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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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82話 情報交換

「!? その声…ツカサ君か!?」


 中からそんな声が聞こえてくる。

 扉越しだというのにしっかり聞こえてくるということは、中々大きな声で喋っていると見ていいだろう。加えて驚いたような感じにも聞こえた。


「ええ、そうですよ。入ってもいいですか?」

「は、入りたまえ!」


 はいはい、じゃあ今入りますよ~。


 許可が下りたのでドアを開けて中へと入る。

 今度はさっきみたいに扉に引っかかったりはせず、普通に入ることができた。


 ふふん。私、やればできる子。


「どうも、失礼しまーす」


 俺が中へと入ると学院長が机に手をついて立っており、慌てた顔をしてこちらを見ていた。


「ツカサ君! なぜ君がココにいるんだ!?」

「いや…全て終わったからですけど…」

「何!? で、ではアルガントは? グランドルはどうなった!?」


 まぁまぁ、そう慌てなさんなって…気持ちは分かるが。


「無事ですよ。…負傷者、死傷者が少し出たんで無傷というわけではありませんが…。グランドルに問題はありません」

「そ、そうか…。それで…アルガントは無事なのか!?」

「まぁ、掠り傷くらいはありますけど、ピンピンしてますよ」

「…はぁ~! なら良かった…。生きてて…くれたのか…」


 俺がそう伝えると、学院長が力が抜けたように椅子にドサッと座り込む。

 随分と心配していたようで、張っていた肩の荷が下りた感じなのだろう。目を瞑って感極まっているようにも見える学院長を見て、こちらまで安堵してしまう。


 …まぁ、ピンピンしてるけど、正確には色々と後始末で寝不足になって死にそうになってましたけどね。

 生きていたとしても、あれじゃ死んでるのと変わんないかもしれんぞ。言わんけどさ…。




 それにしても…


 う~ん。ギルドマスターはああ言ってたけどさぁ、学院長の方は親友以上のもの持ってそうな気がするんですよねぇ…。

 一番先に心配したのが個人だし、私の推理が正しければ間違いなくそうに違いないべ。真実はいつも一つじゃい。


 ま、深くは聞きませんけどね。

 事件に深く首を突っ込んだら、某探偵アニメみたく背後から殴られて、変な薬飲まされて背が縮むことになっちゃいますから。

 私、これ以上は小さくなりたくはありませぬ。だから言いません。

 あ、でも伸びるっていう話なら喜んで検討しますが…。




「済まない…少し取り乱してしまったね」

「いえいえ、お気になさらずに。当然でしょうその反応は」


 こっちも、いい反応を見させてもらいましたんで…。


「まぁ、もう安心してください。危機は去りましたんで…。それで、まだその情報は王都には届いていないんですよね? ここまで来るとき、なんかピリピリした雰囲気がしてたので…」

「うん。今君に聞いて私も初めて知ったよ…。グランドルに向かったという精鋭部隊もまだ戻ってきてはいないし…」

「あ、さっき戻ってきてましたよ? 朝早くにはグランドルを発ってましたし」

「そうだったのかい? なら…すぐに報じられることだろうな」

「というより、何で普通に授業やってるんですか? こういう時って、避難とかするんじゃ…」


 今回の災厄、半端ない規模だって言ってたしな。

 危機意識低すぎやしないか?


「それなんだが…。連絡があった時はいなかったんだが、昨日の夜に『鉄壁』の二つ名を持つSランク冒険者が、王都に戻ってきたんだよ」

「え? Sランクの冒険者がですか?」


 え…マジで?


「そう。先にグランドルへ向かった精鋭部隊は追わずに、王都の守護の命を受けたらしくてね。今回ほどではないとはいえ、一度モンスターの進軍を食い止めた実績がある人だから、安心感があったんだよ。Sランクというのは…それほどの存在だよ」


 確かに、戦力を他に割いた結果手薄になっちゃいましたなんて…駄目だろうしな。

『鉄壁』ねぇ…。意外とシンプルな二つ名だ。

 羨ましい…。


「うわ~。すごいね~その人~」

「うん。とてつもない人だが、君も同じようなものだろう?」


 学院長が俺を見ながら言ってくる。


 …まぁ、そうでしょうね。

 進軍を食い止めたのも十分すごいけど、そいつらを速攻で全滅させた俺も十分ヤバい。

 もうちゃんと自覚しております。


 言わないけど、なんか二つ名もつけられちゃいましたよ。


「まぁ、そういうわけだ。学院という避難先に留める目的もあったが、慌てても仕方ないということで普段通り授業を行っていたんだ」

「へぇ~、そうでしたか」


 一応納得はしたけど、それでも授業やるとかは正直納得はできんけど…。

 感性がよう分からんな、やっぱり。


 まぁいいや。

 俺が何を思ったところで、変わるわけでもないし。




「じゃ、その話はその辺にして…。ヴィンセントってどうなりました?」


 聞きたかったことをいよいよ聞く。


「アルファリアのことだが…今は全身を拘束して身動き一つ取れない状態にして、とある場所に隔離している。意識を失ってから、まだ目を覚ましていないがね」


 まだ、目が覚めてないのか…。

 恐らくはあの変化が原因だろう。まぁ指輪も影響してるとは思うが…。


 昨日のことの一部始終を思い出し、俺はそう考えていた。

 アレ以外、原因が見当たらない。


「とある場所とは?」

「…君にも、彼の様子を見て貰った方がいいかな。今夜、彼の様子を見に行くから、その時に一緒に来てくれないか? その時に教えるよ」

「…そうですか。分かりました」


 学院長が真剣な表情で言ってくる。

 その学院長の表情を見て、すぐに俺は察した。


 その場所は…極秘ってことですね。あまり口にはしてはいけないと…。


「それとあの指輪に関してなんだが…まだ分からない。これは少し時間がいるだろうね」


 昨日の今日ですからね。そりゃしょうがないわ。


「後で当時のことを教えてもらいたいんだがいいか? 当時現場に居合わせた者には話を聞いたんだが、彼が…魔物化した前後を知ってるのは君だけだからね」

「はい。いいですよ」

「よろしく頼むよ。ちなみにだが…昨日の彼のことはまだ身の内に留めておいてくれ。…人の魔物化など、公にすれば混乱を起こしかねないからね…」


 だよな。

 言われんでも、それは分かってるつもりです。


「…了解です。ただ、何か分かったらすぐに教えてください。俺は当事者として、それくらいは知る権利あると思うので」

「分かった。分かり次第すぐに連絡しよう。えっと…ひとまず話は以上かな?」

「ええ。ひとまずはそうじゃないですかね?」


 うん。大体情報交換できたんじゃないかな?


 俺がそう思っていると…


「ふぅ…これで少し落ち着けるよ」


 学院長が深く息をついて、リラックスできる体制を取り始める。


 お疲れさんです。


「それで、一応残りの仕事を片付けようと思ってまして、残り…あと1日ありましたよね? どうしたらいいですか?」

「…ああそうだったね。今日はもう無理だろうから…明日でいいよ。日程が少し狂ってしまったが、問題はないだろう。…というより、大丈夫かい?」

「何がです?」

「……あ、いや、…何でもない。君だもんな…」


 学院長が何か心配してきたが、俺の反応に急に態度を変えた。


 …まぁ言わんとしていることは分かりますよ。

 どうせ、それだけのことをしでかしておいて、君の体は平気なのかい? とかそんなとこだろう。

 私だって、ピンピンしてる自分が可笑しく見えてますわ。こっちの世界に来る前の私だったら、まず間違いなくあり得ないくらいの労力を見せてるし、私が何人いたところで無理なことをしてますからね。

 私が一番驚いている今日この頃です。


 今地球に帰ったら…俺、世界規模で殺しにかかられるんじゃなかろうか?

 これだけの危険生物…地球じゃいませんし。それだけの戦力を持ってますよ?

 どーしましょーかねぇ(遠い目)




 まぁ、んなこた今はいいや。


「…はい。気にせんでください」

「そうか…。なら、夜にまたここに来てくれないかい? それまでは寮で休んでてくれ。まだ、少しだがやることがあるのでね」

「あ、邪魔してすみません。それじゃ、また後で来ますね」


 多分だけど昨日の件でのことかな? それは悪いことをしました。


 今は夕方くらいの時間帯。

 じゃあちょいと休ませてもらいましょうかね。


「それと…黄色い彼は…言っていたもう一匹の君の従魔なのかな?」


 と、俺の肩を見て学院長。どうやらポポのことを言っているらしい。


 そういや自己紹介してませんでしたね。


「お初にお目に掛かります。ご主人の従魔をしております、ポポと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


 ポポが丁寧に挨拶をすると…


 学院長の目を丸くしてポポを見つめる。


「随分と…礼儀正しいんだね。ナナ君の方はもっとラフな感じだったんだが…」

「コイツら全然性格違いますからね、ポポは元々こんな奴なんですよ。…確かにナナはラフ過ぎますが…」

「だって敬語面倒くさいんだもん」

「いや、別にいいだけどさ…」


 今更喋り方変えられてもむしろこっちが困る。なんていうか…コレじゃない感がすごいだろうし。

 今のままでいいぞ。それでこそナナだ。


「そうなのか。…ポポ君、君のことはツカサ君から少しだが聞いている。私はマリファ・アステイル。この学院の学院長を務めている。こちらこそよろしく頼む」

「はい」


 お二方の挨拶が終わったので…


「それではまた…」

「大丈夫だとは思うが…。武器、抜き身だから気を付けるんだぞ?」

「はい」


 念押しされちゃいました。




 俺たちは学院長室を後にした。

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