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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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79話 『聖眼』

 取りあえず、Sランクに関しては取りあえず保留にしておいた。

 結果はほぼ決まっているとはいえ、すぐに受け入れられるものではないし…。


 ただギルドマスター曰く、Sランクになるのを拒否する奴なんて聞いたことない…だそうだ。


 …ほっとけ。


「それで、用件って以上ですかね?」

「うむ、私からはこれくらいだな。他に連絡することがあれば追々通達する」


 いや、これ以上はもういらないんですが…。あんまり嬉しくない連絡な気がしますし…。


 まぁいいや。次は俺からも質問させてもらいましょうか。


「了解です。じゃあ今度は俺から質問いいですか?」

「ああ、聞こう」


 聞くのは俺のステータスをなぜ知っていたのかについてだ。


「ギルドマスター、貴方は俺が学院に行く前の時点で、俺のステータスを知ってましたよね? それ、どうやったんですか?」


 学院長から既に言質は取れている。


 何か方法あるんでしょう?


「…やっぱり聞いてきたか。まぁ…言うよりも見せる方が早いな、私の左目を見ててくれ」


 ギルドマスターが自分の目を見るようにと、言ってくる。


 う~む、その台詞は女の子に対して言ってみたい台詞ですねぇ。少なくとも男に言う台詞ではないな…。

 まぁそんなことは微塵も思っちゃいないだろうけど。


 ギルドマスターの左目をジッと見つめる。

 すると…


「え?」

「変わった…」


 黄色から、灰色へと変わっていく。

 俺とナナは、目の色が急に変わったことに対して驚きを見せる。…ポポはというと、何の反応もしていなかったが。


 そういえば、ポポは昨日知っていてもおかしくなかったのかもしれないな。聞いておけば良かったかも。


「これが…お主のステータスを知っていた理由だ。魔眼を見るのは初めてか?」

「魔眼? ハイ…初めて見ました」


 魔眼っていうのか…。初めてに決まってるっしょ。

 アニメじゃよく見るかもしれないけど、リアルでそんなもの見る機会とかあるわけないじゃん。

 …目の前にいるけど。


「そうか…。まぁ持っている者は少ないからな。私の魔眼だが…これは『聖眼』と言われている」

「『聖眼』…ですか」




 それから、『聖眼』の能力について説明を受ける。




 ◆◆◆




「…というわけだ。この眼を使って、以前お主がここに来た時に覗き見させてもらった」

「そうだったんですか…」


 そして、目は黄色へと戻り普段と同じ色へと戻った。


 なんとも便利なものがあったもんだな。

 なるほど…学院長が言わなかったのもこれが理由か。確かにこれは言えないわなぁ…。

 ギルドマスターは確かに強いけど、狙う輩は出てきそうだし。


「貴方が俺のステータスを知っていたのはよく分かりました。ですが…えらくあっさり言いましたね?」

「『聖眼』の能力に対象の善悪の度合いが分かると言っただろう? お主は極めて問題ない範疇であるし、伝えても問題ないと判断したまでだ。…それに、バレてしまっていた以上どのみち時間の問題だっただろうがな。お主が悪ではなくこちらも命拾いしたぞ」

「あぁ、そうですか…」


 だそうです。

 どうやら俺は悪じゃないらしい…。


 善悪の基準がよく分からんけど、変なことを考えたりしてるのは問題ないのかな?

 口に出したらすぐ訴えられそうな内容を結構普段から考えたりしてたんだが…。

 まぁギルドマスターを信じましょうかね。


「…別に言いふらしたりはしませんよ。する意味もないですしね」

「助かる。…覗き見して済まないな」

「…貴方はギルドの長ですから、気持ちは分からないでもないですし…気にしないでください。ただし、俺のステータスは黙ってて下さいね?」

「勿論だ」


 誰が信用できて、誰が信用できないか。もしくは危険性の高さを判断する基準にもなるし、ギルドの治安維持のためにも活用しない手はない。


 …まぁ俺絡まれたりしたから、治安が保たれてると言えるかは分からんけど。


 なんにせよ、俺が同じ立場だったら密かに同じことをする自信がある。

 覗き見されたのはいい気分ではないが、よくよく考えてみると別に苛立ちは感じなかった。


「ご主人…やっぱり甘いですね。そこはそれをネタにして、ギルドマスターに今後融通を利かせたりすればいいものを…」


 ポポがジト目をしながら俺に対して言ってくる。


「いや…それも確かに考えたけど、やっぱり実際にはできねーよ。俺には無理だ…」


 誰かを脅したり、いいように使ったりするのはどうにも無理だ。

 もしやったとしてもそれが逆にストレスになって、俺の方がダメージ受けそうだし。

 これは性分なのかな…。


「まぁ…そこがご主人の良い所でしょ。ポポも分かってて意地悪しないの」

「…すいません。冗談が過ぎましたよ」


 ポポがパタパタと翼をふる。


 だよな。

 ポポがまさか本心でそんなことを思っているとは微塵も思っちゃいない。冗談だとは思ってはいた。


「ちょいとビックリしたぞ。お前からまさかそんなことを聞くとは…」

「アハハ…すいません」

「…自分で言うのも変だが、その考えは特に不思議なことでもないがな。お主はもう少し他人に厳しくしていいのではないか?」


 ギルドマスターからも言われてしまったが…


「ん~、それはちょっと勘弁願いたいですね。ガキの頃それで痛い目見てるんで、ちょっと怖いんですよね…」


 脳裏に、嫌な記憶がチラつく。


 もう、あんな経験は嫌だしな。

 脅したりはしたことないが、厳しくっていう点では嫌な記憶しかない。

 今の俺でなんだかんだ上手くいってるし、もういいんだよ。親父にはマジで感謝だな。


「ご主人…?」

「…過去に何かあったのか?」


 ギルドマスターが俺のことを察したのか、聞いてくる。


 ヤベ…ちょっと暗い顔しちゃってたかな?


「…まぁ、大したことじゃありませんよ。ちょっと嫌な経験っていうだけのもんですから。ポポとナナも気にしなくていいぞ」

「ふむ…なら深くは聞かないことにしよう。相談にはいつでも乗るぞ?」

「ないとは思いますけど、その時はよろしくお願いします」


 でもまぁ、ポポとナナには今度軽く伝えておこうかね。もう遠慮はしないって言ったし…。


 ギルドマスターの気遣いに内心で感謝しつつ、話を終わらせる。


「それで、俺…これからどうすればいいですかね? 学院に戻った方がいいんでしょうか?」


 学院があの後どうなったのかが非常に気になる。

 ヴィンセントのこともそうだし、アイザさんの容体も気になるんだよなぁ。後遺症とか無ければいいんだが…。

 何か知ってたら聞いてみたいが、きっとギルドマスター知らんだろうし。


「…そうだな。残りの日数は確かもうあまりなかったな? そうであれば仕事を片付けて貰っても構わんが、事が事だったし、急がんでもいいぞ? 少なくとも一週間後くらいにはこちらにいて貰わねば困るな」


 う~ん、やることもないし…今は好きに動かせてもらおうかな。

 取りあえず学院に戻って、仕事を終わらせますか。


「了解です。じゃあ、俺学院に戻りますよ。学院長にもギルドマスターが無事だって伝えたいですし」


 学院長の心配そうな顔を思い出す。


「そうか、了解した」

「学院長、すごく心配そうな顔していましたよ?」

「むぅ…。それは悪いことをしたな…」


 俺がそう伝えると、ギルドマスターが申し訳なさそうな顔をしていた。


 あらあら? これはもしかしちゃったりするのかな?


「仲…いいんですね?」

「…まぁな。親友だからな」

「…本当にですかぁ? 恋人とかじゃないんですかぁ?」


 男女で親友ってあんまり聞かないんですけどねぇ…。

 そこんところどうなのよ?


 俺がウザい声で聞くと…


「それはないな」

「………」


 即答されてしまった。


 え~…。何だ、違うんかい。つまんねーな。

 あんな美人さんなのに勿体ない…。

 それにあのメロンに目がいかない朴念仁なのかアンタは…。


「それはないな」

「そうッスか…」


 くそぅ。もし恋人とかだったら茶化しまくってたのに…。

 俺のウザトークをお披露目できないではないか! ギルドマスターのバカ!


 チッ! 違うのなら仕方ない。


「…じゃあ、俺行きますね」

「これから行くのか?」

「ええ。なるべく早い方がいいかと思いまして…」

「そうか…気をつけてな」


 うむ。気をつけますん。


「ご主人~、行くのはいいんだけど、その前にベルクんとこ行こうよ。武器…出来てるって言ってたし」

「あ! …そうだな。そうしようか」


 ナナの言葉に、ハッと思い出す。


 すっかり忘れてたな…。ホント抜けてるわ俺。

 じゃあ、ベルクさんとこ行ってから王都を目指すってことで決定。


 また王都へ逆戻りか。忙しいな俺たち…。

 宅配業でもやったら繁盛しそうな気がする。絶対やらんけど。


「じゃ、失礼します」

「マリファによろしく言っておいてくれ」

「はい」




 ギルドマスターとの話を終え、俺はギルドから出て行動を開始した。

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