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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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66話 異常発生は突然に…

 ◆◆◆




 で、演習場に来てみたんだけど…


「会長! 『DD』計画の代わりとなるものとは!?」

「早く詳細を!」

「お願いします!」

「フッフッフ! まぁ落ち着け、同志たちよ」


 アレク君はもういなくなっており、代わりといってはアレだが、アイツらがいた。

 そう…『ディープゲイザー』である。


「あの人たちいるね…」

「だな。嫌なもん見ちまった」


 今日はここで集会ですか…。周りから丸見えの状況で大胆だなぁオイ。

 懲りない連中だ。


 俺が演習場に入って奴らに近づくと…


「むっ!? 貴様は!?」

「っ!? 何故ここにっ!?」

「敵襲! 敵襲! 総員警戒せよ!」

「…いちゃ悪いか?」


 奴らも気づいたのか、俺を見つけると随分な言葉遣いで声を掛けてくる。


 …貴様ってお前、何様だコラ。


「ま~た変なこと考えてんのか?」

「お前には関係ないだろう。ここは今我らの聖域だ。部外者は出て行ってもらおうか」


 初日に俺を縛りつけたリーダーが言ってくる。


 いやいや、ここ演習場だから。お前らの私有地でもあるまいし…。

 なんで指図されにゃいかんのだ。


「そうだそうだ!」

「さっさと出ていけ!」

「うるせーな。だが断る!」

「断る~」


 もう初日から決めているが、お前らのやることなすこと、そして言うこと全てに対し、俺は『NO!』と否定してやると決めたんだ。

 ここにいる理由は確かにないが、そう言わせてもらおう。


「忌々しい奴めが! 我々の神器を壊しておいてまだ足りぬというのか!」

「神器…? ああ、魔道具のことか?」

「忘れたとは言わせんぞ!」

「他の生徒からの要望もあったから壊したんだけどな…」

「ふざけるな!」

「いや、ふざけてないんだが…」


 奴らが使っていた例の夢を見せる魔道具なんだが、他の生徒から何とかしてほしいとの要望があったので、奴らの部屋に強硬突入して魔道具を回収、バラバラに粉砕した。


 まぁ個人的に俺も生徒たちと同じ考えだったのでそれを躊躇なく実行。難なくミッションコンプリートしたわけだ。部屋の中はカオスな光景だったが…。

 思ったよりも魔道具が小型で、こんなものを作り出せることに改めてびっくりしたが、壊すのに戸惑いは勿論なかった。むしろ嬉々としてやったと思う。これでこの学院の安眠が確保されるんなら当然だ。


 それからというもの、コイツらは俺のことを目の敵にしている。


「ったく、あんだけのモノが作れんだから他のことに技術を応用しろよ。勿体ねぇ」

「黙れ!」

「消えろ!」

「「「そうだそうだ!」」」


 俺が言うとキャンキャン騒ぎ始める。


 チッ! うるせーな。

 へーへー、特にやることもないし退散しますよ。落ち着けや。






 要望通り俺が退散しようとしたそのとき…異変は起こった。






「っ!?」

「なに!?」

「な、何だっ!?」



 突如響き渡る無機質な警報。

 その音が…学園を支配した。



 突然の警報の音によりディープゲイザーの連中がザワつき始める。

 俺とナナはというと、どうやら異常事態だということは理解できたが、何が原因かは分からなかった。


「オイッ! これは何の音だ!」

「これは恐らく…侵入者の警報かもしれん。初めて聞いたから何とも言えないが…」

「侵入者? …まさかとは思うが…」

「ご主人…もしかして?」



 ナナも恐らくアイツではないかと思っているのだろう。

 …俺も同様の考えだ。可能性は高い。


 なら早く動ないと!


「オイお前ら! すぐに寮に戻ってクルトさんの指示を仰げ! こういう時の行動は聞いてるだろ?」

「あ、ああ…」

「お前に指図されr「うるせぇっ!! 言うこと聞けっ!!」


 この事態でも突っかかってくる奴がいたので、言葉を遮り怒鳴る。

 怒鳴られた奴は、渋々といった感じで口を噤んでいたが…。


 馬鹿がっ! いい加減にしろっ!

 状況を考えて行動もできないのかよ!!


「早く行け! 俺は原因を確かめに行く! ナナ! コイツらを任せるぞ! 寮まで届けたら追いかけてこい! 抵抗するなら力づくで連れてけ!」

「う、うん! わかった!」


 気に障らない奴らだけど、まずはコイツらの安全を確保しないといけない。

 まぁナナに任せれば安心だ。


「じゃあ行ってくる!」


 俺は演習場のフェンスの隙間から魔力を外に広げ、『転移』で場外へと出る。

 もし演習場が密閉されてたら出来なかっただろうな。


 さて、まずは全体を見渡せる場所に行かないと…。


 周りに目をやるが、演習場よりも高そうな建物はない。

 なら上空しかないか…。


 俺は地面を蹴って空へと飛び上がる。

 そして全体が見渡せるくらいの高さ…上空50mくらいのところで風属性の『エアブロック』を発動し、空気を圧縮。そこに足を着きその場に留まる。


 この高さならなんとか見渡せる。風が少し強いが…。


 地上よりも強く吹く風に前髪が激しく揺れる。

 その位置から学院を見渡してみると、建物から何人も生徒が外へと出てくるのが確認できた。

 どうやら、異常を感じた人がパニックを起こしているようだ。休日だというのに意外にも生徒がいることが分かる。


 ただ、学院の敷地が広すぎるので遠くまでは確認できない。


 もっと高くから見渡すこともできるが、それだと距離が離れて状況がよく分からなくなってしまう。俺はそんなに視力は良い方ではないし…。

『身体強化』で目を強化すれば視力が上がるらしいが、俺は出来ないので無理。今嘆いてもしゃーないけど。

 まぁ恐らく、今見えている光景が学院全体で起こっていると考えていいだろうな…。


 とりあえず状況がよく確認できない方向に行こうとしたが、左の方角から光の玉が花火のように打ちあがり、そして弾けては消えていくのが、俺の目に映った。


 あっちか!


 咄嗟にそちらの方角に移動を開始する。今のはSOSと見て間違いないだろう。

 …この方角からして恐らく学院の入り口の方…。侵入者は門から来たと見ていいっぽい。


 侵入者がまだアイツと断定したわけではないが、もしそうなのであれば本当に頭がおかしいとしか思えない。

 正面から来るとか余程自信がなければできない芸当だ。


 …。


『エアブロック』を本気で蹴って、そちらに飛ぶ。連続で『転移』を繰り返すよりもこちらの方が早いし、魔力の消費も抑えられる。

 如何に俺の魔力がバカみたいにあろうと、『転移』は一応上級の魔法だ。連続での『転移』は無駄に魔力の消費をしてしまう。


 重力に従って体が落ち始める頃に再度『エアブロック』を発動、片足で着地しすぐさま飛ぶ。

 それを何度か繰り返す。




 あっと言う間に門に近づいてきた俺だが、遠目に…倒れている人と、体を寄せ合っている2人の生徒が確認できた。赤い髪とピンク色の髪をしている。そしてそれを守るように立ち塞がる人も…。


 あれは…フロムさん! それに後ろの生徒ってアンリさんとクレアさんかよ! なんでそんなところに!


 倒れてる人はフロムさんと一緒にいた門番の人だ。よく見ると体が赤い…いや、あれは血か。

 腹部辺りから滲み出ているようだった。


 チッ! 死なないでくれよっ! 


 フロムさんが対峙してんのは…




「やっぱりお前かあぁぁぁっっっ!! ヴィンセントオォォォッッッ!!!」




 大声で叫ぶ俺の声が聞こえたのか、ニタァと気持ちの悪い笑みを浮かべて、ヴィンセントはこちらを見たのだった。

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