表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
58/531

56話 ゲーム(迎夢)

「…で、結局どうなんだよ?」

「え、何が?」

「さっきのどっちがつえーのかって話だよ」

「ああ、それね。…多分俺じゃないかなぁ。実力だけなら…」


 朝の時の反応を見れば多分そうなんじゃないか? 確証はないけど…。


「なんで先生がCランクなのか不思議ですね…」

「まだ登録して1ヵ月と少しだよ?」

「あ、そういえばそうでしたね」

「それでも随分と早いだろ…」

「上には上がいるんだな…。俺も頑張らないと」

「ってか、冒険者って強さだけで判断するものじゃないからこれが普通でしょ? 俺はまだまだ未熟だよ…だから今回の依頼受けたわけだし…」

「そうなのか?」

「うん」


 これは事実だ。


「でもまぁ、先生ならすぐにランクが上がって有名になってそうですけど…」

「そうだな。その先生に指導を受けた俺たち…って自慢できるかもな」

「やめてくれ、俺は今のままで満足してるんだから…」

「「「えっ? (は?)」」」


 俺がそんなことを言うと、3人が驚いた反応をする。


 えっ? 何スか?


「…俺、なんか変なこと言った?」

「いえ、冒険者って普通ランク上位を目指すものかと思っていたんですけど…違うんですか?」

「…普通はそうだろうね。でも俺は他にやりたいことがあるし、日銭を稼ぐだけの目的で冒険者をやったわけだからなぁ…。上を目指すとかはどうでもいいんだ」

「もったいねぇなぁオイ…」

「だな」

「…すんません」


 もっと言えば、冒険者になったのは身分証明のためだったんだけどね。言ったらもっと叩かれそうだから言わんけど。


「でもさ、ランク上がっていくと指名依頼とかが増えるでしょ? そうすると束縛されることになるし…俺はまだ自由でいたいからさ」

「それ以上のメリットがあると思うんですけどね…」

「金とかな」

「融通が各所で効くしな」


 あらら、皆さん向上心豊かですね…。でも俺、そういうのいらないんで…。


 ここは話を終わりにした方がいいな。

 これ以上はなんかいらん勘違いをされてしまいそうだし。


「ま、まぁそういうことなんだよ。この話終わり!」

「…先生ってなんか変な人ですね」

「…よく言われるよ」



 分かってますよ、んなことは…。




 ◆◆◆




 それにしても…。


 なんともアンバランスな組み合わせ。

 優等生2人、優性不良児1人、末期チビ助、という面子が集まっている光景とかあんまり見ないと思うんだが…。


 優等生っていうのは勿論エリック君とメイスン君だ。

 この2人は今日実際に手合わせをしてみて、戦闘に関しては非常に優秀だなと感じたし、知識量も豊富だった。だから多分そうだと思う。


 優性不良児はアレク君。

 見た目、態度、言動が不良のくせに、思考は至って良識を持っていると感じたのでそう判断。もしかしたら隠れツンデレかもしれんね。


 最後の末期チビ助っていうのは…まぁ俺だ。

 自虐になるけど、言い当て妙なんじゃないかね?


 まだ諦めんなよ! っていう声が聞こえてきそうだけど、無理です。諦めます。

 20にもなって身長160㎝なんだぞ? 成長期ですら成長が見込めてないのに、今更になって背が伸びるとか考えられんわ。

 成長期とは一体何だったのか…? カミシロDNAの悪戯なんですかねぇ? ハハハ、マジ迷惑。


「なぁ先生。放課後の時間って暇か?」


 夕食も終わりに近づき、変なことを考えていた俺にアレク君が聞いてくる。


「放課後? …多分空いてるんじゃないかなぁ。何で?」

「いや、アンタの強さはもう身をもって体験したから、稽古をつけてほしくてな…」

「稽古? 俺なんかでいいんだったら別にいいけど…」

「そうか…なら頼むわ」


 ふむ。時間はあるだろうから構わないけど…。まさか君からそんなことを言われるとは思っていなかったな…。

 別にいいぞ? デートだったら断ってたけど…。


「お前が自分から頼み事なんて珍しいな。一体どういう風の吹き回しだ?」

「…別になんでもねーよ。ただ単純に強いやつから色々技術を盗みたいだけだ」

「へ~、変なこともあるもんだな。明日の天気は嵐かもな?」

「うるせー」


 エリック君がアレク君に悪態をつく。

 どうやらアレク君がこういうことを言うのは珍しいらしい。


「じゃあそういうことで。演習場に放課後来てくれ」

「うん。了解」


 俺が君に何を教えてあげられるかは分からないけど、見て盗むって言うことならいくらでも相手はしてあげよう。


「それでさ、話は変わるんだけどヴィンセントのことについて何か知っている人っている? あれから特に情報が入ってこないんだけど…」


 アイツはどうなったんだろうか? 


 学院長にさっき報告をしたときも特に何も聞かされなかった。

 今日で退学とかは流石にあり得ないので、何か少しでも知っている人がいれば聞いておきたい。


「さぁ? 僕は特に何も…。エリックとアレクはどうですか?」

「俺も知らないぞ?」

「知らないな」

「…そっか、そりゃ残念」


 う~む。誰も知らないみたいだ。

 なら詳細は明日学院長に聞いてみますかね。




 …じゃあついでにこれも聞いておこうかな。


「じゃあまた話変わるんだけどさ。皆って『ディープゲイザー』のこと…知ってるよね?」

「ああ、先生知ってたんですか…」

「嫌な名前が出てきたなぁオイ」

「ハハハ…」

「…」


 これが聞きたかった。皆はこれをどのように思っているのか超気になる。

 ちょっと教えてー。


 まぁ、反応からしてあんまりよく見られてないっぽいけどさ…。


 エリック君は苦笑い、アレク君とメイスン君は呆れているような表情をしている。


「朝にさー、その連中に捕まっちゃって大変だったんけど、いっつもあんな感じなの?」

「うわぁ…捕まったんですか、よく無事でしたね…。まぁ最近…といっても去年くらいからですかね? 過激になってきたのは…。今はもっと酷いですけど」


『ディープゲイザー』はどうやら去年よりも前に発足しており、去年辺りから急に過激に活動するようになったということらしい。


 去年に何があった…。


「じゃねぇか? 俺もまとわりつかれて大変だったぜ…。何が『君にはゲイザーの資質がある!』…だ。んなもんねーっての」

「僕も似たようなものですね。アレクがいなかったらどんな目に遭っていたことか…」

「…お前は確かに危なかったな」

「ええ、本当に助かりましたよ」


 アレク君とメイスン君の2人が当時を思い出したのか、浮かない顔をしている。


 一体何があったんだ…。気になるじゃないか。

 …なんかトラウマを抉るみたいなことになりそうだから、追及はしないけど。


「皆も苦労してるのか…。ところで夕飯のとき連中がいなかったけど…?」

「いない日は大体集会をやってるんじゃないかと…。学院の敷地のどこかでやってるはずです」

「そんなのあるんだ…」

「…この前は空き教室でやってたな。教室に忘れ物取りに行くとき見かけたぜ?」

「俺は旧校舎1階のトイレでやってるっていうのを聞いたことがあるぞ」

「うわぁ…」


 男だけの…しかもゲイたちだけの集会とか絶対に行きたくねぇな。想像もしたくないし。

 てか集会するほどのことか? 神聖な団体とか抜かしてたけど、それっぽいことするなよな。

 掲げている内容が神聖とは制反対なんだからさぁ…。


 もう何なんだよアイツらは…。


「悪夢はみるし、連中には捕まるし…いいことねーな今日は…」


 俺は愚痴る。


「悪夢? …あの、それってどんな内容でした?」

「え? …その、ゲイたちに追いかけられる夢だったんだけど…」

「…ここにも犠牲者か」

「お気の毒に…」

「はい?」


 え? どういうことだ?


「えっと、先生が見た夢はですね、多分『ディープゲイザー』が作った魔道具の影響だと思います」

「は?」

「奴らは自分たちの仲間を増やすためには直接的な干渉だけでは駄目だと思ったらしく、精神的な攻めも併用するようになったみたいで…」

「…」

「その精神的な攻めというのが…夢による精神攻撃なんですよ」


 オイオイふざけんなよ!




 ―――魔道具


 魔道具っていうのは、地球で言うところの電化製品みたいなものだ。

 アイロン、洗濯機、扇風機などなど…。その種類は多岐に渡る。

 モンスターから採れる魔核を核としており、それを職人が加工したものに魔力を込めることで使用するのだが、アイロンなら火属性の魔力、洗濯機なら水属性の魔力…といった具合に、それぞれ用途と対応した系統の魔力を込めなければならない。

 そのため、使用者は自分が対応していない属性の魔道具は使用することができない。

 だが、その魔力を補充する仕事を生業とした人がいるらしく、その人に頼んで魔力を込めてもらうというのが一般的な使い方だ。それで生計を立てている人もいるとかなんとか。


 ざっとこんな感じかな?


 ただ、魔道具は作るのには専門の知識が必要らしく、一般の人は作ることができない。

 この学院では多少魔道具作りの授業は行っているみたいだが、それでも簡単なことしか教えていないらしく、複雑な用途や機構をした魔道具なんてものは作れない。




 以上、ウルルさんから教わりました。




 じゃあ話を戻そうか。




「…じゃあ俺が見たあの夢は…アイツらが原因なのか?」

「おそらく間違いないかと…」


 アイツらあああぁぁぁっ!!! 俺の睡眠を邪魔しやがってえぇぇぇぇっ!!!


「ちなみにこれを『迎夢(ゲイム)』というらしいです」


 無駄に語呂のいい名前つけてんじゃねーーーーーっ!!

 なに名称つけてんだゴルァぁぁぁっ!!!


「なんでも、ゲームで奴らが勝ったら迎え入れられることを掛けているみたいで…」

「なんじゃそりゃっ!?」

「負けるとほぼ確定でゲイに目覚めるらしいですから…」


 えええええええええええっ!!?? うそんっ!?


「先生、追いかけられたって言ってましたよね? 多分それがゲーム…推測するに『鬼ごっこ』だったんではないでしょうか?」

「…そう、なのかな…?」

「じゃねーの? それ以外考えられないだろ」


 確かに夢だと追いかけられていた。相手3人もいたけど…。いや、正確には4人と言っていいか。

 意外すぎる人物だったが…。


 あれ? でも俺それだと負けたんじゃね? 


 思い出したくもない夢を思い出す。


 最後の記憶だと、俺は確かに○○○を○○されたはず…。

 うっ! 思い出したくないのに…!


 でも、確かに負けたはずだ。なのに俺はゲイには目覚めていない…。いや、目覚めたくなんてないけど!

 これは…もしかして【神の加護】のおかげだったりするのか!?


 奴らの言うゲームには負けたが、【神の加護】のおかげでなんとか免れたのかもしれない。

 現状それが一番有力な可能性だし…。




 よっしゃああああああ!! 【神の加護】バンザァァァァァイ!!!

 ありがとう!! 愛してる!! 一生感謝いたします!!




 俺は心の中で感謝の意をこれでもかというくらいに表す。


「先生はゲイではなさそうですし、ゲームに勝ったんですよね?」


 俺があれこれ忙しく考えていると、メイスン君が俺にゲームに勝利したのかを聞いてきた。


 ふっふっふ~、それが勝ってないんですよワタクシ。【神の加護】のおかげでね!

 まぁ、そんなことは言いませんけど。


「もちろん勝ったよ?」


 当然だろ? と言わんばかりに嘘をつく。


「ふぅ…なら良かった」

「まぁアンタほどの奴だったら夢でも負けたりしねぇだろうな」

「うんうん」


 俺の嘘を信じてくれたのはいいんだけど…


 いやいや、普通に負けましたから。

 アイツらめちゃくちゃ足早くて絶望したんですからね? 現実と夢じゃ絶対にステータス連動してないと思う…。

 現実だったら逃げ切れる自信あったし。




 まぁ、それにしても本当に【神の加護】には感謝だわ~。

 いつもいつも俺を守ってくれてありがt………。











 あれ? ちょっと待てよ?











 なんで夢を見てから効果発揮してんだ?

 だったら夢を見せないとか、魔道具を無効化するとか、事前に防ぐことできたんじゃねーの?


 おかげで変な記憶が頭に残っちゃってるんだが…。




 オイオイ、【神の加護】さんよー。




 働くとこ間違えてんだろ! なんで事が起こってから発動してんだ!

 事故は未然に防がなきゃ意味がねーんだよ! このポンコツスキルが! 


 ふと考えてみると色々変な点に気づき、俺は先ほどの態度とは打って変わって悪態をつきまくる。


 まったく! ポポのときもそうだったが舐めてるだろコレ。

 神様! なんとかしてくださいよー! アンタのくれたスキル不良品なんスけどー。




 てか、『ディープゲイザー』の連中よくそんな魔道具作れたな! そこに一番の驚きを感じてるわ!

 だって作るのってすごい難しいんだろう? こんな夢を見せる魔道具とか…複雑な機構してるだろうし、ある意味優秀なんだなぁとは思うけど、その才能の使い方は間違っているとしか思えない…。


 もっと有用性のある使い方をしろよ…。



「先生? どうしたんです?」

「…なんでもないよ。さて、そろそろ戻ろうか? 他の生徒もだいぶ戻ってるみたいだし」


 長い間黙っていた俺を変だと思ったのかエリック君が声を掛けてきたが、そこはお得意のポーカーフェイスでなんとか誤魔化す。


 いつ得意になったのかって? もちろん今ですが何か? 異論は受け付けておりませんので…。


 私はポーカーフェイスが得意だった…いいね?






 結構な時間話し込んでいたこともあって、学食内の人数はだいぶ減ってきていた。

 残っているのは俺たちと他数名の生徒だけだ。


「そうですね…戻りましょうか」

「おう」

「はい」


 そして皆それぞれ食べ終えた食器を持ち、席を立つ。

 俺も立とうとしたが…


「ん? ………」

「…先生?」


 何か違和感を感じたので、席を立たずに意識を集中する。


 この違和感は…







「………ナナ…か?」







 これは…ナナの感覚だな。随分と近いけど…一体どうしたんだ? 


「何してんだ?」


 そんな俺の状態を見てアレク君が聞いてくる。


「ああ、ゴメン。何でもないから気にしないで…」

「? …変なやつだな」

「いや、ホントになんでもないから」


 とりあえず席から立ち上がり、皆と共に食器を返す。




 早く自室にもどらないとな…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ