御令嬢は旅に出たい
初めまして、処女作になります。
豆腐メンタルですがよろしくお願いします。
「ローラ。あぁ、あぁ…!可愛い可愛い可愛い可愛い、愛しのローラ。離さないよ。早く早く早く早く早く、ハヤク私の元へ閉じ込めてしまいたい!」
「ひぃぃ……っ……!」
蒼く煌めく碧眼の瞳がトロリと溶け、恍惚とした表情でワタクシをお姫様抱っこしながら建物の中を高速で歩くこの御方は、公爵家当主セリシア・ヴァイース。ワタクシの婚約者様です。
そして只今、監禁される勢いで運ばれています。どうしてっっ!?
ワタクシはフローラル・ガーベル。今が花真っ盛りピチピチの16歳です。
そして前世の記憶があります。前世のワタクシは三十路も過ぎ、アニメや漫画が好きな普通のOL生活をしていました。普通の。
それがどういう訳か、気が付けば貴族の子爵家令嬢としての生を受けていたのです。
ワタクシは前世の記憶を持つせいか、幼い頃から他国の生活に憧れていました。だって、アニメや漫画の世界がそこに!そこのあるのです!!お城や宮殿や美しい街並みや自然が大好きだったワタクシのどストライクなんですよ!この世界!
前世の国にはない可愛い物がたくさんあるのも生まれ育った国にはない食べ物など、他国に行きたい理由は………ハっ!熱くなってしまいました。すいません。
大人になったら旅に出たい、から、いや出る。絶対出る!と決意する様になったのは、10歳になったばかりの頃に公爵家様がワタクシを嫡男の嫁に娶りたいと婚約させられたからです。
当時、ヴァイース家の嫡男だったセリシア様はお父様に連れられて登城したワタクシに一目惚れをしたそうです。
それから、事あるごとに夜会のエスコート役やドレスや装飾品の贈り物が届く様になりました。その挙句、ワタクシがお話していないお茶会に合わせての届くドレスには戦慄しました。
前世で言う所のストーカーもしくはヤンデレと言うヤツでしょうか?怖い。ヤンデレ怖い。
このままでは済し崩しに結婚して逃げられなくなると思ったワタクシは、成人である16歳になった今日、両親には内緒で旅に出ようと準備をしてセリシア様にお別れのご挨拶に伺いました。
無理やりさせられた婚約ですが、何も言わずに居なくなるよりきちんとお別れをしてから、と思ったのです。それが…
「お…お待ち下さいませ。こう、こうしゃく、さま…!」
「違うでしょう?ローラ、私の事はセリシアと呼んで欲しいとお願いしたのに…悪い子」
「…っ……」
高速移動で舌を噛みそうになりながらも停止を訴えると、低くも甘い声がワタクシに降り注ぎ、ゾクリと腰のあたりが痺れて、身動ぎをする。立っていたら腰が抜けていたかもしれません。
「あぁ、ローラっ!そんな顔で私を誘惑して本当に悪い子だ!!」
「ひゃぁぁっ!」
いつの間にか、セリシア様の部屋にある落ち着いた色合いのソファーに降ろされてがばりと組み敷かれる。
覆い被さってきた時のお顔がギラギラと熱を孕んだ猛獣のようで。怖くて震える。
監禁に加え、貞操の危機ですっっ!!
「ヴァイース公爵様、ワタクシはこれから他国へ旅に出たいのです。ですから貴方とは結婚できません。」と、馬鹿正直に伝えてしまったワタクシを罵ってやりたい!
「逃がさない。逃がさないよ、ローラ。君は私のモノだ。君の、その陶器のように白い肌も宝石の如く煌めき潤む翡翠の瞳もぷるりとして食べてしまいたくなるほど愛らしいピンクの唇も艶やかな絹のような銀の髪、一本に至るまで全て私のモノだ。愛してるよ………愛しのローラ」
あぁ………本当にどうしてこうなったのーーーー
了
読んで頂きまして、ありがとうございました☆
私の中でサブタイはローラの災難です(笑)
誤字、脱字などございましたらご指摘下さいませ。