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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第六章 来たるべき刻 ~避けられぬ運命~
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301話 記憶の目覚め

短いのは仕様なので悪しからず。

 グランドマスターがいなくなり、張っていた緊張が一気に緩んだのかもしれない。


「ぅ……気持ち悪い……」


 吐き気を抑えていた緊張までもがなくなったのか、酸っぱいものが喉奥から込み上げてくるのを感じる。

 身体は熱いのに、吹き出る冷や汗で身体が寒気を感じる奇妙な吐き気特有の状態。俺は今その状態に陥った。


「大丈夫ですか!? 今――」


 そんな状態の俺をアンリさんが必死にケアしようと慌てているが、言葉を返す余裕もない。


 ヤバイ、顔上げたら吐きそうだ。胸の辺りがビリビリするし、それにまだ視界がぐらつく。




 ザ……ザ――。




「くっ……!?」




 吐き気を抑えることに意識を割きたいというのに、頭にノイズのような雑音も入って邪魔をする。

 何かにピシッと亀裂が入った感覚がしたかと思えば、亀裂の内側から押さえつけられていたモノが溢れ出そうとしているかのようだ。


 これは、あの時と同じ……! まだマシとはいえ本当に来やがった……!


 グランドマスターの言った通り、あの耐え難い痛みが訪れとてもジッとしてはいられない。両手で頭を押さえ付けて少しでも痛みから意識を逸らそうと無意識に身体は動く。


 周りから声を掛けられていた気もするが……全く頭には入ってこなかった。




『面白い人ね。なんだか君とは初めて会った気がしないわ』

『黒髪の人って珍しいんでしょう? 多分初めてじゃないかと……』




 アンリさん……っ……!?




 一瞬、アンリさんそっくりな人物が脳裏をよぎる。そして会話をしているのは俺だ。

 これは、未来の記憶なのか? それにしては随分とみすぼらしすぎる風景だが……。




 ザザ……ザ――。




 またノイズが脳裏にかかる。脳裏に映っていた光景はノイズと共に映りが悪くなると閉ざされ、テレビのチャンネルを切り替えるように別の場面を映し出す。




『厳格なる力……未来と過去……繋がり……ですか』




 次はこの前のセルベルティアの神殿の時か……!


 デートで神官さんに言われた本質の具現化。アンリさんのあの時の診断結果もまた謎を残したままに終わっている。

 そしてグランドマスターの言葉を俺はこの時思い出した。




『我々の全てに連なる者であるカミシロ様は――』

『互いに連動し、結びつき、より濃い記憶となって還元される』




 意味深な言葉の数々を、俺は身を持って理解した。


 頭だけじゃない。寒気など一気に吹き飛び、全身が高熱を帯びたように一瞬で熱くなると、頭の中に夥しい声が一斉にやってきた。




 ――いや、還ってきたようだ。





『あなたは誰? どこから来たの?』

『俺? えと……ど、どこでしょう?』


『お世話になりました。また……会えるといいですね』

『お待ちしております。貴方の名は我が一族に永遠に残します』


『やはりペガサスとの組み合わせは巧く適合しませんでしたね。この個体は如何されますか?』

『殺せ。失敗作に用はない』

『――命を弄んで、用が済んだらそれかよ。ふざけんな……!』


『お前が来てから本当に賑やかになったな。ありがとよ』

『ならよかった。実際余所者の俺は迷惑じゃないかって思ってたから』

『まぁ最初はそう思ってた』

『コラ! フリード様に失礼でしょそんな口の聞き方!』


『行かないで! もう私を……一人にしないで……!』

『分かってる。ずっと傍にいてあげる。……だからそのために行くんだ』


『ああ、そうか……。やっぱり俺は……』

『……』

『いや、今はいいか。――お前ら、思う存分暴れてこい。ママ達を俺らで守るぞ』


『アンタらはまだ引き返せるぞ。……頼む、引き返せ』

『……』

『クソッ! 胸糞悪ぃ。あぁ、そうかよ分かったよ。ーーなら来いよリベルアーク! 精々俺を殺してみせろ……!』


『やめろ⁉ ば、化物……ッ!!! やめてくれぇえええ!』

『……!』

『くるなぁああああぁあああっ!!! グフッ⁉ ぁ……』

『っ……これで、止めだ……!』


『クソッ……このままじゃ……!』

『ん? なぁアンタ。一体ここにどうやって入った? しかも黒髪の人がこの世界にいたとはな』











 思い出した。











 これが皆どころか、俺の全てを終わらせてしまう結果に繋がる……滅びの流れ。


 アイツ(・・・)に一人では死ぬことすらできない身体にされ、独り孤独に生き続ける無限の地獄を与えられることになった始まりであり、俺が未来を変えねばならないと死ぬ思いで願うことになる原因。




 トキ、ヴァルダ、ヴィオラ、ルゥにクー。そしてセシリィ。

 ようやく、まだ知らぬ皆と初めて会えた気がする。




「…………」

「ご主人? ちょ、ご主人聞こえてる!?」




 それが分かった途端、身体がフッと軽くなった。周りの声も気にならない。空気と一体化してフワフワした感覚とでも言えば良いか。

 頭痛は凄まじく辛い。だが大切な記憶から伝わってくる想いはそれ以上に和やかで、鎮痛効果でもあるのか痛みを感じていても気にならないのではとさえ思えた。


 俺は心地良い記憶の波に押し潰され、意識はそこで途切れて眠りについた。







 フリードは……俺だ。


 そして俺らの真の敵はソラリス。『ノヴァ』はその手先に過ぎない。

 空間を支配する力を持つ本来なら生まれることのなかった存在の神。トキの片割れであり、トキの内に溶けたはずの神。




 奴を復活させるわけにはいかない。

 復活させては、現状俺らに勝ち目はないのだから。

次回更新は年末です。

年末は更新をフィーバーしたいと思います。


12/24(日)追記

次回更新は火曜です。

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