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おやすみの日は君と  作者: 朝倉二日
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おやすみの日は -Another-

第一話の相手側のおはなしです。


眩しくて、目が覚める。

夏も近くなった五月の太陽は春よりも温かく、むしろ熱いくらいだ。

毛布をかけたまま身を捩り、ベッドサイドに置いてあるデジタル時計を見る。デジタル表示には「7:57」の文字が黒く表示されている。

今日は日曜日だ。

ゆっくりと緩慢な動作で起き上がり、洗面所で顔を洗う。鏡を見て、顎に黒い点が増え始めたことに気がついた。指で顎をなぞり、もう片方の手で鏡の収納を開けてその中から電動シェーバーを取り出して髭を剃る。

よし、問題ない。

もう一度顔を洗ったらキッチンへ向かい、コーヒーミルにコーヒー豆を放り込んで電源を入れる。力強い粉砕音が響き、下のところから挽かれた豆が出てきて、茶色い粉が溜まっていく。

その間に、ピッチャーと一緒になったドリッパーに紙フィルターを折って置く。少し湯を注いで馴染ませ、粉が挽かれ終わるのを待つ。

粉砕音が徐々に少なくなっていき、モーターの回転音だけになったあと、モーターの音も止まる。ホッパーの部分を何度か叩いて口に残っていた粉を追い出したあと、下のところに溜まった粉をドリッパーに移す。

挽いたばかりのコーヒーの粉からは香り高い深煎りのコーヒーの良い薫りが広がって、満ち足りた幸福感がただよう。

ドリップポットから細く、湯を注いでいく。湯気が口から立ち上り、朝日に煌めく。

ブラウンだったコーヒーが徐々に湯を吸ってダークブラウンへと変わっていき、泡が湧いてくる。

全部に色が広がる直前ぐらいに、ポトリ。と一滴、黒い色のコーヒーがピッチャーの中に落ちた。それから徐々にピッチャーへ落ちるコーヒーは量を増やす。

一杯分に満たないぐらいを淹れ終わったら、上にどれだけ粉が残ってようが湯が残ってようが、ドリッパーを外して紙フィルターごと粉を捨てる。

マグに移した熱々のコーヒーが口から入り、喉を通って、空の胃に入る。もう夏も近いが、朝イチのコーヒーの美味しさに勝るものはない。

余韻に浸っていると、スマホがひと鳴りした。画面には彼女からの「もうすぐ着くよ!」というメッセージとスタンプを告げるメッセンジャーアプリのアイコン。

スマホを置いて、コーヒーを飲み干し、クローゼットへ向かう。

彼女があのメッセージを送ってくるときは、本当にすぐそこにいる時だ。


急いで着替えて、彼女を迎える準備をしよう。もう一度コーヒーを淹れて。



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