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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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44話 疑惑

 あの後、ハンス君に呆れた対応をされた俺だが、そんなことは気にしない。

 あんなことを言ったところで信じてもらおうとは思っていないし、これはあくまで決意表明みたいなものだ。それ以外に他意はない。


 見ていやがれっ!! 必ずお前らの度肝を抜いてやるからよ…!

 まずはその元凶を叩く!


 そんなことを胸に抱きながら、俺は今学院長室に向かっている。


 腹は膨れた、気力は充分。ついでに怒りも最高潮だ。

 今の俺は誰にも止められない…そんな自信を抱くほどだ。


 学院長室に向かってしばらく歩き続け、ようやく辿りつく。

 途中何度か生徒に出くわしたが、冷ややかな視線は全て無視した。

 いちいち対応しているほど余裕はなかったからだ。


 ちっ! 面倒くせぇ…。


 学院長室の扉を開け中に入る。

 すると、机に座っている人物が俺の目に映る。…学院長だ。

 こんな朝っぱらから既に仕事を始めているらしく、若干尊敬を覚える。


 ごくろーなこって。


「ん? 来たか…。ノックくらいはしてもいいんじゃないか?」


 部屋の中に入った俺は学院長の言葉を聞いて少し逡巡…。 


 そういやノックするの忘れてた。別のことに気を取られてたよ…。

 次からは気をつけないとな。


「…すいません」


 まぁそんなことは頭の片隅に追いやり、俺は用件を聞く。


「それで、この時間に来てほしいとのことでしたが何用でしょうか?」

「まあまあ…そんなに熱くなるな。初日ということで伝えることがあったから早く呼んだだけであって、それ以外に他意などないぞ…。とりあえず気を楽にしたまえ」

「…そうですか」


 学院長は俺のことを見て昨日とは様子が違うのに気づいたんだろう。

 こちらを落ち着かせようとしているのが分かる。


 ……ちょいと熱くなりました。すみません…。




 ◆◆◆




 それから少しして


「…落ち着いたみたいだな。それで、一体どうしたんだね?」


 学院長は俺が落ち着いたことを確認すると声を掛けてきた。

 だから俺はさっきハンス君から聞いた話を聞いてみる。


「ここの学院の冒険者に対する反応を実際に見ました。そしてそれがなぜなのかを聞きましたよ…」

「そうか…。すまないね、実際に見て貰った方がいいかと思って昨日は伝えなかった」

「…まぁそれは別にいいです。確かにそうだとは思いましたから」


 最初は教えてくれなかったことに苛立ちもあったが、よくよく考えてみると学院長がこの問題をなんとも思っていないとは思えなかった。

 昨日会ったばかりだが、学院長をしているくらいだから何か考えがあるに違いない…と、最終的にはそんな結論に俺は至った。


「マニュアルにあった『冒険者としての在り方をみせつける』っていう意味がよく分かりましたよ」

「それを理解してくれたのならなによりだ。…なら、もう何が言いたいかはもう察しがつくんじゃないか?」


 やはり、この学院長はこの問題を考慮したうえで渡したに違いない。

 なら、その考えに乗ってあげるのが俺の役目ってもんでしょう。


「ええ…。変えてやればいいんでしょう? この学院を…」

「フフフ…話が早い。圧倒的な力を持つキミに…ぜひともお願いしたいんだが?」

「…喜んで…っ!」


 学院長が不敵な笑みを浮かべている。俺もそれに合わせるように笑みを浮かべ、了承する。


 なら本当に遠慮はいらないな。


「ありがとう。本当はコチラが原因の問題だから我々の方で解決すべきなんだが、我々が動いてもあまり意味がないだろうから…」

「…でしょうね」

「冒険者と生徒のいざこざ…。これに教師という第3者が介入した所で解決になるとは思えない。まぁ…無関係というわけではないがね。例え解決したとしても…それはきっと一時的なものとなるだろう」

「ええ、俺もそう思います。やっぱりこういう問題は問題を起こした関係者同士がなんとかしないと意味がないと思いますから」


 実際問題そうだろう。今回問題なのは生徒が冒険者に対して偏見を持っているということだ。それを制裁として教師が介入して収めたところで、解決したのは冒険者ではなく教師…ということになる。

 これじゃ冒険者への偏見は変わらないままだ。実際に冒険者が生徒に対して制裁を行わないことには無理だろう。ましてや相手は思春期まっさかりの学生、自分の意思をしっかりと持ち始め、各々が一番面倒くさい性格をしはじめる時期だしなおさらだ。


 俺もそのくらいの時…といっても3年位前だが、よく偏見だけで考えて他人を舐めるようなことがあったし、それはこの世界の連中にも一応あてはまるだろう。

 生徒に実際に目の当たりにさせ、事実を直接頭に叩き込んでやるしか偏見を拭い去る方法はない。


 冒険者が生徒を圧倒する光景を…。


 話せばわかる、理解してくれる…だなんてただのきれいごとだ。現実ではそんなことはほぼありえない。

 聡明な奴はもしかしたらその方法を取れるかもしれんが、俺にはそんなことは無理だ。

 だから力技で解決する。ただそれだけ。


 …まぁ方法がどうであろうと結果が同じであればいいんですよ。うんうん。




 と、俺は考える。

 すると…


「なんだ…頭は悪くないみたいじゃないか。もっとボーっとしていると聞いていたんだが?」

「……は?」


 間抜けな声が出てしまった。


 いきなり何の話をしてるんだ?


 そんな俺を他所に学院長は話を続ける。


「アルガントからの文で、君は結構抜けていると聞いていたのでな、少し驚いているのだよ」

「ギルドマスターがそんなことを? …てかあの人そんな風に思ってたのかよ」


 あんにゃろーめ。

 そう言うのは分かってても言わないものなんだよ! 親に習わなかったのか?


「まぁ、君の正確な情報を伝えるために必要だったんだろう。あまり責めないでやってくれ」

「むぅ…了解です」


 学院長が苦笑しながら言う。


 そう言われちゃしょうがないか…。まぁ、仕事だしね。

 じゃあとりあえずそれは納得しておきます。

 それはね…。


 話がポンポンと進んでいくのと、ついさっきの学院長の言葉でちょいと疑問に思ったことがある。

 そしてそれがもし俺の予想した結果だった場合、少々マズイことになる。


「…学院長。お聞きしたいことがあるのですがいいですか?」

「なんだい?」




 さて、どうよ?

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