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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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39話 朝の散歩②

「なんか銭湯の煙突を思い出すな…」


 今俺は煙突の下にいる。…とはいっても、煙突は建物から突き出ているのでその建物の近くから見上げている状態だ。

 一応煙突から煙は出ているがそれも少量のため、あまり動いていないことが分かる。


 てかこの時間にむしろ何で動いてるんだ? 

 誰かいるのか?


 …入口は開いているみたいだし覗いてみようか。

 なんか扉らしきところが半分開いたままになっているし。


 俺はこの煙突が突き出ている建物に入ることにした。






「あの~、誰かいるでしょうか~?」


 俺は扉から顔を出して声をかける。


 シン…。


 反応がない。


 あれ~? 誰かいるとは思うんだが…。


「あの~! 誰かいませんか~!」


 再度呼びかける。

 今度は声をさらに大きくして言ってみたので、よっぽどのことでない限り聞こえないということはないハズだ。


 しばらくすると…


「ん~、誰か呼んだ?」


 あ、やっぱりいたみたい。奥から小さくだが声が聞こえる。


 そしてその声の人は奥の陰からピョッコリと顔を出した。

 それを見て俺は少し違和感を感じる。


「やーやー、スマンね。こんな朝早くから一体どうしたのさ?」


 その人が俺の目の前に来て、先ほどの違和感が何なのかを理解する。



 この人、多分ドワーフだ。



 他のドワーフと比べて人間に近いけど…、少し大人っぽい顔の割に背が随分と小さいし…間違いない。


「ってあれ? 君学院の生徒なのかい? 見ない顔だけど…」


 俺が普段見ている生徒ではないと分かったのか疑問の声をあげてくる。

 なので俺はとりあえず自己紹介をすることにした。


「あ、はい。ここの学院の生徒でないですk「むむっ!? さては侵入者かい!?」


 俺の言葉を遮ってその人は身構える。


 いや、何もしないんで警戒しないでくださいよ…。てか最後まで話聞いてくれ。

 それと持ってるスコップをこっちに向けないで、怖いです。


「違いますって! 今日からここで臨時講師をやることになったんですよ俺」

「臨時講師~? …ああ! そういえばそんな話があったような気がするよ、君がかい?」

「ええ」

「…本当に?」


 信じてくれたかと思ったがすぐにまた疑いの眼差しで見られる。


 なんか忙しい人だなぁ。


 そう思いつつギルドカードをポケットから取り出して見せる。


 これなら文句ないっしょ。


「それはギルドカード……えっ!? Cランクなの!?」

「はい」

「…人は見かけによらないんだねぇ。うん、疑ってゴメンね~」


 ギルドカードを見せたことでなんとか信じてもらえたようだ。


 まぁこんな時間に知らない奴が来たら疑っても仕方ないし、俺にも非はある。


 あ、ちなみにこの人は女性です。

 一見するとロリっ子にしか見えないが、ドワーフはこれが普通で、むしろこの人の場合は少し背が高い方だ。なのでまだいいと言えるかもしれない。

 ロリには変わらんけど…。


「それで…こんな朝早くからどうしたのさ?」

「少し早く起きてしまったので散歩をしていたんですが、気になる煙突を見かけたので来てみたんですよ」

「ふ~ん。もしかして学院の施設をまだよく知らない?」

「昨日来たばかりなので…」

「そっかそっか~。じゃあここの施設が何なのかも知らないんだよね。じゃあ教えてあげましょー!」


 大きな声でそう言う。


 テンション高いなこの人。このテンションの高さはちょっと神様を思い出すぞ…。


「っと! ちょいとまだ作業中だったよそういえば…。やりながらでもいいかい?」

「ええ、構いませんが…」

「じゃあついてきて~。足元気を付けてね~、少し段差があるから」


 う~む。仕事中でしたか…。それはすんませんでした。

 気づいてれば声はかけなかったのですがね…。

 申し訳ない。


 心の内で謝っておく。


「そういえばまだ自己紹介してなかったね。ボクはウルル・グエングラム。この学院の職員をやってるよ!」

「俺はツカサ・カミシロと言います。よろしくお願いします、グエングラムさん」

「ん~、名前で呼んでくれると嬉しいんだけどな~。名字長いし」


 この世界の人ってなんかラフな人が多いんだよなー。皆名前で呼んで欲しいって言ってきてる気がする…。

 今の所名字で読む人ってほとんどいないんじゃないか? 

 ギルドマスターは名前で呼んでないけど…。まぁあれは例外だ。


 それよりもウルルさんや、貴女ボクっ子だったんですね。

 意外ですわ。とある方面じゃかなり人気高い属性ですよ?


「じゃあウルルさんでいいですか?」

「それでよし! ツカサ君や」


 自己紹介も終わり、俺はウルルさんについていく。

 すると大きな釜…いや、炉か? みたいなのがある所についた。


 その下は火が灯っており、なにやら黒い石が燃えているのが分かる。

 石炭だろうか? この世界に石炭があるかは知らんが…。

 てか燃えているってことはここがあの煙突の下になるのか。


「今釜であり炉でもあるこれを温めている最中なんだよね」

「今日の授業で使うんですか?」

「ううん、今日は授業では使わないよ。でも生徒から武器の調整とかオーダーがあるから毎日稼働はさせてるんだよ」

「そうでしたか」

「ここは魔道具や武具の生成などを主に行っている施設なんだ~」


 釜に石炭? を入れながらウルルさんは言う。


 へ~。それでこの時間から準備をしていると…。

 それって結構ハードじゃね?


「ここの施設の職員はウルルさん以外にもいるんですよね?」

「いるよー? ボクを含めて5人職員がいて補佐の人が10人くらいだね。他にも鍛冶師を目指している人とかを見習いとして雇ったりもしてるよ~」

「なるほど…。この学院の生徒って結構いると思うんですけど、その人数で足りるんですか?」

「足りるよ。いや、足らせるが正しいかな」


 ん? なんかウルルさんの雰囲気が変わった。

 作業も止めている。


「ボク達職員にも職人としてのプライドがあるからね。無茶な要求でもそれに答えるのが職人ってものだと思ってるし、足りないっていう状況は作らせないよ」

「そ、そうですか…」


 ヤダ…カッコイイ。

 ウルルさん、カワイイ見た目とは裏腹にワイルドな一面もお持ちなんですね…。


「まーやることやってれば自由にしていいって学院長に言われてるしね~。それも影響してるかな~」


 さっきとは打って変わって態度が最初に戻るウルルさん。

 こっちはこっちで可愛いからそれも良い。


 それにしても学院長。貴女色々と大胆にやってますね~。

 そんなこと俺だったら言えないっス、ハイ。


 もし俺がやったら、統制が取れなくなって全てがおじゃんになるビジョンしか見えてこないわ~。


「学院長ってやっぱり言うことが違いますね」

「うんうん。あの人が学院長で良かったよ~。話は分かるし待遇良いし、じゃなきゃわざわざヒュマス大陸まで来なかったよー」

「ウルルさんはやっぱりボルカヌ大陸の出身なんですよね?」

「そうだよ~」


 ふむ。

 わざわざこちらの大陸まで来るくらいだし、本当のことなんだろう。

 やっぱりマリファ学院長はかなりの手腕を持っていると見ていいだろうな。

 これならギルドマスターの言っていたことも理解できる。


 …それよりも、ちょっと聞いてみたいことができた。


「ちょっと話は変わるんですけど、自分の生まれ故郷を離れるってどんな気分なんですかね?」


 これだ。


 ウルルさんは別の大陸から来ているが、こちらの大陸に来て今どんな気持ちを持っているのかを少し聞いてみたい。


 俺も今はもう多少慣れてきているが、異世界に来た当初は困惑と嬉しさでなんとか抑えられていたこのホームシック…。

 だが落ち着いてから考えてみると、その思いはさらに増していくだけだった。

 もう早く地球に帰りたいとさえ思っているほどだ。


「え、なになに~? 故郷が恋しいのキミ~」

「ええ、まあ…」

「まだまだ子供だねぇ~」


 否定はしない。実際俺はまだまだ子供だ。この前ポポとナナに教えてもらったばかりだから素直にそう思っている。

 でもこればっかりはどうしようもない…。


「まぁ、全く寂しくないっていうことはないけど、いつでも帰れるわけだし特に気にするほどでもないかな~」

「そう…ですか…」


 ハハ、俺は帰れるかも分かんないんですよ…。

 この世界じゃありませんから…。


 やっぱり必ず帰れると分かっているのと分かっていないのとでは、随分と違うんだろうな…。

 心の支え、もしくは希望っていえばいいんだろうか? 俺にはそれがない。


 なんか雲を掴むような感じなんだよなぁ…。


「というより故郷が恋しいってキミ…。一体いくつよ? お姉さんであるボクに言ってみなよ~」

「…20です」

「………え?」

「? はい?」




 ん? 

 ウルルさん、一体どうしたんだ?

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