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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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59話 滞りなく過ぎる日々

『血の誓約』は、この世界において最高レベルの誓約にあたる。

 闇属性の特別な素材で作られた紙に契約内容を記入し、両者同意のもとお互いの血を紙に染み込ませることで契約をするものだ。もしその契約内容に反した場合は凄まじい激痛が体を走り、最悪の場合は死に至るとさえ言われている。




「まさか『血の誓約』まで…」

「正直なところ私も驚いている。それくらい本気だということだろう」

「…なら、大丈夫っぽいですね。…ただ、そこまでしてなぜ学院に残そうとするのか分かりませんけど…」


 アイツ貴族なんだし、別にこの学院にいなくても特に問題ないと思うんだが…。


「アルファリア家は地位や身分を代々重視している家なんだ。恐らくこの学院を卒業したという実績が欲しいんだろう。…まぁ現当主はその考えをあまり持っていないみたいなんだが、分家がうるさいらしくてね…。昨日ぼやいてたよ」

「…なんていうか、貴族って面倒くさいんですね…」

「私もそう思う。…いずれ当主になる息子の将来を考えると、これが最善の手だと判断したんじゃないかと私は思っている。貴族は頑固だしね」


 そうか…。

 息子のことを思えばこその判断ですか…。なんかカッコイイな…。

 俺も子供ができればそういう考えができるような親になりたいもんだな。


 …ただ、ヴィンセントがそのまま当主になっても問題だらけな気がするが…。


 すると…


「なんか難しい話してるね~」


 俺が内心しんみりとしていた時、ナナが声を掛けてくる。


 なんだ、起きたのか。もう少し寝てるかと思ってフードの中に入れてたんだけどな…。


 一度は起きたナナだったが、結局は眠気に耐えきれずにまた眠ってしまい、放置するわけにもいかなかったのでとりあえずジャンパーのフードに入れていたりする。


「ナナ? もういいのか?」

「うん。もう平気~、バッチリスッキリ超元気~」


 なぜか無駄にテンションが高かったが、ナナが俺のフードから出てきて肩へと移動する。


「…なんだ、その鳥は?」


 学院長がナナを見て訪ねてくる。


「…コイツが昨日言った従魔の1匹ですよ。ナナって言います。今の今まで寝てました」

「そうだったのか。…なんとも可愛らしいな。その子でここまで移動してきたわけか…。変化ができるんだったな?」

「ええ、多分、そのあたりも含めてギルドマスターから聞いているんでしょう?」

「うん。書いてあったが…とてもそうには見えないな」

「ごもっともです」




 という感じで、いつも通りの会話をする。

 ヴィンセントについては…まぁ特に気にしなくてもいいだろ。

 その辺りは学院長を信じよう。




「あとコレを渡しておく」

「なんですか?」


 ナナの紹介が終わった後、用紙を受け取る。


「君の期間中の大まかな仕事内容だ。まぁ大体そんな感じだから」

「………あの、なんか戦闘訓練ばっかりなんですが…それに、休みも貰えるんですか?」


 内容をじっと見ていると、今日を含め残りの6日間の内容が書かれていたが、当初聞いていた冒険者の在り方や心構えといったものはほんの少ししかない。


「去年は2年生を対象にしてたんだが…今回は3年生だ。あと少しで卒業だし、実践の方が有用だと判断したのでね。休みは単純に生徒が休日だからだよ」

「そういう理由でしたか。まぁそれならそれでいいです」


 そういやもうすぐ卒業のシーズンですね…。

 こっちの世界…どうやら地球と同じで四季があるみたいだし、春はやっぱり卒業なのか。


 というより休みが貰えるのはありがたい、図書館で色々調べてみたいし…。


「休日って図書館開いてます?」

「まぁ一応開いているが…入りたいのかい?」

「調べてみたいことがあるんですが…駄目ですかね?」

「構わないよ? 本や文献を紛失したりしないなら、借りたっていい」


 え? マジで? そいつは有り難い。


「ありがとうございます」


 早く休みが来ないかな? 待ち遠しい…。

 そのためにわざわざ依頼を受けたっていうのもあるし。


「では、よろしく頼む」

「はい」

「りょーかい~」




 ま、今日も頑張っていきますか。




 ◆◆◆




 それからというもの。


 特に問題が発生するわけでもなく、依頼は順調に進んでいった。

 2日目、3日目、4日目と…。午前中から放課後までの間はほとんどが戦闘訓練という内容だったが、特に問題もなくこなすことができ、放課後はアレク君の稽古をする日が続いた。


 …まぁ、結局エリック君やメイスン君らも加わってたけど。

 皆向上心が本当に高い。


 アンリさんたちのクラス以外でも戦闘訓練の授業は行い、正直なところ魔力がごっそりと減って辛いこともあったが、そこは気合で乗り越えた。

 俺もそのおかげで魔力量が増えたし、お互い様な結果だった。


 そして、ヴィンセントが停学になったということは、あっという間に学院に広まった。

 それに便乗する形で俺の実力も広まっていき、別のクラスでも実際に力を見せつけたことも加わって、例の問題は順調に良くなっている。

 一部の生徒には若干恐れられているものの、これは予想の範囲なので特に気にしていない。

 それ以上に冒険者に対する偏見がなくなった生徒が多いので、まぁなんとかなるだろう…とか思っているからだ。



 あと、依頼を始めて4日が経過したが、ポポはまだグランドルにいるようだ。

 依頼に追われているのか、それともマッチさんの借りが長引いているのかは分からないが…アイツのことだ。特に心配はしていない。


 ナナはというと…やはりあっという間に人気者になった。

 セシルさんのときと同様に、女子生徒を中心に速攻で皆を攻略していく様は見事としか言いようがなかった。

 アイツは自分が可愛いことをしっかり理解している。間違いない。




 …とまぁ、大体こんな感じで今まで過ごしてた。


 現在は5日目の昼。俺はというと、図書館で今本を読み漁っている。


 待ちに待った休日が今日らしく、授業は一切ない。

 生徒も、寮生の人は学院に残っている人がほとんどだが、それ以外の自宅から通っている生徒などはほとんど学院に来ていない。


 いるとしたら勉強熱心な生徒くらいじゃないだろうか? お勤めご苦労様です。

 まぁそのため、待ってましたと言わんばかりに、俺は朝から図書館に入り浸っていたりするわけだ。


 あー肩が痛い。ついでに身長が伸びないことについても頭が痛い。




 そんな考えはさておき…。

 とりあえず、時間は有効的に使っていきたい。

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