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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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38話 朝の散歩①

「ふぅ~。サッパリしたぁ!」


 俺はシャワーを浴びて体の不快感をスッキリさせる。

 実に快適だ。

 多少だがあの悪夢による気分も少しは解消できた気がするし、浴びて本当に良かった。


 そして浴室から出て自室へと戻る。


 部屋に戻った俺は濡れた髪を乾かそうとベッドに腰掛けようとするが、そこで、まだベッドのシーツを乾かしていないことに気付き留まる。

 自分の汗とはいえ、流石にシャワーを浴びた後にまた汚れるのは勘弁だ。


 …乾かすよりもいっそ洗濯しちまうか。


「『アクアボール』、『ウィンドバリア』、『クリア』」


 面倒くさいと思いつつも、シーツを乾かすために魔法を発動する。


 まぁすぐに終わるんですけどね…。


『アクアボール』を回転させシーツを回す。

 そして『ウィンドバリア』で『アクアボール』の周りを空気の壁で覆うことで埃やゴミが入らないようにする。

『クリア』を最後に掛けて水を浄化し、ハイおしまい。


 これが俺の洗濯のやり方である。

 最初は同時発動がちょいとキツイという理由で、ポポとナナの3人? 掛かりでやっていたのだが、今はもう平気なのでこんな感じだ。


 随分と成長したもんですわ。


 魔法の同時発動は、同時に発動する数と魔法の階級によって消費量が変わる。

 また、既に発動したものを維持してさらに別の魔法を発動するのも同時発動ということになるらしい。


 不思議だ。


 低級の同時発動でもそれなりに魔力を消費するが、今の俺の魔力量だともはやそんなものはあまり気にならないレベルなので構わず使う。

 …が、上級は勘弁。あれは多分まだ少しキツイと思う。


 修行期間中に一度だけ、上級の同時発動をやってみたことがある。

 その時の同時発動数は3つ。当時既に魔力量が5000を超えていたこともあって、「楽勝だろ?」とか思っていたのが甘かった。


 楽勝どころじゃない。軽く死ねるレベルだ。あんなの…。

 たった一回で魔力がほぼ無くなるとか誰が予想できるんだよ。頭おかしいわ。

 その時はもちろん魔力切れによる脱力感で卒倒した。

 あんなのはもう経験したくない。


 とりあえず、上級の同時発動は他と比べてレベルが違うというのはよく分かった。


 以上、俺の経験談です。


 あと、やっぱり魔法は魔法名をちゃんと口に出した方がいいっぽい。若干だが魔力の消費を抑えられるのを確認できた。

 恥ずかしいのであんまりやりたくはないけど…上級とかになると消費が大きくなるし、意識はした方がいいかもしれない。


 まぁ、その一環で今回も声に出して発動しているが、慣れれば楽なもんで今では苦にならずにできるようになった。


 慣れってすごいんだなぁ。




 とか考えているうちに洗濯がそろそろいい感じになってきたので、発動を止める。

 脱水もしたのでシーツにはそれほど水分は含まれていない。あとは乾かすだけだ。


 窓にでもかけとけばいいか。


 日が昇り始めているのでいずれ乾くだろう。夜までに乾いていればなんだっていい。


 さて、これからどうしようか。目が覚めちゃったけど…これといってやることがないな。

 イスに腰掛けながら俺は考える。


 そして…


「少し散歩してこようかな…」


 思えばまだこの学院をあんまり歩き回っていない気がする。外周は歩いたけど…。

 多分今日辺りにでも学院の設備や教室とかを案内されるとは思うが、今確認できるところ位は問題ないと思うし、行ってみようか。


 まだ日が昇ってそれほど経っていない時間だが、俺は髪を乾かした後、準備を整えてから部屋を出た。




 ◆◆◆




 寮を出ると、クルトさんが箒を手にもって落ち葉を掃いているのが見えた。


 寮の管理人ってこんな早く起きてんのか…。地球にいたとき住んでいたマンションは9時出勤だったと思うんだけど…。こっちは随分と早いな。

 それとやっぱり歳を取ると早く起きるようになるんだろうか? 


 クルトさんがこちらに気付き声を掛けてくる。


「おはよう。随分と目覚めが早いのだね」

「ええ、少し悪い夢を見まして…。それで目が覚めたんですよ」


 実際は少しどころじゃないんですけどねー。

 下手すりゃトラウマっスよ。


「おやおや、それはお気の毒に。それで…どこか出かけるのかい?」

「朝食までの間、少し散歩をしようかと思いまして。問題ありませんかね?」

「特に問題はないよ。建物内には入れないが、それ以外の施設だったら空いているはず…」

「分かりました。じゃあちょっと行ってきますね」

「行ってらっしゃい。朝の放送が鳴る頃には朝食の用意ができているだろうから、それを合図に戻ってきておくれ」

「はい」


 朝の放送ね。なんとも分かりやすい…。

 どんな放送なんだろう?

 まぁその時のお楽しみか…。

 とりあえず、右回りに学院を歩いてみよう。


 俺はクルトさんに背を向けて歩き出した。







 5分程歩くと、なんかデカいフェンスにぶち当たった。


 高さは…30メートルはあるなこりゃ…。それにフェンス自体も随分と分厚いものでできているみたいだし、魔法の練習場とかか? 


 フェンスの向こうには広大な空間が広がっている。


 奥には所どころ焼け焦げた跡やクレーターのようなものができていることを考えると、多分そうだと思うけど。


 そして俺はフェンスに俺は手を触れる。


 が…


「うおっ!?」


 すぐに手を離した。

 なんか魔力を吸われたっぽい。


 驚きはしたが、俺はなんとか取り乱すことはしなかった。


 何だこのフェンス…魔力を吸う素材でできてるのかよ。

 こんな性質を持った素材もあるのか…。知らなかったな。

 まぁそんな素材を使っているということは、多分ここは魔法関連で使われる場所ということで間違いないだろうな。

 ギャラリーに被害がいかなくて済むし、思いっきり練習できるということか。


 俺は確信する。


「あっち側から入れるのか。…閉まってるけど」


 入ってみたかったのだが案の定入り口は閉まっていた。ちょっと残念。

 さっきクルトさんが言っていたように施設は閉まっているようだ。


 まぁ入る機会はそのうちあるだろうから、今はいいや。

 またの機会ってことで。


 正直跳べばフェンスを乗り越えるのは簡単だが、それは流石にマズイだろうからやらない。

 この時間なのでいないとは思うが、万が一そんなところを誰かに目撃されたら面倒だ。


 仕方ないのでこの施設を後にし、俺はまた歩き出した。




 次は…あの煙突の所に行ってみようかな。

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