12.連鎖
【朝比奈蒼太】
朝起きてまず最初にやる事はニュースを見ることが日課になりつつある。
『お兄ちゃんおはよう』
明日試合だからか、今日は朝練に行かないらしい。
『おはよう。この時間にお前がいるのはなんだか新鮮だな』
素直にそう思った。
『明日試合だからね。今日は調整だけして朝練は行かないことにしたんだ』
なんだかんだで初めて妹の試合を観に行く。
素直に楽しみだ。
「続いてのニュースです。剣道の名門と知られる花月道場から飾られていた本物の日本刀が盗まれました。犯人はわかっておらず、完全密室だったため、手がかりもないという事です」
最近は物騒なことが多いなぁ。ん?
『蒼蘭の昔通ってた道場だよな?日本刀なんてあったのか?』
そう聞いた時、蒼蘭の目はどこか遠くの方見ていた。まるで、その事に全く興味がないように。
それを見た時、何かが繋がるような感覚がしたが、それが何かは分からなかった。
『お兄ちゃん、そろそろ私学校行くね?』
『お、おう。行ってらっしゃい』
今のは一体何だったんだ?
そんな事を気にしてもしょうがない。
『さて、俺も学校行くかな』
【高井光一】
今日は朝から呼び出されて朝比奈家の捜査にあたってる暇はなかった。日本刀が盗まれた。ただの盗難ではない事は確かだ。
『これ、例の殺人犯の犯行じゃないですよね?』
『古池、それは最悪の事態だ。思っても口にはするな。士気が下がる』
『すいません。つい...』
正直、俺自身もそう思った。
何か嫌な予感がする。嫌な予感が頭をよぎった瞬間に携帯が鳴った。
『もしもし、高井だ』
『今すぐ来てください!署長が!』
『なに?』
【田中海里】
今日は妹の方は家を出る時間が遅いな。
何かあったのか?
それより、兄貴の方は顔を出さないのか?
学校に行っていないとは聞いていたがバイトもしていないのか?引きこもりか?
まぁ、それでもいい。顔を出すまで待つだけだ。
こうしてまた朝比奈家の前に戻って来たのは聞き込みにあまり意味がなかったからだ。一度聞き込みをしているせいか、ほとんどの生徒はあまり相手にしてくれなかった。
1人だけ真剣に話を聞いてくれた生徒がいた。名前は聞かなかったが凛々しく、如何にもな感じだった。
その子によると俺の意見に納得してくれたらしく何かわかったら連絡するとメールアドレスを交換してもらえた。
収穫はこれ以外にあまりなかったため、また自分で張り込みをしようと考えたのである。
これもまた、その子の意見でもあった。
ここは辛抱強く待つものだと自分に言い聞かせて兄貴の方が出てくるのを待った。
【高井光一】
『高井さん!署長が、署長が殺されました!』
そう連絡を受け、花月道場からすぐにその現場へと急行した。
『高井さん、すぐにこちらへ来てください』
現場へ着き、俺が来るまでの間指揮を執っていたであろう刑事が署長が発見された場所まで案内してくれた。
『これは...』
『高井さん、もう耐えられないです』
古池がそういうのもわかる。俺も思わず言葉を失った。
なぜなら前回の現場よりも残酷で、殺され方がひどかったのだ。
両足が切り落とされ、左腕の手首も綺麗に切り落とされていた。そして今回は貼り付けではなく首吊り状態で見つかった。ぶら下がっている署長の下には切り落とされた体の一部が綺麗に並んでいた。
そしてまた例のメッセージが署長のであろう血で並べられた手足の横の地面に書かれていた。
[ほんとに鈍いね]
これはおそらく前回同様我々を煽っているのだろう。これもまた同一犯と察しがつく。
『とにかく、署長の奥さんと娘さんに連絡を取れ。それと並行して現場の捜査を進める。遺体はおろして差し上げろ。もう苦しむのは御免だろ』
『わ、わかりました』
しかし、ここに来てわかったこともある。犯人はおそらく日本刀を持ち出した人物で間違いないだろう。あまり目を向けられなかったが、手足の切り口は普通の包丁やのこぎりで切るよりもずっと綺麗だった。
足を切ったのはおそらく吊るした後だろう。切り口が斜めだった。
犯人の狂人さがこれでもかというくらい伝わってくる。
『絶対にとっ捕まえてやる』
【???】
昨日は楽しかった。あの岸田とかいう男もそうだったけど今回のターゲットは本当に面白かった。自分が殺されるってわかった瞬間の顔がとても良かった。
『はぁ、次は陰からいつも見てるあの人かな?どんな悲鳴を奏でてくれるのかな?』
第12話 連鎖、いかがでしたでしょうか。
徐々に犯人の狂人性が増して来ているように見えます。
自分で書いててなんですが、こんな殺人鬼がいたらぶっちゃけ死刑でいいと思います。
犯人のアリバイを自分で考えてると、自分自身が怖くなる時があります。
果たして犯人は誰なのでしょうか。
次回第13話 片想い、お楽しみに。
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