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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
序章 旅立ち
3/531

1話 異世界転移

「う~ん」


 昼寝をしていた俺は目を覚ます。


「ふう、……あっ!? 時間はっ!?」


 寝ぼけたのも束の間、すぐさまバイトがあることを思い出し時間を確認しようと時計を見るが、そこに時計はなく灰色の景色が広がっているだけだった。

 思考が止まった。この景色に身に覚えはないし、焦点定まらぬ目をする他なかった。

 そして突如として襲ってくる不安。それは俺の冷静を欠くには十分すぎた。


「えっ!? えぇっ!? なっ、何処!? いっt「ハイハイっ、お静かにーー!!」


 パニックを起こしかけた俺だったが、突然の声に遮られその声がしたであろう後ろにすぐさま振り向く。

 振り向くとそこにはサッカーボールくらいの光る球体が何故か浮遊しており、俺はまたもや思考が停止する。

 立て続けに起こるこの不可思議な現象は誰が見ても現実的ではない。今の俺の反応は至って普通であると思える。


「突然ゴメンね~。声は聞こえてるね?」

「へっ!? …あ、えっと、ハイ」


 声を掛けられ、一瞬戸惑いはあったものの俺はそれに恐る恐る応じる。むしろこの状態で返答が出来た自分を褒めたいくらいだ。


「じゃあ一度落ち着こうか? 深呼吸してみよー」


 球体からそう言われ、言われた通りに深呼吸を始める。何度か繰り返すうちに俺の早まった心臓の鼓動は落ち着き始め、正常と言える領域まで戻ることができた。


 うん、ちょっと落ち着いた……。


「大分落ち着きました。それであの、此処は一体……? そしてあなた? は、誰なんですか?」

「うんうん。気になるよね。これから全部1から教えていくからねー(プッ)」


 俺の問いに声の主はそう返す。


 てかなんか笑ってるような気がする…、表情分からんけど。


「まずはココがドコかを教えるね! えっと、一言で言うと私が作った空間。そして私が誰なのかってコトなんだけど、君の世界で言うところの神って言えばわかるかな?」

「…そうでしたか」


 その返答に対し俺はそう呟く。


 半ば予想してはいた。こういうのはファンタジー小説では定番だからな。


 先ほどは突然の事態に動揺してしまったが、落ち着いて状況を整理することでなんとかその事実を受け入れることができた。


「う~む。以外にも反応が薄いね。期待外れだなー。まぁ話が早くて助かるけど」


 一方その神様とやらは若干不服そうだ。というより話し方に威厳が感じられないし、子供っぽい印象を受ける。

 俺はそう考えられるくらいには落ち着いてきていた。


「あとタメ口でいいよー。それで君の様子を見る限り大体予想はついてるだろうけど、君はこれから地球ではない別の世界に行くことになるんだぁ~。あ、うれしそうだね!」

「ええ、素直にうれしいです」


 神様の発言に俺は顔に笑みを浮かべる。

 異世界に行ける。あの読んでいた小説のような世界を体験できる。そう思うだけで心が躍動する。


 だがそれと同時に懸念することもあった。

 俺がいなくなったことに対する影響だ。


「あの、向こうでは俺が突然いなくなったってことになるんですかね?」

「うん。そうなっちゃうかな。ゴメンね、突然呼び出して」

「行方不明か……」


 神様が申し訳なさそうにそう言うと、俺は溜息を吐くようにポツリと言葉を零した。


 小説だと家族のことなんか考えたりしないような主人公ばっかりだが、現実に起こるとそれは無理だろう。

 家族、めっちゃ心配だわ。それにまだ恩返しもできてねぇし。せめてできる限りの親孝行はしておきたかったなぁ。


「色々と聞きたいことあるだろうからじゃんじゃん聞いていいからねー」


 とりあえず懸念すべきことはあるが、不安事項はこの際全部聞いとこう。。


「なぜ俺なんですか? 何か理由でもあったんですか?」

「えっとねー、君がこれから行く世界は私が管理してるんだけど、どうやらその世界のマナが足りなくなってしまったみたいなんだよね。あ、マナっていうのはあらゆる生物がもっているもので、魔法を使うために必要な源のことでもあるのね。向こうでは魔力とも呼ばれてるかな。空気中にも存在しているよー。君の世界には縁がないものだけど、君の世界でも存在はしていて感じ取れていないだけだよ。霊感が強い人とかはマナを少し感じれていると思うけど。向こうではマナがあることは常識なんだ」

「魔法…ファンタジーだなぁ」

「やっぱりそっちに意識がいくよね。フフ、使ってみたいでしょ? 大丈夫だから安心してね。それで話の続きなんだけど、実はマナって無限じゃなくて有限なんだ」


 えっ……じゃあいつか無くなるってことか? だったら夢もクソもないじゃん。


「魔法によって消費された分のマナは世界からどんどんなくなっていくんだ。だから日に日にマナは減っていってるんだよー。日常生活とかでも魔法使うしね」

「それは向こうの世界では常識なんですか?」

「ううん。一部の研究者とかが知っているくらいらしいね。もし公表したら生活の基盤が崩壊しかねないし…。だから一般人は知らないだけだろうから問題にすらなってないね。管理している私にとっては大問題だけど」

「じゃあいずれ使えなくなってしまうということでしょうか?」

「このままいけばね。そこで君の出番だよ!!」


 今までただ浮かんでいるだけだった球体から、突然モヤでできた手が伸びてきて、ビシッと俺に指を指す。


 この球体は一体どうなってんだろ? 気になるな……。


「実はマナが枯渇するのって今回が初めてじゃないんだよ。えーっと4回目くらいかな? 300年くらいの周期で大体枯渇するんだけど、そのたびに私はマナを補充してきたんだ。地球という星から向こうの世界に人を送ることによってね」


 ……それって拉致じゃね? まぁ言わんけどさ。

 でも俺みたいに異世界に行きたいような考えを持たない人間だった場合、絶対に文句言うだろうな。


「それで、今回はたまたま俺だったと」

「そういうこと。まぁそれだけじゃないけど。地球に住む人ってなんでか知らないけど信じられないくらいのマナを持ってる人が多くてね、君たちを向こうの世界に送る。たったそれだけで向こうの世界にマナを満たせることが可能なんだよ。恐らく向こうの地に降り立った時にマナを無意識に空気中に分散させてるんだろうねぇ」

「なるほど、理解しました。ということは俺は4人目ですか…」


 へぇ、じゃあ空気中に分散したマナを植物が吸って、動物が食べて、人間に……って感じにサイクルが成り立ってるのかな?

 というより地球人って世界を支えられるほどのマナを保有しているのかよ! そこに一番の驚きを感じるわ。まったく偉大なもんだねぇ。

 ……って、ちょっと待てよ?


「あの、地球人の多くはマナを大量に持っていると言ってましたが、じゃあ俺は向こうに着いたら…あんまり言いたくないですけど、最強だったりします?」


 小説ではよくある話だ。確かに俺にも最強への憧れはあるが、でもちょっとなぁ……。


「それはないよ~。君たち地球人はマナを操れないから向こうに着いた時にほとんどのマナを放出してしまうだろうからね。というよりそうじゃないと送る意味ないし…」

「あ、そうですか」


 ですよね。流石にテンプレ通りにはいかないか。

 でもそうなるとマナを俺は扱えないということになるのか? さっき魔法は使えると言っていたが……。


「でも努力次第では最強になれるかもね。世界を支えられるほどのマナを保有できてはいるから。それに向こうに送る時にマナは扱えるようにしてあげるし、君次第だよー」


 よかった、ひとまずは大丈夫そうだ。まぁそれくらいの配慮はしてくれないとちょっと困るってもんですけども……。

 とりあえず、不安は一つ解消された。


「分かりました。じゃあ次の質問いいですか?」

「OK! ばっちこーい」


 テンション高いなぁ。


「俺家で寝てたと思うんですけど、その時の服装と違うのは神様が? というより俺こんな服持ってなかったと思うんですけど…」

「ああそれね~。君は確かに寝間着で寝てたよ。でもこれから異世界に行くのに寝間着で出陣ってあんまりでしょ? だからこちらで用意してみました」


 そう。今の俺の服装は紺色のジャンパー? のようなものを羽織った状態で、下は灰色のズボンを着用した服装をしている。

 ジャンパーに至っては……アレだな。少し厨二病みたいな感じだ。ズボンはそうでもないけど。


「なんか厨二病っぽいんですが向こうは皆こんな感じなんですか?」

「そうだね~。これでも結構地味な方だと思うよ? 君あんまり派手なの好きそうじゃないし、あっ、もしかして違った!?」

「いっ、いえ、むしろありがたいです。あまり目立ちたくありませんし」


 ……一応厨二要素はそのうち慣れるだろう。一回くらいこういうの着てみたかったとか思ってたし。

 それに地味なのも良い。目立っていいことなんてあまりないからな。


「そっか。なら良かったよ~。その服めちゃくちゃ高性能にしておいたからさぁ、作り損になるところだったよー」

「高性能?」

「ま、向こうに行けば分かるよ。お楽しみに! ってやつだね」

「そうですか」


 うしっ! どんどん質問しよう。


 そしてそれから小一時間ほど俺は質問をしていった。




 ◆◆◆




 とりあえず分かったことは……




 ・向こうの世界はリベルアークというらしい。

 ・世界を救うとかは今の所ないらしい。国同士で戦争もないし自由に生きていいとのこと。

 ・すべての生物にはゲームのようなステータスがあり、スキルや加護などがある。ステータスは念じれば視界に表示される。

 ・種族は人間・獣人・エルフ・ドワーフ・小人・魔族の6種族。6つの大陸に分かれていて国の交流が盛ん。

 ・異世界定番。冒険者ギルドがあるらしい。

 ・動物は地球にいた種類はほぼ全部いて、小説にでてくるようなゴブリンやコボルト、ドラゴンもいるらしい。植物も然り。一般的にモンスターと呼ばれる。

 ・魔物もいるらしいが、これは魔力を蓄えすぎた動植物が変質したものらしい。変質した動植物は非常に危険な存在と言われている。

 ・通貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨、黒金貨らしい。銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚だ。他についても同様の計算らしい。

 ・科学は発達しておらず、マナを使った魔道具が普及しているらしい。

 Etc…




 うん。大体わかってきたかな。覚えることも多そうだから一部忘れそうだけど……。

 ただ、世界を救うのが今の所ない……というのが気になるな。これからあるみたいな言い方だったから注意はしておいた方が良いかもしれない。

 あとちなみにだが、俺のステータスはこのようになっている。




 ◆


【神代 司(人間)】


 レベル・・・1


 HP・・・・・100

 攻撃力・・・・50

 防御力・・・・80

 素早さ・・・・80

 魔力量・・・・50

 魔力強度・・・50

 運・・・・・・40


 ◆


 レベル1のステータスは種族ごとの特徴の差はあるものの大体30が平均らしい。ただ、冒険者などの人達の中には凄まじいステータスを誇るものもいるらしく、4桁に届く人も少なからずいるそうだ。


 ……そいつら化け物じゃん。

 まぁ俺のステータスは一般人よりは随分上ということだけは確かだし、その点だけに注目すれば良かったって思えるけど。異世界に来てすぐ死亡とかは流石に勘弁してほしいし。

 防御力と素早さも高く感じるけど、レベル1でHP100は高ぇなー。体力バカの性能してますよってことですかね?

 とりあえず……某有名ゲームの○ケモン基準で考えておこうことにしよう。


 というのも、基準が何故不明かについては、細かいところは神様があまり教えてくれなかったからである。なんでも異世界ファンタジーなんだから向こうに着いてから色々知るのも醍醐味じゃない? とのことらしい。

 妙に説得力があったので頷いておくことにしたけどさ。




 さて、色々聞けたし後二つくらい聞いて終わりにしようかな。残る2つのうち1つは結構個人的に重要だ。


 俺は恐る恐る聞いてみた。


「それで、俺が元の世界に戻るということは可能ですか?」

「私が君を直接地球に戻すことはできないんだ。一応地球の神と正式な取引をして君をココに呼んでるしね。ただ君が向こうの世界に行ってから自力で地球に戻るっていう方法を取ることはできるよ。まぁその手段は未だに開発されていないから自力で見つけてもらうしかないかな。…それにしても地球の神って図々しいんだよね~。ったく取引があんなメンドクサイのアイツくらいだよ(ブツブツ)」


 地球にも神はいたのか……何か愚痴ってるし。

 だが、すぐに戻ることはできそうにないか……。まぁ可能性が0になったわけではないのがせめてもの救いか。

 それなら、俺の最終目標は地球への帰還になりそうだ。

 異世界に憧れてはいたが、地球にまだまだ心残りはある。


「……分かりました。方法は自分で探します」

「うん。私が言えたことでもないけど頑張ってね」

「はい。じゃあ最後の質問いいですか?」

「遂に最後かぁ。もっとお話ししていたいけどしょうがないか……。ハイ、どーぞ!」

「……なんでピー助とピー子もいるんですか?」


 そう、この部屋で目が覚めた時、俺は最初パニックを起こしたから前方にいたであろうコイツらに気付くことができなかった。

 すぐに神様が後ろで大きな声をあげて後ろを振り返ってしまったため、俺がコイツらに気付いたのは先ほどだ。

 神様の話は座りながら聞いていたのだが、体が痛くなり伸びたり捻ったりしているときにようやく視界に入ったのだ。


 コノヤロウ。家じゃピーピーうるさかったくせに。全然気づけなかったぞ。


 なので、現在神様にそのことを質問している。


「君を連れてくるときに頭の上で寝ててさ、君を一人だけリベルアークに連れて行くのは心細いだろうから一緒に連れて言ったらどうかなって思ったんだけど…(プッ)、いらなかった?」


 神様には神様なりの考えがあったようだ、だけどペットねぇ……。

 友人とかだったらよかったんだけどなぁ。そっちの方が困ること少なさそうだs……あ、俺友達少ないじゃないか。

 じゃあコイツらしかいないじゃん(泣)


 というよりやっぱりなんか笑ってない? 一体なんやねん。


「い、いえ。俺にとっての癒しなので助かりますよ。ただ、向こうでコイツらを育てられるか不安ですが。だって魔物やモンスターがいるような世界ですし、それにまずは家がありませんから」

「それについては大丈夫だよ。この子たちにも力は授けるつもりだからね。家は無理だけど」

「本当ですかっ!? ってあれ? この子たちもってことは俺にも?」

「うんうん。本人の意思に関係なくこの世界に呼んでるわけだからね。なんでも一つ望むスキルをあげましょう!! 迷惑料みたいなもんだよ」


 さ、さすが異世界。キタコレ。

 予想はしていたものの、驚きはやはり隠せそうもない。


「なんでもあるんですか?」

「ほぼなんでもあるよー。神の力を得たいとか世界を滅ぼす力とかはさすがに無理だけどね~。君の前の人たちは英雄の力が欲しいとか偉大な魔法使いになりたいと言ってたから、それに近いスキルをあげたっけかな?」


 どうやら俺よりも前の人達はとんでもないスキルを貰っていったようだ。


 多分そのリベルアークでは今も語り継がれてるんじゃないか? 向こうに着いたらその人達のことも調べてみるか……。

 まぁ文献があるかどうかだがな。400年以上も前のことみたいだし。


 っと、それよりも俺のスキルはどうするかについてだが、それはもう決まっている。


 だから俺は望むスキルを神様に告げる。


「では俺は……努力すればするほど力が身に着くスキルが欲しいです。そんなのありますかね?」

「……えっ? そんな大器晩成型のスキルでいいの? もっとこうグワーッとかシャキーンとか凄いスキルじゃなくて?」


 何だよグワーって、それにシャキーンって……。語彙力低いな、神様。俺も低いけど。

 ……まぁ神様のそんなことはともかく、俺は自分の選択に後悔はない。


 これは俺にとっては重要なことだから……。


「努力しないのはあんまり好きじゃないんですよ。努力を続けて身に付けた力にこそ意味があると俺は思っていますから。まぁ、楽してると怠けちゃいそうっていうのが一番なんですけどね。ニートにはなりたくないですし」


 苦笑しながら俺はそう答える。


「ニートか……確かになりたくないねー。それにしても君は面白いね! 前の人たちはスキルを貰う時は願望とか欲望とかすごかったのに。私にもあまり話を聞かずにすぐにリベルアークに行っちゃったしさぁ、なんか新鮮だな」

「まぁ今まで結構変な奴で通ってきましたからね。そんなもんでしょう」


 高校、大学では常日頃から言われてはいたな。

 実際俺からしたらよく分からないしそれが精一杯のことだっただけで、大多数の人が言うくらいだからきっとそうなのだろう。


「うん。いいねいいね!! なんか私君を応援したくなっちゃったよ! 特別に私が選んだスキルをもう一つあげるよ!! そ~れっ☆」

「うおっ!? っとと……」


 神様から二つの光の玉が俺の体に向けて放たれ、その光の玉は俺の体の中にスルリと入っていく。突然のことに俺は驚き、危うく尻餅をつくところだったがなんとか持ちこたえる。

 入り込まれた部分を中心に慌てて体を触ってみるが……外傷はない。


 不思議な感覚だ。入り込まれた感覚があるのに何もないっていうのは……。

 というより気持ち悪かったと言えるかもしれない。こんな経験する奴いないだろうなぁ。


 度肝を抜かれていた俺に、神様が声を掛けてくる。


「驚かせてごめんねー。無事スキルは付与したよ。ステータスを確認してみなよ!」


 言われて俺はステータスを確認する。




 ◆


【神代 司(人間)】


 レベル・・・1


 HP・・・・・100

 攻撃力・・・・50

 防御力・・・・80

 素早さ・・・・80

 魔力量・・・・50

 魔力強度・・・50

 運・・・・・・40


 【スキル・加護】


 成長速度 20倍

 無限成長

 神の加護


 ◆




 スキルの項目が増えて、2つのスキルが新たに身に着いていた。それと、何故かは知らないが加護もついているようだ。


 順番にスキルの説明の方から確認してみると……




【成長速度 20倍】

 そのまんまの意味。君が20回やってできることが1回でできる(・ω・)


【無限成長】

 努力すればするほど能力が身に着く。

 成長に限界がないってことだね。君が人間を辞めるのはいつかな?(´-ω-`)




 ……簡潔でわかりやすいんだが、それでも何かテキトーな印象を受ける説明文だな。

 それにしても成長速度 20倍か……。俺の考えにそぐわないんだがどうして……?

 というより (・ω・) と(´-ω-`) ってなんだよ。

 (´-ω-`) ←特にコレはなんかバカにされてる気がするな。まぁいいけど。こんな顔文字を使ってくる辺り、妙な親近感が湧いてしまう俺はネットに随分と汚染されたんだろうな。


 そして加護の方も確認してみる。




【神の加護】

 神の加護。あらゆる場面で効力を持つ。




 効力とやらがどれほどのものかはわからないが、あらゆる場面で効力を持つというのは魅力的だ。

 例え微々たるものであれど、きっとその恩恵は俺を助けてくれそうだ。


「確認できたみたいだね。加護の方は自動で付くことになってるから言わなかったんだー」

「いえ、ありがとうございます。ただこの【成長速度 20倍】っていうのは俺の考えにそぐわないものだと思うんですがなぜ?」

「うん。そう思ったんだけどねー。……貰っておきなさい。君にはその資格があるから」


 真剣な声に少し驚く。


 この人、こんな声出せたのか。なんか威厳を感じるぞ。

 ……あ、人じゃないや、神様でした。


「君の記憶を少し探らせてもらったんだけど、どうやら本心で言ってるのが分かったし、今までの君も勉強を除いてそう心掛けていたみたいだしね」

「な、なんでもお見通しなんですね。流石神様っス」


 まさか記憶を探られるとは思っていなかった。

 恐るべし、神様。

 確かに勉強は努力したことありません。どうしてもやる気にならなかったし。そのためもちろん中学高校の成績は下の方だ。

 クラスの皆感謝しろ。俺が平均点を下げてあげていたのさっ!


「神なら大抵のことはできるからね。それにこのスキルは持っていた方がいいのは確かだよ。言わなかったけど君が降り立つ場所って町から離れた草原だからさ、危険はあまりないとはいえモンスターに襲われるかもしれないしね。着いてすぐに死ぬの嫌でしょ?」


 ゲッ! 俺が危惧したことになるところだったのか……危ない危ない。

 神様には感謝ですな、ハイ。


「そ、そうでしたか。それでしたら有難く貰っておきます」


 とりあえずそう返しておく。


「素直でよろしい。まぁ十分強いステータスだから心配はあまりしてないけど。あとさっきも言ったけど君にはその資格があるから大丈夫よ。力に溺れるようなことはないと私が誓うわ。自信を持ちなさい!!」

「ハッ、ハイ!!」」


 反射的に俺は返事をした。


 神様女性だったのかよ……。今まで判断がつかなかったぞ。

 だって姿分からんしー、中世的な声だったしー、言葉遣いもなんとも言えんしーの3拍子だったんだもん。


「さて、じゃあ後はこの子たちね」


 神様はそう言うとピー助とピー子の方を向く。


 そういやコイツらもいたな。すっかり忘れてたわ。


「この子たちには知能と戦闘力、あと生きる上で最適な体ををあげようかな~」


 さっきとは一転、威厳の感じられない口調に戻った神様。


 こっちのほうが親しみやすいかなぁ、俺は。


「あの、知能と戦闘力は分かるんですが最適な体とはなんですか?」

「ああ、この子たちは少し小さすぎるんだよ。だから少し体を大きくできるようにしようと思ってね」

「それはどれくらい?」

「う~ん。大きすぎてもあれだしね~。じゃあ大きさは3メートルくらいを上限にして自由に変化できるようにするとかにしようか」

「3メートルですか…。コイツらが」


 今まで手や頭に乗ってきたような奴がいきなり3メートルの大きさになるとか……。

 Oh、立場逆転。俺が逆に乗りてぇわ。

 親父、母さん、それに姉ちゃんと弟よ。俺、エサになります。今までありがとう。俺たちのペットは立派になりました。


「……何考えてるか知らないけど、君の心配してるようなことにはならないよ。言ったでしょ。知能も授けるって」


 あ、そうじゃん。なら俺食われないな。ヨカッタヨカッタ。


「知能は君と同じくらいでいいかなー?」


 お、それは助かる。俺と同じくらいなら生活にはあまり困らなそうだしな。

 何より言葉をもしかしたら覚えてくれるかもしれないし。意思の疎通は極めて重要である。うん。


 だから俺は……


「ええ、問題ありません」


 快く返事をした。

 それが間違いだとも知らずに……。


「了解~。そ~れっ☆」


 神様から2匹に向けて光の玉が放たれる。

 2匹は驚いていたが籠の中にいたので逃げることもできず、光の玉は2匹の中に入っていく。


 ………。


 2匹は硬直したまま動かない。


 アレ? 嘘、死んだ?


 俺が不安に思っていると突然2匹は動き始め、器用に翼で籠の柵を開けて内側から出てきた。


 あ、生きてた。てか籠のロック意味ねぇな。籠ちゃんと仕事しろよ。


 ニコニ○動画のコメントのようなことを考えてるうちに2匹は俺の目の前にまで近づき……


「「ご主人~」」


 流暢に言葉を発した。


「…喋った」

「うん。喋ってるねー」


 俺は唖然としていたが、神様はのほほんとしている。そしてすぐに頭の整理を開始する。


 それにしてもご主人ってなんだよ! あ、俺か。…じゃなくてっ!

 こんなにも早く喋るとは思ってもみなかった。

 てっきり練習しないと喋れないものかと思っていたが違った。喋れんのね、キミたち。


 とりあえず俺は声をなんとか絞り出す。


「ポポとナナ……だよな?」

「はい!」

「うん!」


 Oh、元気のよろしいことで。

 ちなみにはい! と言った方がポポだ。あとは分かるだろう。


「えーっと、問題なく喋れる感じ?」

「知能を授かりましたので会話には問題ありません。ご主人には生まれて間もないころから育てていただき大変感謝しております。ですk「ああっ!! 分かった分かったっ!」」


 やべぇ、めちゃくちゃしっかりしてるな。俺よりも優秀かもしれん……あとすごいイケボです。

 声だけ聴いたら女の子は惚れる可能性が否定できないかもしれん。ちなみにポポだ。

 一体どこからあんな声が出るのか? 世界のミステリーを垣間見たぜ。


「ご主人~これからよろしくね~」


 間延びした喋り方をする方はナナだ。


 なんというかおっとりしている印象を受ける。お母さん的な感じだな。


「ああ、よろしくな」


 俺はそう返し、神様の方を向く。


「フゥ、これで準備はできたね。2匹ともなついているみたいだし心配なさそうだね」

「ええ、ですからそろそろ行こうかと思います」


 いよいよか……。

 この短い間だけでも驚きの連続だったな。すごい濃密な時間を過ごした気がする。

 普段の生活が廃れていた俺からしたら相当なものである。


 俺はこれから異世界に行く。ほとんどの人が体験したことのないことだ。

 ……柄にも無く胸が高鳴っていくのを感じる。


「じゃあ、こっち来てー」


 神様に言われるままに移動する。


「この上に立っててねー、今から転移させるからちょっとじっとしてて~」


 じっとしていると足元が強く光始めた。魔法陣のようなものが浮かび上がる。


「あ、そうそう、その子たちは君の使い魔って形になるから町に着いたら従属の証をつけてあげてね! じゃないと殺されちゃうから。町は東を目指せば着くはずだよ~」

「あ、了解です」

「それじゃ~行ってらっしゃい。頑張ってねー! あと言い忘れてたんだけど…」

「?」

「頭に糞付いてるよ~(笑)」

「へっ!?」


 その声と同時に俺たちはこの空間から姿を消した。


 神様言うの遅すぎるわっ! 時々笑っていたのってそういうことかよっ!




 ……とまぁ、そんな感じに俺は異世界へと旅立ったのだった。

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― 新着の感想 ―
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