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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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49話 面倒事

「それで、カミシロ先生は何の『職業』なんですか?」


 ここでまた質問タイムが始まったようだ。


「う~ん。『従魔師』かな、一応…」


 実際『職業』が何なのかって決まってないんだよなー。ギルドではその場しのぎで『従魔師』とか言っちゃったけどさ…。

 俺って本当の『職業』は何なんだろうね? 自分でも分からん。


「『従魔師』? でも従魔は見当たらないですけど…」

「ああ、今グランドルで別行動中なんだよ。頭良いからこうして別行動も取れるんだ。鳥を2匹従えてるよ」

「へ~、見てみたかったですね」

「どんな鳥なんですか?」

「インコっていうんだけど…、人の言葉を真似たりするのが得意な鳥かな。俺のやつは普通に会話できるけど…」

「普通に会話できるんですか!? うわ~実際に見てみたいですね~」

「驚くと思うよ?」


 そんな会話を俺たちはする。




 だが…




「また今年も冒険者が来たのか…、学院長を貶すわけではないが…それでも無浅慮と言わざるを得ないな」


 いつの間にか、俺たちの近くに身なりの良さそうな生徒が近づいていた。


 パッと見だが…他の生徒と比べると雰囲気がちょっと違うし、もしかしたら貴族か?

 てか、いきなり遠慮のない発言だな。


「ヴィンセントか…。何の用だよ?」

「!?」


 エリック君が対応する。


 俺はというと、ヴィンセントという名前に反応していたが…。

 ただ、エリック君はどことなく声に棘があるような気がする…。

 気のせいか?


「ふん。平民風情が貴族に対して生意気な発言をするな。学院という環境だから許すが、それ以外だったら容赦していないぞ?」

「うるせぇよ。貴族がそんなに偉いのか? 行動で偉さってのは示して欲しいもんだけどな?」

「口の減らない奴だな」

「お前もな」


 両者が睨み合う。犬猿の仲という感じだ。


 過去に何かあったのだろうか?


 それにしても…こいつがヴィンセントか…。

 こいつが今回の問題の元凶…。


 ヴィンセントが現れたからなのか、気づけば食堂にいる人のほとんどがこちらを見ている。




 ヴィンセントは金髪の髪をした短髪だった。


 顔は…悔しいがイケメン。

 後ろには取り巻きなのか複数の生徒を従えている。

 面倒そうなタイプみたいだな…。


「まぁいい。今僕が用があるのは彼だからな」


 ヴィンセントはそう言って俺のことを見る。


 ん? 俺…? 一体なんスか?

 見つめたってサインは上げませんよ? 欲しけりゃ予約制なんで申込みしてね。今のところ申し込み人数は0ですけど。


 もう朝の時みたいに熱くなってはいないので、軽く変なことが考えられるくらいに俺は落ち着いていた。




 とまぁくだらないギャグはさておき…


「貴方が今回の臨時講師だそうだが…悪いことは言わない、さっさと帰ったほうがいいぞ? 貴方から教わることなど何もないのでね」

「…どういう意味かな?」


 ヴィンセントの発言に俺は首を傾げる。


「去年で冒険者というものがどんなものかは良く分かっているんだよ。言うなれば、貴方はもう要らないということだ」

「…へぇ、そうかい」


 …随分な物言いの奴だな。ここまでストレートに言われるとむしろ清々しいわ。


 ハイそうですねー。でも、こちらも仕事で来てるんで引き下がるわけにはいかんのですよ。

 勘弁してくれや。それにお前に用があったのは俺も同じだ。


「ちょっとアンタ、いきなり現れて失礼なんじゃない?」


 アンリさんが堪えきれなかったのか席を立ち、声を上げる。

 そしてヴィンセントに近づいていく。


「僕は事実を言ったまでさ、黙っていろ平民が!」

「あのさぁ、お前…去年のことを言ってんだろうけど、それが一体何だってんだよ? たったそれだけでいい気になるとか…頭おかしいんじゃないか?」


 エリック君がは呆れた顔でそう口にする。


 しかし…


「口の利き方に気を付けろ! 僕は貴族でお前は平民なんだ、少しは身をわきまえたらどうだ?」

「…さっき許すって言っただろうが」

「あれは僕なりの配慮だよ…、平民には理解できなかったか」


 やれやれと言わんばかりにヴィンセントが首を振っている。




 これが貴族様なのか? 平民平民と…さっきからそればっかりだな。

 ウッゼェ~腹立つわ~。


「なによ! いつも平民平民って、アンタなんてそれしか言えないだけの貴族じゃない!」

「っ! 馬鹿にするな! 女だからといって容赦はしないぞ!!」

「アンタなんか怖くない!」

「アンリ! 少しは落ち着け!」

「アタシは落ち着いてるよ!」


 エリック君がアンリさんを静止するも、アンリさんは聞く耳持たずといった感じだ。ヴィンセントも同様。


 マズイな…。どちらとも頭に血が上り始めてる…。

 面倒なことにならなければいいが…。


 ヴィンセントはというと、アンリさんの言葉で顔を真っ赤にしている。

 今にも爆発しそうだ。


 そして…


「痛い目を見ないとダメなようだな…。万物を燃やしつくす火炎よ顕現せよ!」

「…は?」

「っ!? やめろ!!「くらえっ!『ファイアバースト』!!」

「「キャーーーーーッ!!!」」


 エリック君がいち早く反応し、ヴィンセントを止めるも遅かった。

 ヴィンセントが呪文を口早に唱え、魔法を放つ。そして近くにいた他の生徒は悲鳴を上げる。


 俺はというと、こんな場所…公共の場でそんな魔法を放とうとしているヴィンセントが理解できず、一瞬思考が停止したため反応が遅れた。そして生徒の悲鳴ですぐさま我に返る。


 ヤッベ!!! 




「えっ…」

「っ!」


 アンリさんは状況を飲み込めていない。


 クソッ! 間に合えっ!!!



 そして…



 大きな音が食堂に響き渡る。音の大きさで窓がビリビリと振動し、俺たち周辺の場所が煙で包まれる。

 周りにいた生徒たちは咄嗟に地面に伏せ、なんとか衝撃を和らげていたが、一部の生徒は吹き飛ばされていた。


 テーブルや椅子が倒れ、散乱する。












 やがて煙が晴れ…




「…フンっ!! 僕に逆らうからこうなr……!?」


 自信満々にヴィンセントは言うが、途中で言葉を中断する。




「オイオイ…こんな場所で『ファイアバースト』とか正気か? お前…頭おかしいんじゃないのか?」




 床にへたりと座るアンリさんの前に立ち、右手を前に突き出しながら、俺は怒りの顔を浮かべ、ヴィンセントに向かってそう言い放った。

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