表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
67/531

65話 オリジナル魔法

「では、私はこれで失礼しよう。もしかするとセグランにいる可能性もあるかもしれないのでな。捜索をせねば…」

「ですね。こちらはお任せください」

「あと、誓約通り、武力行使は遠慮なくしてくれて構わない」

「…武力行使はしたくありませんが、分かりました。必要であれば実行します」

「うむ、頼んだぞ」


 う~ん、多分必要になるんじゃね? だってわざわざ脱走するくらい俺のこと憎いんだろ?

 それとも、『先生! すみませんでした!』…なんて言うために脱走したってか? ハハ…そんなわけないだろうし…。

 そもそも会話する暇もなく襲ってくるのしか想像つかないな。


「…まったく、苦労がこうも意味を成さないとはな…。残念だ」


 アルファリア様が自分の手を見つめ残念そうな顔をしている。

 手の甲には、赤黒い紋様が小さくだが浮かび上がっている。


 息子のために色々頑張ってましたもんね、アルファリア様。『血の誓約』までして…。

 お気の毒に。


「ではな」

「失礼します」

「あ、お気をつけて」

「バイバ~イ」


 お二人は何やら青いクリスタルのようなものを取り出しそれを掲げる。


 え? 何してんの?


 俺がそう思うのも束の間。クリスタルが光り輝いたかと思うと、2人はいつの間にかその場からいなくなっていた。






 ………は?






「さて…我々も「ちょっとちょっと!? 何ですか今の!?」


 学院長がさらっと流したので俺は突っかかる。


 何だよ今の!? 一瞬で消えたぞ!?


「何って…『転移結晶』で屋敷に戻っただけじゃないか」

「『転移結晶』?」

「何それ?」

「…君たち、本当に何も知らないんだね…」


 もうそれはいいんで…。はよ教えて…。


「…予め登録した場所に瞬時に移動できるというものだよ。本当は戦闘から離脱する目的で使用するのが一般的だが…、貴族では移動手段で使う人は多いな」


 え、それ欲しいんだけど…。グランドルにすぐ戻れんじゃん。

『転移』と違って長距離移動できるのか…。


「…便利だね~、それ」

「あったら確かにそうだね…。ただ、希少性が高いからあんまり市場には出ないな…。出たとしても一般人には買えないくらい高いしね」

「へー」


  …流石貴族様ですな。それが普通に使えるんだから羨ましい。

 俺も欲しいよ…。ポポに会えるし。




「さて、我々も動くとしようか?」

「…そうですね。てか、職員の人には通達しないんですか?」

「休日でいない職員もいるが、するよ。まだ通達していないのは君が一番危険だと感じたから、他はあと回しでいいと判断したんだ。…それにヴィクター様がいたし、余計な混乱は避けたかったしね」


 貴族の影響力はやっぱり高いのか…。


「…なるほど、生徒の皆はどうします? 伝えないんですか?」

「無論伝えるぞ? まぁ、そこまで慌てることでもないだろうがな。流石にヴィンセントも自分の置かれた立場くらいは理解してるだろうし、学院にまで来るほど無謀ではないだろう。それ以前に、ここまで来ることなんてできまい」

「まぁそうですね…。あ~、ナナがヴィンセントに会ってたらすぐ見つけられるかもしれないんですけどね~」

「だね~」


 俺はため息を吐く。


 今回はタイミング悪かったなぁ。


「む? それはどういうことだい?」

「えっとですね…、実はナナは一度会った奴なら、距離がそこまで離れていない限り居場所を特定することが可能なんですよ」

「何!? それは本当か!」

「うん、できるねー」


 ナナが持っているスキルの【魔力の理解】に、魔力の扱いが上達するというのがあるんだが、これは様々な場面で応用することができる。


 例えば、俺がよく使う魔法の『転移』だが、これは俺の魔力が届く範囲内にしか移動することができない。

 この魔力が届く範囲というのは、俺が魔法を自由に発現できる場所を意味している。

 座った状態で手が届く範囲なら、どこでも自由に魔法を発動させることができると想像すると、理解しやすいかもしれない。

 まぁそんな感じ。


 俺の魔力が届く範囲は、ざっと100mくらいが限界だ。これ以上は難しい。

 …というより、最初の段階でこれくらいの範囲だったから、これは生まれつきのものだと思われる。

 練習してもちっとも広くならなかったし、間違いないと思う。


 一方ナナはと言うと…。


『う~ん…軽く5㎞ってとこかな~』…だそうだ。




 ふざけるんじゃないよ。




 極端すぎるだろ…。元々のセンスもあるだろうけど、軽くやってそのレンジって…スキルの恩恵が凄すぎる…。俺もそれ持ってたら長距離の『転移』が瞬時にできるのに…。

 ちくしょう。能力コピーして俺にくれ。


 まぁ本人曰く多少の集中が必要になるみたいだが…そんなのは気にならんわ、ここまでくると…。


 とりあえず、ナナのレンジが凄いことがお分かり頂けたかと思う。


 だが、これではまだ終わらんのですよ…。


 魔力の扱いが上達するというのは、魔力を自由に扱えることと同義だと言える。

 つまり何が言いたいかと言うと…。




 ナナは、自分で想像した魔法…オリジナルの魔法が使えるのだ…。




 これを知った時、今度は逆にうちの子マジ天才だわ~って、本気で思ったもんですよ。俺の落胆する気持ちがさらに落胆して、むしろ嬉しい気持ちになったわ。ホント凄い。

 ただまぁ、適性以外の属性の使用はできないみたい…。出来たら出来たで今度はチートすぎて引くだろうけどさ。


 んで、それらを駆使してナナが使うオリジナル魔法なんだが…これを『大地の鼓動(ガイアビート)』という。


 事前に、見つける対象の魔力を直に感じることでその魔力の波長を自身に記録、それを広げた魔力に乗せて拡散し、さらに大地からも拡散。範囲圏内に対象者がいた場合は波長が同調して反応、居場所が分かるという仕組みらしい。

 口での説明だと分かりづらい部分もあったが、オリジナルの魔法でナナの体感での話だから、わかるはずもないが、大体言いたいことは分かる。


 とりあえず言っておこう…すんごいよ、ナナさんや。


大地の鼓動(ガイアビート)』は、大いなる大地から鼓動…つまり魔力を感じ取ることから、そう命名したらしい。

 意外にもセンスがあることに俺は驚いていたりする。




 長くなったが以上。


 今回は使えないが、いずれ使う場面も出てくるだろうなきっと。




「それはどのような手段なんだ?」

「コイツが使えるオリジナルの魔法にそんな便利な魔法があるんですよ」

「『大地の鼓動(ガイアビート)』って言うんだけどね~」

「オリジナル…? どういうことだ?」




 学院長に簡単に説明をする。

 そして…




「…まさかそんな魔法が存在するとは…」

「存在してたんじゃなくて作ったんですけどね」

「うん! 他にも色々あるよ!」

「これが従魔だというから恐ろしいな…。世界は広い…」


 学院長が疲れた顔をしている。


 すんませんね。


「ご主人の従魔ならこれくらいはできないとね~、じゃないとついていけないもん。ポポだって色々と凄いしね~」

「アイツは…なんていうか、うそんっ!?…って感じだよな?」

「だね~。私とは全然違うよね~」

「…もう一匹の方も凄いのか…」

「ええ、まぁそれなりには」

「…大した奴らだね…君たちは」


 …それは、褒め言葉として受け取っておきますよ。




 ◆◆◆




「じゃあ、今まで通り普通に活動しつつ、ヴィンセントを警戒、捜索する形でいいですか?」

「ああ、そうしてくれ。…と言っても残り2日だから、何も起こらないと思うがね」

「だといいですけどね。…では、これで失礼します」


 とりあえず、そんな感じに学院長と話を済ませる。


 それにしても…。

 何であんなに良識を持った人が父親にいて、あんな風になったんだ? 多分、教育もしっかりやっていたはずだろうに…。

 入学した当初は優等生だったみたいだし、なんか腑に落ちないな…。

 原因でもあるんだろうか?


 …。


 …まぁ考えても分からんし、切り替えていくか。

 話がそんなに時間掛からなかったから、まだ…アレク君が演習場にいるかもしれない…。




 一応演習場に寄ってから寮に行こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ