2話 優秀な従魔(ペット)
◆◆◆
「……」
気が付くと、俺達はいつの間にか草原に立っていた。光に包まれたはずなのに、それが晴れる光景にすら気付くことも無く。まるで意識を失っていたと勘違いしてしまいそうになる程に、当たり前の様に緑の草原の中にいた。
ポポとナナは俺の両肩に乗っており、辺りをキョロキョロと見回して状況を確認している。
優しく風が吹いて、前髪を揺らす。俺も辺りを見回して見るも前方にはひたすら草原、後ろには木々が生い茂っているだけだ。
後ろに広がっているのは森だろうか? 大自然の中に放り出された気分だ。
それ以外には何も見当たらず、俺たちはしばらくその場で黙って放心していた。
すると、ポポが口を開く。
「ご主人。とりあえず移動しませんか? 神様は東を目指せと仰っていましたが……」
ポポの言葉に我を取り戻し、俺は慌てて頷いた。本来なら俺がまずは言うべきことを先に言われてしまい、何故か無性に申し訳なく思ってしまったからだ。
てか、コイツやっぱり俺よりしっかりしてるんじゃ……。
「そ、そうだな。でも少し確認したいことがある」
俺はそう言ってポポとナナを肩から降ろし、腰を一旦下ろした。
確かに神様の言っていた通りに動くのは正しいことなのだろう。しかし、それよりもまずは優先すべきことがある。
「まず色々と整理しよう。今後の方針とかお前らのステータスとかさ。あの空間で確認するの忘れてたから……」
「あ、そうですね。先走った発言失礼致しました。ナナ、私達のステータスを開示してみましょう」
「はいはーい」
とても素直で気の利く印象をポポに覚える。正直中身が出来すぎていることに違和感を覚えなくもないが。
ポポとナナは俺がやった要領でステータスを開示し、俺の視界に二匹のステータスが表示される。
どれどれ……
◆
【ポポ(インコ)】
レベル・・・1
HP・・・・・50
攻撃力・・・40
防御力・・・30
素早さ・・・100
魔力量・・・30
魔力強度・・・30
運・・・・・・50
※変化時ステータス2倍
【スキル・加護】
・神の加護
◆
◆
【ナナ(インコ)】
レベル・・・1
HP・・・・・30
攻撃力・・・20
防御力・・・20
素早さ・・・100
魔力量・・・50
魔力強度・・・50
運・・・・・・50
※変化時ステータス2倍
【スキル・加護】
・神の加護
◆
予想以上に高いステータスをした2匹に、思わず息を呑んだ。
コイツら……すげぇ高いステータスしてるな。変化時に至っては俺よりも強い。
例え変化しなくても一般人より遥かに強いってのがそもそもすごい。15センチくらいしかないのに……。一体その小さな身体の何処に力が秘められてんだよ。
鳥だからか素早さが一番高いことは納得できるしよく分かるけど、それ以外はなぁ……。とても人に勝るとも思えない。
……と、先程神様に笑われた原因である、頭についた糞をとりながら考える。
なんか今の俺の姿を想像したらすごくシュールな光景だな。真面目な思考しながらやってることがなんとも間抜けだし。
……まぁいいや。
どうやら2匹のステータスの傾向的に、ポポが前衛向きでナナが後衛向きのようだ。似通った点はあるけど、明確に違いが出ているのがハッキリと分かる。
もしかしてコイツらも魔法使えるようになったりするのか? いや、使えるよなぁ多分。魔力量がやけに高いし。
「ポポが前衛でナナが後衛向きのステータスだな。お前ら随分強くしてもらったみたいだけど、変化ってできるのか?」
「「やってみます(みる~)」」
魔法云々は後々判明していくことになると思い、気になることを解消していく。
神様が出来るようにしたという変化。それの確認も気になるところだ。
2匹にできるのか試してもらうと……突如ボワンという音がなり、煙が二匹を包んでしまった。
何故煙が発生したんだとツッコミたい衝動はあったものの、最早それはお約束みたいなものだ。ムクムクと大きくなる過程は少し変だし、一気に姿が変わることを考えれば良いエフェクトに思える。
やがて煙が晴れるとそこには……
「こんな感じー?」
3メートルの大きさに達したポポとナナがいた。
…思っていたのと違う。俺はもっとこう、見た目が変化すると思っていたのだ。
だが実際は違った。そのまま大きくなっただけだった。
これじゃあヌイグルミみたいだな。体温が熱くてちょっと鳥くさいけど……まぁ嫌いじゃない。嫌いだったらそもそも鳥を飼ってないし。
ただ、非常にデカい。身体全体が比例して大きくなっていることもあり、3mの凄さに驚きを覚える。至近距離ということもあってか、ポポとナナを今は壁のようにすら思えてしまう。
どうしよう。俺マジで食われそうだわ。
そう思っていると、今度はポシュッという音とともに先ほどのサイズに戻ってしまう2匹。
「あれ、なんで~?」
2匹も不思議そうな顔でキョトンとしており、自らの意思で元に戻ったわけではないようだ。
どうやらまだ変化を長い時間は持続できないらしい。
要練習なのか、レベルの問題なのか……そこら辺は今後色々と研究することになりそうである。
「……最初だし今はそれが限界なのかな? ……それにしても。これじゃどっちが主人か分かったもんじゃないな」
俺は変化のことよりも、2匹の立派さに当てられて苦笑してしまう。
存在感が主人である俺よりも相当にある2匹の方が、俺を従えているように見えてならなかったのだ。
しかし……
「ご主人! そんなこと言わないで~!」
「そうですよ。私たちの主人は貴方しかいませんよ!」
突然豹変し、強く反論されてしまったが。
いや、でもだってねぇ? ホントのことじゃん?
なんか今の俺って、大きくなるまで待ってその後食べられちゃうパターンの奴みたいな感じなんだもん。家畜ですよ家畜。
「う~ん、そう? ポポとナナがそう言うならいいんだけど……」
内心では2匹にとって俺は適切な主人じゃなくね? と思いつつ、ひとまずはその場は収拾した。
「……まぁそれはおいといて、これなら町についても多少安心して平気そうだな。ただこの草原のモンスターがどの位の強さか分からないな……何がいるかも知らないし。基準とか聞いておけばよかったかもなぁ」
「そうですね。そもそもレベル1で草原に出ている時点で自殺行為に等しいかとも思いますがね……。ステータスは高いらしいですけど」
そうだな。どちらにせよ俺たちは早急に町を目指す必要があることだけは確かだ。長くこの場に留まっているのも得策ではない。
死んでしまっては元も子もないのだ。
「とりあえず歩く~?」
ナナの声に頷き、俺はゆっくりと立ち上がる。
本当は方針とかも話していたかったのだが、死が隣り合わせの状況下と理解した途端に落ち着いてはいられなくなった。
元々死とは程遠い生活を送ってきた自分だ。すぐに順応できるほど俺の心は強くない。
これからはこれが日常となると考えると……少々気が重くなる感覚を覚える。
「方針については移動しながら決めよう。えっと東の方角は……どっち?」
「……ご主人から見て右手ですよ」
立ち上がった所で、どちらに進めばいいかすら分からない俺はマジで役立たずだな。ホント情けね~。
ポポ。もうお前がリーダーでいいよ、グスン(泣)。
幸先の悪くなる心境で、俺達は歩き出した。
……あ、なんかマナについてはなんとなく分かりました。
これは説明できるようなものではないな。なんか息をするのと変わらないくらい当たり前のことって言えばいいかなぁ。
まぁそんな感じ。察してくれ。