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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第五章 忍び寄る分岐点 ~イーリス動乱~
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214話 神鳥左翼:白銀の陣①(別視点)

 ◆◆◆




 フェルディナントの号令を合図に、オルヴェイラスは続々と事態への対策準備を急ピッチで進めていく。

 穏やかで争い事も少ないエルフではあったが、普段の訓練と心掛け、そしてイメージトレーニングは欠かさなかったようだ。少数ということもあって、兵士・市民の全員があまり無駄のない動きを見せている。

 兵は連絡を細かに取り合って常に動き、住民は爆風の影響で怪我をした者達に対して手を差し伸べる……全員が一丸となっている瞬間。

 結束とはこのような状態を言うのだろう。

 これは普段から家族のような関係を築けていたことによる賜物と言えよう。ある意味国のトップの者達が無意識に振りまいていたモノ……国政(あい)が、結果的に功を成したものである。

 そして絶え間なく圧倒的な存在感を放つ、空に浮かぶ巨大な飛行船があって常に恐怖を感じるのを堪えられたのは、傍にいる家族達を思うが故にであった。




 そして今、その準備がほぼ全て整う。




「ご報告申し上げます! 各部隊配置についており、すぐにでも出陣が可能です! 現在広場にて待機、陛下……ご指示を!」

「こちらも住民の避難の8割方完了いたしました。負傷者の避難が遅れておりますが、それももうすぐ完了する見通しです」


 先程ナナ達へと合流した場所で、フェルディナントは腕を組んで佇む。その傍らにはナナとヒナギもおり、ナナに至っては目を閉じて静かに集中していたようだが。

 そこに伝令の兵2人が各方面の連絡係としてやってきていた。


 フェルディナントは兵の言葉に頷くと、報告された内容に対して指示を出していく。


「うむ、報告ご苦労。其方はこれより直属の兵長の指示を仰げ。私はナナ殿と連携し、兵全体に向かってここから指示を出す。……兵長達にはそう伝えてくれ」

「ハッ!」

「そして、安否の確認出来ていない者には済まないが……今は仕方ない。其方はフィリップと共に避難した民らの傍にて待機、フィリップの指示を仰ぐのだ。民の心を落ち着かせるように心掛けよ」

「ハッ!」


 兵達に対してはそれほど今は思うことがないものの、民の避難状況を聞いた際にはフェルディナントは顔を曇らせた。

 大切な民が少なからず被害を受け、犠牲となってしまった者もいたことを想像しているためだ。

 だが早急に動かねばならないのも事実。本来なら安否の確認出来ない者を捜索し、救助を優先したい気持ちがある。家族想いなのだからそれは当然だ。

 しかし、それは一個人としての考えであって王としての判断ではないのだ。今は王として民を導くのが先決であり、心を揺らがせる状況に負けることは許されない。

 なぜなら、それが王の役目だからである。それを理解しているフェルディナントは、痛む心を堪えつつも厳しい指示を与えるしかなかった。


 ヒナギもいたたまれない気持ちだったが、こればっかりはどうしようもなく閉口し、ナナは目を閉じていてフェルディナントの顔を伺ってこそいないが、フェルディナントが指示を与える時にあった間で心境は察したようだ。表情にこそ出ていないが、その内心は似たような気持ちを抱えていた。


 伝令係はフェルディナントの指示に従い、それぞれその場を離れようとする。だが、兵達の伝言係である1人は一度その足を止め、再びフェルディナントの前へと戻って来た。


「あの、フェルディナント様……一つよろしいでしょうか?」

「ん? なんだ?」


 一介の兵が王に直談することは本来あり得ないが、オルヴェイラスでは普通にあり得る。

 畏まった姿勢こそ兵側にはあるものの、フェルディナントも特にその行動事態を変に思う部分は見受けられない。


 兵はどうやら何か伝えておきたいことがある様子で、フェルディナントはその内容を聞くが……


「分かっているとは思うのですが、決して前線に出るなんてことはしないでくださいね? ここに残るようお願い申し上げます」


 真剣な顔で、兵士はそんなことをお願いしたのだった。

 ナナとヒナギは、まさかそんな当たり前のことを言うとは思っておらず少し呆けてしまうが……すぐにその考えを改め、「あぁなるほど」と納得することとなった。


「……善処しよう」

「「(出たくて堪らないんだろうなぁ)」」


 兵士の確認に少し時間を置いて返答するフェルディナントの顔は、実に不満気そうな顔だったからである。

 ヒナギとナナは、フェルディナントが戦場へと自らも飛び込みたい衝動を持っているのだとすぐに理解した。フェルディナントの性格を知っているからこそ。


 あの例の個体と単体で戦える人物は限られているし、そもそもフェルディナントがギリギリ良識の範囲内でそれなりに戦いを好む傾向があるのだから、この態度は普通なのかもしれない。

 相手を討ち取れるかもしれない力があってその場に駆け付けられないのは歯痒いのだろう。


 ただ、今のフェルディナントはオルヴェイラスの司令塔である。核を成す存在がいつ散ってもおかしくない状況に身を置くことは得策ではないし、愚の骨頂と称されても仕方のないことだ。

 しかもフェルディナントは先代の王であるため、一兵士としてはそれは許容できないこともあるのだろう。兵は王を守るために在るのだから。

 お互いに思う部分がある結果が今の状態になったわけだ。


 そこに水を差すように……


「っ!? あれは!?」

「また来ましたか……!」


 カッ! と一瞬辺りが光り、飛行船の船底に並んでいた小さな砲台達から、先程の電撃が飛来し始めてくる。

 ただ、幸いなことに速度はあまり早くはない。雷とは本来視認すら出来ずに一瞬で飛来するものだが、この電撃はその性質を持たないようで比較的緩やかに飛来する。……とは言っても遅いとも言えない速度ではあるが。

 気付いてから身構える猶予は与えられこそするものの、すぐに手を打たなければいけない状況である。

 この場にいた者達は皆身構えるが、ナナだけは至って余裕な態度でお茶らける。閉じていた目をようやく開いて空をチラ見し、一旦楽な姿勢を取った。


「はいはい、ご安心くだせぇ皆様。ちゃ~んと分かってるから」


 皆の身構える姿勢を見たナナは、翼をヒラヒラとはためかせて安心させるように振る舞う。


「ほぉ~? 雨みたいに降って来るね~。……でも無駄だよ」

「ナナ殿、何を悠長に!?」


 フェルディナントの焦りを気にすることも無く、ナナはチラッと少しだけ上を見上げると、すぐにまた地面に手を当てて別の事に集中する動作へと入る。

 空から飛来する電撃は一つではなく、数え切れない程あるというのにである。規模は先程と比べれば小さくはなっている。ただ、それでも数が増えるだけでも脅威なはずだ。

 それで尚この余裕の態度……そんなものは片手間で足りると言っているかのようである。


「「「っ!?」」」

「お見事です、ナナ様」


 ナナは今度は大規模な氷の膜を街全体に張るのではなく、必要最低限の膜で電撃を防ぐ。全ての電撃の飛来する軌道上に極薄の氷の膜である魔法を展開し、受け皿の様にそれを受け止めた。

 ナナ以外には薄すぎて氷の膜が見えることはないだろう。それ程に薄く、まるで紙のような厚みの氷なのだ。反対側が透き通って見え、普通何気なく見る景色と変わらないレベルの。

 見えない壁に遮られている電撃の光景がそこにはあった。


 更に……


「跳ね返してもいいんだけどアンリ達が乗ってるからな~。フェル様ごめんね? ちょっとこっちの都合で撃ち落とすのはまだ無理」


 電撃を受け止めているナナはガックリと肩を落とすと、そんなことを言ったのだった。


 ちなみに、ジークだけが乗っていた場合はこの電撃を跳ね返してもいいかなとナナは思っていたりする。自らの主の魔法が直撃して死なない奴が、今受けている電撃を浴びた程度で死ぬとは到底思えなかったからだ。

 死ぬどころか、怪我すらほとんどないような気がしてくる程の化物さを誇るのがジークである。そして司はそれを既に超えた領域に到達しつつあるわけだ。


「……で、どうする? フェル様。上からの攻撃は全て任せといてもらって大丈夫だけど……やっぱりあの黒いオーラの個体は私は無理っぽいからさぁ」


 最早なんでもできるのではと淡い期待をナナに寄せていたフェルディナントだが、ナナの無理という言葉に顔をしかめる。


「無理……というのは?」

「うん。実はさっきからもう攻撃しかけてんだよね~。でもアイツらちっとも効かないみたいなんだよ。東ん時の狼よりも厄介そう……というか、ほとんど魔法が効かなくなってるっぽい。取り巻き達も」


 一方、ナナの方もフェルディナントと似たような表情をしていた。

 フェルディナントがこの場に来た後から今に至るまでの間、その間容赦のない攻撃を敵集団に向かって仕掛けていたのである。その攻撃の苛烈さはジークの魔法版のように激しく、景観はどうせ後で戻せると腹をくくって気にしていない。水と土魔法の嵐がモンスター達を襲っているのだ。

 しかし、そのモンスター達がついこの前聞いていた情報とは異なる性質を持ってしまっていて、ナナでは太刀打ちできない個体へと変わってしまっていたらしく、その魔法の嵐をものともしていなかったことで、ナナは困った顔をしてしまったのだ。


「そんな……ど、どうすれば……」

「勝てるのでしょうか? 我々は……」


 目の前で現在電撃を防ぐほどの存在でも太刀打ちが出来ない。それは一般からすれば不安を募らせても仕方のないことだ。

 ただ、あくまで効かないのは魔法だということを失念している。


「魔法が効かないとなると……私の出番ですかね」

「「っ! そうか……ヒナギ様もいらっしゃる!」」


 魔法が効かない相手であれば、別の手段として直接攻撃を行うしかない。

 チャキ……と、刀に手を当ててヒナギは準備を始めた。愛刀の具合を確かめる、戦う前の無意識に行ってしまう動作を。

 ヒナギには戦う意思が十分あった。


 以前クリスティーナがヒナギを褒め称えたが、その効果はやはり高い。

 Sランクの称号は司達といると薄れてしまうが、それ以外では絶大な影響力を発揮する。今こうして兵士達の表情に再び希望が溢れていることからも、それは間違いない。


「うん、既に対策を練ってたんだろうね。東の時にデータを取られてたのかも」

「それなら……行って参ります。カミシロ様のおかげで上位個体は2匹。一匹ずつ確実に仕留めて参ります」


 例の個体への対処をどうするか、それは流れるような会話ですぐに決定する。


「私もできる限り援護はするけど、もう一方の方の足止めと他の奴らに集中するから無理はしないでね。兵士さん達も守らないといけないし……」

「えぇ。終わり次第、すぐにもう一体の個体を討ちます。その後は掃討戦になりそうですね」


 ヒナギが上位個体を順次討伐し、ナナはそのサポートも兼用するという形となった。

 上位個体を全て討伐した後は、他にも展開している下位モンスター達の掃討へと参加する形になるようだ。


 自分のやるべきことが決まったヒナギ。それを遂行し、事が終わればオルヴェイラスには平和が戻り、そして守られる。


 だが……


「……」


 ヒナギは表情にこそ出していないが、黙って目を瞑って深呼吸を繰り返す。何かを隠すように、振り払うように。

 過去の出来事が、今ヒナギに余計な邪念を抱かせていたのである。


 その理由は、ブラッドウルフと『夜叉』と戦った際に味わった……敗北。自分の力が及ばず、相手を上回ることが出来なかったことによる自信の揺らぎである。

 どちらも印象強い出来事で、忘れることはできるわけがない。その忘れることのできぬ戦いで、ヒナギは敗北してしまった。自らが『鉄壁』と二つ名で呼ばれていて良いのか? その日から常に自分に問いかけているのだ。

 これで心が乱されてしまうのも無理はない。焦りと不安が心に巣食っている状態だ。

 ヒナギは自分から守ることを奪ってしまったら、何も自分には残らないと思っている。それでいてあの体たらく。誰も守れず、誰かを危機に晒す状況を作り出した責任を感じてしまっていた。

 皆が仕方ないとヒナギを庇っても、それはヒナギにとって耐えがたい程に苦痛の声にしか聞こえなかった。

 そして今、またあの時と似た状況が目の前までやってきた。

 無理はしないでと、仲間は言った。だがそんなのは無理だとしかヒナギは思えなかった。無理をしなければまた前回と同じ過ちを自分は繰り返す、無理をしてでも守り通さねばならぬと……。

 要するに、心の余裕がなくなってしまっているのだ。だからこの前ギガンテスと遭遇した時も、自ら率先して戦おうとしていた。


「ヒナギ、自信持って。ヒナギは強いよ、すっごく」

「ナナ様……」


 ……と、そんなことを考えているんだろうなと思ったナナが、ヒナギへと激励をかけた。

 どうやらナナの想像は当たっていたようで、ヒナギは面食らったようにナナをまじまじと見つめる。

 自らの考えが的を得ていたのが分かったナナは、そのまま言葉を続ける。


「東の時は不幸が重なったから後れを取ったけど、あれからヒナギはもっと強くなってるから平気。『夜叉』の時は……私は聞いただけだからよく分かんないけどさ」

「で、ですが……」

「誰が言おうとヒナギは強い……それに毎日頑張ってたじゃん?」

「!?」


 ヒナギのことを見透かしていたかのように問いかけるナナに、ヒナギは驚きを露わにする。

 何故それを知っているのか? そう言いたげな顔で。


「こっそりヒナギが特訓してるのは知ってたからね。それをおくびにも出さないから大したもんだよ」

「あ……」


 考えて見れば気づかれない方がおかしい。ヒナギはすぐにそう思い立った。

 ナナに気づかれているなら、恐らくジークも知っていたに違いない。ナナが感知できる範囲での特訓だったのなら、ジークにも匂いで気づかれているはずだからだ。

 毎回こっそり行って帰って来ることを繰り返していたことが、今になって恥ずかしいとヒナギは思ってしまった。

 本人は至って真面目に隠してきたが、どこか抜けているのだった。


「……思う存分やってきなよ。今のヒナギ、ついこの前とはまるっきり別人だと思うから。あんな奴ら余裕余裕。その強さを奴らに見せつけてあげなよ」

「……はい!」


 自分の努力を評価してもらえることが、ヒナギは嬉しかった。そしてそれを見ていてくれていたことも。

 ヒナギは自らへと暗示をかけた。自分は今回は必ず勝てると……自分のしてきたことを否定させはしないと。


 ある意味トラウマに似た不安。敗北によって植え付けられたそれを克服するのは容易ではない。

 だがそれを乗り越えるには、勝利によって自信を再度勝ち取るしか方法が無いのも事実だ。そのためにヒナギは日々研鑽を積み、自身の弱さを悔い、欠点を補うための努力をこれまでにしてきた。


 司は知らないが、ヒナギは深夜にこっそりと一人で修業をし続けてきたのである。グランドルでは勿論、イーリスに来るまでの船上での最中も、イーリスに来てからも、その時にできることは必ず毎日行い、欠かさずに努力をし続けてきた。

 その成果はアネモネの頃から少しずつ実っていき、つい先日に明確な形となって現れた。

 そしてそれをナナは知っていた。静かにそれを見守り、ヒナギの心配を密かにしていたようだ。

 『鉄壁』の二つ名はヒナギのスタイルである堅牢さだけを表しているだけではないのだ。ヒナギ自身の揺るぎない信念も多分に含まれている。

 やはり最後の後押しをするのは仲間であった。


「皆様……行って参ります」


 そして、ヒナギは動き出した。力の入った足で歩を進めてその場から移動を始めていく。

 ヒナギの目にもう迷いはない。不安も無い。負けるビジョンなど毛頭ない。

 凛とした雰囲気を纏って戦地へと繰り出そうとするその姿は……強者だと誰もが認めるものだった。




 しかし……


「あ、行く前にヒナギ殿、ちょっとこちらへ……」

「……へ? あ、はい……。な、なんでしょうか?」


 ちょっと待ってくれと言わんばかりに、フェルディナントはヒナギの足を止めさせる。


 正直ナナは空気読めよとフェルディナントに対して内心で愚痴り、ジロリとフェルディナントを見る。

 せっかく良い流れで落ち着いていたヒナギが声を掛けられたことで、一気に気の抜けてしまった締まらない子にしか見えなくなってしまったからだ。

 息子と同じで空気の読めない馬鹿さをここで演出するなよと言いたげに、ナナは若干の反感を身に覚えた。むしろ意味のない場での空気の読めない発言をする息子の方がまだマシだとすら思える。


「……決意が固まったところ悪いのだが、行く前に我が兵士達に声を掛けてやってくれないかな? 恐らくだが、士気が最高潮になると思うのでね……」

「……あ(なんだ、そういうことか)」


 ――が、ナナはそれだけで察したようだ。フェルディナントの狙いを。それなら呼び止めた理由も分かるし、確かに必要だなと思えた。

 兵士の士気を上げるためには、ヒナギの声は確実に必要であると。


「なるべく被害を減らしたいのだ。其方の声は皆に届くだろうから」

「はぁ……? 構いませんが……」

「……(ニヤリ)」


 何故? と首を傾げるヒナギとは裏腹に、何かを閃き、悪だくみでもしたのかニヤリと密かに表情を変えるナナ。


「そうか、ありがたい。……『オルヴェイラスの兵士達よ! しかと聞くが良い! ヒナギ殿から其方達へ激励のお声をいただけることになった!』」

「え、あのちょっとまだ準備が……!?」


 ヒナギから了承を得てすぐに、フェルディナントは行動に移った。ヒナギが心の準備が済んでいない、何を言うか決まっていないと言うも、気にすることなく兵士達へと伝令してしまう。


 フェルディナントの声は、不思議なことに空から聞こえたきた。

 どうやら精霊の力で声量を増大させるのではなく、あくまで声の拡散範囲を広げているようだった。フェルディナントはすぐそこにいるというのに、まるで空から声が降ってくるような不思議な具合に。

 これならば、現在街の中心付近である広場で待機している兵士達にも声が届いているに違いない。


「ヒナギ殿、その場で構わないので頼むよ」

「と言われましても、私こういうことって初めてで……どんなことを言えば良いのか……」


 激励を受けることはあっても、掛けることの経験はない。ヒナギはあたふたして必死に言葉を探す仕草を見せる。

 どんな相手に、どんな言葉が激励となるのか? それはヒナギには少々難しい課題と言える。


「(ヒナギ、こう言えばいいんだよ……)」


 そんなヒナギに、忍び寄る魔の手が。

 既に展開しているであろうフェルディナントの力の影響を受けいないように配慮しているのか、コソコソとナナがヒナギへの唆しを開始する。そしてそれにヒナギは耳を傾けてしまう。


「(な、なるほど……激励とはそういうものなのですね、でもそんなこと私は……)」

「(え? これくらい普通だし、こんなの常識だよ?)」

「(常識……わ、分かりました。うぅ……やります)」

「「「?」」」


 そんな2人の光景を見守る残りの3人は、一体何を話しているのかと疑問に思った。

 激励ならそこまで深く考えるまでもないだろうと思ったからだ。


 だが、その疑問はすぐに吹き飛ばされることとなる。

 恥ずかしそうに、だけどやらねばならないという使命感を持ったヒナギによって。




「が、頑張った人には、ご褒美あげちゃいます! 一緒に頑張りましょう☆」

「「「……!」」」




 オルヴェイラスに、ある意味一番の衝撃が走る。

次回更新は月曜です。

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