47話 授業風景
生徒たちに向かって挑発に近い言葉を放った後、学院長は教室を出て行ってしまった。
どうせなんとでもなると思って言ったんだろうけど、その尻拭いするの俺なんですからね? 気を付けてくださいよまったく…。
ほらー、一部の生徒が睨んじゃってるし…。
「…あー、じゃ、カミシロ君よろしく頼むね。私はフレッド・ヴァンスと言う」
「こちらこそよろしくお願いします」
ヴァンス先生ね…。ども、お世話になります。
「聞いてるとは思うが初日だから、授業や生徒の雰囲気を知るためにもまず見学しててくれ」
「了解です」
「ただ午後に戦闘演習があるから、それには参加してもらいたいんだがいいかい?」
「問題ないです」
「よろしく頼む。よーし、じゃあ授業やるぞー」
「せんせー、その前に質問してもいいー?」
授業に移ろうとしていたヴァンス先生だが、生徒が声をあげる。
俺に質問ですかいな? 構いませんぜ?
俺もそっちの立場だったら聞きたいことあるだろうし。
「…確かに聞きたいことはあるか。じゃあ少しの時間質問していいぞ。いいよな? カミシロ君?」
「はい、どうぞ」
俺は了承する。
「じゃあアタシから! えっと…カミシロ先生? はランクはいくつなんですか?」
俺が了承すると、元気そうな赤い髪をした子が勢いよく聞いてくる。
ちなみにポニーテールの女の子だ。めっさ可愛い。
「Cランクだよ。この前Dランクから上がったんだ」
「じゃあその恰好は?」
「これは普段の恰好。依頼もこのまま受けてるんだ」
「え? そんな恰好で大丈夫なんですか?」
「結構動きやすいし、効果とかあるからね。下手な装備よりかは随分と性能いいよ?」
「へ~そうなんですかー。全然そんな風に見えないですけど…。じゃあ…」
質問なげー! よくもまぁそんなにポンポンと聞きたいことが出てくるなぁ。
まだ君しか質問してないんだがいいのか?
「ちょっとアンリ! 1人で聞きすぎですよ!」
「え~、まだ聞きたいこと色々あるんだけど~」
俺と同じに思ったのか、別の子が赤い髪の子を止めに入る。
赤い髪の子はアンリって言うみたい。
「…カミシロ先生すみません。私はこのクラスの委員長をしています、クレア・ハーモニアです。よろしくお願いします」
「あ、うん。よろしく」
と、長いピンクの髪をした女の子が挨拶をする。
はいはいクレアさんね…。しっかりした子だなぁ…。
まぁ助かったし、ありがとう。
「見ての通りこの子がいると質問が終わらなさそうなので、休み時間とか放課後にしてもらってもいいですか? 授業時間なくなっちゃいますし…ヴァンス先生」
「あー、やっぱそうするか。アンリはしつこいしなー」
「酷くない!?」
あ、あなたたちもこの子に対してそういう評価持ってるのね…。
慣れっこって雰囲気がプンプンしてる。
「カミシロ君。悪いがそういうことでいいかい?」
「え、ええ。問題ないです」
「え!? 無視!?」
「じゃ、そういうことで。じゃあ授業始めるぞー! ツカサ君は後ろの方で見ててくれるかい?」
「了解しました」
「ちょっと~!!」
アンリさんを無視し、授業は始まった。
◆◆◆
質問が終わった後は普通に授業開始。
1限目は終わって現在2限目の最中。
俺はというと後ろの方で授業風景を見学中。ただし、ただ見てるだけだとアレなので、片手にはメモを持って一応仕事してますアピールはしてる。
だってこの位置だとヴァンス先生に丸見えなんだもん。しゃーないじゃん。
「えー、このように魔法は医学にも応用が広まっており、今後更なる期待が…」
授業はどうやら、魔法の医学の分野に関係する内容っぽい。
ふむ。レベルが高いだけあって、皆真面目に受けているようだ。関心関心。
上から目線でそう評価する俺だが、俺はというと…
うん! 全然分からん! 専門用語が多すぎてついていけないや。
異世界に来て1ヵ月の俺にどう理解しろと? 無理だわ。
「この辺りはよく復習しておくように。最終テストで出すからなー」
「うえー…」
「マジかぁ…」
生徒達が不満げな声を上げている。
気持ちは分かるが…それは誰もが通る試練なのだよ。受け入れて勉強したまえ。
ま、俺はテストは試験当日の朝に必死こいてやってましたがね、大学でも。
そして…
トゥルル~♪ トゥル~♪ トゥルルルルルルルル~♪
教室に音楽が鳴り響く。
あ? なんだこれ?
「終わった~」
「飯じゃ~!!」
「寝よ」
生徒の発言ですぐさま理解。
あ、昼のチャイムかこれ…。
さっき聞いた1限終了のチャイムと違ったから分からなかった。
「じゃーこれで終わりだ。午後は演習あるから準備しとけよー」
そう言ってヴァンス先生は教室から出ていく。
「………」
あのー、俺お昼はどうすればいいんでしょーか? 何も連絡受けてないんスけど…。
まさか無しか? 無しなの? お前に食わせる飯はねぇってか?
そいつはあんまりだぜ先生よぉ。
1人で途方に暮れていた俺だが、4名の生徒たちが俺に集まってくる。
さっきの女の子達と…男子生徒2人だ。
「先生お昼どうするの?」
「えっと…どうすればいいんだろう?」
どうやらお昼のお誘いだったみたいだが、本当にどうすりゃいいのよ?
学食とかあるんならそっち行くけど…。
「お昼用意してないんですか?」
「…うん。何も聞いてなくて…」
「じゃあ学食行かない? 私たちお弁当組だけど多分座れるし、先生に聞きたいこと色々あるし!」
だそうだ。
正直助かるので、このまま学食に案内してもらおう。
「分かったよ。じゃあ学食まで案内してくれる? 場所分からないから…」
「オッケー! じゃあ行こっか!」
そうしてアンリさんは歩き出す。
本当に元気な子だなぁ。
今時珍しいんじゃないか? こういう子って…。
なんか見てるとこっちも元気が出てくる気がするわ。
そんなことを思いながら、俺たちはアンリさんの後をついていった。




