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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第二章 堅華なる鉄の守り 
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96話 神様との対談①

「へぇ~、Sランクに人間の魔物化…中々デンジャラスかつエキサイティンな生活だったね~」


 経緯を説明し終わると、神様はそう軽く言う。


 何だよその言い方…。もっと普通に言ってくんないかな。


「まぁよく分かりました。ふむふむ、そうかいそうかい…。ただその仮面さんはちょっと気になるね」

「何か心当たりとかないですか?」

「さぁ? 分かんない。いつの時代もそういう意味不明な輩はいるみたいだし、大体人のやることにいちいち神が介入するのもおかしな話だし…。私は基本的に放置します!」


 俺が説明した仮面野郎について、神様はそう勢いよく返してくる。


 心当たりはなし…と。


「…と言いたいところだけど、その人、『貴方の魂を貰いにいく』って言ってたんだよね?」


 ん? 


「ええ、言ってましたね。殺すとかじゃなく…」


 まぁ殺すとは言っていなかったが、殺すことと同義だと俺は思っているが。


「もしかしたら関係あるかもしれないかな…」


 神様がブツブツと小さく呟いており、何か考え事をしているのが分かる。


 何でしょう一体?


「こうして今君に会いに来たのには理由があってさ、ちょっとお願いしたいことがあるんだよー」

「…それは?」


 暇つぶしとかじゃなかったのか…。俺てっきりそう思ってたわ。


「えっとね…返事は後でいいから話だけでも聞いてほしいんだけど、どうやらこの世界の人の魂が…減っているみたいなんだよね」

「魂? …それはどういう意味です?」


 それはつまり、人口の減少という意味か?


「…知ってるわけないだろうから一から説明していくよ。まず、人は1つの魂を持ってこの世界…リベルアークに生まれるんだ。人は魂なくして存在することはできなくて、体と魂の2つがあって初めて人として成り立つの」


 ふむふむ。


「そうですか」

「で、その魂は生まれる時に授かって、死んだときには世界に還元されて次の体に移り変わるというサイクルをしているんだ」


 ほうほう。

 車のエンジンを他の車に流用するんですね。分かります。


「魂は命と同一のものと認識していいですかね?」

「あ、それで問題ないよ。どちらか一方がなくなっても人は死ぬよ。…キミも地球が原産の魂を持ってるし」

「へぇ…」


 なるほど…。地球にも魂ってものはあったのか。

 産地直送されたわけですね俺は。


「ただ世界に現存する魂って循環する性質上数が元々決まっててさ、増えることもないし減ることもないはずなんだよ。それが今減っちゃっててさぁ」

「……マズくないですかそれ」

「うん、マズいねー。原因も分かってないし…。ずっと前から減少は確認してたんだけど、君が来てからそれが加速度的に増えたんだよ。流石に見過ごせない規模になってきちゃってて…。…あぁいや、君が悪いってわけじゃないんだけどね」

「…?」


 ずっと前から減ってはいたけど、俺が来てから加速度的に増えた…?


 …な~んかまた嫌な予感。


「と、これが魂についての説明。んで、今の状況は世界を維持する私にとって一大事。流石に放置はできない事案なんだよ」


 不吉な予感を感じている俺の横で神様が最もらしいことを言ってるが、変な輩を放置した結果がこれではないだろうか? 


 ただの監督不行き届きな気がするんですけど…。


「さっき君が言ってた仮面さんが、もしかしたら何か関係してるのかもしれない可能性が高いかも。というより今は手掛かりなんてそれくらいしかないんだけどね…」

「それくらい神様の力で調べられないんですか?」

「…大抵のことはできるとはいえ、それはあくまで条件を満たしてる場合に限るからねー。誰かを起点に各地を覗き見できなくもないんだけど、それにはその人物を詳しく知っている必要があるんだよ~。だから無理かな」

「あ、そんな前提条件みたいなのあるんですね…」

「もっと言えば、誰かを知ろうにも私は下界には下りられないし、力だって接近しないと効力が及ばないから難しいのが現状なんだよ~」


 下界ってのは地上って意味だろうな…。流れからしても多分合ってるはず。

 神様は地上には下りてこれないというわけか。


 ふ~ん。準備とかしないと結構出来ないことってあるみたいだな…。

 ん? じゃあ何で俺のことは確認してなかったんだ? 暇だって言ってたのに…。


 こちらの世界に来る前のあの空間のことを思い出す。

 あの時に俺自身の過去も覗き見されているし、俺のことは十分知っているはずだったからだ。


「なんで俺のことは見てなかったんですか? 神様は結構俺のこと詳しく知ってますよね?」


 聞いてみると…


「うん知ってるよ。もちろん見ようと思えば見れるんだけど、常に見ててもねぇ…。疲れるし君のプライバシーとかもあるからさぁ、見ないことにしてたんだよね。それに定期的に話を聞こうとは思ってたから…」


 だそうだ。

 まぁ疲れるとかの個人的なことはともかく、プライバシーの侵害は困るので助かったのかな。


「そうですか…」

「まぁ見てなかったのはそういうこと。それに見られるの嫌でしょ?」

「えぇ、流石にそれは…」


 誰かに監視のように見られるのは正直嫌なので素直に答える。


 てか見られて嬉しい奴はそんなにいないだろ。

 いるとしたらそいつは目立ちたがりかただの変態だ、俺は違う。


 俺は…正しい変態だからな。


 あくまでも想像の中でしか変な事は言わないし考えない。そして行動も起こさない。

 そんなアブノーマルな変態と一緒にされては困る。


 清く正しい変態に…俺はなる!!!




 …冗談が過ぎたな。

 真面目な話に戻ろう。


「だよねー。そう言うと思ってたし…了解。口約束だから不安かもしれないけど、見ないから安心してね~」

「はいはい」


 まぁ、これは俺がどうしようが干渉できるようなことでもないし、信じるしかないんだけどな。

 一応信じよう。一応…。


「とまぁ、そういうわけなんだよ。ちょっと協力してくれない? 原因の解明にさ…。もちろん対価は考えてるよ!」


 ほう? 


「…その対価ってなんです?」


 別に言われなくても個人的に調べるつもりだったから対価などなくてもいいが、一応聞いてみる。


「君は元の世界に帰りたがってたよね?」

「はい」

「私が君を直接元の世界に戻すことはできないけど、その手段と方法を教えるのを対価にどうかな?」

「ホントですか!?」


 マジで…!?


 普通ならそんな面倒そうなことは即刻断るところだが、対価にそんなものがあると決まれば話は早い。


 やりますやります、超やります。

 原因の解明はもちろん…仮面野郎もろとも、バックにいる仲間も全員ぶっつぶしてやりますよ?


「あらら? そんなに帰りたかったの? これは意外だね…。なんだかんだこっちに永住する考えとかが芽生えたかと思ってたんだけど…」

「いやー、今現在ホームシックでして…。やっぱり帰りたいですよ」

「ふ~ん。ま、考えてみればそりゃそうだよね。君、家族との繋がりがすごく強いもん。……答えは?」

「やります。協力しますよ」


「ホント!? じゃあ…よろしくね!」


 俺は、神様に協力することにしたのだった。




 ◆◆◆




「取りあえず、調べるのは今君がやってることを済ませてからでいいよ? すぐに動いてもらいたいところではあるけど、そんなに急いだところですぐに解明できるとは思ってないし…。【隠密】の習得…順調なんでしょ?」

「ええ、あと少しで開眼できるかと思います。【成長速度20倍】はやっぱり凄いですよ。凄すぎてむしろ俺が順応できてないくらいですから」

「フフ…随分と恩恵にあやかってるみたいだね。まぁ有効利用してくださいな。今はそれの習得に専念して、それが終わったらよろしくね。【隠密】はあって損にはならないし」

「了解です」

「それで、私の用件は以上なんだけど…何か聞きたいこととかある? 下界…まぁ夢の中だけど、頻繁には来れないから、あるなら出来るだけ今して欲しいんだけど…」


 どうやら神様の用件は以上らしく、俺は色々と聞きたいこともあったので、質問をぶつけることにした。


「いくつか…いいですか?」

「はいどーぞ!」

「えっと…【神の加護】を神様は最初にくれたじゃないですか? あれって…なんかいまいち恩恵を得られてるのか得られていないのかが分かんないんですけど、実際のところどんな影響力を持ってんですかね?」


 これ。

 当初はあらゆる場面で効力を持つと書いてあったから、俺がすることなすことで得た結果に対して、+で何か上乗せされるものだと思っていたんだが、どうも違う気がする…。

 初依頼の薬草収集と…ディープゲイザーの魔道具の時は効力が及んでいたと思うが、それ以外では特に恩恵は得ていない気がする…。


「あー気づいた? これってさ、人によってどの場面で効力が強まるか変わるんだよね。あらゆるって書いてあるけど、正確にはあらゆる場面を考慮してどの方面に影響を与えるかを世界が判断するんだよー」

「……?」

「過去の例を挙げるとね、英雄さんだったら女性関係、賢者さんだったら勉学方面、勇者さんだったら自身の精神面って感じになってるみたいだね。あと、戦闘面は死ぬ可能性を避ける目的で皆必ず恩恵を受けるっていうのと、運気が上がるっていうのがあるよ」


 そうだったんかい…。

 じゃあ薬草の件やらディープの件は運気が原因と見ていいだろうな…。過去の人たちは歴史に残ってる通りだから、確かに納得。

 でも俺は? 


「……俺は…どうなってんですかね? 自分でも実感湧くほどどの方面に影響してるのか分からないんですが…」

「これって自分で気づくものだと思うんだけどなー。う~ん、ちょ~っと待ってね~。今調べるから。………あり? ………」


 神様が急に黙りこんでしまったのを不思議に思いつつ…


「…? どうです?」

「えと……あるよ。幅広い意味で、人間関係が良好に保てるような影響が出てるみたいなんだけど……もう1つあるみたい…」

「もう1つ?」

「うん。別にこれって何個あっても不思議じゃないんだけど、なんだろ…これ…。あるのは確かなんだけど…まだ明確に具現化してないね」


 うん? 神様でも分からんの?


「うーん、なんか取ってつけたような感じだな~。外的要因が絡んでるというかなんというか……。ねぇねぇ、何か変わったことあったりした? すっごい重大事項的なこと」


 この世界に来てからは全てが変わったことなので判断のしようがないぞ…。

 大体さっき話したじゃないですか…。あれが全てでそれ以外なんにm……。




 あ。




 も、もしかしてあれか…? あれならすっごい重大事項って言えるな。

 元々そのことを聞いてみるつもりではあったが、なら丁度いい。


「……後で聞こうとは思ってたんですが、それっぽいことがあります。1ヵ月前になるんですけど、グランドルの平原で…未来の俺と、出会ったんですよ」

「え? ………その話、詳しく聞かせてもらってもいい?」


 俺がそう言うと、神様の声が真面目なものへと切り替わる。

 力に溺れることはないと、激励をされたときと同じような声に…。


「はい。…実は……」


 俺は未来の自分と出会ったこと、そして伝えられたことを…神様に伝える。




 ◆◆◆




「以上で全てです。恐らく俺自身と見て間違いないと思います」

「そう………未来の君が現在に、ね…」


 俺が全てを伝えると、神様は考え事をしているのか口を噤んでしまった。


 …あ、正確には口なんて分からんけどね。球体だし。

 あくまでそう見えるだけ。


 そして…


「それは…記憶が入り込んできてるみたいだし確実だろうね。存在が混じり合うっていうのはそういうことだし。…あの時かなぁ?」

「あの時? もしかして知ってたんですか?」

「んー、知ってたって言えるほどでもないんだけど…確かに1回だけ変な感覚はしたんだよねー。でもその時丁度お風呂入ってたし、あまりにもそれが小さい反応だから気にもしてなかったんだけど…その時っぽいか。やっちゃったねこりゃ」


 ふ、風呂!? あんた風呂入るのか? その姿で入ってたらすごくシュールなんですけど…。

 てか洗うとこなくね? 


 変な所にツッコミを入れている俺を気にせず、神様は言葉を続ける。


「まぁどっちみち過去に飛ぶなんてこと、普通は出来る訳ないよ…」


 ですよねー。


「私以外にはね…」

「え?」


 それ…どういう意味だ?


「私が神として専門とする力は『時』なの。…これ、未来の私も関係してるっぽいよ」




 神様の突然のカミングアウト。

 俺は一瞬、思考が停止した。

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