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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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81話 タクシーで再び王都へ

 店を出た後はこの前みたく無断で居なくなるという事態を防ぐために、『安心の園』へと行ってミーシャさんらに今日は泊まらないということを伝えた。

 俺の背中の大剣を見て、最初目が点になってたけど…。

 その時「え~! またですか!?」と驚かれてしまったが、まぁそれはしゃーない。

 昨日は急に泊めさせてもらって、今日は急に泊まらないっていう連絡だからな…。申し訳ない気持ちは十分ある。

 一応、今度何かでお詫びをするといってやりすごしたが…さて、どうしたもんかね?


 …まぁ、今度考えよ。


「っし、じゃあ行くか!」

「「………」」


 俺が元気よく言うが、2匹からは返事がない。


 どした?


「オイ、どうかしたのか?」

「いや…だってまた王都まで飛ぶんでしょう? なんていうかここ最近…移動ばっかじゃないですか? 私たち…」

「異議なしー」


 と、ジト目の2匹。


 …あぁ、そういうことね。

 要するに不満だと…。俺たちをタクシー代わりにしてねぇかコノヤローというわけですね。

 ふむふむ、それはそれは…




 勿論じゃないですかぁ!




 タクシーなんて比じゃない。空に道なんてものはないし、最短距離で目的地まで移動できる完璧な乗り物だぞお前らは! 車がめちゃくちゃショボく見えるほどにな! 利用したい人はさぞ多いことだろう。

 それを独り占めできちゃう俺…。ああ! なんて素晴らしい…


 ゆ・う・え・つ・か・ん…☆




 ……ゲフンゲフンッ! 

 おっといけない。もう一人の俺が出てきちまったようだ…断じて俺はそんなこと思ってないからな?

 今の俺はキレイな俺。もう一人の奴は汚い俺だ。

 たまに出てくるんですよねぇ…。


 あ、でもタクシーってことは、乗った分何か対価を与えれば良いということなのでしょうかね?

 もしそうなら何でもしてあげますよ? 私にできる範囲なら。




 まぁ冗談はさておき…


「スマン…愛してるから頼むわ」

「え、キモイんだけど…」

「そうかそうか嬉しいか。じゃあよろしく」

「話聞いてないし…」

「はぁ…。まぁ別にいいですけど」


 てな感じに、俺たちは王都へと出発した。




 ◆◆◆




「お? あの人たちは…」

「精鋭部隊の人たちですね」


 結構飛ばして王都まで来たんだが…門の前に精鋭で来てくれていた冒険者の人たちがおり、今門の中に入っていくのが見えた。

 この人たち、日が昇る前に王都へと戻ったと聞いていたんだが…。どうやら追いついてしまったらしい。


 鉢合わせしなくてよかった。面倒ごとになりかねんし…。


「危なかったね…。鉢合わせしてたら連れてかれてたよ、きっと」

「でしょうね。報告も楽そうですし」

「…助かったな。にしても、早くてもあのくらいか…」


 安堵しながら、改めて俺たちの移動速度が尋常ではないことを再確認した。


「取りあえず、行くか」

「はい」




 門を通って、学院を目指す。


 昨日は許可なく門から出ちゃったけど、入る時には特に何も言われなかった。


 管理体制はどうなってんだろ…? 意味なくね?

 それとも、城壁が高すぎるし、それを越えて出るような奴はいないから特に考えてないのかなぁ…? 分からんけど。




 ◆◆◆




 …まぁ、王都の中では飛んで移動なんてできないので、歩くこと1時間くらい。学院の場所はもう知っているので、迷うこともなく辿り着くことができた。


 学院の入り口を見てみるが…


「ヴィンセント…移動させたのかな」

「じゃない? 1日ずっとあそこに放置はないだろうし…」

「…まぁそりゃそうか」


 昨日一悶着あった場所を見ると、所々に争ったような跡が残っている。

 …とは言っても、俺が地面をめくりあげてしまったのが一番目立つが。一応平らにしてはあるが、そこだけ舗装もされずに地面がむき出しのままだ。


 あと、ヴィンセントに乗っけていた岩も道の脇に置いてある…。

 これはきっと処分できなかったんだろうなぁ…。デカいし。


「昨日言っていた現場がここなんですね?」

「ああ。ここでちょっとな…」


 ポポには昨日の夜にこのことはきちんと話してある。それを元にどうやら察したようだ。


 ヴィンセントの手足に剣を刺したから、地面に奴の血の跡らしきものも確認できる。

 これをわざわざ消していないということは、状況証拠として使えると判断したからかもしれない。


「ツカサ!? なんでここに!?」


 俺たちがその場にしばらく留まっていると、横から声が掛かる。

 そちらを見ると驚いた顔のフロムさんが立っており、こちらに駆け寄ってくるのが見えた。


「お前、グランドルに行ったって聞いたんだが…」

「あ、終わったんで戻ってきました」

「は? 終わった? どういうことだ…それ?」


 フロムさんはどうやらまだ何も知らないのか、不思議そうに俺を見ていた。


 あぁ、ちょっと町が慌ただしかったのはやっぱりそのせいか。

 さっき精鋭の人たちが王都に着いたばかりだしなぁ。あれが一番早い連絡だろう。

 まだグランドルの危機が去ったことを知っている人はいないんだもんな。


 遠方への連絡にはあのクリスタルみたいなのを使えばいいじゃんと思ったもんだが、聞いたところ使えるまでに結構時間掛かるらしいからそれも無理か。

 ならこの反応は至極当然だ。



 事のあらましを取りあえず説明する。



「マジか…。お前…すげーなぁ。なんか武器も背中に背負ってるしよ…。なんかそれっぽいな」

「アハハ…どうも…。それで、ヴィンセントはどうなったんですか? 別の場所で拘束してるんですか?」


 フロムさんなら何か知っているのではと思い、聞いてみる。


「あの坊ちゃんか? 俺も聞いただけの話だから詳しくは分からねぇけど、なんかどっかに移されたって聞いたけどな…。場所は分かんねぇけど」

「そうですか…」


 どうやら知らない模様。


 学院長に聞いた方がよさそうだな…。


「…アイザさんはどうなりました?」

「アイザは…まだ動けないみたいだが、意識は普通にある。医師曰く、血の失いすぎでしばらくは動けんだとよ。…まぁツカサが回復魔法を掛けてくれたおかげで助かったんだよ。ありがとな」


 良かった…。

 結構不安だったんだよな…。



「…そうでしたら良かったです。それで、学院長って今学院にいますかね?」

「いるはずだぜ。今日は俺ずっとここにいたけど、出ていく姿を見ていないからいるはずだ」

「了解です。中…入ってもいいですかね?」

「おう、いいぞ」

「じゃあちょっと学院長のとこ行ってきます」




 フロムさんとの話を終えて、俺は学院長室に向かった。




 ◆◆◆




 学院長室の前に立つと…


「ふむ。誰もいませんでしたね」


 ポポが口を開いた。


 昨日はあれだけの騒ぎだったが、どうやらもう落ち着いたらしく、生徒は皆教室で授業中のようだ。庭、廊下を歩けども人は誰も見当たらなく、教室から声がするのできっとそうだろう。

 ポポは学院の雰囲気とか知らないだろうから、多分不思議に思ったに違いない。


「いや、授業中に出歩いてる奴がいたら、そいつサボりだろ…。いなくて良いんだよ」

「あ、それもそうですね」


 うん。それが普通だ。

 もし出歩いている奴がいたらお仕置きしなきゃいけないし。もちろん純粋な意味で…。


 …。


 …なんスか?

 俺は確かに脳内下ネタオンパレードの変態ですけど、一応良識を持った変態ですからね? そこは勘違いしてもらっては困りますよ。

 大丈夫、変な事は考えちゃおりませぬ。今は…。時々考えてたりしますけど…そこは男なんだから仕方ないじゃないッスか!

 俺は悪くねぇっ!




 まぁ、俺の心の叫びなんてものはさておき…


「学院長、カミシロです。いますか?」




 ノックをして、俺はそう口にした。

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