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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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86話 学院の秘密の部屋

「それと…ハーベンスとは上手くいってるのかい?」


 学院長が急に話題を変え、俺の予想外の質問をしてくる。


「上手くって…どういう意味ですか?」

「いや…男女の仲についてだぞ? 昨日も昼ご飯を二人で食べていたらしいじゃないか。さっきも抱きつかれていたみたいだし、これは疑わざるを得ないだろう?」


 あぁ…知ってたんですね。情報回るの早いな。


「まぁ不純異性交遊はあまり関心しないがね…。いや、生徒と講師の禁断の関係かな?」


 何言ってんのこの人。正気疑いますよ?

 まぁ俺も人のこと言えんとは思うが…。


「いやいや…勘違いしないでくださいよ、そんなことするつもりなんてありませんから」

「「…」」

「なんだ、違うのかい? …でもキミだって男の子だろう? ここで引き下がるのかい?」


 そこは男性と言ってほしいんですが…。一応成人迎えてますし。

 貴女からしたらガキンチョでしょうけども。


 てか…


「貴女一体どっちの意見なんですか!?」

「断然後者だが?」

「それでいいんですか!? 教師ですよね?」

「年頃の男女でその衝動を抑えるのは難しいだろう。私は立場上は止める必要があるが、本音はいいんじゃないかと思ってるよ。だから遠慮しなくていいんじゃないかな」

「ええぇぇ…」


 学院長イミフ。


「ふむ…。奥が深いですね…」


 別に深くなんてねーだろ、何感心してんだポポ。今は教師としてその考えがどうなのかが問われとるんじゃ。そこからズレちゃ駄目だろうが。


「この前も言ったが、バレなきゃいいんだよバレなきゃ…。そうじゃないと世の中やっていけないぞ? もちろん私は見て見ぬふりをするからお好きにどうぞ」


 …教師が言うことには重みがありますねー(棒)


 やっぱりこの人…よくわからない。




「さて、ここだよ」

「…書庫のようですね」


 ポポが辺りを見回している。


 ポポはここには初めて来たもんな。


「ここって学院の地下の書庫じゃないですか? 何か用でもあるんですか?」


 学院長が俺を連れてきた部屋は、一度学院を案内してもらった時にも見た地下の書庫だった。今はあまり使われていないらしく、立ち入る人もほとんどいないみたいだが。


「表向きはね…。だが…」


 学院長が部屋の中心に行って何やら床をいじくる。

 何事かとそれを俺は見ていたが、すぐに床の一部がはだけ、何やらスイッチのようなものが確認できた。


 なんじゃありゃ…? 何かの爆破スイッチとかだったら笑えないんだが…。



『学院はもうお終いだ! 皆死ぬしかない…えい☆(ポチッ)』

『(ちゅどん!!)』

『ギャピー!!!』

『(学院崩壊…)』



 …なんて展開は嫌だぞ俺。まぁあり得んことだろうけどさ。

 ただ、もしそうなったとしても俺は死なない自信がある。割と本気で…。

 もう何も効きやしないよ…俺の体は。


 俺がいらん考えをしていると…


「(ブゥゥン…)」


 床の一部が透けていき、次第にそこには地下へと続く階段が現れた。

 どうやら学院長がスイッチを押したらしい。…爆破はしなかった模様。


 まぁ当たり前だが…俺のその思考は爆破された方がいいのかもしれんな。


「おおー、すごーい!」

「こうやって秘密の部屋につながる階段が現れるんだよ」

「じゃあこの先にヴィンセントが?」

「そうだよ」


 きっと魔道具か何かで作動するものなんだろうな…。

 一体誰が作ったんだろう。消える床とか…どういう仕組みなのかね?


「このことは他言しないように頼む。これを知っているのは、本当にごく少数なんだ」

「了解です」

「秘密基地~♪」


 ナナがやけに楽しそうに鼻歌を歌っている。こういうのが好きらしく、まるで子供の様だ。


 そして学院長は階段へと足を踏み入れ下りていく。

 俺は一旦考えを引っ込めて、その後へ続いた。


 カツン…カツン…と進んでいき、ただひたすらに地下へと続く階段を下りた。

 薄暗いものの、壁に蛍光灯のような光の差す物体があるようで、歩くのにはさほど困らなかった。


 そして地下へ降りること3分ほど。突きあたりが見え、終点へと来たことが分かった。


「ここだ。ここにアルファリアはいる」


 学院長が、石造りの扉を指さしながら言う。


 どうやらここにヴィンセントがいるらしい。


 まさか学院の地下深くにこんなところがあるとはな…。

 びっくりです。


 扉は石造りになっており非常に重そうな印象を受けたが、一般家庭の扉のように簡単に学院長は開けた。

 それが気になって俺も扉に触れてみたが、見た目とは裏腹にとても軽く、石でできているようには見えなかった。

 重さで例えるならプラスチックみたいな感じだ。


 …もしかしたら特殊な石なのかもしれない。この世界にはまだ俺の知らないことがわんさかあるからな。あっても不思議ではない。


 中は昼間のように明るく、それでいて意外にも小綺麗な印象という無機質な部屋だった。

 部屋の奥には白い結界のようなものが張ってあり、その中にはヴィンセントがベッドに横たわっているのが見える。

 そして、その結界の外には白衣を着た老人が立っており、こちらに気づいたのか声を掛けてきた。


「ん? なんだマリファか…。奴ならまだ目覚めておらんぞ」

「そうですか…。特に変化は?」

「ないな。普通に眠っているだけのようじゃ。恐らく…自分の限界を超えた力を行使した反動によるものじゃろう。体は正直じゃからな」


 学院長と老人が話をしている。

 すると…


「…ところで、そちらの若者は誰じゃ? わざわざここに連れてくる辺り、今回の関係者かの?」


 老人が俺のことを見ながら学院長に聞いている。


「ええ。そこのアルファリアを無力化したのが彼です」

「ほう? こ奴が…」


 こ奴って…もう少しマシな言い方あるんじゃないでしょうかね? 怒ってるわけじゃないけど…。


 まぁいいや。


「初めまして、ツカサ・カミシロと言います」

「うむ。儂はヨルム・ケレニス。魔力について研究しとる者じゃ。マリファから昨日連絡があってのぅ、急遽駆け付けてここにいるんじゃ」


 昨日各方面へ連絡を取るようにってリースさんに言ってたしな…。もう来たのか。

 リースさん仕事早すぎ…。そしてこの人来るの早すぎ。


「そうでしたか…」


 内心でリースさんの有能すぎる仕事ぶりに呆れつつも、口ではそれを出さないように言葉を返す。


 そして…


「ヴィンセント…」


 ヨルムさんから視線を外し、部屋の奥の結界を見る。

 俺の視線の先にはヴィンセントがベッドに横たわっており、表情もなく眠りについていた。

 見える範囲で体を見てみるが、特に変化は見られない。本当にただ眠っているだけ。

 その姿を見て、昨日のあの姿が嘘のように思えるほどだ。




 あれは…一体何だったのだろう…。

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