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男にしか、バケツの良さはわからないものさ…… byキーレス

『何故だ!? 昔ながらのデザインはいいものだろう? ……何故それがわからない!』


 キーレスさんの機体……バケツロボはがしょーん、がしょーんと動きながら、迫る俺と先輩に対してアームを伸ばしてきた。


 俺は避けつつも、それを切断しようと大鎌を振り下ろすが、見た目以上に柔軟かつ強靭な作りのようで、アームはむにょんと曲がるだけだった。


「近接攻撃は効き目が薄いみたいだね……! それじゃ! 『マジック・レーザー』!」


 肩から先輩の魔法が打ち出され、バケツに直撃する。しかし、その鋼鉄のボディは魔力の光線の直撃を怯む事無く受け止めた。

 効いていない訳では無いようで、当たった場所がへこんでいる。さすが先輩だ。


『魔法でダメージが……? やはり、私の目は間違っていなかったようだな! これ程の魔術師を相手にするのは初めてだぞ! 『アーマーズ』!』


 号令がかかると、前進方向に生き残ったスタイリッシュな機体郡『アーマーズ』が立ち塞がる。だが、どれもこれも損傷が目立ち、戦える状態には見えない。


『自爆用意』


 キーレスさんはそんなオンボロどもに非情な命令を下す。……はぁ!? マジですか!?


 先輩! 次元移動でなんとかなりませんか!? 最悪先輩だけでも逃げてくれれば……。


「実はあれ、ツキトくんの所にしか移動できないんだよね。指輪の座標に飛べるんだってさ」


 意外に不便なスキルらしかった。ホント俺への殺意の高さはどうにかしてほしい。……って、どうしましょう。なんかアイツら光り始めたんですけど……。


 壁の様に立ち塞がった『アーマーズ』は光を発している。徐々に光は強くなっていき、今にも爆発してしまいそうだ。


 仕方ない。

 こんな雑魚に神技を使いたくはなかったが、使わないと切り抜けられないか……。


 そう思っていると、『アーマーズ』の姿勢が崩れ、地面に倒れてしまった。

 どうしたのか一瞬わからなかったが、良く見ると、奴等の足になにかが絡み付いている。


 間違いない。

 あれはタビノスケの触手だ。


「ツキト殿! コイツらは任されよ! 拙者が食い止めるでござるぅ!」


 おそらく自分の手元に引き寄せ、自爆させる気なのだろう。凄まじい速さで触手を巻き戻している。……すまん!


『離せであります! くたばり損ないがぁ!』


『抵抗できない!? どこにそんな力が……!』


 捕らわれた『アーマーズ』はなんとか振りほどこうともがくが、触手によりどんどん引きずられていく。


「テメェらは拙者と一緒に、あの世行きでござぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 そのタビノスケの叫びを合図にしたかのように、後方で爆発が起きた。俺の背中を押すように、強い追い風が吹き荒ぶ。


 自爆に巻き込まれたであろうタビノスケが少し気になったが、俺は振り返らずにバケツに特攻を仕掛けた。……首刈らせろやぁあ! ゴラァ!


『この程度では倒せないか! それならば、ガチンコといこう!』


 バケツのアームがガチガチと音を鳴らす。すると、それはドリルに形を変え、高速で回転を始めた。


 そして、すぐさまそれを俺達に向け、突き刺そうとする。


 その回転する刃は厄介としか言いようがない。受け流そうとすればその回転によって確実に武器を破壊されてしまうだろう。つまり、避けなければいけない……ってことで。


 『フェルシーの天運』、発動!


 俺が神技を発動すると、ドリルが勝手にあらぬ方向へと避けてしまった。


『なんだ!? 今、あり得ない動きをしたぞ!? ……そうか、神技か! ちぃ!』


 キーレスさんは何をされたのか瞬時に察し、行動を変えようとする。しかし、その一瞬の隙を見逃さず、俺は大鎌を振るった。


 『天運』を使っている間は、確実に攻撃が命中するので確かに俺の攻撃は当たった。……が、ボディに傷を付けただけで、おおよそ致命傷には見えない。


『いいね! 第一装甲を切り裂いたのは君が初めてだ! 命のやり取りができるのは楽しいねぇ!』


 さすが前作PLだ。大事なものが抜け落ちている。……が、ここまで厄介な相手は久々で、俺も少し気分が高揚するのを感じていた。


「デカすぎてどこが弱点かわからないね……仕方ないなぁ。ちょっと全力を見せちゃうよ?」


 先輩、矛盾してます。

 ちょっとと全力は同居しない表現です。というか、何をする気ですか? アナタの全力とか目も当てられない状態になること間違い無しですよ?


 俺は続けざまに攻撃を繰り出しながら、先輩に何をしようとしているのか尋ねる。嫌な予感しかしない。


 これで『メテオ・フォール』で全員吹き飛ばすとか言い始めたら、全力で止めないと……。


「別に間違って無いもん。ちょっとだけ、全力の魔法を使うんだし! ……発動!」


 先輩がそういうと、空一面に魔方陣が出来上がった。……いやいやいや! 予想通りですよ! 何てもん使おうとしてくれてんですか!


『な……! メテオだと!? 『魔王』ちゃん、そんなことをしたらこの勝負は引き分けになってしまうぞ!』


 どうやらキーレスさんも先輩の大胆な行動に焦ったらしい。攻撃が当たらないとわかっていながら、こちらにドリルを向ける。


 そんな俺達の不安をよそに、先輩は得意気に、ふふん、と笑った。


「メテオ? そんなちゃちなもんじゃ無いさ。……こい! 『新・冥王への磔刑』!」


 その魔法の名前でハッとした。


 ゼスプが自棄になって作り出した、最強近接魔法、『冥王への磔刑』。

 NPCを復活不能にすることができる深淵属性を持ち、近接でなければ発動できない制限をかけて作り出した、既存の魔法とは比べ物にならない超魔法。


 危険すぎるという理由と、普通のPLが使ってもMPが足りないで自滅してしまうというか理由で封印していたのだが……。


 どう考えても普通ではない先輩なら、使いこなせるのか?


 戸惑っていると、魔方陣が砕けちり、その残骸が先輩の目の前に集まっていく。それは一本の槍となり、矛先はバケツに向けられている。


『な、なんだその魔法は!? 見たことがないぞ……! くそっ……』


 キーレスさんは慌てている様子だったがもう遅い。この魔法は発動したのなら……。


『回避行動を……! バカな!?』


 すでに当たっているのも同然なのだから。


 気付けば先輩の目の前にあった槍は、バケツの中央部に深々と突き刺さっていた。機能が停止したようで、バケツの足が崩れてしまい地面に倒れている。


 いつ射出されたのかも、いつ着弾したのかもわからない速さだった。……ところで、『新』ってついてましたけど、何か変わったんですか?


「ん? 魔法属性に変えてもらって、制限も更に付けて強くしてもらったんだ。この魔法をくらって、死なない相手はいないね! 絶対!」


 ちょっと、って言う割には一撃必殺技なんですね……。ですが……。

 そう言って、俺は魔法が直撃したバケツに目を向ける。……やっぱり。


 先輩! まだみたいですよ!


 目の前に迫ってきたドリルを、すんでのところで俺は体をひねり避ける。そして、ドリルの回転していない根元に向け、大鎌をふるう。


 やや力技であったが、中の配線コードを切断できたようで、ドリルの回転が止まった。……まだ動けるんです? いったい、どんだけ丈夫なんですかねぇ!?


『まだ脚部がイカれただけだ! しかし、指揮官機体がここまで追い詰められたのは初めてだぞ! ……本気をだす! いくぞ!』


 俺と先輩は臨戦態勢をとった。


 本気を出すと言うことは、ここからが本番なのだろう。……長い戦いになりそうだ。


『指揮官機! 装甲パージ! 戦闘モード……射出ゥ!』


 バケツの登頂部から、全身を外骨格で武装した機械兵が現れた。右手には大剣、左手にはマシンガンが装備されていて……。



 頭はバケツに似た、赤いヘルメットが装着されていた。



「……またバケツじゃん。ダs……」


 ダサカッコイイ……。


「嘘だろ、ツキトくん!?」


 いや、先輩。あの武骨でダサいデザインは、一周回ってカッケー部類に入りますよ。男にしかわからない芸術なんで仕方がないと思いますが。……ねぇ、キーレスさん!


「わかってくれるか……! 君には見所があるな! ……よし、コイツの性能を君達の身を持って教えてあげよう! きっと気に入るはずだ!」


 ガシャン! という音と共にマシンガンの銃口が俺達に向いた。キーレスさんは楽しそうにニヤリと笑う。


 俺は『カルリラの契約』を発動させた。

 ここからが、本気の勝負だ。……いくぞ!


 俺が地面を蹴ると同時に、マシンガンが火を吹いた。


 他のPLの物とは違い、視認できないスピードで飛んで来る弾丸を不規則に動く事で避け、相手との距離を縮める。

 何発かは俺の身体に命中しするが、先輩の回復魔法によりすぐさま回復した。


 そして、お互いの間合いに入ったと同時に、両者の刃がぶつかり合い、火花を散らすのだった。



・バケツ

 ちょっと、わたしにもわからない世界ですね……。

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