表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

真っ赤な背撃

作者: めらめら

「あー参った参った。降参だよ降参!」

 バレット・クロームが両手の拳銃(レイ・ガン)を地表に捨てて、ホールドアップした。

 赤くて切り立った大岩に囲まれた、砂嵐の吹きすさぶ山間だった。

 バレットの部下は、スティンガー・スコルプの早撃ちで、4人全員あたまに風穴を開けて地面に転がっている。

 銃を抜く間もなくあの世に旅立ったのだ。


「観念したかバレット。ブツの在処を言いな! この星のどっかに隠したんだろ?」

 スコルプはバレットを睨みつけながら、ケプラー186星人特有の金属音みたいな甲高い声でそう叫んだ。

 キチン質の甲殻に覆われたスコルプの右手の銃の照準は、ピッタリとバレットの額に定められていた。

 かかげた両手の指先一本動かしただけで、バレットも部下の後を追うことになるだろう。


 だが、スコルプは気付いていないようだった。

 バレットが、背中に隠した三本目(・・・)の腕を自分の尻のあたりのガンホルダーに静かに伸ばして行くのを。

 バレットは確か……トラピス1E星人のミュータントだったな。

 奴の二つ名、三丁拳銃(トライガン)の由来を知っていれば、スコルプもこんなヘマはしなかったかも知れないが。


「さーて。なんの話ですかね……っと!」

 バレットがとぼけた声を上げながら、赤金色をした三丁目の拳銃を抜いて、スコルプに撃ち放とうとした。

 だがその時だった。


「ガアアアアア!」

 悲鳴を上げたのはバレットの方だった。

 胸に風穴を開けて、地表に膝を屈していたのは、バレット・クロームの方だった!


「な……なんでだ……!」

「フン。マヌケな野郎だ。『スティンガー』……俺の二つ名の意味を知らなかったのか?」

 地表に倒れて苦しげに呻くバレットを見下ろして、スコルプは鼻を鳴らした。

 バレットの胸を貫いていたのはスコルプの尻尾だった。

 全身をキチン質の甲殻に覆われたサソリのような姿のケプラー186星人。

 奴がバレットに気付かれない角度で、地面に潜らせ伸ばした自分の尻尾。

 バレットの背中まで回り込ませた伸縮自在の真っ赤な尻尾が、三本腕のトラピス1E星人の胸を刺し貫いていたのだ!


「くたばったか。しゃーねーな。ブツは自分で探すしかねーか」

 息絶えたバレットを足蹴にしながら、スコルプは地表に唾を吐いた。


  #


 ひと様(・・・)の地表をほじくり返したり唾を吐いたり、好き放題しやがって。

 もういい余興は終わりだ。

 俺はスコルプのあたりの地殻(・・)に、意識を集中させた。


  #


 ドガン!


 スコルプの背後10キロの地表から、真っ赤なマグマが噴き出した。

「な……なんだ!」

 奴が振り返って慌てて逃げ出そうとするが、もう遅い。

 俺の血液……煮えたぎったマグマで作った俺の手が、あっという間にスコルプの背中に回り込んだ。

 真っ赤に燃える俺の手が、死んだバレットともどもスコルプを燃やし尽くして蒸発させた。


  #


「『バレット・クローム』と『スティンガー・スコルプ』……えー確かに『S級犯罪者』二人の生命反応途絶を確認しました……」

 俺の地表に降り立った銀河連邦の警官が、戸惑い顔で上にそう報告している。


「超短波のフェイクによる犯罪者の誘導と捕獲……というか削除というか。毎度のご協力、感謝いたします。しかしテラさん……」

 警官が不思議そうな顔で、俺にそう呼びかけた。

「恒星ソル系第三存在(・・)。この銀河でも数少ない『知的惑星』であるアナタが、なぜバウンティハンターなんかに? 犯罪者二人を始末するのに、地殻まで変動させて……」

「ああ。子供の頃から憧れだったんだ」

 俺は電離層から適当な電波を反射させて、唖然とする警官にそう答える。


「今では想像も出来ないだろうがね? 俺が知性体として『ものごころ』がついた頃、この地表には、いろんな生き物が溢れかえっていたんだ。そいつらの一種がやりとりする電波で『放映』されていた『お話』が大好きでね。ずーっと、こういう仕事を探していたのさ!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] どんでん返しに続くどんでん返し。 最後のオチはびっくりでした!
2019/04/21 16:57 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ