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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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71話 『才能暴走』

「っ!? まさかアルガントかっ!? 一体どうした!?」

『緊急事態だ!! そこにあ奴はいるか!?』

「あ奴?」


 学院長がギルドマスターの声にすぐさま対応する。

 何やら学院長の方も焦っていることから、本当に只事でないと思われる。


『カミシロのことだ!』

「あ、ああ…いるぞ? 隣に…」


 え? 俺?


 どうやらギルドマスターが用があるのは俺らしい。


『なら丁度良い。カミシロ! 今すぐグランドルに戻ってきて欲しい!』


 学院長が胸に手を突っ込んで、何やら結晶のようなものを取り出す。どうやらこの結晶から声は出ているようで、淡く光っている…。通信機みたいなものだろうか…?

 先ほどアルファリア様らが使っていたものと、それはよく似ていた。


 学院長の一連の行動を見て、一瞬…なんて破廉恥な!? でもラッキースケベ万歳! とか思ったのだが…そんなわけではなかったらしい。

 まぁそりゃそうだよな。


「一体どうしたんですか? すごい慌ててますけど…」


 そんな考えを頭の片隅に押しやり、理由を尋ねる。

 だが、伝えられた内容は俺のアホな思考回路を正常にさせるのには十分すぎるものだった。


『グランドルに大量のモンスターが迫っている!! このままではグランドルは…』

「え?」

『壊滅する!!』




「アルガント! それは本当か!?」

『冗談でこのようなことを言うほど愚かではない! モンスターの軍勢はラグナ大森林から発生したようだ! 先ほどラグナ大森林で観測をしていた者から報告が来た!』


 ラグナ大森林…。そういえば活性化の兆候があるってマッチさんが言ってたな。職員を派遣するとも…。

 こんな早くて大規模なものだったのか!?




『でも変なんですよね。活性化って周期が大体決まっているんですけど、今回は随分と早いというか…』




 脳裏にマッチさんの言葉がよぎる。


「数はどれくらいなんだ!?」

『ざっと1000はいると見ていい…。ポポもそれを確認しておる』


 ポポが? なら間違いないな。


「1000だと!? 馬鹿なっ!? 」

『真実だ。それに加えて…もっと酷い報告もある』

「何だ?」

『…ドラゴンが数体…確認されておる』

「なっ!?」


 ギルドマスターの言葉に学院長が驚愕している。もちろん俺も同様だ。

 ドラゴンは人里離れた場所にしか基本的には生息していないため、グランドル周辺にはいるのは考えられないからだ。ラグナ大森林にも生息してはいない。


 なんでグランドル周辺にドラゴンがいるんだよ…!

 あり得ない…。


『発生の原因は不明だ…観測していた職員が言うには、突如現れたと言っていた…』


 現れた…? 湧いて出てきたってことか? んなアホな…。

 いまいち意味分からんぞ…。


『取りあえず今は一刻を争うのだ! カミシロ! 戻ってきてくれ! 今のグランドルを守るにはお主の力が必要なのだ! 今戦える者を集めているが…全く足りん! 言いたいことはあるだろうが…頼む!」


 ギルドマスターが懇願してくる。顔は見えずとも、声からして容易にどんな顔をしているのかが想像できる。それくらい聞いたこともないような声だった。


 ギルドマスターは俺のステータスを知ってるんだよな…。だからこそのお願いか…。

 現状グランドルにはそれだけの勢力に対抗できる人っていないもんな…。特にドラゴン数体とか…Sランクの人が必要になるし。


『ご主人!』

「ポポか!?」


 結晶から、今度はポポの声が聞こえてくる。

 どうやらギルドマスターと一緒にいるようだ。


『私が前線で少しでも進行を遅らせます!』


 ドラゴン数体を相手にか? お前だけじゃキツすぎるだろ…。


「ドラゴン数体とモンスターの軍勢だぞ? …お前、何言ってんのか分かってんのか?」

『分かってますよ』

「…『アレ』無しで持ちこたえられるのか?」

『分かりません。ですが…黙って見てるわけにもいきませんし、今できることをやるべきでしょう。…それに、ご主人は必ず来てくれるでしょう? なら持ちこたえて見せますよ』


 ポポの声は真剣そのものだ。覚悟は決めているのだろう。

 下手すれば自分が危ないというのに…。


 ああ、言われなくてもすぐに向かうさ。俺もこのままグランドルが壊滅するのを黙って見てるわけにはいかないしな。

 俺はお前を信じよう。任せたぞ!


「分かった…ポポ! 無理はするなよ! 俺が行くまで絶対に死ぬな!」

『当然です。待ってますよ!』

『済まん…恩に着る。今回は私も出る。マリファ、そういうことだ! いいか!?』

「…やむを得んだろう。事が事だしな」

『なら私たちはすぐにでも向かう! カミシロ! 頼んだ! 情けないがお前だけが今は頼りだ』

「ええ! すぐにそちらに向かいます!」

『それではご主人のちほど!』


 そして結晶から出ていた淡い光は収まり、声も聞こえなくなってしまった。

 恐らく前線に向かったと見ていいだろう。


「ご主人! 早く行こう! 皆が危ないよ!」

「ああ! すぐ行くぞ! …学院長!!」

「ああ、頼んだ。あんなに焦ったアルガントの声は聞いたことがない…。奴を…グランドルを守ってくれ」


 了解!! 任せろ学院長。

 だからそんな情けない顔しないでください。貴女にもやるべきことがあるでしょう?


「ハイ! ヴィンセントについては任せていいですか!?」


 蚊帳の外にいたヴィンセントだが、コイツも放置するわけにはいかない。今は気絶していておとなしいが、いつ目を覚まして暴走するかも分からない。

 本当はこちらにも残っていたいところだが…体は一つ。これは学院長に任せるしかない。


「こっちのことは任せてくれ。君は早くグランドルへ!」

「お願いします! …ナナ!」

「うん!」


 俺の声を合図に、俺とナナが同時に空へと飛び上がる。

 そしてナナは俺から一旦離れてから変化で巨大化。加速しながら、落下し始める俺を背に乗せてそのまま飛ぶ。


「ナナ! グランドルはあっちだ!」

「りょーかい!!」


 許可を取る必要があるが…今はそんなことは気にしてられない。

 このまま王都から出よう。


 そして…


「ナナ…やるぞ?」

「オッケー。いつでもいいよ?」




「『才能暴走(アビリティバースト)』!」




 俺がそれを口にすると、ナナから白銀のオーラが溢れ出す。

 オーラはナナの全身を覆い、ナナの体に変化をもたらした。


 ナナはインコの面影が消え去り、まるでおとぎ話に出てくるような美しい…幻想的な鳥の姿へと変わる。

 体の至る所が白銀のオーラで淡く揺らめき、触れたらスルリと抜けてしまいそうな…そんな姿。飛んだ軌道に光が零れては、すぐに溶けるかのように消えていく。


「俺のことは構うな。全力で飛べ! ナナ!!」

「うん!」


 ナナは返事を返すと、今までの比ではない速度で飛び始める。

 学院の敷地を抜けるのに、全く時間はかからなかった。


 待ってろ…すぐ行く! あんなこと言ってたけど、早く行かないとポポが危ない! 

 この前のドラゴン3匹だって、ナナが一緒にいたからこそなんとかなっただけだ。アイツだけじゃ持ちこたえられるハズがない!




 俺は焦りを感じながら、ナナとグランドルを目指して飛び始めた。

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