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煩悩とロマン

「そう言えば、全年齢設定にしてたや。……というか、本気でもっと凄い事をしようとしたんだね……えっち」


 先輩は俺に寄り掛かりながら呟いた。雰囲気から照れているのがわかる。


 どうやら、先程死んだのは俺だけ年齢設定がRー18だった為に起きた悲劇だったらしい。

 成る程、そりゃそういうことができるゲームだもの、一方的に迫ったら何かしらのペナルティはあるよな。

 俺の場合は、カルリラ様からの天罰だったってだけの話なのだろうし。……ところで先輩、俺の膝の上に乗るの好きですね。


「だって、顔を見られるの恥ずかしいし。あと、寄りかかると楽だしねー」


 そうですかぁ……。


 ……。



 ここでセクハラしたらどうなるかなぁ……。



 俺の中のリビドーさんが囁いた。だが、それだけである。

 実際に行動に出るほど、俺の理性さんは弱くはない。こうやって椅子になっているだけで、俺は幸せなのだ。


 ……しかし。


「……なんか、カルリラからきみがセクハラしたがっているって、電波が飛んできたんだけど? ……説明してもらってもいいかな?」


 血の気が引いた。


 せ、先輩、それは少しおかしいですよ? 信託をくれるのは各人に割り振られた分霊の女神様ですよね?


 なのに、俺の考えていることが女神様を通じて先輩に届く訳無いじゃないですか? ……あ、もちろんセクハラなんて考えていませんよ?


 カマをかけられたと思ったが……なんて事はない。冷静になって弁解すれば……。


『あ、ツキトさまにはいい忘れていましたが、こねこさんは例外ですよ? 二人の様子は、指輪を通して私達が見守っていますから、安心して仲良くしてくださいね?』


 と、リリア様から信託が降りてきた。……安心できねぇ。なんて事してくれたんだ、あのロリ邪神様。


 要するに、俺の邪な考えは女神様を通して先輩に筒抜けなのだろう。

 なんてこった。これじゃあもう先輩にセクハラできない。てか、問答無用で殺される……。


「きみって人は……。それで、どんな事をしようとしたのさ? 触ってもそんなに楽しい体じゃないと思うけど……?」


 先輩は俯いて、自分の胸に手を当てている。……え? むしろ触ってもいいんです?


「え? いや……えぇと……ま、まぁそんなに触りたいって言うのなら……。こねこの状態ときはよく撫でられてるし、優しくなら……」


 ……。



 もうロリコンでいいや。



 俺は先輩を後ろから抱き締めた。……あ~、先輩身体ちっこい……。ほせぇ……。犯罪臭凄い……。先輩可愛い……。いい香りがする気がするぅ……。


「ちょ、ちょっと! 誰がロリだ! こんなんでも、一応19歳なんだからな!」


 え~、そんなこと言われましても……。先輩ちっこくて中学生か高校生にしか見えませんよ? 身長何センチです? 140あります?


「あるよ! 145……って言わせるな! 気にしてるんだから!」


 思ったより小さかった。

 そうか、ヒビキの奴が気を使って底の厚い靴を用意していたのか。

 ってことは、先輩は背伸びロリになってしまった、ということになるな。最高。


 そして、この先輩の服装は我が弟の趣味である。……きっと、全ては奴の思い通りなんだろうな。


 やはり血は争えないかぁ。


 というか、身長気にしてるのかぁ……。可愛いなぁ……。ロリコンでよかった……。


 俺は先輩に頬擦りした。もう迷いはない。というか、こうでもしないと俺の中のリビドーさんがこんにちはしてしまう。


「もう。一度タガが外れたらこれだよ。……何? 甘えたいの?」


 先輩は呆れたようにそう言うと、抱き締めていた俺の腕を振りほどいた。……ステータスの差はリビドーさんの力ではどうしようも無いらしい。


 俺は先輩に身体を預けることにした。


「仕方ない奴だなぁ。……ほら、抱き締めてやるよ。変な事しないでね……?」


 俺は先輩の胸に顔を埋めた。いや、そこまで大きくないから埋めれなかった。……すりすり、すりすり。


 と、そんな事をして怒られるかと思ったが、先輩は俺の頭を抱いて、小さな手で俺の頭をポンポンと撫でる。


「きみって奴は……本当にどうしようも無いね。この世に解き放ったらどんな被害を出すかわからないから、僕が一緒にいて面倒見てあげるよ……。よしよし……」


 わーい。やったぁ。


 甘える許可を頂いたので、俺は調子に乗って抱き締め返した。


「はいはい、以外に甘えたがりなんだねぇ……。もしかして、エッチな事よりこっちの方が嬉しいの?」


 先輩も調子に乗り始めたようだ。……ほほう?


 先程自分が何をされそうになったのか忘れてしまったらしい。こういう隙があるところも可愛いのだが。……ふふふ。


 こうやって甘えているのも悪くは無いのだが、いつまでもやられっぱなしでは俺は満足できない。


 俺はセクハラを決意した。


 先輩の腰に回していた腕を徐々に下げていく。慎重に、無心で、結して悟らせないように。


「……でもさ、さっきは本当にドキドキしてたんだぜ? 本当に手を出そうとするとは思わなかったし、ビックリした。……でも」


 よし。警戒されている様子はない。


 俺はゆっくりと手を太腿のほうに伸ばした。いつも見ることしかできなかった健康的な太腿がそこにある。……今だ!


「嫌だった訳じゃ……ひゃあん!?」


 俺は先輩の脚を、すいっ、と指で撫でた。


 とてもいい反応だ。いきなり襲ってきた感触に慌ててしまった事が良くわかる、初々しい反応だった。

 その証拠に、先輩はビクんと大きく震わせ……、



 俺の頭を抱き締めるように潰した。



「い、いきなりなにするんだよ! ばか! というかまた死んでるし!?」


 中々懐かしい死に方だった。


 前にカルリラ様にもこうやって抱き潰されたっけなぁ……。今回はクッションが無い分速攻で潰されちゃったけど。


 これはこれで……。


『お主……、もしや妾の時にもそう思っていたのか? ……クッションが無くて悪かったの! ふん!』


 珍しくグレーシー様からツッコミが入った。言われてみれば、確かにグレーシー様も壁だったなぁ。先輩より起伏が少なかった……。


『な、なんと!? うそじゃあ!? 少しはあるはずじゃて! ……待つのじゃ! なにか言ってたもれ!? ちょっとぉ!?』


 ……ドンマイです。


 俺はそのままグレーシー様に見送られてログアウトした。



 そして、すぐにログインして帰ってくると、グレーシー様とのやり取りを言及され、もう一度殺されるのだった……。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 いや、ロリコンは駄目だわ。


 所変わって3日目の戦場。だだっ広い草原でりんりんライブが行われている。

 それを見て盛り上がるタビノスケ達を見ながら、俺は真面目に考えた。


 やっぱロリコンは駄目だよな。

 でも、先輩は自分はロリでは無いと言っていたから、俺はロリコンじゃ無い。ただ好きな相手がロリっぽいだけなのだ。

 だから先輩は合法なんだ。俺はロリコンじゃないんだ。


 そうですよね、先輩!


「りんりんを見て何も感じないのなら、そういう事にしてやる」


 俺はりんりんに顔を向けた。……ライブステージで楽しそうに幼女が歌っている。あ、パンツ見えた。


 成る程……と、俺は納得して、キリッと表情を作って、肩の上の先輩に向き直る。



 ネカマですね、間違いありません。あれじゃあピクリとも食指が動きませんよ。わざとパンチラさせている辺り、完全に計算しているとしか言いようがありません。え? そこまで見ていたのかって? ……違うんです先輩。俺は先輩のスパッツが大好きなんです。ネカマのパンツなんて興味ありません。本当です! 信じて!



 ……以上の弁解により、俺のロリコン疑惑は晴れた。しかし変態認定されてしまい、俺は泣いた。……何故だ!?


「みーさん、こちらも合流しました。戦う準備もできています……って、ツキトはなんで地面に倒れているんですか?」


 俺がうつ伏せになって咽び泣いていると、ゼスプとドラゴムさんがやって来た。


 今日は『シリウス』との戦いの日だ。

 なので、『紳士隊』の戦力を除いた『魔女への鉄槌』と『ペットショップ』の人員が集まって戦う事になった。


 この戦場に移動すると、10分間の準備時間が与えられる。

 この時間は自分達の陣地から出ることもできないし、敵の姿も見えないので遠距離攻撃もできない。


 なので時間を使い、犬派組は壁生成魔法で陣地を作り、猫派組は士気を高める為にりんりんがライブをしていた。


 ……一応説明しておくが、あのライブはステータスを上げる効果がある。なので、決して遊んでいる訳じゃ無い……と、信じたい。


「えーと……大丈夫、ツキト君? もふもふする?」


 ドラゴムさんの優しい申し出に、俺は生きる希望を見いだした。


「駄目だよ! ツキトくんは変態だから酷い目に合うよ! 僕が代わりにもふらせてあげるから、ツキトくんも起きて!」


 マジすか。


 俺は希望の毛玉に飛び付き、もふり始める。猫吸いは自重した。


 その様子を見て、ゼスプはため息をつく。


「イチャイチャするのはいいけど、もう始まりますよ? ツキト、何があったかわからないけど、君もしっかりしろって」


 わかってるよ。……でも先輩のさわり心地が最高でな、もう少し待って。


 という感じに、俺は時間ギリギリまで先輩をもふり倒した。触り方がさっきよりもいやらしいとの苦情があったが、俺は徹底してもふった。


 よし……今日も頑張って首刈っていくぞ!


 俺は元気になった。


「やっぱりツキトくんは変態だ……。どうしてくれるのさ、全身がダルくて動けないんだけど……。尻尾の付け根ばっか狙いやがって……」


 対して、肩の上で先輩がグッタリとしていた。……しばらくはこのままかな?


 まぁ、大丈夫ですよ。そんなアホみたいに戦力をぶちこんでくる訳でも無いでしょうし、ゆったりしていてください。まぁ、俺達だけでなんとか……。


 そう言って先輩を撫でていると、開戦の時間になり……俺はギョッとする。


 時間になると敵の姿が視認できる様になるのだが、現れたのは何体もの巨大な影だった。


「な、なんでござるか……。あれ……?」


 巨大化したタビノスケよりかは小さいが、充分に大きいそれは、メタリックな光沢を放ち、人の形をしている。


 あのロマンを感じさせるシルエットは……まさか……。




 ロボット?




 俺達が驚いていると、敵陣からキーレスさんの声が聞こえてきた。拡声器を使っているようだ。


『やぁ、『魔王軍』諸君、約束通り来てくれて大変嬉しいよ。……驚いてくれたかな? これが私の『プレゼント』であり、我々の最終兵器『アーマーズ』だ。……それでは、行かせてもらう! 全軍……出撃ィ!』


 キーレスさんの号令により、数十体もの巨大人型ロボが敵陣から飛び出して来たのだった。






 ……頼めば一機くれないかな?

・尻尾の付け根

 猫の尻尾の付け根は神経が沢山集まっている場所であり、撫でると喜ぶ。しかしそれを人間で考えると……やっぱりロリコンじゃないか!


・魔神のグレーシー

 貧乳。

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