し恥ずかしそうな雰囲気だ。



「……する方法、あるよ……」



 !?


「ケルティから……教えてもらったんだ……今ウィンドウ出すから……」


 先輩は一度俺から離れて、ウィンドウを操作し始めた。


 ケルティめ、先輩になんて事を……。後で礼を言っておかないといけないな……。


 起き上がってそんな事を考えていると、俺の目の前にウィンドウが現れた。その内容を確認し、俺は思わず目を見開く。



『PL みーさん と気持ちいいことをしますか?』



 専用のコマンドがある……だと?


「これで、はい、を選んだら、しばらくは許可した人しか部屋に入れなくなるんだって……。後は……ツキトくんに任せるから……」


 先輩は顔を真っ赤にしていた。それを見て俺は覚悟を決める。


 ……よし、今度こそだ。

 これまでは様々な邪魔が入ったが、今度こそ誰の邪魔も入らないだろう。


 今日こそやってやる……!


 俺は迷うこと無く、はい、の項目を選択した。すると、ウィンドウに制限時間が表示される。この間は誰も入って来れないということなのだろう。


「……始まったね。……後は任せてもいいのかな?」


 先輩の方にも同じものが表示されているらしい。


 俺は、先輩をベッドに寝かせた。

 抵抗するそぶりももなく、先輩は身体をこちらに預けている。もう遠慮も必要ないということだろう。


「ツキトくん……。優しく、ね……?」


 恥ずかしそうに微笑んだ先輩に、俺は手を伸ばした……。




~2時間後~




 …………………。


「はぁあ……。終わっちゃたねぇ……、どうだったぁ……?」


 ふぅ……。そうですね、焦ったせいで盛大に失敗しましたね。すいません……。


「失敗……では無かったと思うよ? 気持ちよかったし、ツキトくん上手だったよ? 結構やったことあるのかな?」


 まぁ、部活で結構……。俺も先輩の小さな手で揉んでもらって、気持ちよかったです……。


「本当? 久しぶりだったから、ちゃんとできるか心配だったんだ。でもそう言ってもらえてよかったよ。……んん~」


 そう言いながら、先輩は立ち上がり、ぐぐっと背伸びをした。その横顔はとてもスッキリしている。相当気持ちよかったのだろう。



「……っと。ホントに気持ちよかったね。マッサージ」


 そうですね、マッサージ、気持ちよかったですね……。



 まぁ、はい。そういうことです。


 俺も先輩も、年齢設定を変えるのを忘れていたのだった……。


 先輩の服を脱がそうとしたら、ウィンドウさんに邪魔され、それで変更していない事に気づいた。しかも気持ちいい事は、始まってから年齢変更ができない仕様だった。


 どうしようかと悩んでいたら、ウィンドウさんがマッサージの方法を提示してきたので、折角だからと二人でお互いをマッサージしていたのだ。……ちくしょー。


「なんか、ステータスも上がったし、身体も軽くなった感じするし、良いこと尽くしだね、気持ちいいこと」


 何故か、俺も耐久のステータスが上がってますね……。


 先輩的にはメリットしか無かったので万々歳だろう。しかしながら、俺からしたら残念極まりない結果であった。


 もう期待しかしてなかったからね? 遂に、遂に、遂に! って感じだったし。もう超ハイテンションで服に手を伸ばしたらこれだよ。


 これは運営にクレームを入れるしかない。これまでは様々な理不尽を経験したが、本気でクレームを入れようと思ったのは初めてだった。


 そんな感じで肩を落としてガッカリしていると、先輩が俺の頬に両手を当ててきた。

 なんだろうと思っていると、そのままキスされた。……わお。


 顔が離れても呆けている俺に、先輩はイタズラっぽく笑ってみせる。


「えへへ……、この間のお返しだよ? ツキトくんには悪いけど、もう時間が無いからさ。本番は戦争が終わってからでもいいかな?」


 ……運営へのクレームはまた後にしよう。


 笑顔の先輩に見とれていると、またウィンドウが現れた。邪魔すんなよと思ったが、内容を見て頭を切り替えた。……もう時間なんですね。


「そういうこと。……さぁ、行こうかツキトくん! 最後の戦場だよ!」


 俺は先輩の手をとりウィンドウに指を伸ばす。


 きっと先輩と一緒なら何だってできる。どこにだって行ける。俺はそう感じた。


 その思いが伝わったのか、先輩は嬉しそうに手を握り返してくれるのだった。

・セーフ?


「……健全ですね。セーフです」


 カル姉的には大丈夫だったらしい。わたしとしては、もっと刺激が強いものを所望したい。

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