【二話】エンバリュー・コージ
「俺の名はエンバリュー・コージ! 体の方は大丈夫かぁ?
森のなかで倒れていたけどよぉ?」
そう名乗る彼はとてもがっちりした体だ
一体何者だろうか いや、そんなことは関係ない
エンバリューコージ、日本人なのだろうか?
「ああ…大丈夫です。 ここは一体どこですか?」
「ここはサイタマケンの端っこの方さ、カミサトマチってところさ」
ここで俺は考える。埼玉県の上里町 聞いたことはあるが、なぜそんなところにいるのか
「なぁ…お前も記憶 ないのか…?」
「え? ある…けどなんでそんなことを?」
コージは目を見開き驚いて聞く
「あるのか!? 話を聞かせてくれ!」
尊の中に疑問符が生まれる
「記憶があることに驚くってことは…記憶、ないんですか?」
「あぁ…、ここの世界にいる人間は自分のことを忘れている。
覚えているのは自分の名前、一般常識、力の使い方とか、持ってる人は車の運転の仕方とか、そういうのは覚えている」
力? よくわからないが後で聞くとする
「だけど自分のことはなにも覚えていない、どこで生まれたとか友人は居たのとかそういう類のことは全くだ…」
「…その前に外の景色を見て来ていいですか?」
コージは少し考え答える
「あぁ 少し外に出るか… おーい!」
彼の声に呼ばれ足音がこちらに近づく
「なに? あっ!君起きたんだ!」
二十歳前後の女性が心配して話かける
「大丈夫だった?森のなかで倒れてて…ビックリしたよ」
「はい、大丈夫です。心配をおかけしてすみませんでした」
彼女は別に平気!と言いたげな笑顔を振りまく。それに満足したのかコージは話しかける
「タケルって言うんだよ。ちょっと外に出たいって言うから行ってくるよ」
「じゃあ私も行こっかなぁ?」
ニコニコしながら聞く
「でも足ヘーキか?」
コージは左足を気にする
「ヘーキヘーキ! なんとかなるよ」
コージは嬉しそうに答える
「じゃあ行くか!」
外に出た時
そこは正に日本だった