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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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32話 旅支度

 俺はとりあえず出かけるための準備をすべく、『安心の園』へと走る。


 今は大体9時くらいの時間だろうか? 時計がないので確認の仕様がない。

 この1ヶ月でなんとなく今何時くらいか分かってきてはいるのだが、俺は意外と時間については細かいと自負しているのでなんか気になる…。

 まぁどうしようもないんだけどね。




 そして、俺は『安心の園』へと入る。


 すぐに部屋に行こうと思ったのだが、部屋に行く途中にポポとナナが食堂にいるのが見えたので、俺もそちらに行くことにした。


「お前ら起きてたのか」

「あ、ご主人。おはようございます」

「今ご飯食べてるところ~」


 俺に気付いたのか各々声を掛けてくる。

 どうやら食事中のようだ。

 雑穀と赤い果物…アプルを食べている。


 アプルとは赤くて甘いこちらの世界の果物のことだ。


 名前でもう分かるとは思うが、まんまリンゴである。

 どうもこの世界のモノは地球のモノと名前が非常に似ているようで、俺としては助かっている。


「起きたとこ悪いんだが、突然だが連絡事項がある」

「何ですか?」

「むむぅ?」


 ナナはゴハンを口に頬張りながら言っていたが、多分『なにー?』とかだろうな。

 相変わらず行儀が悪い。


 まぁいいや。


「ギルドマスターからの直々の依頼でな。…1週間くらいだが、王都の方に行くことになった」

「…また突然ですねー」


 ポポが呆れた目をして言う。


 すんまそん。


「こればっかりは俺の責任じゃないからしょうがないだろ?」

「まぁ…そうですけど。昨日の今日で…」

「それは…スマン」


 許してくんなまし。


「はぁ…まぁいいです。それで、出立はいつになるんですか?」

「ん、昼だな」

「何日後です?」

「今日」

「「………」」

「………てへっ☆」


 俺が今日行くことを告げると沈黙してしまったので、状況を打破するために慣れないことをしてみた。


 盛大にはずしたな…これ。

 ちっ! ☆はいらなかったか…!


「な~にが『てへっ☆』ですか! 全然似合ってませんよ! てか怒りますよ?」

「ごめんちゃい」

「もー! 貴方って人は~(怒)」

「だからゴメンって!」

「ツカサさん達どうしたの?」


 と、俺たちがギャーギャー騒いでいると、ミーシャさんが近づいてきた。


 すんません、うるさすぎましたね。


「ミーシャさんおはよう」

「おはよう! ツカサさん」


 とりあえず挨拶はしておく。


「なんかね~。王都に行くことになっちゃったんだって~。それも今日の昼に~」


 ナナがミーシャに今あったことの説明をしている。


「え? ツカサさん王都に行くんですか?」

「うん。ちょっと依頼でね」

「一体何しに行くんですか?」

「そういえばそうですね…」

「教えて~?」


 ミーシャさんの言葉にコイツらも聞いてくる。


 そういやまだ言ってなかったな。


「なんか王都の学院で教師をやってほしいんだと。毎年恒例のものらしい」

「教師? ご主人がですか?」

「ああ」

「人に何か教えるの得意だったっけ?」

「あんまりそういうことをしたことないから分からん。まぁそれを知るっていう意味でもいい経験になるんじゃないかと思ったから受けたんだけどな…。まさかこんな急なものだとは思わなかった」

「それは…大変でしたねー。でもすごいです。王都の学院ですよね? すごく有名なところじゃないですか!」


 ミーシャさんが少々興奮して言ってくる。

 耳がピコピコしており非常に愛らしい。


 癒されますわ~。


「へぇ~、有名なんだ?」

「そりゃそうですよ! 大陸中の魔法の才能を持った人が集まる所ですもん。それに他の大陸からも来る人がいるって聞きますよ?」

「そんなに知名度あるんだ…。知らなかったよ」

「知らないで受けたんですか? ツカサさんってなんか不思議ですよね」

「偶に言われるな…」


 知らないのはまぁしょうがないよな。興味もなかったってのもあるが…。

 俺、この町の学院しか知らないや。


「じゃあ、またしばらくいなくなっちゃうんですね…」

「そうなるね」

「まぁ、今回は事前に聞けてるので問題ないです。この前みたいなことはやめてくださいね? 心配したんですから」


 この前…。

 これはきっと俺がいなくなっていた5日間のことか。

 宿泊の継続とか手続きができなくて迷惑かけたからなぁ。

 ゴメンねミーシャさん。気をつけるよ。


「ゴメンね。今回は大丈夫だから」

「気をつけていって来てくださいね」

「うん」


 今回はこれで迷惑を掛けるということもないだろうからポポとナナに後は任せよう。


 やっぱり報告って大事だよね、バイトとかでもそうだったし。


「じゃあ準備とかあるから俺はそろそろ行くよ」

「ごちそう様でした。私もこれにて失礼します」

「ごちそー様。ミーシャ~」

「頑張ってくださいねー」


 俺は食堂を後にし部屋に向かった。




 ◆◆◆




 部屋で色々と準備をし、昼頃になったので俺はギルドに戻った。

 そこでまたしてもマッチさんと出会ったので、一応挨拶をしておく。


「ツカサさん王都に行くみたいですね。昨日の今日で忙しそうですけど頑張ってくださいね」

「ええ、行ってきます。お土産でも買って帰ってきますね」

「楽しみにしてます」


 お世話になってるし、こういうことって大事だと思う。

 気持ちが大切だよな、人間…。


 俺が心の中で思っていると…


「ところでツカサさん。ポポさんとナナさんも連れて行くんですか?」


 そんなことを言われた。


「もちろん連れて行く予定ですけど、どうかしましたか?」

「いえ、ツカサさんが王都に行くのであれば、その間ポポさんとナナさんに昨日言ったお願いをしてもらおうと考えていたのですが…ダメですよね」

「昨日…ああ! そういえば貸しって言ってましたね。いや、それなら別にいいですよ?」

「「えっ?」」


 ポポとナナが驚いている。


 うん。別にコイツらは置いていってもいいんだけど…。もちろん送ってはもらうけど。


「あ、いいんですか?」

「構いませんよ。別に俺と常に一緒じゃないといけないってわけではありませんし…」

「なら少々お預かりさせてもらってもいいでしょうか?」

「どうぞどうぞ」


 俺とマッチさんが会話を進めていると…


「ちょっと待ってください!」

「話を勝手に進めないでー!」


 2匹が割り込んできた。


 …何か異論でも?


「ん? だってそうだろ。別に俺一人でも問題ないぞ?」

「それについては心配はしてないんですけど…昨日の今日じゃないですか? 何かトラブルに巻き込まれそうな気がするんですよね…」

「ご主人少し不幸体質な気がするもん」

「心配しすぎだろ…」


 流石に昨日のあれはレアケースだと思うぞ?

 あれほどのトラブルってそうそうないだろ、心配しすぎだ。

 警戒はもちろんするし、問題ない。


「俺のことは気にしなくていい。それよりもお前らマッチさんに借りがあるんだろ? だったら早めの内に返済しておけ」

「忘れないですよ」

「そうだよー」

「お前らなら忘れないだろうが、俺が言いたいのはそういうことじゃないんだよ」


 これは大学の先輩に言われたことなんだが…


「借りってのは時間が過ぎれば過ぎるほど相手に対して失礼なんだよ。相手の優しさに甘えてそうなったのならなおさらだ。はやく借りを返すことは誠実さを相手に示すことにつながるからなるべく早く返しておけ」


 だそうだ。

 う~む、非常に共感できました。

 たった今俺も先輩の言葉を借りちゃいましたよ…。


「…ご主人がそう言うのであれば…分かりました。今回は別行動ということにしましょう」

「分かったよ~」


 俺の言葉を聞いて2匹は納得してくれたようだ。

 まぁいずれ必ず返すだろうし、コイツらのことは信用してはいるんだが、一応伝えて再認識させるのも悪くないだろう。


 良い子に育って欲しいしな。


 特にナナ……お前だよ。


「ああ…そうしよう。まぁ送り迎えは頼むな?」

「了解です」

「任せといて~」

「うし! マッチさん。だそうなのでお願いします」

「分かりました。すみませんね…」


 謙虚な人だね~、謝るのはこっちの方なのに…。

 まぁ、話はついたな。

 そろそろギルドマスターのとこに行くか。


「じゃあギルドマスターの所に行ってきます。あちらの部屋に行ってもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」


 ギルドマスターの部屋は誰でも入れるわけではない。

 職員は平気だが、冒険者は許可がないと入れないことになっている。

 機密事項とかを扱っている可能性もあるので、防犯上のことを考えたら当然である。


 冒険者の中にはよからぬことを考えている奴も少なからずいるしな…。




 ◆◆◆




「ギルドマスター、いますか?」


 向こうも分かっているとは思うが念のためノックをして声をかける。

 すると扉越しに声が聞こえてくる。


「入っていいぞ」


 ということなので部屋に俺は入る。


「失礼します」

「時間通り来たようだな」


 ギルドマスターは机に座っており、書類などを整理していた。


 多忙っスね、ホントに。


「紹介状ができたからこれを持っていけ、学院の入口にいる警備員に渡せば大丈夫だろう」


 俺は机に近づきギルドマスターから紹介状を受け取る。


 はいはい、警備員さんに渡せばいいんですね。


「東門から出て道なりに進めば王都には着くはずだ。特に聞くことがないのであれば早く向かったほうがいい。…学院は確か夜には閉まってしまうからな」

「了解です。じゃあすぐに向かいます」

「うむ。ではよろしく頼むぞ」

「はい」


 急いで向かいますかねぇ。


 そして俺が部屋を出ようとしたとき…


「ところでお主、その恰好で行くつもりか?」

「? そのつもりですけど…何か変でしょうか?」

「いや、別に変というわけではないのだが、冒険者には見えなくてな。せめて武器くらいは持ち歩いた方がいいと思っただけだ。舐められるぞ?」


 そう言われてしまった。


 それについては皆の視線でなんとなく分かってはいたんだけど、持ち歩くの面倒くさいんだよな…。

『アイテムボックス』に入れればかさばらないし…、それに武器を持ち歩くのってどこか抵抗を覚えるんだよなぁ。

 銃刀法違反ってやつです。

 これは比較的平和な国で育った影響だと思うが、割り切るべきか…?


「服装は冒険者には見えんし、武器もない。一般人と勘違いする輩が出てくるぞきっと」

「う~ん。あんまり気が進まないんですけどねぇ…」

「まぁ舐められたとしてもお主については心配しておらんが、お主も面倒だろう? いちいち絡んでくる輩に対応するのも」

「いや、それは分かってるんですけどね。ただ俺の見た目ってこんなんじゃないですか? どっちみち絡まれるので変わりませんよ」


 そうなんだよなぁ。

 俺は体が小さいからどっちみち舐められることに違いはないんだよな。

 武器を持ったとして、結局『お子様が見え張っちゃって~』みたいなことを言われるのが関の山だ。


「まぁお主がそう言うのであれば別にいい。ただ…頭には入れておけ」

「肝に銘じておきます」

「止めて悪かったな」

「いえ、では失礼します」




 そして俺は部屋を出て、王都に向かって出発したのだった。

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