24話 なけなしの勇気
今回はちょっと短いです。明日は多いので…。
うぇっ、気持ち悪い…。
外に出た俺は深呼吸を繰り返す。あの気持ち悪い感覚がさっきよりも酷くなって気分が悪い。
このままじゃ吐きそうだ。
何だよ…コレ。意味分かんねぇよ…っ!
ドクン…ドクン…ドクン…
正体不明の感覚は…さっきよりも感覚が短くなって酷くなっている。
このまま早くなったらどうなるんだ?
経験したことのない不安が俺を襲う。
とりあえず早く帰ろうと思い、俺が移動をしようとしたとき…
-こっちだ-
「っ!?」
そんな声が頭に響き、俺は…咄嗟に辺りを見回す。
だが誰も周りにはいない。俺一人だけしか大通りにはいなかった。
「誰だっ! どこにいるっ!?」
俺は大きな声で叫ぶ。そうしないと俺の心が持ちそうもない。
こんな心霊的な現象は初めてだから、怖くて仕方がない。
辺りは静まり返っており、俺の声に答えるものはいない。
そして、ふとおかしなことに気付く。
静かすぎる。
そう、人がいないだけじゃない。
現在は夕方で少し薄暗くなっているのだが、そうなれば民家やお店の明かりが、窓から零れているのが普通のはずだ。
だがしかし、俺が見渡す建物の窓には明かりひとつすら見つけられない。街灯も全て消えている。
人がいないどころではない。人など存在していないかのようなくらいの静けさだ。
後ろを振り返り武器屋の窓を見ると、ついさっきまでは明かりがついていたはずなのに暗かった。
慌ててドアノブを回してみるが…開かない。
は!? ウソだろ?
そんな状況が俺の不安を急上昇させる。
「ハっ!! ハァっ!! ハァっ!!」
呼吸が乱れ、全身を冷や汗が覆う。
そして再度…
-こっちだ-
声が…また頭に響く。
誰なんだよクソがっ! 何が起こってるっていうんだっ!
俺が混乱している間も声は頭に響き続ける。
「っ!!」
俺はそんな状況に耐えられず『安心の園』へと走り出した。
怖い怖い怖いっ!!
頭の中はもう恐怖で一杯だ。
『安心の園』はここから近いので、走ったら1分も掛からずにすぐに辿りつくことができた。
しかし、明かりはついていない
明らかにこれはおかしい。明かりが消えるのは深夜のはず…。
現在は夕方。明かりが消えているのはありえない。
俺はドアノブに手をかけ、扉を引く。…が、扉は微動だにしない。
「クソッ! 誰かいないのか!? ミーシャさんいますか!?」
扉を叩いて大声で叫ぶ。でも返答はない。
辺りは静寂に包まれており、俺の乱れた息遣いだけが聞こえる。
「どうすりゃ…いいんだよ…」
この状況に対し俺はどうすればいいのか分からず、扉に背を預けてその場で呆然としてしまった。
◆◆◆
しばらくの間、恐怖に襲われながら呆然としていた。
どれくらい時間が経ったのかは分からない。そんなことを考える余裕はなかったからだ。
声はいまだに頭に響き続ける。
-こっちだ-
-西の草原にこい-
-いつまでそうしてるつもりだ?-
―時間がない…早くしろ―
聞こえてくるのはこれだけだ。
時間? 知るかボケ。頼むから早く元に戻ってくれ…。
しばらくの間その言葉を聞き続けていた俺だが、少しだけ心が落ち着いてきたので状況を把握してみる。
1.なんでこうなった?
わからない
2.なぜ人が誰もいない?
わからない
3.ここは、本当にグランドルなのか?
わからない
駄目だ…! 全部、分からない。この状況に陥った原因がまったくと言っていいほどわからない。
考えれば考えるほど頭が混乱しそうだ。どうすればいいんだ?
俺は苦悩する。
ただ…
1つ、この状況を知る方法がある。
…。
……。
………。
だよな。行くしかないよな、西の草原に。
そこに行けばこの声の主もわかるかもしれない。少なくとも原因はわかるはずだ。
とてつもなく怖いが…。
今現在も頭の中では声が響き続けている。
きっとそこに行くまでこの声は止まらないのではないだろうか?
「…はぁ~、どこのどいつかは知らねぇが…。っし! 行ってやらぁっ!」
決意を固め俺は頬を両手で叩く。
力を入れすぎたのか少し痛かったが、そのおかげで目は覚めた。
目指すは西の草原!
待ってろよコンチクショー!
俺は半ばヤケクソで草原目指して走り出した。
俺の足音だけが、グランドルに響いていた。




