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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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64話 不思議な主従関係

「ヴィンセントが消えたってどういうことですか!?」

「まぁ落ち着け…」

「それについては私が説明しよう」


 ヴィンセントが消えたことに俺が驚いていると、アルファリア様から説明があると言われた。


「事に気づいたのは、今日の昼過ぎだ。セグランにある屋敷にヴィンセントを監禁していたのだが…。誰の目に触れることもなく、忽然と姿を消してしまってな…。屋敷にいた使用人にも確認したが…誰も姿を見ていないと言っている」

「監禁って…」


 監禁って聞くとちょっと忌避感があるんだが…。まぁ奴のしでかしたことを考えるとそれも当然か…? 分からんけど。


 ちなみに、セグランと言うのは王都から少し南に行ったところにある町のことだ。

 特筆すべき点は特にないが、自然が豊かでのどかな町…らしい。(メイスン君談)


 セグランが領地と見ていいのかな?


「その監禁部屋は魔封石でできた扉が備わっていてな…。魔法による破壊は不可能。万が一に備えて、鋼でできた錠を幾重にも取り付けているから、物理的にも対策は十分。…だが扉には開いた様子もないため、ヴィンセントがどのように抜け出したのかが分からんのだ」

「…誰かが開けた可能性は?」

「可能性は低いな。錠の鍵は合鍵を含め私が所持している。事前に鍵を複製していた場合は可能だが、監禁部屋を使うのは初めてのことだからそれも考えにくい」


 アルファリア様は懐から鍵を2つ取り出し、こちらに見せるようにチャラチャラと音を鳴らす。


 う~む。その線はないと…。


「他に変な点はないの~? 部屋の状況は~?」


 ナナも詳しく知りたいのか疑問をぶつける。


「部屋は暴れまわったためか、焼け焦げた家具や割れた食器やガラス等が散乱していただけだ。他には特に有益な特徴は見当たらなかった」

「ふ~ん」

「…う~ん、分からないですね。どうやって抜け出したんでしょうか…」

「それが不明のため、こうして事態を報告しようとここに参ったわけだ」

「そうですか…」


 不明か…。嫌な予感しかしないぞオイ。

 ったくヴィンセントめ。ここまで馬鹿な奴だったか…。


 てか、アルファリア様。貴方がこうして直接伝えに来るのも問題だと思うんですけど、せめて護衛くらいつけた方がいいんじゃありませんか? 流石に不用心すぎるかと…。


「まぁ、じつをい「見つけましたよっ!!! ヴィクター様!!!」


 アルファリア様が何か言おうとしたところで、バン! という音と共に扉が開き、大きな声が学院長室に響く。

 何事かと思い声のする方…扉の方を見てみると、息を切らしながら一人の女性がそこに立っていた。


 …金髪美人ですな。


「む? シェリルか…遅かったな」

「全く貴方という人はっ!! 一人で外出はお控えくださいと何度言えば分かるんですか!! 何のための護衛ですか私は!?」


 シェリルという人がこちらにズンズンと向かってくる。


「そうは言ってもな…連れて行こうにも丁度その時お前は野暮用でいなかったから仕方なかったのだ。仕方あるまい」

「少しくらいは待ってくださいよ!?」

「無理だ。時間が惜しかったのでな」

「ヴィクター様の頑固! 融通知らず!」

「なんとでも言え」

「ムキーーーっ!!!」


 シェリルさんが何やら喚く。

 何か色々台無しだけど…。


「あの…誰です? あの人」

「彼女はヴィクター様の護衛として仕えているシェリルという人だよ。大変優秀なんだが…、見ての通りヴィクター様があんな感じなのでな、いつも振り回されていたりするらしい」


 護衛いたのか…。


「はぁ…? そうなんですか…。でも、なんか仕えている人の発言じゃない気がするんですけど…」

「…なんかサルみたいな声だしてるね~」

「最初はとても固い人だったみたいだが、ヴィクター様に仕える内にああなったらしいぞ? …まぁ、そうじゃないとやってられないのかもしれないな」

「それ、笑って言うことじゃないでしょう…。あとナナ…流石にそれは失礼だ」

「ごめんなさ~い」


 そんな状況を見て、俺たちはそんな会話をする。


 しばらくの間、2人の口論は続くのだった。




 ◆◆◆




「…お恥ずかしい所をお見せしてすみません」

「いえいえ、非常に仲がよろしいというのが分かりましたから…」

「…私はヴィクター様の護衛をしております、シェリルと申します。以後お見知りおきを」

「どうも、俺はCランク冒険者のツカサ・カミシロと言います。こちらこそよろしくお願いしますね」

「ご主人の従魔のナナだよ~。よろしく~」


 しばらくして、落ち着いたシェリルさんも一緒に、今は学院長室にあるソファに俺たちは座っている。


「済まない。…それじゃあ先ほどの話を続けよう」


 そしてアルファリア様が口を開く。


「実を言うと、私が急いで事態を伝えたかったのは、カミシロ君。…君に危害が加わる可能性が高いと判断したからだ」

「え? 俺に?」

「うむ。4日間の間ヴィンセントを監禁したわけだが…、ずっと君に対する恨み辛みを口走っていたのでな…見張りの者がそれを確認している」


 ずっとって…どんだけ憎んでんだアイツ…。

 逆恨みもいいとこだな。


「私もその声は聞いています。…とても憎しげな声でしたね…」

「あちゃ~、やっちゃったねご主人…」

「そうかなぁ…」


 う~ん、やりすぎたか?


「いや、君は悪くない。全ては私の愚息の自業自得なのだが…まぁ、そういうわけだ。重ね重ね済まない」

「そうですか…。ならいいんですが…」


 …なら気にしなくてもいいか。


「…それにしても、怒りで頭に血が上っているとはいえ、短絡的な行動すぎる気がするな…。流石に何か変だ。…ヴィクター様、何か心当たりはありませんか?」

「それは私も思っていたことではある。だが、これといって特に……いや…」

「? 何かあるのですか?」


 アルファリア様が、ないと言おうとしたところで言葉を中断する。


「よく…独り言をするようになったような気がするな…。誰もいないはずの部屋で、よく喋ることが増えた気が…しなくもない」

「ヴィクター様もそうお感じになられていたんですか…!」


 シェリルさんが反応する。


「ということはシェリル…お前も?」

「はい。そのような場面によく出くわしたもので気になっていました。ただ…誰も他にはいませんでしたので不思議だなと…」

「そうか…」


 アルファリア様は腕を組んで考え込んでしまった。


 …誰もいない空間で一人で喋る…か。

 誰かと会話してたってのが一番妥当だけど、誰もいないって言ってるし…何なんだろうな?

 素でやってるんなら、それは…なんかご愁傷様です、って感じだけどさ。


 すると…


「まぁ、考えても埒が明かないですね。とりあえずはヴィンセントを探し出しましょう。それから事情を聞きだすということでよろしいですか?」


 沈黙した俺たちに学院長が言う。


 …まぁ、そうですな。

 私は異議なしです。


「分かった。愚息が迷惑を掛けて済まない。捜索に全力を尽くそう」

「ええ、学院の方でも情報を募ります。見つけ次第確保しますので…」

「なんか面倒なことになってきたね~」

「ああ、そうだな…」


 とりあえず、ヴィンセントの捜索を最優先で行うというのが決まった。



 ふむ…。

 今の話をとりあえずまとめると…


 1.ヴィンセント逃亡

 2.ヴィンセント行方不明

 3.ターゲット=俺

 4.捜索しましょう ←今ココ


 となるわけだな。




「ツカサ君は十分に気をつけてくれ。…いや、君に言うのは余計なお世話かな?」

「…まぁ、問題ないでしょうね。コイツもいますし…」

「んー? 私?」


 学院長に言われて、俺はナナを指さす。


「…それは冗談だろう? 君ならまだしも…」

「いやいや、仮に襲われてもナナだったら大丈夫ですよ。魔法に関してなら相当できますからね、コイツ」

「…」


 俺が真面目な顔をして言ったためか、学院長が何やら呆れた顔をしている。


 そういや、学院長はナナのステータス知らないんだよな。ギルドマスターの文にはポポとナナが従魔としているってことだけしか書かれてなかったみたいだし。

 ならその表情も納得だ。


「…やれやれ、鬼に金棒とはこのことだね。君には驚かされてばかりだ…」

「えへへ、何か照れちゃうな~」


 ナナが何やら照れくさそうにしている。


 いや、多分これ褒めてないから。自重しろとか、いい加減にしろ的な意味合いだと思うぞ?




 のんきな奴だなぁ。

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