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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
序章 旅立ち
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3話 グランドルの街

 ◆◆◆




 ただひたすら俺達は……いや、俺は草原を歩き続けている。2匹は俺の肩に乗っており、実際に歩いているのは俺だけだからだ。非常に楽ちんそうである。


 いいご身分っスねぇ。うらやましい。

 まぁ小さいし重さも俺からすればないようなもんだから別にいいんですけどね。




 あれから1時間は草原の中を歩いただろうか? 景色は少しずつだが変わりつつある。

 当初は緑一色で満たされていた景色。それが今では草木が減り、茶色の地肌が見え隠れし始めている。

 正直緑一色の光景に目がおかしくなりそうだったが、パッとしない色であっても不思議なことに安らぎを覚えるものだ。

 一色だけ色が加わることで、まったく違う心地になれるものだなぁと思っていたりする。




 そして、ようやく街が確認できる距離まで近づいたのか、遠くにだが城壁らしきものを確認し、少しテンションが上がる。


 あそこは街というよりも都市かもしれない。

 ざっとここからまだ3~4㎞はありそうだが、それでもここから見えるということは相当大きいんだろうなぁ。


 目的地が見えると、それだけで途方もないように思えた移動が楽になる気がした俺達は、現在その街を目指してひたすら歩いている最中である。

 幸運なことにまだ一度もモンスターに遭遇していないため、五体満足の状態で。


 ぶっちゃけ弱そうなやつが一回位は出てきて欲しいと思っているんだが、出ないもんはしょーがない。

正直こちらは武器すら持っていないから、まだ出くわすのは避けたいところだったため好都合と思っておくことにする。

 仮にもしもモンスターが出たら……とりあえず殴るか蹴るしか出来ないし。




 あともうすぐだ……。


 


 ◆◆◆




 やがて町の入口を確認できる程に近づき、門を視界に捉えた。

 どうやら門の所には兵士さんが立って見張りをしているらしく、そこを通る以外で街に入ることはできなさそうだったが。


 門番か……ホントにいるんだなぁ。


「ポポ、ナナ。今から俺が良いって言うまではしゃべるなよ」

「は~い」

「了解です」


 物分かりが良くて助かる。流石に鳥が喋るのは珍しいと思うからな……。

 一体どんな風に見られるか分からない以上、回避できる危険はとことん回避に限る。物珍しさに興味を惹かれて目立つのは避けたいし、もしも悪人に目を付けられたらたまったもんじゃない。

 喋るのが普通であって欲しいと願いたい。異世界だし。


 ……と、あれこれ考えているうちに、いつの間にか街の外壁の目の前に着いてしまう。

 上を見上げてじっくりと観察し、その光景に圧巻される。


 う~ん……でかい。街じゃなくてもしかしたら帝都とかそんなレベルかもしれない。


 街を守るための外壁、それに対面したことでその存在の必要性が分かった気がした。まるで無言の威圧を向けられている気分になるのだ。ただそこにあるだけでここまで感じる重圧は、確かに街を守っていることを証明していると俺は思えた。

 

 感慨深くも不思議な気持ちで、門の横に立っている門番さんらしき人の所に近づいていき……ハッとあることに気が付く。


 そういえば……言葉って通じるのか? 確認してないけど大丈夫だろうか?


 神様と普通に会話出来ていたことですっかり抜け落ちていた懸念。意思の疎通は極めて重要であり、必須のスキルと言っても過言ではない。

 だが俺はそれを失念していた。アホの子ここに極まれりである。


 でもここまで来てしまっては退くに退けないのも確かだ。俺は既にこちらに気が付いている兵士さんの前まで行って話し掛ける。

 

「あの……すいません」

「ん? 旅の人かな?」


 ……なんだ、普通やん。

 OK。言葉はどうやら通じるようだ。ご都合主義万歳。


 通じると分かってしまえば問題ない。普通に話をするだけだ。


「この中に入りたいんですけど……」

「はいはい。じゃあ身分を証明するものはあるかい?」


 やっぱりか。まぁこの辺は普通そうだよな。これ言われなかったら何のために門番が立っているんだって話になるし。

 まぁ一応それについては想定済みで、対応の仕方のパターンは考えてある。


「それが持っていなくて……。仮発行とかってできますかね?」

「ないのかい? それなら銀貨1枚必要だけど発行はできるよ。効力はその日1日しかないから早急に正式なものを用意しなければいけないけど」

「そうですか。これはご丁寧にありがとうございます。正式なものはどこで発行するのが一番手っ取り早いですかね?」

「やっぱり冒険者ギルドで冒険者になることじゃないかなぁ。他にも色々あるけど、すぐに発行できるのは冒険者ギルドだね」


 ふむ。どうやら冒険者ギルドはこの世界においては身分を証明するのには十分な組織みたいだな。

 町の出入りに使われるくらいだから、もしかしたら別の街とか国でも使えそうだな。

 というより仮発行できてよかった。最悪街に入れずに一夜を明かすとかだったら……イヤよアタシ。初日で野宿とか幸先悪すぎて目も当てられん。


 街に入ったら早速冒険者ギルドにいこう。


「分かりました。では仮発行をお願いできますか?」


 そう言って、俺はポケットから銀貨を一枚取り出す。


 なんで銀貨を持っているかって? 俺が聞きたいね。だって入ってたんだもん。

 多分神様が入れておいてくれたんだと思う、てかそれしか考えられないけど。きっと初回限定サービスみたいなもんだと俺は思っている。


「了解した。ちょっと待っててくれるかい?」


 銀貨を渡すと、兵士さんは俺の元を一旦離れて行ってしまったが、1分くらいでこちらに戻って来る。手には艶々に磨かれた板……恐らく仮身分証なのだろう。それを俺へと渡してくれた。


「はい。それはなくさないようにね。身分を証明できないと奴隷落ちになるか、金貨10枚の罰金になるから」


 そんな恐ろしいことを言いながら。


 おおぅ、そりゃ怖いわ。今この時は最も大事にしなければ……! 

 てか奴隷……いるのか。あんまし良いイメージないな。


「それと気になってたんだけど……その肩に乗せている綺麗な鳥は? 君の従魔かい?」

「あ、ハイ。そうですよ」


 次々と分かっていく情報に一喜一憂もあれば残念に思ったりしていると、ポポとナナについての指摘がされた。

 喋っていないといっても、目立つ色合いをしているのだからむしろ指摘されない方がおかしい。


「見た所従魔の証を身に着けていないようだけど、持ってたりするのかい?」

「いえ、持っていません」

「そうか。なら従魔の証はこの街では無料で配布しているからあげるよ。他の街とかだと有料の場合があるけどね」


 神様の話だと街で買うって聞いてたんだけどな。こういうところもあるのか。

 余計な出費が出なくて助かりますねぇ。


「何から何まですみません」

「いいのいいの仕事だし」


 結構荒っぽい対応をされると思っていた手前、こうして親切に接してもらえると助かるし嬉しい。しかもこちらの世界に来て初めて会話した人ならばなおさらというもの。


 あらやだ。この人超カッコイイ。

 俺の見立てだけどこの人モテるに違いない。きっと無意識にファンを集めてるねこりゃ。顔もイケメンだし……。

 仕事を真面目にやるのも素直に好感が持てる。


「はい。これが従魔の証。どこでもいいから付けてあげて」


 門番さんを高評価しながら、手渡してくるものを受け取る。

 渡されたのはミサンガのようなものだった。


 へぇ、こんな感じなのか……。もっと首輪とか重々しい雰囲気のものを想像していたんだけどなぁ。

 さてどこにつけようか? 足かな、やっぱり。


 付けることが義務付けられている以上、今手渡されて付けないわけにはいかない。俺は黙って受け入れてくれる2匹の足に、とりあえず従魔の証をつけた。

 今は俺の独断で足に着けてしまったが、着ける場所がどこが良いのかは後で聞いてみよう。今は我慢してもらうしかない。


「うん、つけれたみたいだね。従魔の扱いについては心得てる?」


 えっと、あれか……従魔が問題を起こした場合、主人が責任を取る的な感じの。

 何も知らないってのも不審がられそうだし、当たり障りのない言葉で聞いておこう。


「一応確認をしたいので、説明をお願いできますか?」

「はいよ。まぁ心配いらなそうだけど。えっと……従魔は主人の分身のようなものだから、従魔が犯した罪は主人の責任になる。……簡単に言ったけど以上」

「……えっ!? それだけですか!?」


 短っ! えっ!? それだけかよっ!?


 あまりの説明の短さに、それでいいのかと驚いてしまった。

 細かい事項がたくさんあると踏んで集中して聞いてたのがバカみたいだ。


 もっと色々あると思ったんだけどなぁ。苦労が少なくて助かると言えばそうなんだけど……。

 でも兵士さん……本当にそれだけなんスか? コイツらめちゃくちゃデカくなれたりするんですけどそれって大丈夫?


「うん? そうだけど? というよりこれは世界共通のはずなんだけど……」

「あっ、いえっ!? 僕が住んでたところは田舎だったのもので、つい」

「ふ~ん? そうなんだ。じゃあしょうがないのかな?」


 危ない危ない。やっぱり常識がないのはマズイな。すぐにボロが出そうになってしまう……。

 とりあえず早く街に入っておこう。これ以上は怪しまれそうで墓穴を掘る気がしてならない。街に入ったらそういうのが記載されてる本がないか探してもいいし、聞いたりもしてみよう。


「じゃあ通ってもいいですかね?」

「??? まぁ、はいどうぞー。ようこそグランドルへ!」


 こんな俺でも特に怪しんだりしない、純真な門番さんに感謝を。


 どうやらこの街はグランドルと言うらしい。

 俺はグランドルに足を踏み入れた。

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