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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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70話 新たな問題

「『超越者というのは凄まじいな。これほどの相手を一瞬で無力化するとは…」


 学院長が感嘆ともいえるような声で俺に言ってくる。


「まぁ…最初は驚きましたけどね」

「魔法が効かないと聞いて少し焦ったんだがね…私は接近戦は得意ではないから…。君がいてくれて助かったよ…」

「…そうですか」


 う~ん。貴女なら魔法が使えなくてもなんとかしそうな気がするんですけどね。

 Aランクの冒険者だったんでしょう? それもSランクに近いっていう…。そんなヤワじゃないでしょうに…。


「ご主人~!」


 そんなことを思っていると、ナナの声が後方から聞こえてくる。すぐに後ろを向こうとしたが、その前にナナが俺の肩へと止まる。


「おうナナか」

「あれ? もう終わっちゃったの~?」


 ナナがキョトンとした顔で聞いてくる。


「取りあえずな。…ほら、アレだよアレ」

「うわ~…えげつないことするね、ご主人…」


 ナナがヴィンセントの状態を見て引いたような顔をしながら俺に言う。

 ヴィンセントはというと、息もまともに吸えないためなのか掠れたような悲鳴をあげ続けている。


 …まぁ、自分でやっといてアレだが、確かにやりすぎた気がしないでもない。

 相当悲惨な状態だしな…アイツ。

 でも、ドミニクのことと食堂のこと、そしてさっきアイザさんを殺しかけたこともあって、俺も相当頭にきてたからな…。

 俺は神様じゃないけど…当然の報いだろ。


「俺だってできればやりたくなかったよ。でも魔法が効かないんだからしょうがないじゃん」

「あ、そうなの? それで…あの人がヴィンセントって人?」

「そうだぞ」

「ふ~ん…。ヴィンセントって人、あんな魔力してたんだね~。目も赤いし、悪者って感じプンプンだね~」

「…いや、あの姿が本当の姿なわけじゃないぞ? 今はあんなんだけど、最初は普通だったし…」

「ん~? じゃあ急に変わったの?」

「ああ」


 ナナと一通り会話をしながら、ヴィンセントを確認する。

 が、まだ黒いオーラは出たままであり、特に収まるような気配もない。


 すると…


「ん~? 何かあの指輪から変な感じするよ~?」


 ナナが顔をしかめる。


「指輪?」

「うん。ほら、あの右手に付いてるやつ…」

「どれだ? ……ああ、あれか。気づかなかったな」


 ヴィンセントの右手を見てみると、オーラで若干見えづらいが中指に指輪のようなものをはめているのが確認できた。


「よく気づいたな…」

「…ふむ。言われてみると何やら妙な波を感じるな」


 学院長もナナの言っていることが分かるのか、何やら首を傾げている。


 俺は…全然分かんないです。大雑把に魔力を感じることはできるけど、そんな細かいのまでは分かんないです。

 そこまで敏感には感じ取れないや。


「すっごくドロドロした気持ち悪い感じだよ…あれ」

「そうなのか? 俺にはよく分からんが…。まぁ、あのオーラの原因だったりするのかもしれんし…。回収しますか? 学院長」

「…そうだな。現状何が原因かは分からないし、今できることと言ったらそれくらいだからね。危険かもしれないが回収しようか?」

「了解です。じゃあ俺が…」


 取りあえず、ヴィンセントの指輪を回収することに決定したので、ヴィンセントに近づく。


 …ふむふむ。取りあえずもう動けなさそうだな。また魔力が吸われるかもしれんが…じゃあちょいと失礼するぞ。


 ヴィンセントは目だけはこちらを見ていたが、動く気力もないのか微動だにしない。


「気を付けてくれ! 異変を感じたらすぐにやめるんだぞ?」


 学院長が俺にそう声を掛けてくる。


 へいへい…分かってますって。


 ツンツンと、試しに指輪をつついて危険がないかを確認するが、何ともない。


 あれ? 魔力は吸われなかったな…。これが原因じゃないのか…?


 別になんともなかったのでヴィンセントの指輪を親指と人差し指で摘まみ、スッと抜いた。


 すると…


「あ…オーラが…」

「出ていくのが収まっているな…」


 ヴィンセントから出ていた黒いオーラは、徐々にだが出るのが収まっているようだ。

 やがて黒いオーラは消えてなくなり、元のキレイなヴィンセント? に戻った。

 目も既に赤くはなく至って普通の人間の目の色をしており、魔力も先ほど感じた魔物の波長は感じない。


 そして…気絶。力尽きたかのように目を閉じ、静かになった。


 …まぁ物理的に力尽きたって言ってもいいのかもしれんけど。死んではいないけどさ。


「…一応これが原因なのか?」

「そうっぽいね~。目も白くなってるもん」

「…ヴィンセントの状態を見るに、恐らくその指輪が関係しているのは間違いないだろう。詳しいことは今後調べねばならないが…」


 …なんか分からんことばっかりだけど、取りあえず一件落着か?


「それよりも…ツカサ君。それ、持っていても特に異常はないのかい?」


 と、指輪を持っている俺を見て学院長が聞いてくる。


「あ、はい。特になんとも…」

「…そうか。なら良いんだが…」

「これ…どうします?」

「…取りあえず調べる必要があるだろうから、一旦私の方で預かろう。知り合いに呪具に詳しい人もいるし、様々な視点からの意見を聞きたいところだな…」


 …そうですか。

 人間の魔物化なんて初めてだ…って言ってましたもんね。

 そりゃ調べない訳にはいかないか…。


「分かりました」


 俺は学院長に指輪を渡す。


「ふむ…。本当になんともないな…。リース」

「お呼びですか? マリファ様」


 マリファ学院長が呼ぶとその後ろにリースさんが立っており、返事を返す。

 それを見たナナが「えぇっ!? いつの間に!?」とか言っていたが、まぁ初めて見たらその反応も納得できる。


 ………またかよ。なんでそこから湧いて出てくるんだ、何もないのに…。

 メイドじゃなくて暗殺者なんじゃないの? リースさんって…。


「この指輪について調べたい。各方面に連絡を取ってくれ。…急ぎだ」

「かしこまりました。迅速に手配いたします」


 そして、音もなくその場から忽然と消える。

 魔法で消えてるのか、もしくは特殊な技能によるものなのか、検討もつかない。


 わー相変わらずすごいなー(棒)


「き…消えちゃった!? ね、ねぇご主人? あの人どこ行ったの?」


 ナナがそれを見て辺りをキョロキョロしながら言うが、…スマン、俺も知らね。


「…さあ? ナナ、こっちのメイドさんはあれが普通らしいぞ?」

「え? いやいやそんなわけないでしょ…」

「そんなわけなくないんだよ…」

「リースはただのメイドだぞ?」

「「………」」


 な? 


 マリファ学院長がさらっと言うのを聞いたナナは…


「…あい」


 そう返事をした。


 ナナよ、割り切るのだ。

 ここは異世界…地球の常識は通用せんのだ。適応していかないとダメだぞ。


「メイドさん…パネェっす…」


 …俺と同じこと言ってるわ。




 それから少しして…


「さて、ヴィンセントをどうす…」


 学院長が話をしようと口を開くが、その声は意外な人物の声によって遮られた。




『マリファッッッ!!! 聞こえるかっ!?』




 ギルドマスターである。

 その声は酷く焦っており、一瞬で只事ではないのが分かった。

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