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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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28話 鳥の絨毯

 しばらくして、ポポは泣き止んだ。


 まだ若干目が赤い気がするが…もう大丈夫だろう。


「それで、ご主人は今までどこに行ってたんですか?」

「あー、それを説明すると長くなりそうだからナナと一緒に説明するよ。てかナナはどこにいるんだ? 一緒じゃないみたいだが…」

「ナナは今ギルドにいます。ご主人の気配が感じられたので私が確認に来たんです」

「そうか…。じゃあギルドに行くか。お前ら捜索願い出したんだってな? 取り消さんと…」

「あっ! そうでした…。すぐに取り消しましょう!」


 出してたのを忘れてたっぽいな。どんだけ焦ってたんだよ…。


「ああ、行くぞ」

「はい」

「おーい。ちょっといいかい?」


 行こうとしたそのとき声を掛けられたのでその人物を見る。

 ラルフさんである。


「ラルフさんどうしました?」

「いや~感動の再会のところ悪いんだけど、壊れた城壁のことでちょっとね…」

「城壁…。あ」


 俺は寄りかかっている城壁を確認する。

 城壁は綺麗にクレーターが出来上がっており、ヒビも半端ないほどにできてしまっている。


 これはマズイな。これ、俺たちが作ったのか…。地球だったら即死じゃ済まないレベルだぞ。

 ステータスの概念がなかったら、俺の体はバラバラになって四散してたんじゃね? あら怖い。


「うん。どうしようか? 流石に町を守る城壁をこのまま放置ってわけにはいかないからね。悪いけど後で修理費の請求をすることになると思う」

「あー、そうですね。ギルドに請求金額を教えてくだされば俺に連絡着くと思うので…それでお願いします。迷惑かけてすみません」

「すみませんご主人…。私のせいで…」

「…まぁ別に構わんから気にすんなよ。金はあるし問題ない」


 ポポが申し訳なさそうに言うので、俺はそう言っておく。


 この前みたいに落ち込まれても後々面倒だし。

 城壁をぶっ壊したのはポポ? だが、今回のことは俺にも非があるからなぁ。


「すまないね。じゃあそのうち請求をすると思うからよろしく」

「はい。あの、破片はどうしましょうか? 集めますか? それとも処分しますか?」


 辺りの惨状を見て聞いてみる。

 破片があちこちに散らばってしまっており、工事現場みたいになってしまっている。


「あ、言おうと思ってたけど先に言われちゃったか。じゃあ処分しといてくれるかい? ここまでボロボロになってると破片を使わない方が直しやすそうだからね」

「わかりました」


 じゃあちゃっちゃとやりますかね。

 ほいっと。


 俺は風の魔法を使って自分の周りに破片を集める。

 使った魔法は風の低級魔法の『ブリーズ』。弱い風を自由に操れる魔法だ。

 風に適性がある人ならほぼ誰でも使えるもので、意外と使い勝手がいいのでよく使っている。


 破片が集まったのを確認した俺は、『アイテムボックス』を使ってその破片をどんどん放り込んでいく。


『アイテムボックス』はダストシュートにもなるんだよなぁ。超便利。※普通はしません。


 そして1分と経たずに破片の撤去作業は終了した。


 いや~魔法ってホント便利だねぇ。面倒くさい作業もあっという間ですよ。


「は~…あっという間だったね。やっぱり全属性に適性があると色んな場面で対処できるから羨ましいなぁ。それに無詠唱も…」

「ハハハ、まぁこればっかりは神様に感謝ですね。助かってますよホントに」


 羨ましくこちらを見るラルフさんに俺は苦笑して答える。

 神様という単語にラルフさんは仕方ないという顔をしていた。


 まぁ俺の場合はガチで感謝ですけどね。直接力貰いましたし…。


 ラルフさんには少し申し訳ない。


「まぁとりあえず今はこれでいいよ。お疲れ様」

「じゃあ俺たちはこれで…」

「うん。行ってらっしゃい」


 やることはやったので今度こそギルドに向かう。

 俺たちはギルドに向かい始めたのだった。




 ◆◆◆




 しばらく歩くと、ギルドが少しずつ見え始めた。

 現在俺たちは大通りを歩いている。


 今度はちゃんと人の気配も感じられるしひと安心だ。あの寂しい雰囲気は…この町には似合わない。ここは賑わっててこそグランドルの町と言える。


「ギルドが見え始めたな」

「ですね」


 5日ほど経過したと言っていたが、流石に変化はないようだ。


 まぁそりゃそうか。変わってても困る。


「はぁ~、行きた…く…ね…?」


 愚痴をこぼそうとしたが、異変を感じて言い淀む。


 なんか、屋根に小さな動いている物体がたくさんいる。

 あれは…鳥か?


「なぁ、ギルドの屋根にいるのって鳥…だよな?」

「ええ、そうですね」

「な、なんか数が多くね?」

「…そうですね」


 鳥はよく群れているので、20匹くらいなら珍しいとはいえ、さほどおかしなことではないだろう。俺も見たことあるし。


 だけどさぁ、…あれ多すぎじゃね? 100匹は軽くいるぞ?


 そう、俺の目には数えきれないほどの鳥が見えており、それぞれがモゾモゾと動いている。

 いや、ここからだと蠢いているっていう表現がいいかもしれない。 


 鳥は好きだが…ここまでとなると流石に気持ち悪さを感じる。


 というより何であんなに集まってるんだ?

 何か嫌な感じがするが…。


「ポポ。お前何か知ってる?」


 俺はポポに聞いてみる。ここ数日で何かあったのかもしれない。


「その、ですね…。あれは私とナナが、原因です」


 ポポが言いづらそうにそう返す。


 最後の方はすごい声が小さくなってた。


「あ、やっぱりか。なんかそんな気はしてたけど」


 一応予想はしてたのでそう言っておく。


 つーか、なんか違和感感じたら全部ポポとナナが原因ではないかと思ってるくらいだ。


「あれはですね、ご主人の捜索が思うように進みませんでしたので、町の鳥たちにも協力してもらってたんですよ。私は鳥ですから彼らと会話できますし」

「それであんなにいるんだ~、…じゃねぇよっ! 多すぎだろ! どの面して俺は入ればいいんだよ!」

「そこはまぁ、ご主人のカリスマ性でなんとかしてください」

「カリスマ性でなんとかなる問題じゃねぇよ!? てか俺にカリスマ性はないし!」

「いや、申し訳ないとは思ってるんですよ? でも仕方ないじゃないですか…ご主人急にいなくなっちゃうんですもん。貴方ほどの力があって何か危機に陥るとかっていうことはないでしょうが万が一ということもありますし心配するのは当然でしょうむしろこれくらいでは生ぬるいとすら私たちは思っていたのですがね…まったくこちらのことも少し考えて欲しいものですよせめて一言くらい「あああっ!! もうはいはい! 俺が悪うございましたごめんなさいでしたっ!!」


 ポポが高速で愚痴り始めたので俺は言葉を遮って謝る。


 コイツ…結構根に持ってやがる。この1ヶ月で随分とキャラが変わったもんだな。前はこんな奴じゃなかったのに!


「はぁ…コンチクショーめ。これはあれだ、恥ずかしいとか気まずいとか思うからダメなんだ。堂々と行こう、芸能人みたいに。これは恥ずかしくない。これは気まずいことではない。アイキャンドゥイット! アイアムゴッド! よっしゃあ行ったらぁ!」


 俺は独り言を呟く。



 …。

 何言ってんだろうな俺? むしろ今の独り言の方がよっぽど恥ずかしい気がしてきた。


「……ご主人…」


 ポポが引いた顔で俺を見てくる。


 うわぁ、やっちまった…。

 そんな目で俺を見るな! 俺も言ったことに対して後悔してんだから。


「ゴホンッ! 何でもない。ちょっと取り乱しただけだ。それよりも早く行こうか」


 適当な言葉で今のはなかったことにしておく。

 ポポの引いた顔は気にせず、俺はギルドに近づいていく。




 ◆◆◆




 そしてあっという間にギルド着いたわけだが、俺たちはギルド内にはまだ入ってはいない。


 いや、入れないのだ。鳥たちが邪魔して…。


 退いてくんないですかねぇ?

 焼き鳥にするぞお前ら…。いや嘘だけど…。


 鳥たちはほとんどが雀くらいの大きさだ。

 少しはカラスくらいの大きさの鳥もいるみたいだが、小さいほうの数が多すぎるのでどうしてもそちらに意識が向いてしまう。


 この鳥たちは俺たちがギルドの敷地内に入った瞬間に屋根から降りてきて、20メートルくらいの列を作ってこちらを凝視している。

 ぶっちゃけ通せんぼされているみたいだ。


 まぁ恐らくだが正確には俺が影響しているわけではなく、ポポが関係しているんだろう。

 多分こいつらのリーダー的な感じなんじゃないか?


 というより鳥が整列しているのを俺は初めて見たぞ…。

 なんかすごい。違和感が…。


「整列しとる…鳥が…」


 俺は一人呟く。

 正直圧巻の一言に尽きる光景である。地面が見えないのでまるで絨毯みたいだ。見る人によっては気持ち悪いかもしれない。


「これ全部協力者?」


 俺がポポに聞く。

 だがポポが答える前に鳥たちが口を開く。


「「「「「チュン(グァ)(ピー)」」」」」


 はいそうです! と言わんばかりの反応だ。しかも頷いている。


 コイツら本当に野生の鳥か? てか人の言葉分かるんかい。


「ご主人。今解散させますから」


 ポポはそう言って…


「ピピピィ! ピューイチチチ! チチッピピュイピィ!!」


 って言った。


 これが鳥語なのか? 何言ってるのかまったく分からん。


 そしてポポがそう言った瞬間、鳥たちが一斉に鳴きはじめる。

 甲高い鳴き声と低い鳴き声が辺りを支配し、ギルド周辺は喧騒に包まれる。




 めちゃくちゃうるせぇ!! ライブ会場に近いレベルだぞこれ。

 というより近所迷惑だからやめてくれ。怒られるのは俺だろうし…。


 そんな俺の思いが通じたのか、鳥たちは5秒ほどで鳴き止んでくれた。


「(シーン)」


 先ほどの喧騒が嘘のように辺りが静けさに包まれる。通りを歩いていた人も停止して微動だにしていない。


 これを静寂って言うんだろうな…。

 先ほど俺が体験したあれを思い出す。


 とりあえずまぁ、メリハリがよろしいみたいで。

 騒ぐときは騒ぐ、黙るときは黙る。私、そういうのは好きです、ハイ。


「ご主人。行きましょうか?」

「えっ? あ、おう!」


 ポポに言われ、別のことを考えていた俺は若干驚きつつ答える。


「ピピピィ! チィ!」


 ポポの声を聴いた鳥たちは敬礼をしたあと一斉に羽ばたき、大空へと帰っていく。

 フォーメーションを組みながら。



 …。

 嵐みたいだったな…。

 さっきの光景が嘘のようだ。



「…」


 俺は無言でギルドのドアに近づき、入る。




 忘れよう…今のは…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分で壁直せば金かからないんじゃ(笑)
2019/12/17 18:11 退会済み
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