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否定し続ける男

作者: 重弘 茉莉

ある町に1人の名物男が居た。

彼はいつでも同じ場所に立ち続けていた。例え風が吹き、雨が降り、雪が降り、日照りが続こうとも。



 ある日、少年とその祖父がその男の横を通り過ぎた。

少年は祖父に尋ねる。

「おじいちゃん、何であの人はあそこにずっと立っているの?」


「ん~?」

老人は優しい眼差しを、孫である少年に向ける。


「あの人変だよ!ずっと昔からあそこに居るよ!」


「そうじゃのう。わしも今のお前と同じことを、わしのじいさんに聞いたもんじゃ。」


「そんなに昔から、あの人はあそこにずっと立っているの?」


「そうじゃ。お前やわしが生まれるずぅーと、昔から、あそこに立っているんじゃよ。」


「なんでずっとあそこに居るの?」


「そうさのぅ。これはわしのじいさんが話してくれたんじゃがな。」

老人はゆっくりと少年に語り始めた。



 その男の名は分からん。わしのじいさんも分からないと言っていたから、たぶん誰にも分からないんじゃろうな。


男は人より見栄張りだった。誰からも認められたくて、褒められたくて、頑張ったんじゃ。


そうして頑張って頑張って、頑張り続けた。でも、誰からも認められなかった、褒められなかったんじゃ。


何回も何回も頑張ってやり遂げても、誰も男に構わなかったんじゃ。


ある日、とうとう男は頑張るのを止めたんじゃ。代わりに、何もかもを否定し始めたんじゃ。


男は外国の大統領を否定した。

「己の国を害そうとしたから。」



男は自国の首相を否定した。

「己の財を盗むから。」



男は周りの人を否定した。

「己を褒めないから。」



男は家族を否定した。

「己に優しい手を差し伸べなかったから。」



男は己を否定した。

「己が褒められないから。」



男は生を否定した。

「誰も己を認めてくれないから。」



男は死を否定した。

「己を褒めない人すら居なくなるから。」



男は思考を否定した。

「褒めてくれる人が居ると思ってしまうから。」



 そうして男は、ああやって立ち続けてるんじゃ。立ち続けるしかなかったんじゃ。




少年は老人の話を聞き、男を見てつぶやく。

「今はみんな、あの人のことを知っているのに。」


その言葉を聞いた老人は、返事を返す代わりに少年の頭を優しくなでる。

そして老人と少年は手を繋いで、家族の待つ家にゆっくりと帰って行った。

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