2話 魔王の婚約者はイケメンですか?ーーーいいえ、クソ野郎でした
「婚約者……だと……?」
「……はい……」
ケインの言葉や様子の節々から、悔しさが滲み出ている。そんなに嫌なのだろうか。まあ、俺も初対面で、劣等種呼ばわりされたからかなりイラついて居るんだが。
「おいおい、この大魔族の末裔にして天才の俺を差し置いて、何こそこそと喋っているんだ。さっさと消えろ、劣等種」
「おい、私の客を貶すな。いくら貴様といえど、許さんぞ?」
「おお、レティシア 、君もいたのか。君も人付き合いを選んだ方がいいぞ?こんな劣等種と絡まない方がいいだろ」
……あーこれはウゼェな。レティシアが諌めたが、聞く耳を持たない。これがレティシアの婚約者?釣り合ってなさすぎだろ。
「まあいい。貴様もすぐに出て行け。俺に殺されたくなければな。アッハハハハハッ!さあ、レティシア、行こうか」
「……私はここに残る」
「そうか、じゃあまたな!」
そう言って、ニンマリ顔でデブは帰って行った。奴がいなくなった後、俺は口を開いた。
「今の話……どういうことだ?」
「っ!貴様は知らんでいい!私も部屋に戻る!ケイン、案内をしておけ!」
「は、分かりました」
そう言うと唇を噛み締め、走り去って行った。残ったケインも拳を震わしている。そんなケインに俺は、もう一度俺は言った。
「説明……してくれるよな?」
「はい……お嬢様は説明するな、とは言われませんでしたから」
もしかしたらレティシアもケインに説明させるつもりだったのかもしれない。そして、ケインはポツポツと話し始めた。
「レティシアお嬢様は、今10歳でございます。なので、魔人のしきたりどうり婚約を結ばねばなりません。そこでレティシアお嬢様の最有力候補に上がったのが、同世代の魔王のグルド様なのです。通常はお断りするのですが……奴は、親の威光と金を使って、最有力候補になったのです」
「レティシアは納得しているのか?」
「ーーいえ。しかし、全て諦めている様子でした……」
「……そうか……」
あのクソ野郎がどうやって婚約者になったのか不思議だったが、なるほどな。
ーーーームカつく。ムカつくな。
「……おい、それを止める方法は無いのか?」
「あ、あるにはあります。魔人は実力主義です。なので、決闘を挑み勝てば……。しかしグルド様は親の力で決闘を受けないので……」
「……なるほど。おい、案内してくれるんだろ?」
いやらしい笑みを浮かべ、俺は言った。
「ーーーレティシアの部屋に案内しろ」
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「ここか……」
俺たちはレティシアの部屋の前にいた。ケインは何も言わない。任せるということだろう。部屋の中からはすすり泣きが聞こえてくる。一瞬、扉を開けるのを躊躇うが、
「泣くぐらいなら我慢するなよ……」
そう言って扉をノックして開けた。
中には、目元が腫れたレティシアがいた。少し部屋も荒れており、暴れたことが簡単にわかった。
「な、な、おっ、お前……」
レティシアは驚きのあまりに噛みまくっていた。今のうちに俺の言いたいことを言わせてもらおう。
「お前の事情は聞いた。いいか。俺はここでお前をかっこよく助けないし、助けられない。どこにも助けてくれる奴なんていない」
「っ……!」
「だが、ムカついた奴ができた。だから、ぶっ飛ばすことにした。絶望はその後でいいんじゃ無いか?」
「……やめろ……。魔人に人間がかてるわけがない!」
「うるせえ。これは俺が決めた。誰にも邪魔はさせない。」
そして振り返って、ケインに問う。
「おい、結婚が決定するまで後何日ある?」
「……一か月ごというところでしょうか。」
「十分だ」
「まさか本当に……魔王を倒すと?」
「当然だ」
これは決定事項だ。さあデブ………ボコボコにしてやんよ!
設定の説明を、子供が魔王ということでしたが、魔王は条件があり、
・魔王の子供
・成人した魔王を倒した者
の二つです。