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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第六章 来たるべき刻 ~避けられぬ運命~
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285話 未遂

 ◇◇◇




 『剛腕』が繰り出した一撃で、闘技場全体に衝撃波が広がった。全身を隈なく襲うような鈍い衝撃には脅威を、そしてたった一撃でこの攻撃範囲の広さであることには、元々感じていた警戒心を更に強くせざるを得ない。


 今確かに頭部に接触していて感じる拳が、発生した砂煙で至近距離であってもまともに見えない。この視界の悪さは『剛腕』が俺を本気で潰しに掛かってきたことを証明しているようなものだった。


 煙が少し晴れ、視界が幾分かマシになると――。


「うっわ、死ぬかと思ったよ」

「ご主人何もする気なさそうだったので放置されてたのかと思ったんですが……」


 んなことするわけねーだろ。アホか。


 ポポとナナが自分達も巻き添えを食らったことに困惑し、そして安堵したような反応を見せる。俺と何のコンタクトもなしに攻撃をそのまま食らうかもしれない状況だったのだからその気持ちは分からんでもない……が、ポポとナナのことを忘れるなどあり得ない話だ。


 肩に乗っているポポとナナには『障壁』を張っているため、衝撃による損害は出ていない。いくらコイツらであっても、覚醒していない状態では非常に危なかったからである。

 完全な無傷、五体満足な変わりない姿があった。


「……ほぅ? 無詠唱に『鉄身硬』で防いだか。やはりこの程度では効かぬか」

「攻撃してくるってことは、俺も攻撃していいんだよな?」

「ガハハッ! そうでなくては面白くない。全力でしてくるがいい!」

「……いいんだな? 本当に(・・・)……」


 俺の額にぶち当たっていた拳を離し、何も考えてなさそうな馬鹿な笑みを浮かべる『剛腕』に、俺は忠告した。

 無詠唱にも『鉄身硬』にも別段驚いた様子がないのは自分への揺るぎない自信があるからだろう。自分に勝る奴はいない……本気でそう思っていそうだ。


 短絡的思考のクソ野郎。コイツはグレーな部類の1人だ。

 さて、どうするべきか……。いや、まずはポポとナナを退避させるところからか。


「ポポ、ナナ、先に皆のトコ戻っててくれ。俺はサクッとコイツの相手してから戻るからさ」

「え? あ、うん……」

「どうした? 別にドミニクの時みたいなもんだぞ。俺の心配なんてする必要ないって」


 できるだけ素面で、俺の内面を出さぬように2匹に伝える。かつての出来事をイメージし、その時を再現するようにして嘘をつく。


「ご主人、なんだか無理してませんか?」

「……ん? どゆこと?」


 キョトンとした顔で、ポポの疑問には応える。

 ポポとナナも俺が負けるとかの心配は一切してはいないはずだ。心配しているのはそう、別の部分。俺の内面のことだろう。

 今さっき記憶のことで打ちひしがれる思いを曝け出していたのだから、そこで急に現れた『剛腕』との展開はタイミングが悪すぎたようなものだ。何が起こるか分からない……2匹なら俺の為にそんな不安を持っていてもおかしくない。

 それを悟られぬように、一切の乱れもない演技を俺は振りまくと――。


「あ、いや……気のせいでしたかね……? まぁ程々にしてくださいね」

「へーへー、分かってますよ。ホレ、ナナも。さっさとお行きなさいな、皆と大人しくご主人様の帰りを待ってておくれ」

「う、うん。早く戻って来てね」

「イエッサー」


 どうやらなんとか誤魔化せたようだ。ジークかセシルさんがいたら到底無理だっただろう。

 俺がおちゃらけて言うと、ポポとナナは肩を離れてこの場を後にしていく。


 ポポは飛び去る間際に一瞬去ることを躊躇したようにも見えたが……もしかしたら流石に演技が過ぎたのかもしれない。如何にこれまで嘘や演技をしてきた経験があるとはいえ、やはり嘘は嘘なのだ。騙すのが俺は下手だから見透かされた可能性もある。


 この分だとナナも実際思っていそうだが……今後を考えたら避けては通れぬ道の第一歩とも言える瞬間が今なのかもしれないのだ。後で絶対心配させることになるだろうが、俺は俺でもう後悔はしたくない。







 『剛腕』は……ここで殺しておくべきだろうか?







 どちらにつくとも分からない不安因子。心底嫌な存在ではあるが……実力だけは一応確かなのも事実。上手く立ち回れば利用できる可能性も否定できない。


 しかしここで殺して招集そのものがなくなるような事態は避けたいし、もしするならやはり当日になるか? その日までは様子見するのが賢明かもしれんし……判断に困る。


「俺様の前で随分な余裕だなぁ! 小僧!」

「……」


 ポポとナナの飛び去る方に意識を向けてばかりの俺にまた一発、一般よりも遥かに大きい拳が迫りくる。今度はそれを片手で受け止めて防ぎ、俺は『剛腕』の凄んだ顔をチラリと見やった。


 顔に走る青筋が最早エグイ。


「戦いは既に始まっているのだ! そんな舐め腐った態度は俺に対する侮辱と見なす! 貴様……余程死にたいようだな!」


 『剛腕』が技を放つのを聞きながら、俺は初めて『剛腕』がまともなことを言っているなと思った。


 確かにそうだ。どんな戦いでも油断はするな……それは俺も口走ってたことではあるし、全くもって俺が悪かったよ。意識がまた甘くなってたみたいだ。反省する。


「潰れろ、『重圧鉄槌(グラビトンハンマー)』!」


 手で受け止めていた拳。その重圧が『剛腕』の叫びと共にさっきまでの比ではないレベルで威力が急激に増した。まるで単純に鉄球を支えていた重みから、急降下してきた鉄球を支えたような具合に。


 ただの殴りで先程の広範囲への威力を発揮した拡散型とは違い、今度のは一極集中型とも言える攻撃。

 割れるように、俺が踏みしめている地面に一気に地割れが出来ると、そのまま足元は陥没して視界が下がっていく。分散することなく手から足へと伝わる圧力は地面にしか逃げ場がなく、地面に大きな圧跡を残していく。


 だが――。


「どうした……一人息巻いてた割にこの程度か?」


 でもさ、油断したって仕方がないだろ? こんなに大したことない奴だとさ。

 そんでこんなどうでもいい奴の生死について考えてもいられるくらいだったんだから。


「っ……『重圧鉄槌(グラビトンハンマー)』の一撃に真っ向から耐えただと……!? くっ、『爆砕衝』ッ!」


 奴の自慢の一撃に難なく耐えたことで、ようやく『剛腕』の顔色に焦った顔を確認できた。『剛腕』は事実を受け入れられないのかそのまま立て続けに、今度は俺の腹へともう片方の拳を振るう。切り返しの速さは伊達にSランクではないということか。


 それも俺は……真っ向から受け止めた。同じく手で。




 次の拳を掌で受け止めると、拳に触れた瞬間に盛大に爆ぜた。至近距離で爆発を食らったような威力は勿論相当高く、圧も凄まじい。しかもその圧は一瞬で終わるのではなく、拳から途切れることなく断続的に俺へと振りかかる。

 例えるなら激流の中に立たされているようなものだろうか。


 拡散、集中ときて今度は放出型か……単純な技でも色々持ってるみたいだな。


「……」

「馬鹿な……!? 何故だ、何故吹き飛ばされぬっ!?」


 発狂するように叫ぶ『剛腕』の俺を見る目が変わった。それは化物に遭遇し、成す術がない故の焦りの姿のそれだった。

 コロコロと変わる表情を鼻で笑いたくなってくる。


「お前のそれ……シンプルだけど汎用性高いんだな。流石固有スキル、厄介なモンばっかりだ」

「小僧貴様! 一体何をした!?」


 俺が今平然とこの場に立っていることがあり得ない。何かカラクリがあるはずだと俺を追及する『剛腕』が酷く滑稽に映る。


「いや、別に何も? ……まぁ確かに、攻撃に耐えられても吹き飛ばされる可能性はあったが……スキルにはスキルだろ」

「す、スキルだと?」

「そうだ。――悪いな、アンタのカスみたいな攻撃にダメージ負ってたんじゃ話にならないし、手こずってもいられないんだよこっちは」

「カス、だと……!?」

「ジャンパーを失って、あれから散々何度もボコボコにされてきたんだ。【衝撃耐性】と【忍耐力】はもう……とっくに復活済みだ!」


 ジークとの日々の手合わせやイーリスでの激戦を経て、ジャンパーによって備わっていたあの力達は今再び俺の元に戻ってきた。唯一戻っていないのは【自動回復】くらいなもので、アレはどうしようもないから仕方がない。


 ただ、他の二つは今度は与えられた力なんかじゃなく、俺が純粋に一から得たものだ。付与されたものとは違って、今この力が備わっていることに対しての自信もあの時とは全く違う。

 だから攻撃を食らおうとも毛ほども吹き飛ばされる気はしなかった。


「有り得ん……俺様は認めん、認めんぞ! 俺様の攻撃に平然と耐える奴なぞ、この世にいるわけがない!」

「……で?」

「このまま、今度こそ消し飛ぶがいい……! 俺様の最強技――『爆連双衝拳』!」

「ごちゃごちゃとうるさいんだよ肉塊が――!」

「があぁあああっ!?」


 『剛腕』が両腕に力を込めたのかやや肥大させ、そのまま同時に俺へと両腕を振るう。技の発動と同時にまた爆撃が巻き起こったような轟音が響く。そしてすぐさま聞こえてくるのは『剛腕』の叫び声だ。

 収まりかけた轟音に紛れて発せられる叫びは悲痛な声色であり、次第にその声だけしか聞こえなくなってくる。


「ぁ、ぐっ……!?」

「自分の攻撃でダメージ負ってたんじゃ世話ねぇな。……つーかここら一帯を壊すつもりかよオイ」


 俺のすぐ足元で『剛腕』が血まみれで野垂れる。まるで俺がジークの『ゼロ・インパクト』を食らった時のような見た目だ。……ま、自業自得だ。


 『剛腕』が技を放つ瞬間、俺は『障壁』を同時に6個展開し、俺らを囲う正方形の空間を形成した。闘技場以外にも被害が波及しそうだったのでその配慮ということもあるが、何より『剛腕』の攻撃は圧が凄まじい。ならばほぼ密閉された空間内で放たれたらどうなるのかという疑問もあり試してみたのだが……『豪腕』の身体は流石にこの小さな密閉された空間内での膨張による圧力には自身さえ耐えられなかったらしい。身体中から血が勢いよく吹き出して血だまりを作っている。


 あぁ、普通なら心配するところだが全くその気さえ起こりゃしない。

 ただでさえ暑苦しい奴で不快なのに、血飛沫も生温かいせいかすごく不快だ。


 展開した『障壁』を解除し、衣服にべったりとくっついた血を確認する。


「ぐふっ!? フーッ……フーッ……っ! ぎ、キザマァ……!」


 勝手に自爆し、勝手に床にへたりこむ『豪腕』が恨みがましく俺を下から見上げている。

 今はそれを純粋に腹立だしいと俺は感じ、先程の迷いの答えが出るきっかけになった。


 ……やっぱりここで殺しとく方がいいかもな。


「っ!? ぅぉあ……!?」

「いい加減分かれよ。お前と俺じゃ話にならないってことをさ」


 ここまで力の差を見せつけて己を理解しないコイツにはきっと何を言ったところで無駄だ。生かしておいてもどうせロクなことにならないし、むしろ害悪でしかない。

 ならいっそ……殺せる時に殺しておいた方がいいんじゃないか?


 この時頭に血が上っていた俺は、足元の『剛腕』の首に、俺は軽く足を乗せた。そして少しずつ、足に込める力を強めていく。――『剛腕』を殺すつもりで。

 首の筋肉で固められた装甲が許容を超え始めると、強制的に発せられる呻き声は人のものとは思えないものになっていく。そこから更に力を加えていき、喉仏を押し曲げ、呼吸をするための軌道を完全に塞ぐと、瀕死の『剛腕』の腕が俺の足を退けようと必死に抵抗する。

 目は飛び出そうな勢いで見開き、顔を血とは別で真っ赤にした顔は必死で死から逃れようとしていた。


「俺を叩き潰したかったらさ、これくらいはやれよ……!」


 散々殴ってくれたお返しの意味を込め、最期はこちらも拳を使った技である『雷崩拳』でトドメを刺そうと思ったのだが――。




「やめとけよツカサ。それ以上やったら戻れなくなるぞ」

「……ジークか」




 突如、俺の腕が後ろに引っ張られた。思わぬ形で態勢を崩されたことで足に込められた力はなくなり、そのままたたらを踏んで後退させられてしまう。

 『剛腕』から俺を引き離すようにジークがこの場に瞬時に現れ、俺にやめろと警告をしてきたためだ。

 俺の後ろでは、圧力から解放されたことで『剛腕』が盛大に息を吹き返して咳き込んでいるが、今の俺の意識はジークに集中している。


「ったく、派手にやりやがって。『剛腕』のオッサン、アンタ自業自得だぜ?」

「ハァ……ハァ……!」

「ツカサ、お前もお前だ。チビ助とチビ子のこと上手くあしらいやがって……またかよ?」

「……まただ」


 ジークは瀕死の『剛腕』を心配するでもなく冷めた顔で一瞥すると、ほんの少しだけ、声に心配の色を混ぜた問いかけを俺にしてくる。記憶のことで互いに話し合ったこともあるからこそ分かる、俺の今の事情を察したジークの心配の表れだ。


「お前はお前だ。記憶に惑わされて自我を放棄する真似は絶対にすんな。今のお前がやろうとしてたことはお前本来の行動じゃねぇだろ」

「……んなこと分かってるよ。でもコイツは……」

「俺にはお前が今味わってる苦痛は分からねぇし、どんな記憶を見たのかも分からねぇ。だが、お前が俺の知ってるお前じゃなくなっちまいそうになってんのだけは分かる」

「……」


 俺が俺じゃない、か……。でもそれって何時からだったけか? 頭がこんがらがってきた……。


 俺は俺である。だが、未来の自分の記憶が混ざった俺が取っている今の行動というのは……果たして本当に俺自身の考えなのだろうか? それが今一度分からなくなってきてしまう。

 たった今記憶に惑わされていると言われたのはまさにその通りで、俺は自分自身に踊らされているような違和感を覚えた。


 わけが分からない。答えがあるなら今すぐに知りたい。


 でもハッキリしているのは、ジークは俺が『剛腕』を手に掛けようとしたことを快く思っていないということである。だから今俺を止めた……それは確かだ。


 ジークは俺と面と向かい、若干顔を伏せながら更に続ける。


「もう一度言う、お前はお前だ。記憶はあくまで記憶で……お前の記憶じゃねぇんだ。だからアイツら以外の奴に手を掛けるようなバカな真似だけは止めとけ。……どうしても抑えきれないってんなら、そん時は俺に言え。汚れ役は全部、俺が引き受けてやる。だからお前はそのままでいろ……いや、いてくれ。それがお前の強さでもあるだろ……」

「じ、ジーク……?」


 頭に上っていた血が……スッと冷めた。

 正直驚いた。ここまでストレートにジークが懇願してきたことにである。


 もっと対等な立場で、ぶっきらぼうに軽く物言いをすると思っていたのに、あのジークが……。


「な、なんでそこまでお前がする必要があんだよ。お前だって不殺を貫いてるだろ? 俺の代わりに誰か殺してくれだなんて、もう二度と誰にも言えるかよ」

「なら言わないようにしろ。そんでやろうとすんな。いいか? 絶対にだ」


 強く真剣な眼差しで、俺はジークに訴えられる。懇願からの訴えの切り替えはジークの主張が本気であることを嫌でも理解させられる他ない。


 ……え? でもちょっと待て、誰この人。何回も言うけどこんな見た目不良の聖人なんて俺知らないんだが。


「俺らがお前に付いてんのはお前がそういう奴だからだろ。お前もそれは心の何処かで分かってんだろ? お前の根底にある本当の力、それがお前の表面的な強さの源だ。命を軽視せず、大切に扱ってるからこそ……本当に守りたい奴らを守るためにお前はいつも戦ってる。俺らが認めたのは……そんなお前だ」


 頭が熱くなって冷めて、そして今こうして何故か悟らせられている現状に頭を唸らせたくなる。熱したものが急激に冷やされるとどんな物も壊れるというが、今の俺も似たようなものだ。思考回路が壊されて上手く思考が働かないというかなんというか……。


 取りあえずなんでこうなったということに一番疑問を感じる所ではあるものの、俺は……ジークの只ならぬ雰囲気にただ圧倒されてしまっていた。


「お前には『ノヴァ』以外の奴は殺させねぇ。俺は俺が認めた奴がこれ以上変わるのを黙って見てられる程我慢強くねぇぞ。もしお前が本気で連中以外の誰かを殺そうとすんなら、そん時は俺が全力で止めるか代行する。それが俺が……フェリミアとしてお前を認めて、俺に唯一出来ることだと思ってる」


 そこまで言うと、ジークは俺の脇を過ぎて『剛腕』へと歩み寄る。


 は? なんだよいきなり。つーかまたフェリミアって……本当に一体何なんだよそれは?


 俺がジークを引き留めようと手を伸ばすと――。


「なぁ……一体どうしたお前? てかいい加減フェリミアn「うっせ、近ぇ内に話してやっからさっさと戻ってろ」

「ぐっ!? おまっ……くそ、なんなんだよもう……」


 伸ばした手は、腹部に走る痛みを抑えるために回されてしまう。

 ジークに後ろ蹴りを食らい、さっさと行けと催促される。ジークはもう俯いたりはしておらず、いつものように面倒くさげな顔に戻っていた。


 ちなみに『剛腕』に攻撃を食らうより、今のただの蹴りの方が痛かったりする。

 これが我々が規格外と言われる所以である。……しょーもない。


「ちっと頭冷やして冷静に記憶の整理してこい。そんで本当にお前がしたいことを考えてみろ。……コイツのことは後は俺がなんとかしとく」

「いやいや、ジーク君どしたのさ急に? お兄さんちょっと君の発言と気遣いに驚いてんスけど?」

「……」


 俺の声を、それ以降ジークは全て無視した。聞こえていないはずがないのに反応すらせず、興味を一切示さないその態度で俺はもう察した。


 あ、駄目だこれ。多分何言っても頑なに答えてくれないやつだ。




「……はぁ、分かったよ。そいつ、殺すなよ」

「あぁ、適当にやっとく。早く行け」


 もうこうなっては仕方がない。ジークはジークで意思が強いし、俺がどうにかできるとも思えない。

 言われるままに、俺はジークにこの場は任せて一足先に戻ることに決めた。


 言われた通り記憶の整理、あの娘が一体誰で、俺が本当にどうしたいのかをしっかりと考えないと。

 揺れっぱなしのリーダー……ハハ、『剛腕』よりも俺の方がよっぽど滑稽だったな。




 でも今は純粋に、ただ皆に早く会いたいや。

 あの娘は確かに大切だった存在だけど、今俺が現に大切にしている人達は、確かにそこにいるのだから。

次回更新は一週間は先です。


※7/6追記 

次回更新は7/10月曜です。

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