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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第七章 悠久の想い ~忘れられた者への鎮魂歌~
497/531

495話 超獣

間隔空いてすみません。

仕事に忙殺されとりました。

 

 ◆◆◆




「もう少しかかりそうですか?」

「いや、もうすぐ着くよ」


 アスカさんに頭を下げてから、更に少し日が傾いた頃。

 一度アスカさん宅に戻った俺達は準備を少し整えた後、村はずれの山の麓に広がるとある一帯へと向かった。


 善は急げという言葉よろしく、時間もあったため早速『気』についての指導をしてもらうためである。


 ――が、実際はその前準備が本当の理由だ。


 というのも、アスカさんが言っていたのだがどうにも俺の『気』は他の人よりも少し変わっているというか、感じ方に違和感があるそうな。そのためまだよく把握しきれていないとのこと。

 指導をする上で相手の『気』を正確に把握できていないのは少々問題であるため、一体何が違和感なのかその理由を探る意味でももう一度対峙する必要があったらしい。

『気』は素人が意識してすぐできるようになるものでもなく、戦いという『気』が非常に高まり揺らぎやすくなる状況を作り上げることで意図的に『気』を知ろうと考えたようだ。


 一応、アスカさん的には別の理由もあったらしいがこちらは不明である。

 こっちは教えを乞う立場なので他の狙いについては特に追及するつもりもない。悪意があるわけでもなし。


「緊張するね。僕にフリード君をどれだけ本気にできるかな……」

「俺もアスカさんのガチな実力を見たことあるわけじゃないんで。まだ披露されてない技も含めて色々と愉しみにしてますよ」


 セルベルティアでアイズさんの実験に付き合った時とは違う、今回は割と本気の手合わせ。

 実力者と名高いロアノーツさんを退けたというアスカさんの本気とぶつかることで、少しでも俺の『気』が把握できるならこちらも望むところだ。

 断る理由もないし、俺もアスカさんの扱う『気』を使った戦いに興味もあった。前回は何も知らなかったが知ってしまった今では見方も変わる。


 魔力を伴わずに繰り出す技の数々には興味しかない。魔法もスキル技も本来はマナを使って繰り出すものだ。それと類似したものを『気』を使って繰り出せる話は俺の記憶にはない。


「――さて、到着したわけだけど……どうしようか?」

「う~ん……」


 アスカさんの言った通り、無事目的に到着したようだ。そして到着と同時にお互いの脳裏にあったであろう要素に対し顔を合わせ、横目で遠くの気配をまずは探った。



 俺らからしたら頭隠して尻隠さずなんだよなぁ……。なんでこんなに大勢来るのかね? 

 ていうかどうやって嗅ぎつけたんだか。


「ここらなら平気だと思ったんだけどなぁ。出来れば危ないから来ないで欲しかったよ。大体、皆仕事ほったらかしにして大丈夫なのかなぁ?」

「ええ。なんでこんなに集まってるんですかね? 大分離れてこっち窺ってるみたいですね」


 俺の目にはただの景色しか映っていないが、気配で分かる。

 今俺達がいる場所は草木が少し点在するだけの更地だ。そこを起伏のある地面が取り囲むことで、地面に窪みが出来たように見える地形である。

 角度的に下からでは姿は視認できないものの、俺らの後ろにはそれなりの人数が丘の上から俺らを覗いているようだった。


 村の人達はまだ個人を特定するには親しくない人ばかりだけど、セシリィとカリンさんに至っては気配で特定が可能だ。

 その二人まで群衆に紛れているって一体どうなってるんだか……。


「多分、僕らの会話をおばあちゃんは聞いてたから……。誰かにポロッと話したんだろうね」

「ああ、そういう……。情報回んの早いっスね」

「基本何も変わったことが起こらない、退屈の方が多い村だからね。こういうことは皆面白がってすぐに集まっちゃうんだよ」

「見てて楽しいものにはならんと思いますけどねぇ」


 少し申し訳なさそうな顔でアスカさんが俺に謝った。俺も事情を察して仕方のないことだと思うことにする。


 集まってしまったものはしょうがない。追い返すのもなんだか手間だしな。


「ま、別にいいか。それより、村のはずれにこんな場所あったんですね? ここだけやけに変わった地形してますけど」


 アスカさんと模擬戦を始める前に俺が少し気になったことを聞いてみると、アスカさんも俺の声を予想していたのかすんなりと答えてくれる。


「うん。ここはちょっと過去の出来事で出来た跡地でね。丁度良さそうだったから選ばせてもらったよ」

「過去の出来事? それって?」

「……僕が小さい頃の話で、もう十年は前になるかな? 多くの死者が出たくらい、酷い悪夢が僕らの村を襲ったんだ」


 ほう? アスカさんがセシリィくらいの歳の時か……。

 というかちょっと待って? なんかいきなり雰囲気変わったんですけど。

 これ……もしかして聞いちゃいけない話だった? 俺地雷踏んでない?


 身体がピシっと固くなって気が引き締まる思いだった。唐突な重い話に俺の意識はアスカさんの声に酷く集中する。


「何の前触れもなく、山の方に途轍もなく凶悪なモンスターが現れたことがあってね……ここはそのモンスターを討伐した時の場所なんだ。山から下りて村に向かって来ようとしていたのを村総出で迎撃したんだよ」

「そんな大掛かりな出来事があったんですか……」

「あの時は村の大人達が殺気立っていたから、子どもながらによく覚えてるよ。空気が張り詰めていて息が詰まりそうだった。僕の両親もそうだったからさ……」


 アスカさんが遠い目をしているのを見て、俺にはその続きが分かってしまった。

 途端に居心地が悪くなる。


「主に絶華と冥華の門下で討伐は行ったんだけど、あと一歩で討伐できるというところでモンスターの手痛い反撃にあったらしくてね。僕の両親はその時、他の人を庇って致命傷を負って……そのまま……」

「……」

「その後、態勢を整えたカリンの父親のリンドウさんが止めを刺してくれたおかげで事態は無事収束。村も無事で現在に至る……って感じかな。これが十年前の大事件の一部始終さ」


 カリンさんの両親については存命であることは聞いていた。俺達がこの村にやってきた時点ではタイミング悪く遠くの地域に足を運んでいたためまだ会えてはいないが、カリンさん帰還の知らせを受ければすぐさま飛んで帰って来るだろうと。


 しかし、アスカさんの方の両親については姿が見えず、また話題も出ないことは俺もずっと気になっていたのだ。

 謙虚で浪費家でもないアスカさんがあの広い家にたった一人で住んでいるのも疑問だったのだ。

 その疑問が今、ようやく解消された。


 まさか過去にそんなことがあったとは……。


「……そうでしたか。すみません、そうとは知らず……」

「君が気にすることじゃないよ。僕も話してなかったし、丁度いいかなって思っただけだからさ」


 俺の心情を察してくれたアスカさんが気を利かせてくれたようだが、どうやらアスカさんも既に過去の事情は乗り越えているようだった。すぐに態度を元に戻し、微かに笑みを浮かべている。


「けど、アスカさんの両親って冥華流の師範……ですよね? そんな人が亡くなるくらい強いモンスターっているんですね? しかもこの近辺に」

「僕もその事実が怖くて調べたことがあってね。これまでに色んな有識者と話もさせてもらったことがあったんだけど、東の地域の古の伝承に記された災いの通りのモンスターの説が有力のようなんだ」


 俺の疑問に神妙な顔でアスカさんが説明する。その内容の凄まじさたるや、まさに災いというのも頷けた。

 俺は更に話に踏み入っていった。


「過去何百年にも渡って数回似たような特徴の災害があったらしい。出現場所も山の方で同じで、特徴も類似している点が多かった」

「ちなみにどんなモンスターだったんですか?」


 モンスターと言っても色んな種類いるしな。獣みたいなモンスターに始まり、ゴブリンやオークとかの人型。無害である植物が突然変異でモンスターになった植物型も割といる。

 中には本当に生物かよってのもいる。アンデッド系ならまだしも、ほぼ岩だったり無機物みたいなのとか……あと意外とスライムも最たる例かもしれない。


「聞けば四足歩行の獣だったみたいなんだけど、常に黒い靄が身体中を覆ってたみたいでね。大まかな形状こそ分かったもののあまり姿について詳しく説明できるようなモンスターじゃなかったらしい。これは記録にも残ってる情報と一緒だ」

「黒い靄ですか……。でも、討伐できたなら死体があるでしょ? それでなんで詳しく説明が出来ないんですか?」

「うん。靄が晴れればその姿を拝めたんだろうけど、実際はそうはならなかった。討伐したら死体になるのではなく、どうやら塵になって霧散してしまったそうだよ。だから死体は残らなかったんだ」

「塵に……?」


 それ、モンスターなのか? 普通死体として残ると思うんだけど。

 塵になって消えるとか聞いたことないぞ。まるで幻術の類に遭遇したみたいな証言だな。


「だから分かりやすい被害の方が詳細に記録してあった。これだけは過去に伝える必要があると思ったんだろうね。実際、十年前の被害は記録と一致しすぎていて驚かされたよ」

「その内容を聞いても?」

「――ざっくり言うと、この災いは大地を喰らいその土地の命の源を啜り尽くす悪魔そのものが原因だ。この悪魔が及ぼす被害は環境への影響が甚大で、農作物全般は全て駄目になって大飢饉になりかける程だった。家畜は謎の病で数日の内に死に絶え、畑は全部砂に変わってしまって、村を流れる河は一滴の水もなくなって源泉から干からびたんだ」


 ……は? 何それヤバすぎやろ。


「そんな災害を招くモンスターが!?」

「時折信じられない被害に見舞われる村や町の話を伝聞として聞くことはあったけど、まさか自分達の村がその一つになるとは思わなかったよ。あの時の凄惨さは今の村の姿からは想像もつかないから。あの時は村がなくなるんじゃないかって考えたっけ」


 過去の出来事で過ぎたことだから言えるものの、当時では冗談抜きに有り得た吐露がアスカさんの口から出る。

 アスカさんの語りに対し俺は想像が追い付かず、現実が自分の想像の掻き立てを邪魔していた。


 活き活きと畑仕事に精を出す人達の姿も、子ども達が遊んでいた河が干からびる光景も、にわかには信じられないし考えられない。

 全てが枯れ果てた光景など、何一つうまくイメージができない。


「その影響なのかな……実際に討伐した場所だからか、未だにここにはあまり草木が生えてこないんだ」

「そう言われてみれば、確かに……」

「仮に生えてきても、大きくはならずにすぐに枯れてしまうしね。……ホラ、こんな風に」


 言われて辺りを見回してみても、最初に更地という認識を俺が持っていたように緑は極端に少ない。

 アスカさんが見つけて指差した方にあったなけなしの草木を見てみると、とても小さく色艶がない。

 糧を必要とした姿は命を燃やして辛うじてそこに留まるかのようだ。葉の端から黄色く変色が既に始まっており、今にも尽き果てようとしていた。




 十年という時を経て尚影響が残ってしまう程の被害。そんな力を持つモンスターが存在したことには驚きを通り越し驚愕する。

 竜などの屈強で強力なモンスターが持つ単純な力とは方向性の違う脅威。これには不自然さを疑う程の能力を保有しているとしか思えない。

 過去に数度同じ出現の仕方をしているというのも気になる。


 違和感を感じつつも、俺の脳裏にはある単語が浮かんだ。


「モンスターがごく稀に突然変異で魔物化するのは知ってますけど、それのことですかね? 魔物化したなら相当危険度って増すらしいですし。それなら特異な性質も併せ持ちそうだ」


 モンスターは様々な要因によって魔物化することがあると言われている。

 主に魔力が原因で体内の魔力が暴走することによって変貌。特異な能力を獲得して大抵の場合は周囲に被害を出すことになる。

 何故魔物化し、特異な能力を獲得するに至るのか……。それについては解明されていなかったはずだ。少なくとも俺の記憶では。


 魔物化したモンスターの共通点としては身体中を黒いオーラが覆うことが挙げられるが、話にあった黒い靄を黒いオーラと捉えたならどうだろうか? あながち間違っていない気がしないでもない。


「どうだろう? 魔物化については僕も聞いたことがあるけど、ちょっと違う気がするんだよね。アイズさんにも何か分からないかと思ってこの前話してみたことあったんだけど、その可能性とは違う可能性があるかもって言われたよ」

「というと?」

「僕は当時討伐に関わったわけじゃないんだけど、帰って来た人の話ではマナの気配は感じなかったって言うんだ。魔物化ってマナが原因で変貌するって話だし、もしそうなら違うんじゃないかな。それに定期的に現れてることに説明が付けられないし」

「あー、確かに……」


 見間違えたのではないかという俺の考えを否定し、別の可能性を示唆するアスカさん。

 魔物化自体よく分かっていない点を考慮するなら、現時点ではその考えを捨てる見方をすることもできるだろう。

 ただ、『気』という他の地域には見られない能力によって明かされる事実は災いの真実を浮かばせるも、同時に解明を遠のかせてしまう。


 そうなると魔物化ではない何かということになるのか……? 

 てか流石アイズさんだな。やはり色々と知ってらっしゃる。


「そうなると一体なんだったんですかね、そのモンスター」

「……アイズさんは言ってたよ。世の中には非常に類似してるけど、世間が認知していない全くの別物が原因の事象があるって。だから、きっとこれもそうなんだと思う」

「……」

「アイズさんも研究で調べものをしてる時に、被害内容は似つかないけど今回みたいな規模で発生に至るまでの不自然さ、そして不明瞭さが際立つ事件が世界各地で報告されていることは知っていたらしい。そして、僕がマナの気配がない云々を話したことで半ば確信に変わったみたいだ。その一部は魔物化でもないモンスターによって引き起こされていたんじゃないかって。あまり話に残らず広がらないのも、最後塵になって消えてしまうからだとしたら――」

「つまり……魔物化ではないけど、やっぱりそれに近しい力を持ったモンスターが原因だった……ってことですか?」

「多分」


 魔物化も出るとロクなことにならないって認識なんだけど、それと同類が他にもいると?

 もしそれが本当なら世の中怖いものだらけすぎる。発生するメカニズムも分からんわけだし。


「魔物化と同等の他に類を見ない災害をもたらす程の凶悪な獣……。魔物化とも違うそのモンスター達に対し、アイズさんは仮で超獣って言ってたよ」

「超獣……ですか」


 なんですかそのめっちゃ重い呼称。

 でもあからさまに危険な雰囲気が出てるし、シンプルに危険度を訴えてはいるか。


「凄まじい力を秘めてると思わせる呼称だけど、十分な呼び名だと思ったよ。何せ、当時遥か離れた場所にいながら恐ろしい気を放っていたからね。『気』の分かる人は気が気じゃなかったと思う」


 そりゃそれだけの被害を出すくらいなら放っている気配は相当な圧があってもおかしくない。


 魔力による圧。殺気や敵意による圧。これらは特に強者が保有していたりするものだが、それは『気』も一緒なのだろう。

 いたずらに振りまかれる強者の圧はそれだけで被害を招く。魔力に当てられただけで人が気絶するなんて話もあるくらいだ。


 俺も自分の魔力に関しては周りを気にしている立場故他人事ではないし、共感ができる。

 正直【隠密】があるからどうにかなっているところがあるのは事実である。


「けどね、フリード君もあの日……それに負けないくらいの『気』を放っていたと思うよ。まだ幼かった時点の僕じゃなく、今こうして大人になった僕がそう感じるくらいの『気』をね」

「まあ、理性があるだけでその超獣と似たようなもんでしょうからね、俺は」


 と、ここまで話が発展していったところで、アスカさんの俺に対する見方が明かされた。

 俺はというと苦笑する他なく、こうして恐れずに接してもらえているだけで幸運だなと改めて思う。


 つくづく人に恵まれてるよなぁ……俺って。境遇はともかく。


「ハハハ、そんな風に言ったつもりじゃなかったんだけど。――でも君はモンスターじゃない。君の振りまく『気』は害悪ではないし、むしろ心地良い」

「そうですか?」

「ああ。君だって嫌なマナや気配を感じることがあるだろう? 『気』も感じ方は恐らく同じさ。要は力は力、『気』は『気』ってことだと思うんだよ。使う人でその在り方なんて変わる。……周りが受け取る気持ちもね」

「おー……深くて有難いお話いただきました。真っ当な人の言う事はやっぱり違いますわー」

「大したこと言ってないのに大袈裟だなー」


 俺が半分は本気の茶化しを入れると、若干呆れた様子をアスカさんは見せるのだった。




 ◆◆◆




「――それじゃあ外野の目もあるけど……この距離なら心配する必要はなさそうかな?」

「余程大技使わない限りは平気だと思いますよ。危なかったら対処しますんで」

「そっか。じゃあ頼むよ」


 立ち話も程々に、当初の目的を果たすために意識を切り替える俺達。

 お互いに最後の準備を進め、俺も一瞬悩んだが『アイテムボックス』から通常サイズの剣を取り出した。


 見てくれはシンプルだが、これでも性能自体はそんじょそこらとは比べ物にならない代物だ。大剣と同様に竜の素材を使っているのだから。

 代役としては申し分ないだろう。


「あの大剣は使わないのかい?」

「ちょっと刃こぼれしちゃったんで今回は遠慮しようかと。そもそも剣は俺にとって攻撃するための手段の一つであってメインではないので」

「それもそうか」


 俺のスタイルを知っているアスカさんは納得すると、一度俺から20歩程の距離を取った。そして帯刀していた鞘からすらりと刀身を覗かせると、下段の構えでこちらを注視する。

 些細な動作にも無駄がない。洗練された動きだ。

 アスカさんの武人としての技量があらゆる部分から滲み出ていた。


 以前とは違う構え……。初見の様子見だった前回とは違うから、経験を経た上での対応なんだろうが、今回はどんなおっかなびっくりな技が飛び出すやら。

『水鏡』なんて芸当を見た時点でもう大半のことには驚かんぞ。だからこそ期待してたりもするけど。


「今更ですけど、本気でやるなら手加減なんて考えないでください。俺も自分の『気』をなんとしてでも把握してもらいたいんで――全力で殺す気でどうぞ」

「じゃあ遠慮なく……!」


 アスカさんが目を閉じ、深呼吸する。数秒後再び目を開けると、周囲の空気が張り詰めるように重くなった気がした。

 鋭いのではなく真剣な眼光が俺を貫き、刀の切れ味に等しい感覚を与えてくる。


「……?」


 そこでアスカさんとの距離が急にあやふやに感じ、景色の一部の時間が遅くなったのではと錯覚しそうになるも、それは空間が何らかの理由で歪んでいるからそう見えているということにはすぐに気が付いた。

 立ち合いはもう始まっているようだ。




 ――来る!




「フリード君、最初から全力で行かせてもらうよ!」

「『鉄身硬』……!」


 右手の剣に加え、空いた左手も強化する。

 こちらに駆けだしてくるアスカさんを、俺は迎え撃った。


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