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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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57話 夜中の再会

 3人と別れ自室に戻った俺だが、部屋の窓を開けて真っ暗な空を見つめていた。

 この方角から、ナナが近づいてくるのを感じる。

 さっきのは勘違いなんかではなかったようで、さっきよりも感覚が近いのを確信する。


 にしてもなにがあったんだ? 昨日別れたばっかりだろうに…。


 しばらくの間空を見つめる。


 そして…


「あー! ご主人み~つけた!」

「ナナ! 一体どうしたんだよ?」


 ナナが勢いよく窓から部屋へと入ってきた。

 そして俺の肩へと流れるように止まる。


 ここまで来れたということは、俺の感覚を頼りに進んできたとみていいだろう。

 随分と距離が離れていても感じ取ることができるようになったのは大きな成長だ。

 まぁそれでも、あまりにも極端に離れると感じ取れなくなるけど。


 なんか発信機みたいだな、俺。コイツらにも言えることだが…。


 そんで、どうしたん?


「いや~、マッチから頼まれたこと私全部終わっちゃって~。やることないから来ちゃったんだ~」

「え? もう終わったのか? なんか早くね?」


 そんな早く終わる内容だったのか?

 マッチさんや、もっとコキ使ってくれても良かったんだが…。


「だって頑張ったもん! ご主人借りは早く返せって言ってたからね~。本気出したよ~」

「そ、そうか…。お疲れさん」

「すっごい疲れたんだからね~? めっちゃ移動したよ~」

「大変だったんだな」

「ふっふ~。すごいでしょ~?」

「ああ、すごいすごい。流石ナナちゃんですね」


 ナナがすごく自身満々にふんぞり帰っている。

 翼をちゃんと折り曲げ、人間が手を腰に当てているかのように…。

 本当に人間みたいだ。


 とりあえず俺はベッドに座り、褒めることにする。


 なんか褒めて欲しそうな顔してたし…。こういう顔されたら敵わんわ。


「そんで、ポポは?」

「まだ仕事中だよー。私と違って面倒そうな内容だったしもう少し時間掛かるんじゃないかな~?」


 まだポポは仕事中か…。

 へいへい、了解。


「ほぅ、そうかい…。マッチさんの借りの返済って一体どんな内容だったんだよ?」

「んっとね~、私は各町村にギルドからの定時連絡の書簡を送る役目だったよ~」

「定時連絡? 結構重要じゃねそれ?」

「多分ね~」

「多分って…お前なぁ。それをお前がやったのか…」

「うん! なんか私とポポがギルドに迷惑を掛けたせいで送るのが遅れちゃったらしくてね~、私たちならあっという間だし郵送費も掛からないから任されちゃった~」

「まぁ、確かに早いからなぁ…」


 遅れた分の時間を取り戻すっていうならいいかもしれないけど、一介の冒険者、それもその従魔に任せていいのか?

 そこんところしっかりした方がいいと思いますよ? マッチさんや。

 俺がいつ反旗を翻すかもしれんというのに…。あり得ないけど…。


「まぁいいや、それでポポの方は何やってんの?」

「ポポは~、住民のお手伝いを可能な範囲で行うことと~、ギルドのイメージアップ政策のマスコットキャラ役でしょ~。それと…セシルの仕事の手伝いだね~」


 ふむふむ。忙しいなアイツだけ。


「…なんか多くね? アイツだけ…。てか最後マッチさんと関係なくね?」

「いや、それがね? セシルがパーティを組んで依頼をやろうとしてたみたいなんだけど、そのパーティに欠員が出たらしくてね~。その穴を埋める形で駆り出されてたよ~」

「ふむふむ」

「マッチ曰く、『ギルドの冒険者の手伝いもしてください』…だってさ~」

「なるほどね…」


 そういうことなら納得。


 ポポの奴…きっと撫でまわされてるだろうな。


「ジャンケンで全部決めたからね~。私1回しか負けなかったから少なかった~」

「ジャンケンってお前…。勝ったとはいえ容赦ねぇな。そこは少し妥協して『私も手伝う』とか言うところだろうに…」

「やだ!」

「…はぁ。ったくもう」


 俺の考えをナナが即座に拒否する。


 マジで容赦ねぇな…。ナナの意外な一面が見れた気がする。


 いや、でも修業中もモンスターに対して遠慮なんてしてなかったから、可愛いナリしてもしかしたらドSなのかもしれないな。

 おー怖い怖い。


 ポポ、まぁ頑張ってくれや。




「さて、よっこらせっと」


 ナナが俺の肩から離れてベッドに寝そべる。

 なんともオヤジくさい。


 だからそれやめろっちゅうのに…。


「ポポのことについては分かった。でさ、お前…町村を飛び回ったってことは結構な距離飛んでると思うんだけど、変化使っただろ? じゃなきゃこんな早く終わらない」

「うん使ったよー? でも誰にもバレてないし迷惑かけてないよ?」

「ならいいんだけど…。万が一があるから、俺がいないとこでは極力使わないでくれよ? 面倒ごとは勘弁だ。この前大変だったろ?」

「はいはい、りょーかいりょーかい」

「…ホントに分かってんのかお前?」

「もちですもち~」


 翼をパタパタと振り、ナナが反応する。


 テキトーな返事しやがって…。まぁ可愛いから許すが。

 このやろーめ…。




「じゃーもう寝るね~。ホント疲れた~」


 昨日今日で飛び回って疲れたらしく、もう寝るとのこと。


「…おう、寝ろ寝ろ。おやすみ」

「おやっす~」

「…相変わらずの言語だなお前は」

「ZZZ…」

「って寝るのはやっ!?」


 俺の言葉を聞き届けることなくナナは眠ってしまったようだ。


 疲れがあったとはいえ、数秒もしないうちに眠れるとかある意味才能だな…。

 俺もその才能欲しいわ。


 ナナに対して色々と思うことがあったが、俺はとりあえずナナを起こさないように持ち上げ、ベッドの枕元の隣に移動させる。


 だって中央で寝られたら俺が寝れないんだもん。


「ZZZ」


 ナナを移動させたわけだが、どうやら起きてはいないみたいでぐっすりと眠っている。


 危ない危ない。


「ごしゅ…じぃん…」

「…ったく、そうまでして来なくてもいいのに」


 ナナが寝言を言っているのを聞いて、俺はポツリと呟く。


 ポポとナナが俺のことを本当に慕ってくれているのは知っている。

 だからこうして眠ってまで俺のことを考えてくれていると、なんとも嬉しい気持ちになる。


「まぁ…。ありがとな…ナナ…」


 俺は小さな声でお礼を言う。

 ナナは寝ているから聞こえてはいないはずだ。面と向かって言うには恥ずかしい…。




 俺の声は誰にも聞かれることもなく、消えていった。

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