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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
55/531

53話 戦闘演習、目指せ全国

 ◆◆◆



「おー、なんかやってるなー」


 俺が演習場に辿り着くと、フェンス越しにだが人が集まっているのが確認できた。

 さっきのクラスの人たちだ。

 服が制服ではなくなっており、動きやすそうな服装をそれぞれがしている。


 あと、2人ペアになって、魔法の撃ち合いやら武器をぶつかり合わせていたりしているのもチラホラといるな。


 魔法学院とはいえ、流石に皆武器は持ってるのね…。

 なんて逞しいんだこの世界の学生は。俺だったら逃げ出してるぞ…。


「…あ! カミシロ先生!」


 皆を見ていた俺だが、クレアさんがどうやら俺に気づいたらしく声を掛けてくる。

 そしてクレアさんの声に反応して、クラスの皆がこちらを見てくる。


「おい、来たぜ」

「あの人がまさかなぁ」

「ちょっと意外かも」


 クラスの皆はこちらを見てヒソヒソしている。


 多分さっきの騒ぎがもう広まってるんだろうな。

 ヒソヒソ話してるのって多分そうじゃね?


「えっと、今そっち行く!」




 ◆◆◆




「ゴメンなさい! なんか事情聴取で遅れちゃったんだけど…」


 演習場内に入りすぐに謝罪する。


「大丈夫ですよ。先生の事情は分かってますから」

「ははは、それだと助かるよ」

「もういいんですか?」

「うん。あとは学院長がなんとかしてくれるみたい。…ところで、先生は?」


 先生にも報告しようとしたのだが、辺りを見回しても先生らしき人はいない。

 1、2限はヴァンス先生が担当してたが、戦闘に関してはそれ専門の先生がいるはずと思ってたんだが…どこだ?


「演習担当の先生が急病で休みなので、今日の演習は自主練なんです。ですから先生はカミシロ先生だけになります」

「えっ!?」


 はあぁぁっ!!? 聞いてないぞそんなこと!?

 俺が授業やんのか!? やらないって言ってたじゃん!

 なぜ朝にそれを伝えないんだ…。

 学院長…ヴァンス先生…。アンタら分かってんじゃないのか?。


「え~…聞いてないんだけど…。俺、どうすりゃいいかな?」

「先生ですから、授業やればいいと思いますけど」


 いや、まぁそうなんですけど。準備とかしてないですし、おすし…。

 私こういうのは準備しないと上手く進められんのですよ…。


「だな。…まぁ自主練だし、テキトーにやればいいんじゃないか?」

「ですね。個人的に色々教えてもらいたいこともありますし」

「う~ん。しょうがないか…。でもじゃあ何やろうか? 今から授業内容とか考えるのはなぁ…」

「…順番に先生に魔法を見てもらうとかでいいんじゃないでしょうか? もしくは手合わせとか…」


 おおー、流石委員長。咄嗟の判断に光るものがありやすね! 

 その案採用で!


「…じゃあそれでいこうか! 皆もそれでいいかな?」


 皆に確認する。


「いいんじゃね?」

「うん」

「さんせー!」


 賛成らしい。


「アンリは?」

「さ、賛成で…」

「…」


 アンリさんはというと、クレアさんの後ろになんか隠れてた。

 俺の顔をチラチラと見ており、俺と目が合うたびに照れくさそうにしている。


 …これはやっぱり、そういうことなんでしょうか?

 なんかこっちまで恥ずかしいんですが…。

 俺、そういう感情向けられたことって全然ないので耐性ないんスよ…。




 ま、まぁ今はこの問題は後回しにしておこう。


 じゃ、そういうことで。


「じゃあ誰から行く?」


 俺が聞いてみると…


「俺から行かせてもらう」


 赤い髪を逆立てた男子生徒が低い声で名乗りを上げる。


 目つきが鋭いのでちょっと怖いし、もしかしたら不良なのかも…。

 手には斧を持っており、それが怖さに拍車を掛けているということもあるが、なによりデカい。

 俺より30㎝くらい大きいや。どっちが先生か分からんなこれは…。


「あ、了解…。どっちにする?」

「もちろん手合わせに決まってる」


 ですよねー。

 見るからに好戦的な感じだし、分かってましたよ。


「委員長の話を疑ってるわけじゃねぇが、実際にこの目で確かめてぇんだ。アンタの実力を…」

「アレク。敬語くらい使ったらどうだ?」


 エリック君がため息を吐きながら赤髪の子に言う。


 どうやらアレクという名前らしい。


 ふむ。

 アレクの『ク』を『ス』にしたら戦神と同じ名前ですな! 

 ヒューヒュー! かぁっくいーーっ! 活かした名前してるじゃん!




 …ま、それが何だってんだって話ですけどねー。

 てか何、今の俺の思考…。俺病んでんのかな? 




 それにしても…。

 ありゃ? 意外にもまともな奴っぽい? 

 これは失礼。俺君のこと不良と思ってました。お兄さん反省しますです、ハイ。


「俺臨時講師だし、別に敬語とか気にしてないからいいよー」

「…だそうだぞ。エリック」

「お前教えを請う立場なんだから少しは遠慮しろよ」

「先生が言ってんだから別にいいだろ」

「…ったく、お前ってやつは…」

「あのー、とりあえず始める?」


 なんか2人の会話が長引きそうだったので、俺は割り込んで中断させる。


 時間も有限だし、ちゃっちゃか進めないと…。


「ああ、悪ぃ悪ぃ。さっさと始めようぜ」


 アレク君はそう言ってグラウンドの中央に移動し始める。

 そして俺もそれについていく。


 皆は離れた所で見学するみたいだし、余程のことがない限りは事故は発生しないだろう。

 少なくとも、さっきのように飛び火を起こして無駄な怪我をさせるつもりもない。




 中央に来てアレク君と対峙する。


 こんな風に人と戦うのは、黒フード…未来の俺の時以来だな。


「ねぇ、形式ってなんかあったりする?」

「学園式だと、勝利条件は2通りある。1つ目は相手が降伏を宣言した場合。2つ目は相手が気絶した場合。この2つだ」


 ふむふむ。了解した。


「ただし、相手を過剰に攻撃してはならない。降伏を宣言できない状況の場合も攻撃してはならない、っていう具合にだが、常識の範囲での細かな点もある」

「ほうほう。オーケー」

「ま、これは今回気にしなくていいだろ」

「…じゃあ近接戦と魔法戦のどっち? それとも両方とも一緒?」

「俺は両方で行く。先生はどうする?」

「…逆に聞きたいんだけど、どうして欲しい?」

「…先生が全力を出してくれればそれでいい」


 う~ん。そうは言ってもねぇ…。

 全力出したら、君死んじゃいますよ? 木っ端微塵になるよ?

 そりゃ無理ですん。

 これは悩むんだよなぁ。


 …とりあえず、臨機応変にいこうかね?


「じゃあ、俺は自由にやらせてもらうね?」

「…分かった」

「あと…遠慮はいらないからね? 失礼かもしれないけど、君たちじゃ多分俺には傷一つつけられないだろうから…俺を殺す気で掛かってきて欲しい」


 随分と舐めた発言をしているとは思うが、これで丁度いいくらいだと思う。

 いや、これでもまだ足りないだろうけど…。

 それくらい生徒達と俺にはステータスに差があるだろうしね。うん。



「言ってくれるな。…だが、先生の言葉…信じさせてもらう!」


 そう言ってアレク君が持っていた斧を構える。

 目は本気だということが伝わるくらいに強い目をしている。




 そうだ! その意気だアレク君! 全身全霊で俺にぶつかってこい! 俺はその全てを受け止めてやる! 

 生徒と教師の魂のぶつかり合い…これぞまさに青春! 一緒に全国を目指そう!


 俺は忘れてきた青春を取り戻すためにここにいるんだ! やったるで~!




 …とまぁ、夕日をバックにした熱血な脳内妄想はほどほどに…。


 さて、仕事を始めるとしましょうかね?




 俺も構えをとったのだった。

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