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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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73話 白熱する戦闘(別視点)

「グオオオオオオッッッ!!」


 草原にけたたましい声が響く。

 いち早く、自分たちに近づいてくる存在に気づいたのであろう。5体のドラゴンの内の1匹が、他のモンスター達を飛び越え、大きな雄たけびと共にポポ達に向かって真っすぐ飛んでくる。

 まだ若い個体なのか5mほどといったところだろうか。

 ただ、それほど大きくはないとはいえ、ドラゴンはドラゴン。持っている力は非常に脅威といえる。


「ギルドマスター。まずは目の前のドラゴンをやりましょう。私の背に…」

「うむ! 借りるぞ!」


 それを見たポポ達も行動を開始。アルガントがポポの背中へと飛び乗る。

 ドラゴンを見てポポは…


「…あのドラゴン、あまり早くないみたいなのでギリギリで左に躱します。すれ違いざまに攻撃してください!」


 事前にアルガントのステータスと得物を聞いており、どのような戦闘スタイルなのかもポポは知っている。

 だからこそ、この判断をした。


「心得た! …っ!?」


 ポポの作戦に了承したアルガントだったが、目の前のドラゴンが息を吸い込み、火のブレスを吐いてくるのを見て、口を噤む。

 熱で周りの視界が揺らめき、ドラゴンの姿が歪んでいる。

 かなりの熱のようだ。当たったらひとたまりもないだろう。


 だが…


「っ!? やっぱりやめま「そのまま進め!!! 斬り開く!」

「っ…ハイ!!」


 アルガントの言葉を聞いて、ポポは中断しようとした自分の作戦をそのまま続行。ブレスの中に突っ込んでいく。


 ブレスが間近になったところで…


「『双連斬(ダブルスラッシュ)』!!!」


 アルガントが2本の剣を華麗に振るうと、ブレスは縦に割れてポポとアルガントを避けていくように過ぎ去っていった。


 そして…


「ぬぅんっ!!」

「『四の型・翼剣(ウィングブレード)』!!」

「グギャアアアッッ!?」


 そのままアルガントはポポから飛び離れてドラゴンの右の翼を斬りつける。

 ポポは翼が刃物のように鋭利になり、同様に反対の翼を斬りつけた。

 翼を斬りつけられたことによりドラゴンはバランスを崩して落下していき、鳴き声を上げながら地面に落ちて大地を削る。


 そんな好機を見逃すはずもなく、アルガントも地面に降り立ってすぐにドラゴンまで移動。飛びつくように頭に剣を突き立て、絶命させた。

 ドラゴンの全身は非常に硬い鱗で覆われているはずだが、それを貫けるのは流石ギルドマスターといったところか。


「「「「「おおおおおおっっっ!!!」」」」」


 ドラゴンを1匹仕留めたことによる歓声が、後方で湧き上がる。

 ドラゴンが倒されるような場面に遭遇したことのある人間は少ない。インパクトは相当なものだったのだろう。




「ひゅう♪ やるね~ギルマス」

「ポポも凄い…」


 シュトルムとセシルにも印象強く残ったようで、立ち止まってそれを見ていた。

 だがそれも一瞬。すぐさま意識を目の前に戻し、行動を開始する。


「セシル嬢ちゃん、俺たちはポポ達の援護だ! 他の連中を片付けるぞ!」

「ん、オッケー」


 ポポとアルガントがドラゴンとの戦いに専念できるよう、シュトルムは周りのモンスターを相手にすることに決めたようだ。

 シュトルムが手を前にかざし、詠唱を開始する。


「荒れ狂う炎よ、爆ぜて唸り…業火と共に全てを屠れ!! 『エクスプロ―ジョン』!!!」


 詠唱が終わると、モンスターの中心に大爆発が巻き起こり、轟音が草原を駆けた。

 多くのモンスターがその影響を受け、皮膚と肉を焼かれて空を舞い…吹き飛ばされる。


「へっ! どんなもんよ!」


 その光景を見たシュトルムが自信満々に胸を張る。

 しかし、爆発を辛うじて免れたモンスター…、オークが横から迫っていることには気づいていないようだ。


「ブオオオオッ!!」

「うお!? ヤベ…」

「ブギャッ!?」

「!? …セシル嬢ちゃんか!? ふぅ…助かったぜ~」

「シュトルム…油断しないで。…死ぬよ?」


 オークが、持っていた槍をシュトルムに突き出そうとしたところで、セシルが自身の得物である魔導弓で打ち抜き、それを阻止する。

 オークの頭と胴体には、光る矢が2本刺さっていた。


「悪ぃ悪ぃ…たまたまだって。…もう平気だ、あんがとよ!」

「はぁ…、しっかりしてね」


 シュトルムのチャラチャラした態度に、セシルは呆れているようだ。

 まぁ戦場のど真ん中で今さっき危険に陥った奴が、こんな態度を取っているからそれも仕方ないが。


「接近されないように立ち回りつつ、極力遠距離から攻めるよ?」

「合点! 接近得意じゃねぇしな…」


 シュトルムは一応剣を腰にぶら下げてはいるが、それを積極的に使うことはあまりない。

 エルフという魔法が得意な種族ということもあり、魔法での後方支援が主な戦闘スタイルだからだ。

 セシルも同様で、魔導弓と呼ばれる遠距離狙撃用の弓を持っているため、接近戦は出来ない。こちらも魔法での支援が主なスタイルだ。


「あと…ドラゴンの吐くブレスの飛び火には注意だね。食らったらひとたまりもない…」

「だな」

「ん、じゃ…やろっか?」

「おう!」


 シュトルムとセシルが互いに背中を合わせ周囲を警戒。戦闘を開始した。




「行ける! 行けるぞ俺たち!!」

「遅れを取るな! 俺たちも続くぞ!」


 他の冒険者や兵士も行動を開始し、シュトルムとセシルを援護するためにモンスターの集団に向かって果敢に飛び出していく。ドラゴン達と戦っているポポとアルガントの援護には入らない模様。

 …入ったところですぐお陀仏なのが分かっているし、むしろ邪魔になってしまうと思っているからだ。

 懸命な判断である。


 それぞれの者が、生きるため、家族を…町を守るため、自分自身の誇りのためといった考えを持って、戦いを始めたのであった。




 そんな冒険者達の姿を見ていたポポ達。


「さて…ここからですか…ねっ!!」

「グゲッ!?」

「…もう今みたいにはいかないでしょう」


 と、ポポが、近づこうとしてきたゴブリンに向けて、翼を振るいながら呟く。

 ゴブリンはというと、眉間に黄色い翼が突き刺さっており、その一撃で絶命したようだ。

 どうやらポポは自身の羽を針のように飛ばしたらしい。

 今は先ほどのように、翼は鋭利な状態から普段の翼へと戻っている。


「だろうな…。先の奴は下っ端のようなものだろう。ここからが正念場だ」


 ポポの言うことにアルガントも同意し、前を見据える。

 少し離れた前方には、4体のドラゴンがこちらを観察しながらジッとしている。どれも10m以上の大きさであり、先ほどの個体よりも随分と大きい。

 1体目のドラゴンがやられたのを見て、随分と警戒しているようで、無駄な動きは一切していない。



 ドラゴンは巨大な体躯からは想像もつかない速度で飛ぶことができ、また知能も非常に高い。軽く爪を振るうだけで大地が抉れるほど力もとてつもないが、老齢のドラゴンともなると魔法すらも使役することが可能になると言われている。

 これがモンスターの中では最強の部類と言われる所以である。



 そんな脅威すぎるドラゴンが、あのように警戒しているところに突っ込むほどポポとアルガントは馬鹿ではない。

 むしろ、焦りを感じているほどだ。知能の高いドラゴンがこれから何をしてくるかが、想像できないからだ。


「(無理矢理とはいえ、ご主人からドラゴンと戦う機会を与えてもらえてよかった…。じゃなければもっと不安だったでしょうね)」


 心臓がバクバクと早まっていくのを感じながら、ポポは内心でそう考えていた。

 ドラゴンとの対峙が今回初めてだったら、もっと焦りを感じてどうにかなっていたかもしれない。

 それほどの威圧感を奴らは放っている。


「ポポよ、私も恐らくお前と同じ状態だろうが、まずは落ち着こう。焦りは死を早めるぞ」

「…ハイ」


 アルガントがそんなポポを気遣ってか声を掛けてくる。

 アルガントもポポと同じ気持ちのようだ。額からは汗が滲んでいる。


 だが、そんな状況を堪えられなかったのか、ドラゴン達が動き始めた。


「っ!? 来るぞ!!?」

「っ…ええっ!! 腹ぁ括りましょうかね!!!」




 このまま時間が稼げればと思っていたポポだったが、それは叶わない。

 4体のドラゴンと、ポポとアルガントの戦いが…今始まった。

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